キリル文字 キリル文字の例

キリル文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/15 17:51 UTC 版)

キリル文字の例

詳細については各言語を参照のこと。

キリル文字は各言語において文字やその数が異なっている。ロシアのキリル文字は33文字、セルビアのキリル文字は30文字で構成されている。またセルビア語およびマケドニア語においては、ラテン文字よりJの字が導入され使用されている[24]。キリル文字が発明された当初は45文字であったと推定されており[3]、その後各地で不要な文字が廃棄されて現在の文字数に落ち着いた。またキリル文字をそのまま数字として使用するキリル数字という記数法もキリル文字成立当初から存在する。

字体

ラテン文字と同じように立体イタリック体活字がある。一部の文字は立体とイタリック体で形がかなり異なり、例えばロシア語では、イタリック体の「т」はラテン文字小文字のmに似た字形となる。以下にロシア語のキリル小文字の立体とイタリック体を示す。特に形が異なる字を強調(太字)で示す。

上の表が正しく(上記「т」の字形に関する記述を参考とせよ)表示されていない場合は画像版を参照のこと。
а б в г д е ё ж з и й к л м н о п р с т у ф х ц ч ш щ ъ ы ь э ю я
а б в г д е ё ж з и й к л м н о п р с т у ф х ц ч ш щ ъ ы ь э ю я
各言語のб, г, д, п, тの比較。上段がロシア語、中段がセルビア語とマケドニア語、下段がブルガリア語。

また一部の文字では、言語によってイタリック体の字形が異なる。例えばセルビア語では、ロシア語などと違い、イタリック体の「т」はラテン文字小文字のmを上下逆にして上線を付したような字形となる。

小文字の筆記体はロシア語のイタリック体の字形とほぼ同じだが、「б」と「д」の筆記体はセルビア語のイタリック体の字形と同じである。ただし、識別度を高くするや個人の習慣などの理由により、あえて「г」「п」「т」をセルビア語のイタリック体字形と同じように書くこともある。

同じくギリシア文字を元に作られたラテン文字とは似た形の文字が多いが、形が似ていても音価が対応関係にない、あるいは音価が対応していても形が対応関係に無い場合も多いので注意を要する。例えばラテン文字の R([r]) と似ているキリル文字として Я([ja]) があるが、前者はギリシア文字の Ρ から、後者は合字の ІА から派生した文字であり、発音も起源も全く関連が無い。また、例えば [v] の音価に相当する文字は、ラテン文字ではギリシア文字の Υ([u]) から派生した V だが、キリル文字では Β[b]、現代ギリシア語では[v])から派生した В である。

コンピュータ

Unicode 収録位置

Unicode では以下の位置に次の文字が収録されている。

U+ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
0400 Ѐ Ё Ђ Ѓ Є Ѕ І Ї Ј Љ Њ Ћ Ќ Ѝ Ў Џ
0410 А Б В Г Д Е Ж З И Й К Л М Н О П
0420 Р С Т У Ф Х Ц Ч Ш Щ Ъ Ы Ь Э Ю Я
0430 а б в г д е ж з и й к л м н о п
0440 р с т у ф х ц ч ш щ ъ ы ь э ю я
0450 ѐ ё ђ ѓ є ѕ і ї ј љ њ ћ ќ ѝ ў џ
0460 Ѡ ѡ Ѣ ѣ Ѥ ѥ Ѧ ѧ Ѩ ѩ Ѫ ѫ Ѭ ѭ Ѯ ѯ
0470 Ѱ ѱ Ѳ ѳ Ѵ ѵ Ѷ ѷ Ѹ ѹ Ѻ ѻ Ѽ ѽ Ѿ ѿ
0480 Ҁ ҁ ҂  ҃  ҄  ҅  ҆  ҇  ҈  ҉ Ҋ ҋ Ҍ ҍ Ҏ ҏ
0490 Ґ ґ Ғ ғ Ҕ ҕ Җ җ Ҙ ҙ Қ қ Ҝ ҝ Ҟ ҟ
04A0 Ҡ ҡ Ң ң Ҥ ҥ Ҧ ҧ Ҩ ҩ Ҫ ҫ Ҭ ҭ Ү ү
04B0 Ұ ұ Ҳ ҳ Ҵ ҵ Ҷ ҷ Ҹ ҹ Һ һ Ҽ ҽ Ҿ ҿ
04C0 Ӏ Ӂ ӂ Ӄ ӄ Ӆ ӆ Ӈ ӈ Ӊ ӊ Ӌ ӌ Ӎ ӎ ӏ
04D0 Ӑ ӑ Ӓ ӓ Ӕ ӕ Ӗ ӗ Ә ә Ӛ ӛ Ӝ ӝ Ӟ ӟ
04E0 Ӡ ӡ Ӣ ӣ Ӥ ӥ Ӧ ӧ Ө ө Ӫ ӫ Ӭ ӭ Ӯ ӯ
04F0 Ӱ ӱ Ӳ ӳ Ӵ ӵ Ӷ ӷ Ӹ ӹ Ӻ ӻ Ӽ ӽ Ӿ ӿ
0500 Ԁ ԁ Ԃ ԃ Ԅ ԅ Ԇ ԇ Ԉ ԉ Ԋ ԋ Ԍ ԍ Ԏ ԏ
0510 Ԑ ԑ Ԓ ԓ Ԕ ԕ Ԗ ԗ Ԙ ԙ Ԛ ԛ Ԝ ԝ Ԟ ԟ
0520 Ԡ ԡ Ԣ ԣ Ԥ ԥ Ԧ ԧ Ԩ ԩ Ԫ ԫ Ԭ ԭ Ԯ ԯ
2DE0
2DF0 ⷿ
A640
A650
A660
A670  ꙰  ꙱  ꙲
A680
A690

