奴隷編(第55話 - 第99話)
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デンマーク軍を追放され、同時に生きる意味を失ったトルフィンは、奴隷身分に落ち、ケティルという男に買われる。彼はデンマークのユトランド半島に広大な土地を所有しており、トルフィンはそこで森林の開墾を命じられる。1015年、同じく奴隷として買われた元農民の青年エイナルと出会う。用心棒や奉公人から嫌がらせを受けながらも、元奴隷の奉公人パテールやケティルの父親スヴェルケルの助けを受け、2人はひたむきに開墾作業を続ける。 一方、クヌートは1016年にイングランド王を暗殺、イングランドの単独の王となり、さらに1018年、デンマークを治める兄ハラルドをもその手にかけ、デンマーク・イングランド両国の王となっていた。イングランドではデーン人駐留軍の維持費が問題となっていた。イングランド国民の反感を買わぬよう、税率を上げずに維持費を捻出するため、クヌートは農場主の次男オルマルを利用して、デンマーク有数の生産量を誇るケティルの農場を接収しようと、クヌートは自ら100人の手勢を引き連れ、農場の接収に現れた。 ケティルは富を奪われることを恐れ、人手を寄せ集めてクヌート軍に抵抗するが敵うはずもなく、農場は惨劇の場と化した。トルフィンは農場の惨状を見かねて舞い戻り、特使としてクヌートへの謁見を試みる。クヌートは当初無視しようとするが、トルフィンは100回の殴打を耐え抜くことでかつてクヌートの近衛を務めたほどの強さを証立て、謁見にこぎつける。数年の時を経て邂逅した2人は、それぞれが異なる方法で理想を目指していることを知る。トルフィンの「ヴィンランド」への想いを聞いたクヌートは接収を取り止め、兵を引く。
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奴隷編
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ケティル 声 - 手塚秀彰 トルフィンを奴隷として買ったデーン人の大地主。 昔はその勇猛な戦いぶりから「鉄拳のケティル」の異名を取った戦士だ、という逸話が若い戦士の間で知られているが、実は「鉄拳のケティル」とは同名の別人であり、周囲の勘違いを否定せずに利用しているだけである。この事実を知っているのは本物の「鉄拳のケティル」との面識がある「蛇」、秘密を打ち明けたアルネイズのみである。 自ら率先して農場で働く勤勉な人物。エイナルやトルフィンに自由身分を買い取るための方策を与えたり、自らの農場に盗みに入った幼い兄妹の身の上話に同情して涙ぐんでしまうなど、温和で優しい性格の持ち主。しかし、強さこそを第一とするデーン人社会においては、その気質は欠点であり、体面を保つために望まぬ行動をとらねばならないことに苦悩している。 トルフィンとエイナルに対しては「働き者」と評価しており、彼らが自由身分を買い戻した後も農場で働かないかと誘う。 デンマーク王のハラルドに寄進を行い、後ろ盾を得ることで農場の安全を保っているが、その農場の経営方針について、父スヴェルケルと諍いが絶えなかった。ハラルド亡き後はクヌートに取り入ろうとするが、オルマルの失態が原因で農場が危機に陥ってしまい、失意のあまり憔悴して農場に戻った際、アルネイズが逃亡を図ったことを聞いて激昂し、アルネイズを棒で打ち据えてしまう。怒りで我を忘れたうえに、クヌート軍が自らの手勢のの三分の一の100人と聞いて舐めてかかるが、圧倒的な兵の能力差の前に手勢は壊滅、奉公人や客人にも見捨てられ、自らも戦闘で重傷を負った。 戦後、傷は回復したものの、アルネイズや富・名声を失ったショックから立ち直れず、隠居状態になった。 エイナル 声 - 武内駿輔 ケティル農場に新しくやってきた奴隷。ノルド系イングランド人で、ノルド語とイングランド語に堪能。元は農夫であるため、農事にくわしい。その出自から村に略奪を働く戦士達を憎んでいる。農場に連れて来られるまで何度も脱走を試みており、その度に罰を受けていたがあまりへこたれていなかった。 明るい性格で、あまり返事をしないトルフィンに対しても積極的に話しかける。また、ケティル農場の跡取り息子に殺されそうになった時、自分の身代りを名乗り出たトルフィンを、身を挺して逃がそうとし、捕まった後もトルフィンの身を案じて暴れた。