オリシャ
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オリシャ(ヨルバ語: Òrìṣà; ブラジルポルトガル語: orixá, singular: orisha)[1]は、 ヨルバ人の伝統的宗教の体系における神の顕現を反映する精霊または神的なもの、または、精霊信仰的な信仰概念である。
オリシャは西アフリカのベナンやカリブ海の島国ハイチやキューバやアメリカ合衆国南部のニューオーリンズなどで信仰されている。
阿部年晴によれば、そのオリシャの数は知られているだけで「400柱」と言われるが、おそらく倍の800柱はいると予想される[2]。
いわゆるロアと呼ばれる精霊を信仰するフォン人の体系を基礎として作られたブードゥー教の信徒と、オリシャを基礎とした諸宗教の信徒は互いの宗教と距離を取っているが、ヨルバの体系における鍛冶と戦争を司るオリシャオグンが、ハイチでよく信仰されるほか、ロアである「レグバ」はオリシャである「エシュあるいはエレグア」と同一視される。
ヨルバ人の信仰体系によってできたキューバのサンテリア、ブラジルのカンドンブレでは、オリシャがカトリックの守護聖人と習合する具体的な点までほぼ同じであるが、サンテリアが「スペイン語訛り」のためオリチャとなり、カンドンブレではポルトガル語に近いため、呼称が異なる。また、檀原照和によればヨルバのOYAと呼ばれるオリシャは、カンドンブレでは、「イアンサン」[3]と呼ばれるが、サンテリアでは「オジャ」と呼ばれ、カミーノと呼ばれる派生したものの名として「Yansa(ジャンサ)」がある[4]。
主なオリシャ
主なオリシャを以下に列挙する。
- オバタラ(Obatala)(英語版)、
脚注
- ^ “orisha | deity | Britannica” (英語). www.britannica.com. 2022年4月22日閲覧。
- ^ 阿部 2018, p. 242.
- ^ 檀原 2006, p. 244.
- ^ 檀原 2006, p. 208.
- ^ R., Prothero, Stephen (2010). God is not one : the eight rival religions that run the world (First HarperCollins paperback ed.). [New York, New York]. ISBN 9780061571282. OCLC 726921148
- ^ Akintoye, Adebenji (2010). “Chapter 2: The Development of Early Yoruba Society” (English). A History of the Yoruba People. Senegal: Amalion Publishing. ISBN 978-2-35926-005-2
- ^ Fatunmbi, Awo Baba Falokun (June 1993). Esu-Elegba: Ifa and the Divine Messenger. Original Pubns (January 1, 1993). ISBN 978-0942272277
- ^ 阿部 2018, p. 249.
- ^ 阿部 2018, p. 244.
- ^ 阿部 2018, p. 255.
- ^ 阿部 2018, p. 256.
参考文献
- E. Bolayi Idowu, Olodumare: God in Yoruba Belief. ISBN 9781881316961
- J. Omosade Awolalu, Yoruba Beliefs & Sacrificial Rites. ISBN 0-9638787-3-5
- William Bascom, Sixteen Cowries.
- Lydia Cabrera, El Monte: Igbo-Nfinda, Ewe Orisha/Vititi Nfinda. ISBN 0-89729-009-7
- Raul Canizares, Cuban Santeria.
- Chief Priest Ifayemi Elebuibon, Apetebii: The Wife of Orunmila. ISBN 0-9638787-1-9
- Fakayode Fayemi Fatunde (2004) Osun, The Manly Woman. New York: Athelia Henrietta Press.
- James T. Houk, Spirits, Blood, and Drums: The Orisha Religion of Trinidad. 1995. Temple University Press.
- Jo Anna Hunter, "Oro Pataki Aganju: A Cross Cultural Approach Towards the Understanding of the Fundamentos of the Orisa Aganju in Nigeria and Cuba". In Orisa Yoruba God and Spiritual Identity in Africa and the Diaspora, edited by Toyin Falola, Ann Genova. New Jersey: Africa World Press, Inc. 2006.
- Baba Ifa Karade, The Handbook of Yoruba Religious Concepts, Weiser Books, York Beach, New York, 1994. ISBN 0-87728-789-9
- Gary Edwards (Author), John Mason (Author), Black Gods – Orisa Studies in the New World, 1998. ISBN 1-881244-08-3
- John Mason, Olokun: Owner of Rivers and Seas. ISBN 1-881244-05-9
- John Mason, Orin Orisa: Songs for selected Heads. ISBN 1-881244-06-7
- David M. O'Brien, Animal Sacrifice and Religious Freedom: Church of the Lukumi Babalu Aye v. City of Hialeah.