キーボード

キリル文字を使用する主な言語のWindowsにおけるキーボードの配列は以下の通り。旧ロシア帝国支配下の国々とバルカン半島諸国の言語で配列に大きな違いがある。これはタイプライターが導入された時期からの違いである。

ロシア語
ベラルーシ語
ウクライナ語
ブルガリア語
セルビア語
マケドニア語
モンゴル語
キルギス語
タジク語

注釈

  1. ^ a b ラテン文字も通常使用されている。
  2. ^ ボスニア語ではキリル文字も用いられる。
  3. ^ ギリシア文字、グルジア文字、アルメニア文字はいずれもキリル文字より歴史が古い。

出典

  1. ^ 「キリール文字の誕生 スラヴ文化の礎を築いた人たち」p218 原求作 上智大学出版 2014年3月10日第1版第1刷
  2. ^ 「キリール文字の誕生 スラヴ文化の礎を築いた人たち」p248 原求作 上智大学出版 2014年3月10日第1版第1刷
  3. ^ a b c 「ロシア・中欧・バルカン世界のことばと文化」(世界のことばと文化シリーズ)p45 桑野隆・長與進編著 早稲田大学国際言語文化研究所 成文堂 2010年6月10日初版第1刷
  4. ^ 「ロシア・中欧・バルカン世界のことばと文化」(世界のことばと文化シリーズ)p41 桑野隆・長與進編著 早稲田大学国際言語文化研究所 成文堂 2010年6月10日初版第1刷
  5. ^ 「キリール文字の誕生 スラヴ文化の礎を築いた人たち」p240-242 原求作 上智大学出版 2014年3月10日第1版第1刷
  6. ^ 「キリール文字の誕生 スラヴ文化の礎を築いた人たち」p248-249 原求作 上智大学出版 2014年3月10日第1版第1刷
  7. ^ 「ビジュアル版 世界の文字の歴史文化図鑑 ヒエログリフからマルチメディアまで」p273 アンヌ=マリー・クリスタン編 柊風舎 2012年4月15日第1刷
  8. ^ 「ロシア・中欧・バルカン世界のことばと文化」(世界のことばと文化シリーズ)p48-50 桑野隆・長與進編著 早稲田大学国際言語文化研究所 成文堂 2010年6月10日初版第1刷
  9. ^ 「ロシア・中欧・バルカン世界のことばと文化」(世界のことばと文化シリーズ)p51-52 桑野隆・長與進編著 早稲田大学国際言語文化研究所 成文堂 2010年6月10日初版第1刷
  10. ^ a b 「ビジュアル版 世界の文字の歴史文化図鑑 ヒエログリフからマルチメディアまで」p278 アンヌ=マリー・クリスタン編 柊風舎 2012年4月15日第1刷
  11. ^ a b 「バルカンを知るための66章 第2版」p272 柴宜弘編著 明石書店 2016年1月31日第2版第1刷
  12. ^ a b 「中央アジアを知るための60章」p104 宇山智彦編著 明石書店 2003年3月10日初版第1刷
  13. ^ 「図説 アジア文字入門」p105 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所編 河出書房新社 2005年4月30日初版発行
  14. ^ 「世界の文字を楽しむ小事典」p169 町田和彦編 大修館書店 2011年11月15日初版第1刷
  15. ^ 「世界の文字を楽しむ小事典」p170 町田和彦編 大修館書店 2011年11月15日初版第1刷
  16. ^ a b NIKKEI ASIAN REVIEWから】カザフスタン/ローマ字移行 ロシアに背「欧米追従」一部に批判『日経産業新聞』2017年7月20日アジア・グローバル面
  17. ^ 「世界の文字を楽しむ小事典」p171 町田和彦編 大修館書店 2011年11月15日初版第1刷
  18. ^ “カザフスタンが表記文字を変更、ロシア文字からローマ字へ”. Reuters. (2017年10月30日). https://www.reuters.com/article/kazakhstan-idJPKBN1CZ04T 2021年7月3日閲覧。 
  19. ^ https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170621-00000081-jij-asia 「ローマ字化、是か非か=旧ソ連のカザフで論議」時事通信 2017年6月21日 2017年6月21日閲覧[リンク切れ]
  20. ^ “カザフスタン】 これからはカザフ語のみで貨幣発行へ”. TRT日本語. (2019年2月24日). http://www.trt.net.tr/japanese/shi-jie/2019/02/24/20190224-001-1151288 2019年2月25日閲覧。 
  21. ^ 『図説 世界の文字とことば』 町田和彦編 25頁。河出書房新社 2009年12月30日初版発行 ISBN 978-4309762210
  22. ^ Mongolia abandons Soviet past by restoring alphabet | World | The Times”. 2020年6月22日閲覧。
  23. ^ 「ロシア・中欧・バルカン世界のことばと文化」(世界のことばと文化シリーズ)p236-237 桑野隆・長與進編著 早稲田大学国際言語文化研究所 成文堂 2010年6月10日初版第1刷
  24. ^ 「世界の文字を楽しむ小事典」p24 町田和彦編 大修館書店 2011年11月15日初版第1刷


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