虎眼流関係者
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藤木源之助(ふじき げんのすけ) 声 - 浪川大輔 本編の主人公。道場では牛股師範に次ぐ腕前を誇る、虎眼流の師範代。実直な青年で、年のころは原作によれば御前試合時点で27 - 28歳。勘も鋭く、わずかな閃きから「流れ星」の骨子となる技法を編み出した。素手の実力も相当なもの。才を持つ伊良子を討つため凄まじいまでの努力を重ね、遂には自らも怪物と化す執念の剣鬼。幼少時から非常に寡黙であり、両親からは障害があるものと軽んじられていたが、強い意志と矜持、そして並外れた膂力を持ち、年相応の情熱も秘めた若者である。 剣の道を追求する姿勢はストイックで、「痛くなければ覚えない」と他の門弟にも容赦は無く、それは相手の身分や年齢を考慮することもない苛烈なものである。過去に道場破りに来た伊良子に敗北したことに固執しており、再戦すればただでは済まないと牛股から禁じられていた。 元は百姓の子だったが、没落武士の子を殺め、両親に殺されかけた際に虎眼に拾われ、士の身分になった。そのため虎眼へ忠義は異常なものがある。心から三重を慕い、武士として「三重様=お家を守る」という忠義もあるが、ときに両立せず苦悩する。己を殺して士を貫く行動をとるとき、彼は鼻血を流す。さらに三重からは傀儡とみられる。 虎眼流を相続した後、伊良子との果たし合い(仇討)に一度は敗北し左腕も剣名も失うが、鍛錬の果て、元から並々ならぬもののあった腕力をさらに磨き上げた結果、改め役に「腕一本分の働きは十分にする」とまで言わしめるほどの筋力を携えて駿河城御前試合の場で伊良子と再戦。憎しみを超えた感情を抱きながらも、ある奇策を用いて、宿命に決着を付ける。しかしその果てに得た物はあまりにも無惨な結末だった。 作者の山口は自身と藤木が同調していた旨を語っており、自身の心境と藤木の活動が互いに影響しあったという。 技:虎眼流の技全て。虎にたとえられ、龍として描写される。最終的な武器は、虎殺七丁念仏と小刀の二本差。 伊良子清玄(いらこ せいげん) 声 - 佐々木望 藤木の対となるもう1人の主人公。原作によれば御前試合時点で30歳余り。周囲の人間を利用し、高い身分に昇り詰めようとする野心家。天賦の才で虎眼流の秘技を軽々と身につけ、藤木と並び跡目候補の1人と目されていたが、虎眼の愛妾いくとの密通が露見し、仕置きを受けて盲目となり、追放された。その後は検校のもとに身を寄せ、虎眼流への復讐を行う。独自の剣術「無明逆流れ」を編み出し、虎眼流の高弟達を血祭りに上げていく。 母が夜鷹(下級の売春婦)という下層の生まれのため、己の出自に対するコンプレックスが強く、異常な出世欲の元となっている。「伊良子清玄」は元々の名前ではなく、かつて江戸で弟子入りしていた医師の名前を盗んだものである。なお虎眼流内では、江戸出身で染物屋の勘当息子という嘘の来歴を語っていた模様。 過去に虎眼流の高弟達が自身の知る身分だけの侍とは違うと気づき、仲間意識を抱いたが、藤木のある一言を誤解して深い恨みを抱く。その一方で藤木の実力は誰よりも高く評価しており、主君である忠長が飼育していた狒々を「猿回しの猿」と評し、比較対象であった藤木を「虎の中の虎」とさえ述べるなど、歪んだ友情を抱いている。 士官のち仇討にて藤木に勝利、剣名を上げ出世街道を進むが、駿河城御前試合にて藤木と再戦。いくの見えない援護を受けながら無明逆流れで藤木に挑むが、藤木の奇策で初太刀をかわされ敗れる。 技:無明逆流れ、流れ星(両目を斬られた代償に盗んだもの)、骨子術、その他虎眼流の技全て。瞳亡き龍として描写される。最終的な武器は、天下人の剣「一(いちのじ)」。 岩本虎眼(いわもと こがん) 声 - 加藤精三(老境時) / 矢尾一樹(壮年時) 岩本家当主であり虎眼流の開祖。「濃尾無双」と謳われた剣の達人。「流れ」や「流れ星」などの技を独自に編み出し、右手の指が1本多いという多指症を駆使した精妙な剣さばきを得意とする。晩年には精神に失調を来し、一日の大半を「曖昧」な状態で過ごし、わずかな時間のみ正気に返る、という精神状態となっていた。 娘に三重がいるが、妻は過去に縊り死にし、愛妾・いくを囲っている。 