ポトラッチ
「ポトラッチ」とは、北米の先住民族の間で行われる贈与・破壊の儀式であり、競争的な贈与行為を通じて社会的地位や名誉を競い合うことを意味する表現である。
「ポトラッチ」とは・「ポトラッチ」の意味
ポトラッチとは、主に北西アメリカ先住民の文化で見られる贈与の儀式であり、地位や名誉を競うために開催される。この儀式では、贈与者が豪華な宴を開き、財産や贈り物を配ることで名誉や地位を高めることが目的となる。ポトラッチは、戦争的な性格を持っており、贈り物の価値を競い合い、時には持ち物を破壊することで相手に対する優越を示すことがある。このような競争的な贈与行為は、社会的地位や権威を確立し、コミュニティの絆を強化する役割を果たしている。年賀状のような現代社会の事例でも、ポトラッチに似た競争的な贈与行為が見られる。例えば、年賀状を贈る際には贈る相手に対して自分の地位や関係を示すために、豪華なデザインや多くのあいさつ文を書くことがあり、ポトラッチに似た性質があるといえる。
「ポトラッチ」の語源・由来
「ポトラッチ」の語源は、チヌーク・ジャーゴンという、アメリカのコロンビア川流域における先住民族の間で広く使われていた商用言語(ピジン言語)から来ている。チヌーク・ジャーゴンの「potlatch」という言葉が由来で、これは「贈る」や「贈与」という意味である。この言葉が、先住民族が行っていた競争的な贈与の儀式を指すようになり、現在の「ポトラッチ」という言葉につながっている。「ポトラッチ」を含む様々な用語の解説
「ポトラッチ効果」とは
ポトラッチ効果とは、競争的な贈与行為が繰り返されることで、贈り物の価値が上昇し、経済的な損失が生じる現象を指す。この効果は、先住民族のポトラッチの儀式から名付けられており、その儀式では参加者が互いに贈り物をしあって、より高価な贈り物を提供することで社会的地位を向上させようとする。
ポトラッチ効果は、一見すると人間関係の強化や社会的なつながりの維持に寄与しているようにも見えるが、実際には経済的な損失や資源の浪費を引き起こすことがある。例えば、贈与の競争が激化すると、個人や企業が無理な支出を行い、経済的な困難に陥ることがある。また、贈り物の価値が上昇することで、贈与の本来の目的である「感謝の意を示す」という意義が薄れ、形式的な行為になってしまうこともあるのである。
「ポトラッチ」に関連する用語の解説
「贈与論」とは
贈与論とは、社会学者であるマーセル・モースが提唱した社会と贈与の関係に関する理論である。モースは、贈与行為が人間関係の構築や維持に重要な役割を果たしており、贈与には義務としての要素が含まれていると考えた。これにより、贈与行為が個人や集団間のつながりを強化し、社会の秩序を維持する機能があることが示された。この理論は、異なる文化や時代における贈与の意義や機能を理解する上で有用な枠組みとなっている。
「元彼の遺言状」とは
「元彼の遺言状」とは、故人である元彼が「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇抜な遺言を残し、才能ある女性弁護士が依頼人と共に大金の遺産を獲得しようと試みる様子が描かれている2022年に放送された日本のテレビドラマである。このドラマでは、ポトラッチという言葉が第一話で登場する。
「ポトラッチ」の使い方・例文
ポトラッチは、主に先住民族の文化や贈与行為を説明する際に使用される言葉である。以下に、ポトラッチに関する例文を示す。1. 北米の先住民族の間では、ポトラッチと呼ばれる競争的な贈与の儀式が行われていた
2. 現代社会でも、ポトラッチのような贈与行為が見られる場面が多く存在する
3. ポトラッチ効果により、贈与行為が過度に競争的になると、経済的な損失が生じることがある
以上のように、ポトラッチは贈与や破壊の儀式に関する話題で使用されることが多い。また、ポトラッチ効果という言葉も競争的な贈与行為が生み出す経済的な影響を説明する際に用いられる。
ポトラッチ
「ポトラッチ」は、「相手から貰った以上のものを贈って返す」という意味合いの表現として用いられることがある。あるいは、日本の「お歳暮」「お中元」「年賀状」といった贈答の慣習を論じる文脈で引き合いに出されることもある。
「ポトラッチ」の基本的な意味
「ポトラッチ」は、アメリカ北西部のネイティブアメリカン(いわゆるインディアン)の文化である。部族の裕福な者が盛大な饗宴を催し、その参加者に気前よく贈答品を与える。宴の規模は主催者の財力に応じて大小さまざまである。与える贈答品の規模は相手の地位に応じても変わる。ポトラッチの風習は、地位や財力を誇示しつつ部族に富を分配する目的で定着したと考えられている。
ポトラッチに招かれて贈答品を受け取った者は、また別の機会に自身で宴を催し、答礼を行う。答礼は少なくとも等価交換であることが求められ、できれば自分が貰った分よりも多くを与えることがよしとされた。
