しょう‐ちょう〔セウチヤウ〕【消長】
消長
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/02 03:11 UTC 版)
国外の植物が新たに野外で生育しているのを発見された場合、それは新しい帰化植物と見なされ、報告記録される。しかし、それがそれ以降も生育を続けるかどうかは定かでなく、しばらくして姿を消すことも多い。かと言って消滅したとは限らず、実際に別の場所で発見されることもあるから、それがすぐに帰化しなかったとは判断できず、帰化植物として記録されたままであることが多い。したがって、帰化植物として記録されたものが、すべて現在も生育しているとは限らない。 侵入した帰化植物が大繁殖する例がいくつか知られている。日本ではセイタカアワダチソウが1970年代に大繁殖をしてあらゆる空き地を埋め尽くす勢いであった。逆に日本のクズのように、日本国外で大繁殖して問題になっている例もある。植物に限らず、移入種が大繁殖する例はよく知られており、これはその地域になじんでいない生物であるだけに、天敵がいないなど、生物群集としてその種の個体数増を抑制する仕組みが存在しないためと言われる。 一般的には、島嶼で帰化植物による弊害が大きい。特に海洋島では在来種が圧迫される例が少なくない。そのような島では在来の植物相が豊かでない例も多く、例えば有用植物の不足から多くの植物を持ち込んだ例も多い。海洋島では在来の植生がバランスを欠いている場合も多く、空いたニッチを数少ない種で埋めているから、侵入種の繁殖を可能にしているとも言われる。ガラパゴス諸島ではアカキナノキ(Chinchona pubescens)がマラリア治療薬として持ち込まれ、山頂部の景観を変えるまでに繁殖している。 繁殖するには、その場にその種の生存可能なニッチが存在しなければならない。移入種が繁殖するのは、原産の種でそのニッチを占めるものとの競争に勝つからであろう。一概には言えないが、一般に島嶼では原産種の競争力が弱いものと考えられる。人為的撹乱のある場所では、そのようなニッチを人間が明けているので侵入がたやすいと見られる。 他方、一旦は定着したかに見えても、その状態が続くとも限らない。セイタカアワダチソウの場合、現在では高さが2mにもなる群落を見ることは少なくなり、道端に見かける雑草の一つになった感がある。これは、この種を攻撃するアブラムシなどの天敵が出現したことや、従来の植物が根の伸び方の関係で使用できなかった肥料成分をセイタカアワダチソウは深い位置まで根が伸びる性質によって使用できたことにより大きくなっていたが、時間を経てその肥料成分を大方使ってしまったこと、などが要因である。オオマツヨイグサやオナモミなどは、一頃は日本中にごく普通に見られたものであるが、現在は見ることがほとんどなくなっている。オナモミについては、その代わりにオオオナモミなどがよく見られるので、より強力な新しい帰化種に置き換えられたとも考えられる。 上記のセイタカアワダチソウの場合、日本の生態系の一員として収まったという見方もある一方で、それによって生息域を奪われた植物(タコノアシなど)、及びそれに関連をもっていた動物群集のことを無視できないとする意見もある。
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