主人公およびその家族
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 15:49 UTC 版)
エリン 声:星井七瀬 本作の主人公。初登場時は10歳。名前の「エリン」は山に自生する山リンゴに由来する。 大公領アケ村に闘蛇衆の頭領の長男と、元霧の民で獣ノ医術師ソヨンの間に生まれた一人娘。その為、緑の瞳を持ち背丈も他の子と比べやや高いが、顔立ちは大公領民そのものである。麦藁色の髪を持つが、父母どちらの遺伝かは不明。非常に聡明で好奇心と探究心が旺盛な所は母譲りで、生物に強い関心を示し、将来は母の様になる事を夢見ている。一方で明るく気だての良い所は父譲りで、ごく一部からは<魔が差した子>(前述)と睨まれながらも、それなりに幸せな日々を送っていた。 しかしある日、処刑される母を助けようとして逆に助けられ、真王領の東端サンノル郡の湖畔で気絶していた所をジョウンに救われる。 始めは心を閉ざしていたが、彼の温かい人柄のおかげで笑顔を取り戻し、蜂飼いの仕事を手伝いながら一緒に暮らし始め、様々な知識や技術を習得していく。中でも竪琴はかなりの腕前になり、一度聞いた歌を即興で演奏できる程である。ある夏の夜、崖に落ちたジョウンを見つけ付き添っていた時に、自分の仔を救う野生の王獣を見て感動し、かつての夢を取り戻す。 4年後、着飾る事にあまり興味が無いため、少々地味だが明るく爽やかな娘に成長、蜂飼いとしても自活できる迄になる。しかし、ジョウンの息子アサンが父を迎えに来た事で、実の親子同然の二人の生活は終焉を迎える。その際お互いに自身の秘密を打ち明けた所、ジョウンの推薦でカザルム学舍の入舎ノ試しを受ける事ができ、無事入学を果たす。 しかしそれまで育った環境のせいで集団生活等が苦手で、入舎した当初は不慣れな生活に四苦八苦する。更に一部の教導師の偏見や恩人ジョウンの死に心が折れかけるが、学長エサルや親友ユーヤンの励ましもあり、人一倍努力した結果、次第に周囲に認められ、充実した学園生活を送れる様になる。 ある日死にかけていた王獣の仔リランを救い、面倒を見る事になる。途中成行きで王獣に対する<操者ノ技>を編み出してしまったり、不慮の事故が何度か起きたりするも、次第に親子の様な不思議な絆で結ばれていく。 リランの為もあって19歳で教導師になるが、その頃から闘蛇と王獣の在り方、人の在り方への疑問を抱く様になる。更に先述の<操者ノ技>を知られた為に国の権力闘争に引きずり込まれるが、混乱の中でお互いの想いが通じ合った'<堅き楯>のイアルやリランと共に、毅然とした態度で運命に立ち向かう。 それから11年後、イアルと結婚して息子ジェシを授かり、カザルムで引き続き教導師として過ごしていたが、再び<牙>が大量死したとの知らせを受け、シュナンの命で査察官として護衛役のヨハルと共に現場へ向かう。過酷な旅の道中で、同祖と名乗るヨハルとその一族や、父方の親戚のツラナを始めとする闘蛇村民の暖かい人情に力づけられる。様々な調査の末に、遂に真相を突き止めるが、同時にジェの真意にも漠然とだが気付くことになる。 一人で秘密を守るべきか悩みながら、ヨハルと調査を続ける最中、ラーザに内通した守備兵達に襲撃される。二人共辛くも難を逃れるが、この件で自分の立場を思い知らされる。更にジェシが生まれた年に闘蛇衆がラーザに誘拐され、闘蛇の育成に関する知識・技術が流出した可能性が浮上する。結果、彼女だけでなく家族など周辺の者全員が、常時監視状態とされてしまう。 シュナンに命ぜられ、悩んだ末に彼女は王獣を繁殖させる事を決意、同時に全責任は自分一人で贖う覚悟を決める。やがて実際に王獣の繁殖を試みるが、あまり数は増えなかった。 ついに決戦が始まるが、王獣部隊を見た闘蛇の群れが猛毒の霧を発し、戦場は大混乱に陥る。これも人工的に増やされた闘蛇の特性だが、戦場で初めてそれを知った彼女は、必死の思いでエクたち数頭の離脱に成功するも、事態の収拾はできなかった。 そんな中、神話時代の真実を伝えに来たジェシやアルと会った彼女は、何をすべきか自覚する。神話のリョザの様に音無し笛を一気に吹き、全ての王獣・闘蛇の動きを止めるが、自身もリランと共に墜落してしまう。 多くの犠牲を払い、勝者なき争いは終結。両国とも闘蛇と王獣を戦争に使う事の恐ろしさを痛感するが、それでもエリンの決断で犠牲は最小限に留まる。 リランの亡骸に足を挟まれたのが原因で決戦終結の四日後に命を落とす。しかしその前にジェシたちと再会し、自身の知識や見聞をすべて伝える事ができた。エリンの願いはようやく果たされ、その歴史はジェシによって次世代を担う若者たちに伝えられていく。 但し漫画は王獣編のラストまで、アニメもジェシの母親になっている所までが描かれ、後は視聴者の想像に任せる形で終わっている。 イアル 声:鈴村健一、小林沙苗(少年期) 真王の護衛を務める堅き楯の一人。非常に俊敏な身のこなしをすることから神速の異名を持つ。髪の色はアニメでは茶色で瞳は藍色だが、漫画では原作と同じく髪も瞳も黒である。 普段はエリンに「冬の木立」と形容されるほど物静かだが、冷徹な気配を漂わせており、護衛の任となれば即座に敏捷な武人へと変貌する。8歳の頃に一家の大黒柱であった指物師(アニメでは竪琴師)の父(声:下崎紘史)を地震で亡くし、その後身売りに近い形で<堅き楯>となったという経緯がある。