トルフィンが元戦士であったことを知った際は一瞬憎悪を抱いたが、罪の意識で毎晩うなされるトルフィンを見て考えを改め、友人として接するようになる。その後、トルフィンとは奴隷生活での様々な苦難や、アルネイズとガルザルの逃亡事件、クヌートとの停戦交渉などの修羅場を共に乗り越え、互いを兄弟と呼び合う存在となった。 根っからの農民らしく、農業に対しては非常に真摯かつ全力で取り組む。トルフィンと2人で開拓した農地を奉公人達に荒らされた時は、静かに激怒していた。 好意を持ったアルネイズに対し、これ以上不幸になってほしくないと考え、アルネイズと夫ガルザルの逃亡をトルフィンとともに助けるが、蛇達によって阻止される。この一件で、世の中から戦争と奴隷をなくしたいというトルフィンの理想に強く同調するようになる。 ケティルによる暴行が元でアルネイズが死んだことで、復讐心に呑まれそうになるが、トルフィンの思いを込めた説得を受け、アルネイズの墓の前で、戦争も奴隷もない新天地を共に目指すことを誓った。 オルマル 声 - 林勇 ケティルの息子。次期当主だが、自分をケティルの息子としてでしか扱ってくれない周りに嫌気がさしている。 本人は剣で名を上げたがっていたが、実際はその腕も度胸もなく、クヌートにケティル農場接収の口実作りとして利用されてしまう。 その後は後悔と自責の念から、おぼろげながらも当主代理としての立場を自覚し、戦争の口実となった自らの至らなさ(黙って笑われる勇気が無かった)を認めながら降伏(ケティル一族の国外追放)を決める。しかしその直後、トルフィンの体を張った和平交渉を目の当たりにし、感謝しながら一行を見送った。戦後は、半ば隠居したケティルに代わって事実上の当主となり、戦死者への多額の賠償を支払う。以後は自ら率先して畑仕事に励んでいる。 トールギル 声 - 楠大典 ケティルの長男。クヌートの元従士で、大柄で腕っ節が強く、戦いを好む典型的なヴァイキング気質の人物。 クヌートの策略をいち早く察知しながら、あえてオルマルを煽って戦闘の口実を作らせた。 戦士としては有能であり、オルマルを侮辱した戦士数人を皆殺し、自分達を捕らえに来た兵達もあっさり血祭りにあげている。かつての上司であったウルフからは「良い部下だった」と言われ、ケティル農場侵攻の際には、クヌートを狙って海から単身切り込み、その大胆さをクヌートにも評価されている。また、農場に戦士を集める上でも一計を案じており、蛇からは「意外と戦上手」であると評された。再度、奇襲する機会を窺っていたが、クヌート達が引き上げてもぬけの殻となった陣地に来て愕然とし、その結果に納得いかず戦後は行方を晦ましている。 パテール ケティル農場の奉公人。ケティル農場の経理を担当しているが、奴隷あがりのため、奉公人からはうとまれ、目の仇にされている。 律儀で誠実な性格で、奴隷身分のエイナルやトルフィンに対しても公正な態度を貫き、農場内で事件が発生した折には、自ら徹底した捜査を行って彼らの窮地を救ったこともある。しかし公正であるがゆえに、貧しさから盗みを働いた子供に対しても厳格な態度をとる。 戦争ではトルフィンやエイナルにその安否を気遣われたが、確認できる限りでは左腕を負傷しただけで済んでいる。 アルネイズ 声 - 佐古真弓 ケティルの女奴隷。ケティルに気に入られ、愛人として保護されているが、それゆえ解放される事を諦めかけている。ケティルの正妻からは目の敵にされ、辛辣な態度をとられている。心優しい性格と美貌を持ち合わせ、エイナルに一目惚れされる。 奴隷になる前はスウェーデンの集落で夫ガルザル、息子ヒャルティとともに暮らしていた。しかし遠方の泥炭地を巡る争いで、男達が村を空けた隙に敵の襲撃を受け村は壊滅、アルネイズはヒャルティと引き離されて奴隷として売られ、ケティルに買われた。奴隷でありながらケティルの側仕えとして厚遇され、彼の子を宿す。 その後、他の農場主のもとから逃亡してきたガルザルと再会し、スヴェルケルやトルフィンらの助けを受け、二人で逃避行を試みるが、ガルザルは死亡。自身も脱走犯として捕らえられ、それを知って激昂したケティルに棒で殴打され、瀕死の重傷を負ってしまう。 クヌートの軍勢によって農場が戦場になった隙をつき、レイフの手引きでトルフィンやエイナルと共に農場から連れ出される。夢の中でガルザル、ヒャルティと再会、一時的に意識を取り戻すが、もはや生きる気力を失っており、トルフィンやエイナルの懸命な呼びかけも及ばず、二人に感謝しながら息を引き取った。 