受験資格・免許登録資格
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2008年11月28日改正の建築士法以前は、所定の学校や職業訓練施設の課程を修めて卒業後、所定の実務経験を積むことで建築士試験の受験資格が得られる方式であった。 2008年度(平成20年度)以前の入学者に適用される(旧)学歴要件について、一級建築士の場合、条件区分と建築に関する最終卒業学校の学科・課程と学歴資格、建築実務の経験年数は、(一)に大学(旧制大学含む)の場合、建築または土木系学科卒業後建築実務の経験年数2年以上、(二)に3年制短期大学(夜間部を除く)の場合、建築または土木系学科卒業後建築実務の経験年数3年以上、(三)に2年制短期大学の場合、建築または土木系学科卒業後建築実務の経験年数4年以上で、高等専門学校(旧制専門学校を含む)の場合、建築または土木系学科建築実務の経験年数卒業後4年以上、(四)に二級建築士の場合、二級建築士として建築実務の経験年数4年以上である。 この他に、(五)その他国土交通大臣が特に認める者(平成20年国土交通省告知第745号ほか)では、建築設備士が整備士として建築実務の経験年数4年以上、そのほかは所定の年数以上としている。現在の設備一級建築士は建築設備技術者専門の資格として設置されたが、受験資格に、昭和25年の建築士法制定時、建築士の受験資格を電気工学科、機械工学科出身者に与えないこととした経緯が残る。その理由について建築士資格提案者の田中角栄衆議院議員(当時)は「議論の余地があるが、建設工学的な面で、電気、機械、衛生等の学科まで、土木、建築と同日に論ずることに疑問がある」と回答している。 二級建築士の場合、条件区分と建築に関する最終卒業学校の学科・課程と学歴・資格、建築実務の経験年数は、(一)に大学(旧制大学含む)または高等専門学校(旧制専門学校を含む)卒業者では、建築系学科卒業後は即受験可能であるが、土木系学科は卒業後の建築実務の経験年数1年以上、(二)に高等学校(旧制中等学校を含む)建築または土木系学科卒業後の建築実務の経験年数3年以上である。 2018年12月14日改正・2020年3月1日施行の建築士法により、実務経験は原則建築士免許の登録要件とされ、建築士試験の受験には原則実務経験を要さないこととなった。 指定科目の分類(2008年改正以前、二級建築士の場合) 建築に関する学歴等建築実務の経験年数大学(旧制大学を含む) 経営工学(建築専攻)、建築設備工学、構造工学、住居学、環境工学、環境設計学、建設工学等 0年 経営工学(土木専攻)、都市工学、衛生工学、交通土木工学、建築基礎工学農業工学、農林工学、農業土木、農林土木、社会工学等 卒業後 1年以上 大学(旧制大学、短期大学を含む)又は高等専門学校(旧制専門学校を含む) 建築 0年 土木 卒業後 1年以上 工芸、家内工芸、木材工芸、工芸図案、工芸デザイン、デザイン、工業デザイン、産業デザイン、工業経営(建設、機械)、機械、造船、航空、農業工学、農林工学、農業土木、農林土木等 卒業後 2年以上 高等学校(旧制中等学校を含む) 建築 卒業後 3年以上 土木 卒業後 3年以上 設備工学 卒業後 3年以上 工芸、家内工芸、木材工芸、工芸図案、工芸デザイン、デザイン、工業デザイン、産業デザイン、工業経営(建設、機械)、機械、造船、航空、農業工学、農林工学、農業土木、農林土木等 卒業後 4年以上 職業訓練校(高卒後) 建築、建築製図、ブロック建築、プレハブ建築、建設等 修業3年 修了後 1年以上 修業2年 修了後 2年以上 修業1年 修了後 3年以上 職業訓練校(中卒後) 建築、建築製図、ブロック建築、プレハブ建築、建設等 修業3年 修了後 3年以上 修業2年 修了後 4年以上 修業1年 修了後 5年以上 専修学校(高卒が入学資格) 又は 各種学校 (高卒が入学資格) 建築 区分I(注) 修業2年 0年 区分II(注) 修業2年 卒業後 1年以上 修業1年 卒業後 2年以上 区分III(注) 修業2年 卒業後 2年以上 修業1年 卒業後 3年以上 土木、工芸、家内工芸、木材工芸、工芸図案、工芸デザイン、デザイン、工業デザイン、産業デザイン、工業経営(建設、機械)、機械、造船、航空、農業工学、農林工学、農業土木、農林土木等 修業2年 卒業後 2年以上 修業1年 卒業後 3年以上 専修学校(中卒が入学資格) 又は 各種学校 (中卒が入学資格) 建築 修業2年 卒業後 4年以上 修業1年 卒業後 5年以上 土木 修業2年 卒業後 5年以上 修業1年 卒業後 6年以上 職業訓練大学校 建築(長期指導員訓練課程)、職業訓練短期大学校 建築、中央鉄道学園 建築(大学課程)、国立工業教員養成所 建築、官立実業学校教員養成所 建築 0年 防衛大学校 土木、国立工業教員養成所 土木、官立実業学校教員養成所 土木 卒業後 1年以上 (注)区分I、II、IIIはそれぞれの課程により、異なる。 この他に、(三)にその他国土交通大臣が特に認める者(「知事が定める建築士法第15条三号に該当する者の基準」に適合する者は所定の年数以上で学校教育法による学校卒業者ごとに細かく建築実務の必要経験年数の設定がなされている。 