井戸 井戸と生物

井戸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 18:17 UTC 版)

井戸と生物

井戸は人工物な閉鎖水域であり外部の水界からは孤立しているため、原則的に固有の生物種はいない。しかし、井戸の水源となる地下水中には特殊な生物が生息しており、それが井戸水に侵入することがあり、イドミミズハゼやイドウズムシなどが存在する。

井戸と文化

井戸には個人所有の場合と共同所有の場合がある[4]。一般には井戸の掘削費用が高額で地形的な観点からも水を得ることが困難な場所も多いことから共同所有の井戸が多かった[18]。生活の一部である井戸端は格好の会話の場所でもあり、その名残として近所に住む主婦同士で世間話をすることを「井戸端会議」と呼ばれている。

井戸は、往々にして垂直に細長く掘られた縦穴である。水は深いかも知れないが、水面は狭く、その底からは、真上を中心とする、わずかな角度しか見えない。そのため、見識が狭いことを井戸に言及して「井の中の蛙」などと言うこともある。逆に、これを利用して、地球の大きさを求めたのが、エラトステネスである。

井戸の神聖化

水木しげるロードに設置されている「井戸の神」のブロンズ像

水は生活にとって不可欠のものであり、それを汲み上げる井戸は重要視され信仰の対象とされてきた[3]。日本においては井戸神として弥都波能売神(みづはのめのかみ、水神)などが祀られた。井戸の中になどが放たれていることもある。が棲めるということは水が清いということである。この魚を井戸神とみなす地方もあり、井戸の魚はとってはいけないとされる。イモリも井戸を守る「井守」から来ているという説がある。

井戸には禁忌も多くあり、刃物や金物を投げ込むこと、大声を井戸に向かって発することは厳に戒められた[19]

井戸は地下の黄泉に繋がる異界への入り口とも考えられていた。幽霊が出るなどはその一例である。ギルガメシュ叙事詩では、ギルガメシュは井戸(取水口)からアプスー(地底の淡水の海)へと潜り、若返りの草を得た。また平安時代小野篁が井戸を通って地獄に通ったとされる伝説も有名。最近では鈴木光司によるホラー小説リング』があり、井戸が作品のキーポイントとなっている。盆を迎える前に井戸替え(井戸浚い)を行うのは死者の道を整備するという意味があったものと考えられている[3]

家屋の解体などに伴って井戸を埋める際には、魔よけのために儀式が執り行われた。また、埋めることになった井戸に「息継ぎ竹」と呼ばれる竹を立てる風習があった[3][18]

年中行事

  • 若水汲み
元旦の朝には井戸から若水汲みが行われた[4]
  • 井戸替え
掘井戸は水を汲み出して塵芥を取り去るための大規模な清掃が必要であり、これを井戸替え井戸浚え(いどさらえ)、晒井戸(さらしいど)などと呼ぶ[19]。日本では井戸替えも専門の業者が行う他、使用者が共同で当たり地域における夏の年中行事として行なわれる。井戸替えは盆前の七夕あるいは土用の日と決められる場合が多く[4]江戸時代、江戸市中では7月7日に行われる年中行事であった[20][19][13]

井戸を題材とした作品

エピソードなど

  • 聖書ではイサクの嫁をしもべが探す場所として井戸が登場する。(旧約聖書 創世記24章11節~)また、イエス・キリストが「ヤコブの井戸」でサマリア人の女に水を求める話(新約聖書 ヨハネによる福音書4章6節~)がある。
  • 中国のことわざに「飲水不忘挖井人(水を飲むときには井戸を掘った人を忘れない)」というのがある。ある物事に先鞭を付けた人へのたとえとして使われている(日中国交正常化を主導した田中角栄の評など)。
  • 和文通話表で、「」を送る際に「井戸のヰ」という。

特殊な井戸

石油・天然ガス・地熱など地中にある資源をくみ上げるための井戸を生産井(せいさんせい、英語: production well)といい、石油生産の場合は油井(ゆせい)、天然ガス生産の場合はガス井(ガスせい)、地熱供給の場合は地熱井という[21]

地盤沈下抑止や、石油生産を向上させるために、直接帯水層に、水を注入する井戸については、注入井英語版(ちゅうにゅうせい、英語: injection well)または涵養井(かんようせい、英語: recharge well)と言う。

地すべりを抑止するために、地中から地下水を排水することを目的として、直径4メートル程度の井戸を掘削し、井戸内部からすべり面に向けて、水平に排水用井戸を設置する対策工法がある。これらの井戸を集水井(しゅうすいせい)と呼ぶ。

地下水の水位や水質、地表付近の不飽和土中の地中ガスを観測するために設置する井戸を、特に観測井(かんそくせい)と呼ぶ。


  1. ^ a b 河野伊一郎著 『地下水工学』鹿島出版会 p.43 1989年
  2. ^ a b c d e f g h 野本寛一編『食の民俗事典』柊風舎 p.531 2011年
  3. ^ a b c d e f g h i 『日本民俗大事典(上)』吉川弘文館 p.110 1999年
  4. ^ a b c d e 日本民俗建築学会 『写真でみる民家大事典』柏書房 p.144 2005年
  5. ^ a b c d e 『小事典 暮らしの水 飲む、使う、捨てる水についての基礎知識』講談社 p.210 2002年
  6. ^ a b c d e f g h i j 靑野寿郎・保柳睦美監修『人文地理事典』 p.93 1951年 古今書院
  7. ^ 2009年3月14日 共同通信社 シリアで9000年前の井戸発見 浄水目的は世界最古か
  8. ^ 高田京子、滝澤謙一『ニッポン最古巡礼』新潮社
  9. ^ 『小事典 暮らしの水 飲む、使う、捨てる水についての基礎知識』講談社 p.209-210 2002年
  10. ^ a b 土井巖著 『図解入門 よくわかる最新給排水衛生設備の基本と仕組み』秀和システム p.50 2011年
  11. ^ a b c 『小事典 暮らしの水 飲む、使う、捨てる水についての基礎知識』講談社 p.211 2002年
  12. ^ a b c 井戸|水の話”. フジクリーン. 2020年11月15日閲覧。
  13. ^ a b c 江戸散策|第51回年に一度、江戸中の井戸をお掃除する”. 2020年11月15日閲覧。
  14. ^ 日本民俗建築学会 『図説 民俗建築大事典』柏書房 p.192 2001年
  15. ^ 野本寛一編『食の民俗事典』柊風舎 p.531-532 2011年
  16. ^ 加古川グリーンシティ防災会の取り組み
  17. ^ 【西日本豪雨】生活用水・飲み水に井戸水注目” (2018年7月22日). 2018年7月29日閲覧。
  18. ^ a b 野本寛一編『食の民俗事典』柊風舎 p.532 2011年
  19. ^ a b c 日本民俗建築学会 『図説 民俗建築大事典』柏書房 p.193 2001年
  20. ^ 江戸の歳事風俗誌 小野武雄著 講談社学術文庫
  21. ^ 経済社会開発計画 一般財団法人日本国際協力システム、2019年10月5日閲覧。






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