有明海
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/28 06:23 UTC 版)
生物

哺乳類ではスナメリやミナミハンドウイルカをはじめとする小型鯨類が棲息する。これらを観察対象とする専用の観光事業も行われているが、有明フェリー等の船上からも観察する事ができる。また、湾奥部の小長井町に坐する長戸鬼塚古墳からは捕鯨の様相を描いた線刻画が発見されており[7]、かつて有明海や天草灘一帯には、コククジラやセミクジラ、ザトウクジラやニタリクジラなどの沿岸性の鯨が見られたと思われる。実際に、1740年には六角川にコククジラが迷行・座礁した記録がある[8]。2014年にはセミクジラが天草沿岸に現れており、どちらも九州西岸では希有な確認である[9]。
大陸系遺存種
アジア大陸寄りの黄海や渤海、東シナ海の沿岸にある干潟と有明海の干潟は先史的な繋がりがあり、共通する生物は多い。このうち一部は瀬戸内海や東京湾にも分布するが、ほとんどの種類は日本の他地域では見られない。これらを利用するにあたっての漁法や郷土料理にも独特のものが発達している。
- 魚類 - エツ、ヒラ (魚)、アリアケシラウオ、ヤマノカミ、コイチ、有明海産スズキ、ワラスボ、ムツゴロウ、ハゼクチ、タビラクチ、コウライアカシタビラメ、デンベエシタビラメなど
- 脊索動物 - ナメクジウオ
- 甲殻類 - チクゴエビ、アリアケヤワラガニ、ハラグクレチゴガニ、シオマネキ、アリアケガニ、ヒメモクズガニ、ヒメケフサイソガニなど
- 頭足類 - ベイカ
- 二枚貝類 - ハイガイ、クマサルボウ、アゲマキ、ウミタケ、スミノエガキなど
- 腹足類 - シマヘナタリ、クロヘナタリ、ゴマフダマ、サキグロタマツメタ、センベイアワモチなど
- 腕足類 - オオシャミセンガイ、ミドリシャミセンガイ
- イソギンチャク - イシワケイソギンチャク
- 植物 - シチメンソウ(ミルマツナ)
固有種
大陸系遺存種が多い有明海ではあるが、大陸の干潟でも見られない有明海固有種も発見されている。大陸の干潟から分断された約1万年の間に種分化が進んだものと考えられている。
- 魚類 - アリアケヒメシラウオ(海ではなく流入河川下流域)
- 腹足類 - アズキカワザンショウ、ウミマイマイ、ヤベガワモチ
- 二枚貝類 - シカメガキ
- 多毛類 - アリアケカンムリ、ヤツデシロガネゴカイ
内湾性種
分布は日本の他地域やそれ以外にも及ぶが、大規模な内湾である有明海で個体数・漁獲量が多いものもいる。
- 魚類 - コノシロ、サッパ、メナダ、マナガツオ、トビハゼなど
- 甲殻類 - アキアミ、シバエビ、クルマエビ、ガザミ、ヤマトオサガニ、ヘイケガニなど
- 二枚貝類 - アサリ、サルボウ、タイラギなど
- 紅藻類 - アサクサノリなど
鳥類
1999年 - 2003年に行われた環境省の「シギ・チドリ類個体数変動モニタリング調査」で、有明海は国内最大のシギ・チドリ類の渡来地であることが分かっている。川筋などで区切られる区域ごとに見ても、かつて最大規模だった諫早湾が最大の渡来地だったが、諫早湾干拓事業により1990年代に干潟の大部分が消えると湾内の他の干潟に渡来地が移り、佐賀県内の東よか干潟(佐賀市)や肥前鹿島干潟(鹿島市)、荒尾干潟(熊本県荒尾市)が主要渡来地となった。この3か所は、2010年代に国指定鳥獣保護区、ラムサール条約湿地に登録されている[10]。
- ^ a b c d e f g h 環境省「閉鎖性海域ネット」59.有明海 および 島原湾(2023年2月9日閲覧)
- ^ a b c d 福岡博. “有明海の歴史と文化 -日本の文化はここから始まった-”. 特定非営利活動法人有明海再生機構. 2021年8月14日閲覧。
- ^ a b c d e “3.有明海及び諫早湾の概要”. 農林水産省. 2021年8月14日閲覧。
- ^ a b c d e f g 『日本歴史地名大系 41 福岡県の地名』平凡社、2004年、65頁。
- ^ a b 小田巻実、大庭幸広、柴田宣昭. “有明海の潮流新旧比較観測結果について”. 海上保安庁海洋情報部. 2021年8月16日閲覧。
- ^ a b 第2章 有明海・八代海干潟等沿岸海域の現状と変遷・課題[リンク切れ] 熊本県「有明海・八代海再生に向けた熊本県計画」2007年5月9日
- ^ “先史時代の鯨・捕鯨図など”. 2015年10月2日閲覧。
- ^ 志佐 喜栄: “多久物語 六角川の迷い鯨”. 佐賀新聞 LIVE、多久市郷土資料館. 2017年11月3日閲覧。
- ^ 山田 格: “熊本県天草市でセミクジラ迷入”. 国立科学博物館 - 海棲哺乳類情報データベース. 2015年10月2日閲覧。
- ^ 「有明海の2カ所の干潟が「ラムサール条約」登録湿地に」WWFジャパン(2015年6月24日)2022年6月6日閲覧
- ^ 西尾[1985:11]
- ^ 西尾[1985:11-12]
- ^ a b c “佐賀県 嘉瀬川農業水利事業 農民によって造られた平野”. 水土の礎. 農業農村整備情報総合センター. 2014年5月30日閲覧。
- ^ 1町は約0.99ヘクタール。
- ^ 諫早湾干拓事業「有明海と諫早湾の干拓の歴史」農林水産省九州農政局
- ^ 「海苔不漁―有明海以外も」『毎日新聞』2001年5月22日
- ^ a b c 有明の海・ノリの現場「かさむ機械費」朝日新聞(2001年12月19日配信)
- ^ 「有明ノリ 異例の不作:季節外れの赤潮■少雨で栄養塩不足/肥料やカキ投入 試行錯誤」『朝日新聞』朝刊2023年2月9日(経済面)同日閲覧
- ^ a b c d e 有明海で続々「奇形魚」『読売ウイークリー』2008年4月6日号
- ^ 「ノリ養殖の酸処理剤で海が死ぬ」有明海漁業者らが国提訴 産経ニュース(2015年3月6日)2016年12月9日閲覧
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