- S. Solagbade Popoola, Ikunle Abiyamo: It is on Bent Knees that I gave Birth. 2007. Asefin Media Publication
- Robert Farris Thompson, Flash of the Spirit.
- Robert D Pelton, The Trickster in West Africa chapters on Eshu and Legba. 1989. University of California Press
- J Lorand Matory, Black Atlantic Religion. 2009. Princeton University Press
- Na África existem mais de 200 orixás, mas no Brasil eles foram reduzidos a 16 dos quais, 12 são os mais cultuados.
- 阿部年晴『アフリカ神話との対話』三恵社、2018年。 ISBN 4864878277。
- 檀原照和『ヴードゥー大全』夏目書房、2006年。 ISBN 4860620070。
関連項目
オリシャ
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サンテリア或いはカンドンブレで崇拝される神は、ヨルバ人の呼称を使ってオリシャと呼ばれる。ローズマリ・エレン・グィリーによれば、同じような体系を持つカンドンブレの神々はサンテリアでも共通して信仰されるが名前前者の呼称がポルトガル語でXango、Iemanja、Ogun olorunと書かれるのに対し、サンテリアではスペイン語で、Chango yemaya、oggun olorumと書かれる。檀原によればサンテリアではヨルバ人の名詞を「若干訛ったスペイン語」(S音がT音へ転換される)で表現しているため、オリシャはオリチャあるいはオチャとなり、 西アフリカの神シャンゴがチャンゴとなる。ヨルバ人の伝える、激しい欲望、好み、気質などの人間的な性格をもつオリチャは、ブードゥーと同じくキリスト教の守護聖人と習合しているが、「自分たちが信仰する神々がカトリックの聖人に生まれ変わった」とするこの信仰は、ブードゥーが、それらしい聖人を当てるのに対し、「男性的でハンサムな若者」とされる情熱の神チャンゴに、「聖バルバラ」があてられるなど、元の神と性別が異なるものも多々ある。 各々のオリチャには、何柱かの派生した神格が存在する。これらは「道」を指すスペイン語カミーノ(Camino)で称される。カミーノの数はまちまちで、100柱以上の者から1柱、ないしいない者もいる。また地方によって、チャンゴにカミーノはいないとされたり、オバルエクン(Obal ekun 「トラを狩る者」)、オロリシャ(Orolisha)の2柱がいるとされたりする。 オバタラ(obatala)(英語版)、エレッグア(eleggua)(英語版)、オルンラ(Olunraあるいは(Orunmila英語版記事)) チャンゴ(Chango)、オッグン、イェマヤ(Yemaya)(英語版)、オシュン(Oshun)の7柱は、セブンアフリカンパワーズ(las siete potencias)と呼ばれる。 檀原によればこの内の オッグン、オチュン エレッグア にオチョッシ(英語版) を加えた4柱を指して「4勇士」と呼ぶ。 創造神オロルン REグィリーによれば、創造神は、ヌザーメ、オロフィあるいはオロルン、ババ・ヌクワという精霊で構成されるオロドゥマーレと呼ばれ、ヌザーメとババ・ヌクワが世界の創造の後に去ったという伝承がある。檀原によれば、オロルン(太陽を通して人間を見る天空のオリチャ)の他、 大地を司るオロフィ、宇宙を司るオロドゥマーレで三位一体を構成する。またこのオリチャからでた「アチェ」(スペイン語版)と呼ばれる者(檀原は「東洋の気やプラーナのようなもの」としている)が、諸々のオリチャになったという。パロ・モンテで対応する、光の側の最高神で人へ幸運を齎すザンビ(Zambi)又はンスンビ(Nzumbi)という語は、ゾンビの語とも関連する「霊的なもの」を指す一般名詞である。 オバタラ(Obatala) REグィリーによれば、最初の人間でもあり「白馬に跨った白人の男性」で白い者と関連付けられ、「慈悲の聖母(母)」があてられる。