スヴェルケル 声 - 麦人 ケティルの父で、先代の当主。気難しい人物だが、エイナルとトルフィンを見て彼の仕事を手伝う代わりに、二人に馬と重量犂を貸し与える。ケティルの農場経営方針を疑問に思っており、あまり折り合いが良くない。キリスト教徒だが文字が読めないので「蛇」に聖書を読んでもらっている。トルフィン達とともにアルネイズと夫の逃避行を助ける。 奉公人たち 自前の耕作地を持たず、ケティル農場で雇われている。自分らより身分の低いトルフィンら奴隷をいじめることでプライドを保っている。トルフィンとエイナルが耕した畑を荒らし、エイナルに問い詰められてシラを切ったため喧嘩となる。その後、ケティルに2人の処罰を訴えるも、パテールによって畑を荒らした証拠が見つかったため不問にされる。ケティル農場侵攻では、戦いに駆り出されるも大半が戦死もしくは逃亡する。 「客人」 ケティルが雇っている農場の用心棒。「蛇」が言うには、「ヘマをやらかしたせいで、本名を名乗れない」者たち。故に構成員は「蛇」自身を含め皆「キツネ」、「アナグマ」など、動物の名前を通り名にしている。「蛇」 声 - 小松史法 「客人」たちのリーダー。 奴隷に対し悪ノリした客人たちを制裁したり、トルフィンら奴隷にも気さくに接するなど公平な人物。部下の命を大事にする一方、スヴェルケルとウマが合うようで、彼の小屋によく入り浸っている。「客人」の中でも腕が立ち、トールギルに剣を教えたのは彼のようである。教養があり、ベッドに寝たきりになったスヴェルケルに聖書を読み聞かせている。洞察力にも長け、トルフィンの戦士としての性質をいち早く見抜いていた。 逃亡奴隷ガルザルがアルネイズを連れ出した際、他の「客人」の命が損なわれたことに激怒し、アルネイズらを助けようとするトルフィンに対峙する。 本物の「鉄拳のケティル」に面識があり、地主のケティルがその名声を見栄で利用していることを察していた。しかしクヌートによるケティル農場侵攻の際には、ケティルに雇ってもらった恩を返す為に、勝ち目がない戦だと理解した上で、クヌート軍に対抗する為にケティルの元に寄せ集められた奉公人達の指揮を執った。後にトルフィンらの諫言により、クヌートが農場の接収を取りやめたことに感謝し、自らの真の名「ロアルド・グリムソン」(グリムの子ロアルド)をトルフィンらに教えた。その後、スヴェルケルに扱かれながら他の「客人」たちとともに農作業を手伝っている。 ハラルド スヴェンの長子、クヌートの兄。スヴェンの死後、デンマーク王位を継ぐ。イングランドを治める弟クヌートとは良好な関係を保っていたが、1018年、病に倒れそのまま崩御。嫡子がいなかったため、デンマークはクヌートが継いだ。作中では、両王国の盤石化を図ったクヌートによる暗殺(毒殺)となっている。 ウルフ クヌートの従士長で、剣の達人。トールギルを部下に持つ。クヌートの命により、短気なオルマルを利用してケティルを逮捕すべく部下をけしかける。 クヌートと共にケティル農場へ兵を進めた時は、海から奇襲を仕掛けたトールギルからクヌートを守るために奮戦して追い返した。このとき右目を失っている。 トルフィン(ギョロ目) トルフィンの名を持ち、トルフィンと似た特徴(年齢、金髪、茶色の目)を持つ青年。そのためトルフィンと間違えられてレイフに買い取られた元奴隷。現在はレイフの養子になっており、その目付きから「ギョロ目」や「ギョロ」と呼ばれている。イェリングでオルマルと諍いを起こす。思ったことを逡巡なく口にしてしまう良くも悪くも素直な性分であり、元奴隷である暗さを感じさせない。落ち着いたトルフィンやエイナルと比べ、物事へのリアクションが大きく、何かにつけ騒いでいることが多い三枚目な人物で、コメディリリーフ的存在。 レイフに付き添って、トルフィン達の北海横断に同行することになった。 ガルザル ケティル農場に現れた逃亡奴隷。アルネイズの元夫。帰る家を失ったのち自身も奴隷身分に落とされ、デンマークの農場で働かされていたが、農場主とその一家を殺して逃亡、ケティルの農場で暮らすアルネイズを迎えにくる。戦士としてはかなりの腕前で、「客人」を何人も血祭りに上げるも深手を負い、最期はアルネイズに看取られて息を引き取った。
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