極めて苛烈な性格で、全体的に暴虐な面が目立ち、過去に受けた屈辱は忘れないなど異様に執念深い。ただし、過去に藤木が岩本家に引き取られた際には、優しげな笑みを浮かべ、絶命する寸前には三重の姿を見て、美しくなったと涙を流す等、人間らしい情愛を見せることもある。 建前有で復讐に訪れた伊良子と対戦し、正気でも曖昧でもない「魔神」と化して剛剣を振うが、無明逆流れの前に敗死する。伊良子にとっても大苦戦であり、顔面を両断されても胸を刺されてもなお絶命せず、最期の瞬間まで伊良子を畏怖せしめた。 山口は原作者の南條範夫をモデルにしていると巻末の解説に載せている。 技:虎眼流の技全て、秘剣流れ星。虎として描写される。 牛股権左衛門(うしまた ごんざえもん) 声 - 屋良有作 道場では虎眼に次ぐ事実上のナンバー2である、虎眼流の師範。身分は郷士。にこやかな風貌を持つ巨漢だが、後に虎眼の刀によって口を裂かれたため、怪異な容貌となった。巨大な木剣「かじき」を通常の太刀の様に軽々と振い、青竹を素手で握り潰すほどの怪力を持つ。 前髪だったころ、並外れた怪力のため周囲から敬遠されていたところへ、虎眼流を紹介され入門を決める。故郷の村に許婚の少女ふくを残しており、3年後に桜の木の下で立派な武士になって再会するという約束を交わしていた。しかし、ふくとの秘めた絆を虎眼に看破され、稽古の上で冷遇されるなどしたため、虎眼流に身をささげるため、素手での去勢を決行した。 藤木と伊良子の仇討ち勝負に助太刀として参戦、伊良子側の助太刀である多数の馬廻を全滅させるが、無明逆流れにて顔面を斬られ敗北。そのまま死亡したと思われたが、頭部を破壊された状態でもなお全身に伊良子への怨念を宿し続け、再起して検校邸を襲う執念を見せた。 去勢を実行する前、「赤縄」の景では牛股がふくを刀で斬殺しているシーンがあるが、逆に「契り桜」の景では、大人になったふくが切り倒された桜の切り株を見つめているシーンがある。決別のためにふくを殺害したとも、斬ったのはふくとの契りの象徴である桜の樹で、ふくの斬殺は許婚との別離を決意した牛股の心象風景とも取れるが、実際にどちらであるのかははっきりしなかった。山口によれば真相は後者であるが、受け手がどちらに解釈しても構わないとのこと。また馬廻を全滅させるシーンでは、木剣で人体を両断するシーンが描かれているが、荒唐無稽すぎてありえず、目撃者が混乱しているだけの集団幻覚の類と注記されており、清玄はまやかしと喝破し、事が治まった後で犠牲者の遺体を調べても目撃証言ほど壊されていなかった。 技:虎眼流の技全て、流れ星(星流れ)。体格と握力に優れ、かじき二刀を流れ星の掴みのまま振るう。牛や牛鬼にたとえられる。 岩本三重(いわもと みえ) 声 - 桑島法子 虎眼の一人娘。虎眼からは道場の跡取りを産むための存在としかみなされていない。純情だが虎眼の娘らしく激しさと気高さを内に秘めている。 男を目上の者の命令に逆らえない「傀儡」であると考えており侮蔑の目で見ているが、美男子である伊良子に懸想している。虎眼流の跡取りが伊良子に決まった日、高弟達の目前で男女の契りを結ばせようとする父・虎眼の命令に、唯々諾々と従う男たちとは異なり唯一伊良子のみが背いて(巧妙な伊良子の打算の上で行われた物であるが)三重の誇りを守ったため、伊良子への想いがより強固なものとなった。 伊良子追放後はショックのあまり拒食症となった時期もあり、藤木が跡目を継いで事実上の夫となった後もわだかまりを抱え続けた。 虎眼死亡後は愛憎入り混じった伊良子への復讐の念に取りつかれるが、最終的に藤木の想いを受け入れ、駿河城御前試合にて藤木と伊良子の決着を看取る。決着によって心に巣食う妄念は晴れたものの、忠長の命により不本意な伊良子斬首を実行した藤木を目撃し、彼が以前と変わらぬ「傀儡」だったことに絶望、自害した。 いく 声 - 篠原恵美 虎眼の囲われ者。彼女に関わった者は皆、不幸な目に遭うため、それを童歌として囃し立てられた。伊良子と密通したため、共に追放される。追放後は伊良子と共に賎機検校に仕え、名目上検校の愛妾となる。右胸の乳首は、伊良子がいくに手を出したことを見抜いた虎眼によって引きちぎられ、左胸は伊良子の仕置きの時に伊良子の股間を焼き鏝で焼くよう強要された際、伊良子をかばうために自ら焼いている。