檀原説では両性具有とされ、このオリチャのカミーノの1つオリシャンラ(女性とされる)が人間を創造したために、オバタラ自身が発明を司るとされる。パロ・モンテではティエンバ・ティエラ(大地をゆするもの)と呼ばれる。 エレッグア (eleggua) REグィリーによれば全ての門と入り口を支配し、道路を司る、もっとも偉大な神。聖なる守護天使 ミカエル ポレの聖マルティヌス 聖ペテロと同一視される。檀原によれば鼠を使者とし、「パドヴァのアントニオ」があてられ、パロ・モンテでのルセーロがこれに当たる。立野淳也によれば、ヨルバ人のエシュ(Exu)という、十字路、交通を司るオリシャが起源で、ブードゥーでのレグバに当たる。 オルンラ (英語版記事) REグィリーによればイファの図表を持ち、「エレッグア」とは大の親友である。檀原によれば彼は賢者で、運命と占いを司る為、ババラウォは彼に帰依している。彼はカミーノを持たない。聖人はアッシジのフランチェスコ、パロでは「ンプンゴ・ムナレンベ」という神があてられる。 チャンゴ (chango) REグィリーによれば「男性的でハンサムな若者」で、妻の女神オバに監視されては「オシュン川英語版の女神オシュン」や「ニジェール川の女神オヤ」などと密通をしている。檀原説でも、オバを配偶者としオジャ(Oya)を戦闘のパートナーとし、オチュンに操られる。またこの、火と雷と戦争とバタ(英語版)を司るオリチャは、堪え性がなく女たらしで遊び好き、嘘つきで喧嘩っ早くギャンブルを好むというラテン気質の性格から、ラテンアメリカで特に尊崇を受けている。パロ・モンテでンサシあるいはシエテ・ラージョ(7つの雷)と呼ばれる。 オッグン (oggun) REグィリーによれば彼はエレッグアの親友で、戦争、鉄、あらゆる武器(犠牲を殺すナイフも含む)、腫瘍や皮膚病の治療を司り、犠牲として黒犬を好む。檀原によれば彼は鉈を携える、鍛冶屋出身の軍神で、金属や道具を司り、鍛冶屋、機械工、エンジニア、化学者、兵士の守護者である。チャンゴとは永遠のライバル関係に有り、聖人ペトロが当てられ、パロ・モンテではサラバンダといい、幸運(Ire)としての彼を表す黒い石が、釘や鍵などと共に鍋(混沌の象徴)に入れらた状態で崇拝される。 イェマヤ (yemaya) REグィリー説では、この女神は黄色の肌をした美人で、月と女性を司り、自らの子オルンガン(「幼な子イエス」があてられる)との近親相姦の果てにチャンゴ、太陽神オルン、月の女神オチュなど14柱の子を産み、腹が割れてイル・イフェで死ぬ。対応する守護聖人に規則の聖母(英語版)をあげる。檀原説では、この「Yemaya」(イェマヤ或いはジェマヤ)という名称は「ジェジェ・オモ・エハ」(Yeye Omo eja「魚の子」の意)という語の略称である可能性があり、他の複数の男性神と関係を持ち、軍神オグンから兵器の扱いを、農耕神オリシャ・オコ英語版から農業を、占術の神オルンラから占術を習って(他の男性神と関係している可能性もある)その技術を漁師のオリチャであるエリンレ英語版記事(大天使ラファエルと同一視される)へ伝え、かつ彼の舌を抜いている。パロ・モンテではマードレ・デ・アグア(水の母)と呼ばれる。 オチュン オシュン (oshun) REグィリーによれば「オシュン」はオシュン川の女神で、愛と結婚と黄金と金銭を司り、扇子と貝殻、鏡を好み、黄色が好きでカボチャが捧げられる。またチャンゴの寵愛を受ける。檀原によれば母性愛と女性美を司るオリチャで、チャンゴの妻として彼を自分の思うままに操る。また檀原は「oshun」に関し「彼女は強力な魔女にもなる」という資料があるが、彼女にはその権限、能力がない点について「オチュン」と魔法祭儀を司る「オスン」の混同された可能性を指摘し、パロ・モンテの「ママコーラ」がこれにあたるとしている。 オッドゥドゥア (英語版) REグィリー説では、オッドゥドゥアはオバタラの配偶者で、アガニュとイェマヤを生み、2人へ授乳する黒人の母親という形で表される。聖人は(聖クララ)があてられる。檀原説ではオッドゥドゥア(oduduwa)は男性で、人間の創世に関与しており、信仰の過程で「オドゥアという女神」と習合した可能性がある。檀原によれば、聖 インマヌエルと同一視されたために、人の死の際は彼が死体を腐らせる役を持つ。 