建築士法の改正に伴い、2009年度入学の学生からは、同じ学校の同じ学科や職業訓練施設の課程を卒業したとしても、指定科目の履修状況と単位の取得状況によりそれぞれ必要な建築実務の経験年数が異なることとなった。 具体的には、四年制大学、防衛大学校、職業能力開発総合大学校長期課程又は職業能力開発総合大学校東京校応用課程の卒業者、高等専門学校(本科と専攻科)、職業能力開発大学校(応用課程の卒業者)、専修学校(修業年限が4年であるもの)で単位数により卒業後2年以上から4年以上、短期大学(修業年限が3年であるもの)で単位数により卒業後3年以上から4年以上、短期大学、高等専門学校(本科)、職業能力開発総合大学校(専門課程のみの卒業者)、職業能力開発大学校(専門課程のみの卒業者)、職業能力開発短期大学校で卒業後4年以上の実務経験が必要と定められた。 指定科目の分類別必要単位数 分類4年制教育課程3年制教育課程2年制教育課程(1)建築設計製図 7単位以上 7単位以上 7単位以上 (2)建築計画 7単位以上 7単位以上 7単位以上 (3)建築環境工学 2単位以上 2単位以上 2単位以上 (4)建築設備 2単位以上 2単位以上 2単位以上 (5)構造力学 4単位以上 4単位以上 4単位以上 (6)建築一般構造 3単位以上 3単位以上 3単位以上 (7)建築材料 2単位以上 2単位以上 2単位以上 (8)建築生産 2単位以上 2単位以上 2単位以上 (9)建築法規 1単位以上 1単位以上 1単位以上 (1)から(9)の計(a) 30単位以上 30単位以上 30単位以上 (10)その他(b) 適宜 適宜 適宜 (a)+(b) 60単位以上 50単位以上 40単位以上 50単位以上 40単位以上 40単位以上 建築実務の経験年数 卒業後2年以上 卒業後3年以上 卒業後4年以上 卒業後3年以上 卒業後4年以上 卒業後4年以上 なお、二級建築士及び木造建築士については前述の学校等で指定単位を取得して卒業すればより少ない実務経験年数で免許登録でき、高等学校、中等教育学校で指定単位を取得して卒業することでも必要実務経験年数の短縮が可能である。また、これまでは認定された大学・学科側で建築士法に掲げられた内容の科目を設置して講義を開講し、都道府県の担当者が受験資格要件を満たす学科であるかどうか審査し認証していたが、今後は、審査については建築技術教育普及センターの建築士試験指定科目確認審査委員会により、科目審査に当たる。これとともに、大学側については、学生の単位取得状況をひとりひとり確認し、建築士試験の指定科目修得単位証明書を発行するというシステムに変更された。 さらに、建築士免許登録における実務経験としてこれまで認められていた大学院課程については、今回の改正によって、在学期間中に一定の実務実習(インターン)を積むことを条件とすることとなった。これを受けて、建築実務の各方面において大学院生に実務実習の機会を与える必要が生じている。 職業訓練については「建築関係の認定職業訓練施設一覧」を参照 建築の専門教育を受けていない者の場合、二級建築士又は木造建築士の受験資格を得るには7年以上の実務経験が必要である。更に一級建築士として免許登録するには、一級建築士試験に合格したうえで、二級建築士になった後4年以上の実務経験が必要である。このため、一級建築士として免許登録するには合計11年もの実務経験が必要ということになる。 実際には、二級建築士試験の受験申込から合格し免許が与えられるまでの期間もあるため、二級建築士試験に一度の受験で合格したとしても、最短で12年の期間がなければ実務経験のみで一級建築士免許を取得することはできない。それを避けるため、一級建築士になろうとする者の多くは、大学、専門学校などで専門的な建築学の教育を受け、その程度に応じた実務経験期間の短縮を利用している。しかし最大限に短縮されたとしても、必要な教育及び実務経験の合計が6年を下回ることはない。 実務要件についても、下記の通り定められている。 平成20年11月28日以降の実務経験要件「建築実務の経験」として認められるもの ◎設計・工事監理に必要な知識・能力を得られる実務(1)建築物の設計(建築士法第21条に規定する設計をいう。)に関する実務(2)建築物の工事監理に関する実務(3)建築工事の指導監督に関する実務(4)次に掲げる工事の施工の技術上の管理に関する実務 イ 建築一式工事(建設業法別表第一に掲げる建築一式工事をいう。) ロ 大工工事(建設業法別表第一に掲げる大工工事をいう。) ハ 建築設備(建築基準法第2条第三号に規定する建築設備をいう。)の設置工事(5)建築基準法第18条の3第1項に規定する確認審査等に関する実務(6)消防長又は消防署長が建築基準法第93条第1項の規定によって同意を求められた場合に行う審査に関する実務(7)建築物の耐震診断(建築物の耐震改修の促進に関する法律第2条第1項に規定する耐震診断をいう。)に関する実務(8)大学院の課程(建築に関するものに限る。)において、建築物の設計又は工事監理に係る実践的な能力を培うことを目的として建築士事務所等で行う実務実習(インターンシップ)及びインターンシップに関連して必要となる科目の単位を所定の単位数(30単位以上又は15単位以上)修得した場合に実務の経験とみなされる2年又は1年の実務※1 建築士等の補助として当該実務に携わるものを含む。