錬金術関連
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 03:15 UTC 版)
錬金術 物語の世界において、発展した技術及び学問。物質の構成や形を変えて別の物に作り変える技術とそれに伴う理論体系を扱う学問である。科学的であるかのような用語も登場するが、作者自身がコミックス1巻で「こんな錬金術があるかい」とコメントしている通り、現実における錬金術とは一部の用語が共通する以外は全く関係がなく、むしろ魔法に近い。 基本的にまず錬金術を行使するには錬成陣と呼ばれる魔法陣のような物が必要である。これにエネルギーを流すことによって術が発動する。魔法に近く万能に見える面もあるが、いくつか制限がある。その基本は等価交換であり、無から物質を作り出したり、性質の違う物を作り出すことは不可能。そのため、必ず原材料となる物が必要であり、その物質の構成元素や特性を理解し、物質を分解、そして再構築するという3つの段階を経て完了する。ただし、構築式に誤りがあったり、対価以上の物を錬成しようとすると失敗し、時にリバウンドと呼ばれる現象が起きる。リバウンドが起きると術者に多大なダメージを及ぼす。 この仕組みは高度な理論に基づいており、学べば誰でも使えるという物ではない。さらに、仮に使えても術者の力量による面が大きく、高度な術式を使える者は多くない。盗作や乱用を防ぐために自らの研究成果を秘匿するのもその一因である(例えば、エドは一見すると旅行記に見える暗号で研究成果を記録している)。 錬金術は地殻変動のエネルギーを利用しているが、実際には「お父様」がアメストリスの地下に張り巡らせた賢者の石が術者と地殻エネルギーの間にワンクッション挟まり、錬金術を制限している。このため、「お父様」の意思で錬金術の行使を封じることが可能である。 技術研究に限界は無いが、禁忌と呼ばれる研究分野や国家錬金術師に課せられる3つの禁止行為などがある(詳しくは「国家錬金術師」の項を参照)。 錬丹術 シン国で発展し、医療方面に特化した錬金術。研究自体は古来より存在していたが迷信に近く(現実世界における錬丹術に近い)、今日の発展は数百年前にシン国にやってきた、「西の賢者」が錬金術の技術を伝えることによってもたらされた。もともと同一の基礎理論から成り立っているため、等価交換の原則や錬成陣を必要とするなど、基本的に錬金術と同じである。ただし、その錬成の際に必要なエネルギー源は、大地や生物の内にある気の流れ(大地の場合には「龍脈」とも呼ばれる)を利用しているという点が大きく異なる。これを利用すると、アメストリスの錬金術には無い遠隔錬成も可能となる。ただし、気の流れが絶たれている場所では不可能であるうえ、錬金術と同様に失った腕などは復元できない。 錬金術とはエネルギー源が異なるため、「お父様」による錬金術封じの影響を受けない。 等価交換 錬金術における最も根本的な原理。特に「無から有は作れない(何かを得るには同等の代価が必要)」という点は錬金術に関わらず思想信条として出てくる場合もあり、重要なテーマともなっている。大きく以下の2つに集約される。質量保存の法則 原材料と錬成の生成物の質量は同じでなければならない。故に無から有は作れない。 自然摂理の法則 原材料と錬成の生成物は同質の物質でなければならない。例えば、水から石を作り出すことはできない。ただし、作中では現実の化学元素も登場している一方、架空の「四大元素」や「三原質」なども理論体系として存在している。このため、例えばボタ石を金塊に錬成してしまうなども可能で、現実の科学とは全く異なることに注意が必要である。 錬成陣 錬金術および錬丹術を行うために必要なサークルで、魔法陣に近い。円形が基本であり、これは力と時間の循環を示す。これに構築式を組み入れることで初めて錬成陣として機能する。 錬成陣は絵や文字が記述されていたり、あるいは複数の陣を組み合わせたものなど多種多様で、たとえ同じ効果を持つ陣であっても違いがある。