当時、まだ赤子だった妹が一人いる。 原作ではエリンとの初対面はハルミヤがカザルムに行幸した時だが、アニメではそれ以前に3度エリンに会っており、エリンが<操者ノ技>を編み出すきっかけとなる竪琴は彼の母(声:相橋愛子)の形見の品という設定になっている。 <降臨の野>の決戦の際、首謀者だったダミヤを襲撃してエリン達を窮地から救うが、その際表情一つ変えずダミヤを刺殺した事から、以後原作ではセィミヤから疎まれてしまう。シュナンからは高く評価されるも凋落したダミヤ派の貴族たちからの嫌がらせもあり、立場的には厳しかった。 <堅き楯>を辞めるに当たり、給料の余剰分はきちんと計算して全て返済した。シュナンやセィミヤからは慰留の声や返済不要との配慮もあったが、それを断ったため金銭的には裕福とは程遠い状況となる。ヤントクのはからいで他の職人たちの仲間に入れてもらい、指物師として生活をたてる様になる。 カイルのおかげでエリンが自分の家を訪ねて来る様になると、とまどいつつも彼女を気にかけるようになる。<堅き楯>としての覚悟を決めてから感情を捨てた自分、そして多くの者達の命を奪った自分が幸せになっていいのか苦悶する。紆余曲折の末にカイルの助言、エリンの妊娠などを経てエリンと夫婦になることを決意する。 しかしヤントクから自分の母が継父と結婚後は商売に精を出し、王宮と関わりを持つほどになったと聞かされ、複雑な思いを抱く様になる。更に運命の悪戯か実の妹と偶然にも対面、彼女に「病気で死んだ」兄の思い出話をされ、自分は既にこの世に存在しないものとされた事実を改めて痛感する。エリンの職場復帰や自身の傷心もあり、カザルムへ移ることを決意、ヤントクと別れ新天地で指物師として生きていくことに不安は残るものの、どこからか彼が実兄だと知った妹が地元の職人たちに高価な材料を大量に贈ったことで、彼はカザルムでも好意をもって受け入れてもらえる様になる。しかしいきなり金品で好意を示す方法に彼は内心激怒、これが自分を捨てたことへの返事だと判断し[要出典]、地元の職人たちに支払われた金品分を母や妹に返金しようとするが、今の彼にそのような金銭が用意できるはずもなく、とりあえず実の母や妹とは一切連絡を取らないことを決意する。 しかしこれは、彼の誤解だった。彼の母が商売に必死だったのは、あくまで息子を探すための財力や影響力を得るためだった。また、母は妹の件も知らなかった。家族関係を修復できないまま、母はジェシが生まれる直前に危篤に陥ってしまう。それでも始めは意地を張っていたが、ヤントクたちの必死の説得と身重でありながら母の病床へ向かったエリンに心が動き、自身も妻の後を追うが、着いた時にはすでに母は亡くなった後であった。 母の死後、考えを改めた彼は、エリンやジェシと共に家族として生きていくことを誓う。 その後は指物師として、エリンと共に息子ジェシを育てる。しかし11年後、元<堅き楯>である故に、エリンの留守中に自分のみならずジェシまで命を狙われる事態が発生する。そのため、<堅き楯>と闘蛇乗りとの架け橋になりたいという名目で、闘蛇乗りに志願する。 ラーザとの決戦から22年後に病で亡くなるが、始めの8年間は青鎧の任務に就きながらジェシを立派に育て上げ、指物師に戻ってからは孫を抱き上げる事もでき、穏やかな余生を過ごした。これもエリンに出会えたおかげである。 アニメのラストでは家庭を持ち、竪琴師になっている所迄が明らかになっている。 ジェシ 声:並木のり子 『探求編』より登場したエリンとイアルの息子で、初登場時8歳。父と同じ黒髪で霧の民の血を引くもクォーターの為、瞳も黒。難産の末に生まれた一人息子である。 両親からは想像できないほど口が達者なやんちゃ坊主だが、生物全体が大好きで好奇心旺盛な一面は母親譲り。また、『完結編』の後半で父譲りの俊敏さと行動力を見せる様になる。 王獣を家族のように大切に思っていて、「王獣を道具のように扱う」という意味とも取れる「王獣使い」という言葉にかなり嫌悪感を示す。幼い頃から共に育ったアルを「アル姉ちゃん」と呼んで慕っている。またかつてのエリン同様、母のようになりたいという夢を持っており、12歳でカザルムへの入舎ノ試しを受ける。その際、入舎の動機を問われ、「ぼくは王獣が大好きです! だから、母のようになりたいのです!」と黒々と大きく書いて、トムラら教導師達を大爆笑させた。 そんな彼もやがて過酷な運命に引きずり込まれてしまう。始めこそ両親を案ずるあまり荒れた事もあったが、「必ず戻って来るから」と言うエリンの言葉を信じ、両親を待つ決心をする。それからは、時折直情的な一面も見せるものの、心身共に著しく成長し、家族や王獣を気遣う一方で自身も意外な活躍を見せる。 決戦後、母と一緒にいられたのは僅か4日間だったが、彼にとっては大変有意義な時間だった。母の遺志を受け継ぎ立派に成長した彼は、教導師長として後進の育成に務める一方で、リョザの国家安定にも一役買う事となる。 アニメでは最終回の1シーンのみ登場。アルの傍らで母の仕事が終わるのを待っていた。母譲りの音感を持つのか竪琴を上手に演奏している。
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