※2「建築実務の経験」には、単なる写図工若しくは労務者としての経験又は単なる庶務、会計その他これらに類する事務に関する経験は含まない。 一部が「建築実務の経験」として認められるもの 一部の期間「建築実務の経験」と認められない業務を含んでいる場合(認められない業務の期間を除いた期間とする。) 「建築実務の経験」として認められないもの 「建築実務の経験」として認められるもの以外の業務(1)単なる建築労務者としての実務(土工、設計事務所で写図のみに従事していた場合等)(2)昼間の学校在学期間(中退者の在学期間を含む。) このため、新制度から土木工学系の学科では軒並み資格指定をされない学科となったり、埼玉大学のように建築教育担当をおいてカリキュラムを整備したなど、対応はさまざまである。 土木工学課程出身で建築家の例は戦前までの山口半六、阿部美樹志の例や、高校が建築科で大学の専攻が土木の出江寛などや近年でも西村浩、贄田健一、猪狩典子、貴志泰正、伊達宏晶らの例がある。もともと地方では家業が建築関係(工務店)であるが、近傍の大学には建築学科がなく、土木工学科に進学し建築士を目指す者も幾人かいたが 2008年度以降の改正により、各大学で対応が迫られた。 公立大学法人大阪市立大学工学部の都市基盤工学科で土木工学科から改組した2005年から2008年度までに入学した学生が、卒業後の所定の実務経験(2年)だけでは一級建築士の受験資格を取得できない者が出てきていることが判明し、本来得られる1級建築士の受験資格がカリキュラムの不備で申請できないという事態が起こる。当時の履修要覧等において、法改正前の卒業後に所定の実務経験(2年)があれば一級建築士の受験資格が得られる学科、と記載していた。ところが、都市基盤工学科のカリキュラムが「一級建築士の受験資格に係る教育課程認定の運用基準」(2003年(平成15年)4月改訂)の要件である、住宅や建築物等の設計製図に対応していなかった。当該時期の卒業生の1級建築士の受験資格は、前回の士法の規定(一級建築士試験の受験資格)第14条「一級建築士試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、これを受けることができない――学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)による大学(短期大学を除く。)又は旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学において、国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修めて卒業した者であつて、その卒業後建築に関する実務として国土交通省令で定めるもの(以下「建築実務」という。)の経験を二年以上有する者」が適応の予定であった。現在同学科は都市学科と改名し、同学部の建築学科の指定科目履修で建築学科と同様の実務経験最短年数(一級:2年 二級・木造:0年)で取得が可能である。 2019年現在で土木系学科で所定実務経験を経て建築士受験資格取得できるカリキュラムがある大学・高専は以下の通り。 body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper{margin-top:0.3em}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ul,body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ol{margin-top:0}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper--small-font{font-size:90%}八戸工業大学工学部土木建築工学科 茨城大学 工学部 都市システム工学科 埼玉大学 工学部 環境社会デザイン学科 東京大学 工学部 社会基盤学科 東京都市大学 工学部 都市工学科 東京都市大学 都市生活学部 都市生活学科 日本大学 生産工学部 土木工学科 日本大学 理工学部 まちづくり工学科 富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 大阪工業大学工学部 都市デザイン工学科(建築士プログラム) 大阪産業大学学部 環境デザイン学科(シビックデザインコース) 大阪産業大学 工学部 都市創造工学科 総合コース 構造コース 大阪市立大学 工学部 都市学科 鳥取大学 工学部 社会システム土木系学科 土木工学プログラム 徳島大学 理工学部 理工学科 社会基盤デザインコース 香川大学 創造工学部 創造工学科 建築・都市環境コース 九州工業大学 工学部 建設社会工学科 福井工業高等専門学校 環境都市工学科 徳山工業高等専門学校 土木建築工学科(土木系) (平成29年4月以降の入学者は、二級・木造のみ) 徳山工業高等専門学校 本科+専攻科 (土木建築工学科(土木系)+環境建設工学専攻) 高知工業高等専門学校 ソーシャルデザイン工学科 まちづくり・防災コース 舞鶴工業高等専門学校 本科+専攻科 総合システム工学専攻 建設工学コース
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