アガニュ アガジュ (Aganyu) (英語版) REグィリー説では、「アガニュ」表記で、オバタラとオドゥドゥアの息子とされ、姉妹であるイェマヤとの近親婚によって産まれた眉目秀麗な息子オルンガン(英語版)に嫉妬し死んだという伝説を載せる。ヨセフがあてられる聖人である。檀原説では「アガジュ」と表記され、砂漠と火山を司るとされ、人でなしであったが回心しオリチャとなったものの、癇癪を起こしては、イェマヤによって癒されている。チャンゴの父親とされる。また彼に聖人クリストフォロス(ハバナの聖人)があてられるため、川、船、旅人の守護者となった。パロ・モンテのブラソ・フエルテと同一視される。 オバ (Oba)(英語版記事) REグィリーによればオバ川(英語版)の女神で、配偶者であるチャンゴを追いかけている。檀原によれば結婚生活の守護者で「耳を切った」と言われる。シエナのカタリナ教会博士があてられる。 オヤ オジャ(oya) (英語版) REグィリー説で「オヤ」はオグンの妻で、記憶、死、墓地を司る正義の守護者で風のアレフィを使者とし、チャンゴの内縁の妻でもあり、自身の持つ火の支配権をチャンゴへ与える。「オジャ」表記する檀原説では、彼女は台風などを司る軍神で、オグン、チャンゴと肉体関係に有る。檀原によれば死者の霊魂はオジャにより冥府Orinへ連れられるという。聖人は聖テレジア教会博士(英語版記事)、聖母マリアの1相である聖燭祭の聖母(英語版)があてられ、パロ・モンテではセンテ―ジャと呼ばれる。 オチョシ (ochosi) REグィリー説では狩人と鳥、野生生物の守護神で、牢獄の見張りもする。聖イシドールスがあてられる。檀原説では兵士、猟師、漁師の守護神であったが、後に「獲物を探し周囲を注意深く見る力」がイファ占いで影響を持つようになり、「左手の道」の施術師(いわゆる黒魔術)になった。11~12世紀のドイツの聖人ノルベルト(英語版)があてられ、パロ・モンテでワタリアンバと呼ばれる。 ババル・アイェ ババル・アジェ (Babalu aye) (英語版) REグィリーによれば、「ババル・アイェ」は病人の守護者で、松葉杖で表され、二匹の犬を連れる。檀原によれば「ババル=アジェ」、は、松葉杖をつき足を引きずる男の姿をし、天然痘などの感染症を齎しあるいは取り去ると言われ、野良犬やジャッカルをトーテムとし、雄ヤギ、ハト、ウズラ、ホロホロ鳥が捧げられる。ラザロと同一視され、パロ・モンテでコバジェンデに当たる。また死体を墓まで運ぶと言われる。 オチュマレ 英語版 檀原によればオチュマレはヨルバ語で「虹」の意で、祖先とのつながりの象徴。REグィリーによれば「虹の女神」の訳を務め、「希望の聖母」英語版 があてられる。 イベイ イベジ (ibeyi los ibeyis) 英語版記事 檀原によればibeyiあるいはlos ibeyisは双子でタエボ(Taewo或いはTaivo英語版記事)、カインデ(kaindeまたはKehinde)という2柱で家庭、子供を守護する。タエボが兄でカインデが弟とされるが同時にタエボが若く、カインデの方が年上であるともいわれる。チャンゴとオチュンの子とされ、イェマヤに育てられる。ブードゥーでの「マラッサ」に当たる。コスマとダミアン(英語版記事)があてられる聖人である。 オロクン (Olokun)(英語版記事) REグィリーによれば、この神は非常に長い髪をした両性具有者で、海底で人魚と一緒に住み、海を監視する。檀原によれば、この「海底の王」には男性説と女性説がある。 ジェガ (Yega Yewa(スペイン語版記事)) 檀原によれば、アフリカでこの女神は川とラグーンを司り、ラグーンの畔にある洞窟に住むと言われていたが、サンテリアでは墓、死の支配者となった。貞節を守り切った老婆とされる彼女は、死者の体を墓穴へ導き、魂をオジャへ渡すと言われる。モンセラートの聖母(英語版記事)があてられる。 オサイン (Osain Osayin) 英語版記事 檀原によれば、薬草のオリチャで、チャンゴの教父として彼へその知識を与えている。聖人は聖シルヴェストロやアンブロジオ(英語版記事)と同一視される。彼は、背が低く、腕、目、足が1本とされるが、耳については「大きいが聴こえない」あるいは「非常に小さいが優れた聴覚を持つ」といわれる。
※この「オリシャ」の解説は、「サンテリア」の解説の一部です。
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