ポトラッチで椀飯振る舞いをすればするほど、主催者の部族における地位は高くなった。そのため、ポトラッチは競うように行われ、贈答の規模も大きくなっていった。
やがてポトラッチの贈答の規模は大きくなりすぎ、部族内での貧富の差も拡大した。
アメリカやカナダは、先住民が行っているポトラッチを悪習として法的に禁止したが、断絶はしていない。
現在でもポトラッチは、あるいはポトラッチを源流とする祭礼の文化は、形を変えながら受け継がれている。
「ポトラッチ」を含む様々な用語の解説
「ポトラッチ効果」とは
「ポトラッチ効果」とは、自分の評判を高めるために贈り物をすることである。たとえば「善人として見られたいがために慈善活動に従事したり寄付をする」とか「好きな相手に良い印象を持ってほしいから高価なプレゼントをする」といった振る舞いは、ポトラッチ効果を狙った行動といえる。
唐突なあからさまな贈り物は、下心を見透かされて、逆に評判を落とすことに繋がりやすい。その意味で「ポトラッチ効果」は逆効果になるリスクを伴う。
「ポトラッチ」に関連する用語の解説
「贈与論」とは
「贈与論(Essai sur le don)」は、フランス出身の社会学者マルセル・モース(M. Mauss)の著書のタイトルである。1945年フランスで刊行された。「贈与」をテーマとし、贈与の意義や仕組みを分析した、原点ともいえる記念碑的著作である。「元彼の遺言状」とは
「元彼の遺言状」は、2021年に出版された新川帆立のサスペンス小説のタイトルである。第19回「このミステリーがすごい!大賞」で大賞を受賞、2022年にはテレビドラマ化された。「元彼の遺言状」は、主人公の元恋人で若くしてなくなった良家の子息が謎めいた遺言状を遺したことに端を発する、遺産相続をめぐるサスペンスである。
作中では、ポトラッチについて「返しきれない贈り物を持って相手を支配する」「贈り物は復讐」と説明する場面がある。
ポトラッチ【potlatch】
ポトラッチ
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ポトラッチ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/04/22 00:01 UTC 版)
ポトラッチ(英語:potlatch)[1][2][3] は、ハイダ族、ニューホーク族(Nuxalk)、トリンギット族、ツィムシャン族(Tsimshian)[4]、ヌートカ族[5]、クヮクヮカワク族[6]、沿岸セイリッシュ族(Coast Salish)[7]を含む、アメリカ合衆国およびカナダ・ブリティッシュコロンビア州の太平洋岸北西部海岸に沿って居住する先住民族によって行われる祭りの儀式である。儀式に先立っては、巨大な丸太を彫刻したトーテムポールが彫られ、これを部族員総出で立ち上げる行事が行われる。
- ^ Potlatch. オックスフォード英語辞典. 2007年4月26日閲覧.
- ^ Potlatch. en:Dictionary.com. 2007年4月26日閲覧.
- ^ Aldona Jonaitis. Chiefly Feasts: The Enduring Kwakiutl Potlatch. U. Washington Press 1991. ISBN 978-0295971148.
- ^ Seguin, Margaret (1986) "Understanding Tsimshian 'Potlatch.'" In: Native Peoples: The Canadian Experience, ed. by R. Bruce Morrison and C. Roderick Wilson, pp. 473-500. Toronto: McClelland and Stewart.
- ^ Atleo, Richard. Tsawalk: A Nuu-chah-nulth Worldview, UBC Press; New Ed edition (February 28, 2005). ISBN 978-0774810852
- ^ Aldona Jonaitis. Chiefly Feasts: The Enduring Kwakiutl Potlatch. U. Washington Press 1991. ISBN 978-0295971148.
- ^ Mathews, Major J.S. Conversations with Khahtsahlano 1932-1954, Out of Print, 1955. ASIN: B0007K39O2. p190, 266, 267.
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