錬成陣は錬金術師たちのいわば研究成果であり、特に高度な錬金術師ほど、簡潔な錬成陣で複雑な錬成が可能。また錬成陣の用意も、使うたびに記述する者や、あらかじめ装具(手袋など)に描き込んでいる者、手や体に直接刻む者など様々である。 例外的にエルリック兄弟やイズミのように「真理」を見たことで、錬成陣を必要とせずに錬金術を発動できる場合もある(通称「手合わせ錬成」)。この場合、両手を胸の前で合わせる独特のモーションで術を発動させる。これは術師自身が構築式を兼ねており、合わせた手を円に見立てることで錬成陣を代価しているからである。なお賢者の石を使う場合には、石自体が莫大なエネルギーと構築式を内蔵しているため錬成陣が不要であり、かつ手を合わせるなどの動作も不要である。 「パーフェクトガイドブック」での作者インタビューによると、作者がかつてアシスタントを務めていた漫画家・衛藤ヒロユキの漫画作品『魔法陣グルグル』をベースにした部分が少なからず存在するという。 賢者の石 「等価交換」の原則などを無視した錬成が可能になる幻の術法増幅器。その形状は石(固体)とは限らず、「哲学者の石」「天上の石」「大エリクシル」「赤きティンクトゥラ」「第五実体」「鮮血の星」など、様々な別称が存在する(赤色なのは共通)。また本物は壊れることが無い完全な物質とされる。基本的な設定は一般的な賢者の石の設定に準じている。 その正体は複数の生きた人間を対価に錬成される、魂が凝縮された高密度のエネルギー体。石その物に莫大なエネルギーと構築式が内包されているため、代価はおろか錬成陣すら必要とせずに錬金術を行使できる。さらに「真理の扉」を開ける際にも石を代価とすることで「通行料」を払う必要が無くなる。ただし、伝承と違い、どんなに魂が詰まっていても使用すればその分だけ内包される魂(エネルギー)は減り、最後には壊れてしまう。また、製法に通じた術者であれば錬金術を使って「壊す」事も可能である。 錬成には円と五角形を組み合わせた錬成陣を用い、より大きな錬成陣を用いる際には単純に対価となる人間を円の中に入れるだけではなく、いくつかの交点で多くの人の死が必要となる。「血の紋」とは国土錬成陣におけるこの交点のことである。 マルコーは賢者の石を破壊する術を発見し、エンヴィーの石を破壊している。 人体錬成 人間(人体)またはその一部を錬成する錬金術。未だ成功例が無いと言われる錬金術であり、錬成そのものが禁忌として扱われている。国家錬金術師に課せられる制限「人を造るべからず」にも抵触するが、これは合成獣に関する「人間と生物を代償にする錬成」も含まれる。通常、単に人体錬成といえば、特に死者の復活を目的として、人体を構成する元素や物質を基に錬成を行うことを指す。 錬金術において、人間は肉体・魂・精神の3つから成るとされており、これらを錬成できれば母胎に頼らず人間を生み出せるという理屈である。しかし、実際には構築式が複雑になるために研究自体が非常に高度であり、仮に一定の成果を得て人体錬成を行っても確実にリバウンドが起こる。リバウンドが起こると「真理の扉」に飛ばされ、「通行料」として術者の身体の一部ないし全部を奪われる(詳しくは真理の扉の項を参照)。ただし、肉体・魂・精神のうち、どれか1つだけなら錬成に成功した例がある。 存在しない物を錬成することは原理上不可能であり、そのため、すでに存在しない死者や身体の一部を錬成することは初めから不可能である。したがって、人体錬成はどのような構築式を持ってしても錬金術の範囲をオーバーし、必ずリバウンドが発生する。逆に既存の物体を錬成することは可能であり、作中ではエドワードが自らを代価として、一度分解・再構築して人体錬成を成功させている(この場合も「真理の扉」には飛ばされ、「通行料」も必要である)。人造人間に関しては、「お父様」が錬成に成功している(詳しくはホムンクルスの項を参照)。 