そして伊良子の復讐の際には背中には眼の無い龍が老虎を屠る様が入墨され、それを見て激昂した虎眼に背中の皮を削がれている。 文字通り伊良子の目となって彼を支え御前試合を見守るが、伊良子が斬られたことを目撃した後、藤木が投げつけた「七丁念仏」で自分の喉笛を斬り自死を選んだ。 近藤涼之介(こんどう すずのすけ) 声 - 堀江美都子 虎眼流の高弟。まだ前髪の美少年剣士。目録伝授は祖父が虎眼と懇意の間柄だったことによる「義理許し」であるが、侍としての心構えは備わっており、虎眼流を嘲弄した浪人を切り捨てたこともある。藤木を慕っており、剣士としていつかその域に達したいと思っていた矢先、伊良子の復讐劇最初の犠牲者となる。 その後は亡霊と思わしき形で度々現れるが、これがどういった表現・意図なのかは定かではない。 宗像進八郎(むなかた しんぱちろう) 声 - 大林隆介 元は掛川宿の侠客という経歴をもつ高弟。純粋な技量を元に中目録を授けられた「術許し」の実力者である。戦国時代の武者の様に体中に無数の疵跡がある歴戦の剣士。涼之助死亡後、一応の下手人として仕立てられた一刀流の檜垣陣五郎を討ち取った帰り道、霧の中で出会った伊良子によって殺された。 山崎九郎右衛門(やまざき くろうえもん) 声 - 島田敏 虎眼流の高弟。足軽出身。猫科動物の様なぎょろ眼をしている。涼之介にひそかに思いを寄せる。夜中に時折、涼之助のことを妄想しつつ、己の陰茎を口で慰めるという奇癖を持つ(この行動は他の高弟も知っているが、黙認されている)。ほか、町の食事処で虎眼流の悪口(正確には噂話)を漏らした浪人2名を素手で撲殺し、眼球を取り出して食べるなど、奇行にこと欠かない。 夜間外出した折に伊良子と遭遇、涼之助を殺された恨みを込めて「流れ」で応戦するが敗死。 丸子彦兵衛(まりこ ひこべえ) 声 - 稲葉実 虎眼流の高弟。足軽出身。牛股に次ぐ怪力を誇る巨漢で、その力は素手で畳を突き破るほど。伊良子と湯屋で対決した際には、正中線を両断されながらも絶命間際に貫手を放ち、壁板を叩き割る執念を見せた。 興津三十郎(おきつ さんじゅうろう) 声 - 小山力也 虎眼流の高弟。身分は郷士。剣術だけでなく学問にも秀でており、藤木に読み書きを教えた。細身ながら指2本で天井にぶら下がるなど、凄まじい力を持つ。虎眼流には数少ない現実主義者でもあり、三重の心の崩壊などの出来事から虎眼流の行く末に絶望し、検校側に高弟の情報を売って伊良子の復讐劇に手を貸していた。裏切りに気付いた藤木を斬ろうとするが返り討ちに遭い、藤木と己の才の違いを改めてかみ締めながらとどめを刺される。 根尾谷六郎兵衛(ねおや ろくろべえ) 声 - 宝亀克寿 「濃尾三天狗」の異名を持つ虎眼流免許皆伝の3人の一。髭面が特徴的。普段は濃尾道場の師範であるが、伊良子から虎眼を守るべく呼び出された。しかし伊良子が訪ねてきた夜、魔神と化し敵味方の区別のなくなった虎眼に胴を真っ二つにされ死亡。三天狗らは登場している中では最古参の門人達で、牛股よりも更に経歴は長い。 伊吹半心軒(いぶき はんしんけん) 声 - 福田信昭 濃尾三天狗の二。経歴などは同上。3人の中ではやや小柄な体格。伊良子来訪の夜、六郎兵衛と同様の最期を遂げた。アニメ版では藤木の腕前を木剣で試すなど若干の活躍がある。 金岡雲竜斎(かなおか うんりゅうさい) 声 - 大友龍三郎 濃尾三天狗の三。3人中唯一の総髪。伊良子来訪の夜、買収されて生き残り、その資金をもとに江戸に道場を開く。後に伊良子に銘刀「一(いちのじ)」を届けた。 南條範夫の小説『秘剣流れ星』では主人公の師として登場している。 茂助(もすけ) 声 - 塚田正昭 岩本家に仕える老中間。寡黙であるが、道端で蛇平四郎に呼び止められても動じない程の胆力がある。腕前は不明ながら、伊良子への仇討では、助太刀として牛股らと共に参戦。牛股が敗れると果敢に抜刀して伊良子に挑戦し、討死した。 大坪(おおつぼ) 声 - 徳本恭敏 虎眼流の門人の1人。腕前は「目録」。伊良子入門以前からの門下生。伊良子への仇討に助太刀として参戦し、茂助同様の最期を遂げた。
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