エルリック兄弟の目的であるが、錬成が不可能であると知った後は身体を錬成するのではなく、「真理の扉」に残された身体を引っ張り出す方向に研究を変える。 ホムンクルス 錬金術によって生み出された人造人間。作中では「人造人間」に「ホムンクルス」とルビが振られている。現実の錬金術におけるホムンクルスの設定も登場するが、作中に登場する七つの大罪を冠した名を持つホムンクルスたちはこの作品オリジナルの設定であり、ここではそれについて説明する。 傲慢(プライド)、色欲(ラスト)、暴食(グラトニー)、嫉妬(エンヴィー)、強欲(グリード)、怠惰(スロウス)、憤怒(ラース)の7名からなり、これらは「お父様」から生み出される賢者の石を核とする存在である。身体のどこかにウロボロスの印があるのが特徴。「お父様」の計画のため、アメストリス国内を暗躍し、エドワードたちと戦うこととなる。 生まれてからすでに完成した人格や豊富な知識を備えているうえ、それぞれの名(業)に関係する性格、行動原理を持つ。個々によって程度の差はあるが、人間を愚かな存在と軽蔑し、ホムンクルスを人間よりも優れた存在と見なす。「お父様」に対して、愛情を持ち忠誠心も高いが、グリードのように与えられた業に忠実であるがために離反する場合もある。 身体的特徴として「賢者の石」に内包された魂の数だけ命があり、大小問わず外傷を受けても瞬時に復元され、致命傷を受け死亡したとしても魂のストックの分だけ再生する。これとは別に、エンヴィーやプライドは「賢者の石」を直に破壊された場合、別の姿になった。命を限界まで使い果たした場合でも、可能なら魂のストックを補充することで元の姿に戻ることができる。しかし、賢者の石を使い果たして完全に殺されてしまうと復活することはできない。また、先述のように身体のどこかにウロボロスの印を持っており、(人間ベースではない場合に)電子回路基板のプリントパターンのような模様が伸びている。黒を基調とした服装も肉体の一部であり、身体と同じく傷つくと再生する。 ホムンクルスの成り立ちは2タイプあり、基本的には「お父様」が自らの体内で造り出す。もう1つは「賢者の石」を生身の人間に注入する方法で、作中では「人間ベースのホムンクルス」と呼ばれる。人間ベースの場合、固有能力は問題なく備えているが、石を注入される際に起こる拒絶反応に耐えられなければ死んでしまう。また、体にウロボロスの印はあるが、電子回路基板の様な模様は無い。作中ではラースを注入されたブラッドレイと、グリードを注入されたリンの2人がいるが、ブラッドレイの場合は魂が1つになるまで拒絶反応に耐えた結果、リンの場合はグリードとの共存した結果であって、同じ人間ベースでもまた性質が異なる(詳しくは鋼の錬金術師の主要な登場人物#キング・ブラッドレイや#グリードの項を参照のこと)。 シン国の者たちは気の流れを読むことができるため、その身にいくつもの魂を内包しているホムンクルスを判別することができる。また、動物もホムンクルスたちが他の人間と違うことを感じ取れるようである。 生体錬成 生体を対象とする錬金術、あるいはその分野。人体錬成や合成獣の作成が含まれるが、医療目的の部分的な錬成(つまり治療)については「人を造るべからず」には抵触せず、「医療錬金術」として区別される。真理の扉も開くことは無い。錬金術の中でも特に高度な分野とされる。優れた術師であれば四肢の移植さえも可能となる。 合成獣(キメラ) 生体錬成によって2種類以上の生物が合成された生物。錬金術の分野では合成獣理論などと呼ばれることがある。動物と動物を合成する場合には問題無いが、人間と動物を合成する場合には「人を造るべからず」に違反する。 アメストリス国軍下では密かに人間と動物の合成獣が研究されており、一定の成果を得ている。特に普段は人の形を取り、戦闘の際などに獣の特徴を強く出した姿へ変身するタイプがおり、中央軍内において極秘裏に部隊が構成されている。
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