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パラジウム【palladium】

読み方:ぱらじうむ

白金族元素の一。単体銀白色金属王水溶け水素吸着する性質が強い。合金材料触媒歯科材料などに使用。名は同じころ発見され小惑星パラスPallas)にちなむ。元素記号Pd 原子番号46原子量106.4。


パラジウム


物質名
パラジウム
英語名
Palladium
元素記号
Pd
原子番号
46
分子量
106.42
発見
1803年
原子半径(Å)
1.37
融点(℃)
1554
沸点(℃)
3167
密度(g/cm3
12.16
比熱(cal/g ℃)
0.058
イオン化エネルギー(eV)
8.34
電子親和力(eV)
0.6


パラジウム

(Palladium から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/20 09:09 UTC 版)

ロジウム パラジウム
Ni

Pd

Pt
46Pd
外見
銀白色
一般特性
名称, 記号, 番号 パラジウム, Pd, 46
分類 遷移金属
, 周期, ブロック 10, 5, d
原子量 106.42
電子配置 [Kr] 4d10
電子殻 2, 8, 18, 18(画像
物理特性
固体
密度室温付近) 12.023 g/cm3
融点での液体密度 10.38 g/cm3
融点 1828.05 K, 1554.9 °C, 2830.82 °F
沸点 3236 K, 2963 °C, 5365 °F
融解熱 16.74 kJ/mol
蒸発熱 362 kJ/mol
熱容量 (25 °C) 25.98 J/(mol·K)
蒸気圧
圧力 (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 1721 1897 2117 2395 2753 3234
原子特性
酸化数 6, 4, 2, 1, 0(弱塩基性酸化物
電気陰性度 2.20(ポーリングの値)
イオン化エネルギー 第1: 804.4 kJ/mol
第2: 1870 kJ/mol
第3: 3177 kJ/mol
原子半径 137 pm
共有結合半径 139±6 pm
ファンデルワールス半径 163 pm
その他
結晶構造 面心立方
磁性 常磁性[1]
電気抵抗率 (20 °C) 105.4 nΩ⋅m
熱伝導率 (300 K) 71.8 W/(m⋅K)
熱膨張率 (25 °C) 11.8 μm/(m⋅K)
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(20 °C) 3070 m/s
ヤング率 121 GPa
剛性率 44 GPa
体積弾性率 180 GPa
ポアソン比 0.39
モース硬度 4.75
ビッカース硬度 461 MPa
ブリネル硬度 37.3 MPa
CAS登録番号 7440-05-3
主な同位体
詳細はパラジウムの同位体を参照
同位体 NA 半減期 DM DE (MeV) DP
100Pd syn 3.63 d ε - 100Rh
γ 0.084, 0.074, 0.126 -
102Pd 1.02% 中性子56個で安定
103Pd syn 16.991 d ε - 103Rh
104Pd 11.14% 中性子58個で安定
105Pd 22.33% 中性子59個で安定
106Pd 27.33% 中性子60個で安定
107Pd trace 6.5×106 y β- 0.033 107Ag
108Pd 26.46% 中性子62個で安定
110Pd 11.72% 中性子64個で安定

パラジウム: palladium)は原子番号46の元素元素記号Pd白金族元素の1つ。貴金属にも分類される。

特徴・性質

常温、常圧で安定な結晶構造は、面心立方構造 (fcc)。銀白色の金属遷移金属)で、比重は12.0、融点は1555 °C(実験条件等により若干値が異なることあり)。希少金属の1つ。

耐食性と柔らかさを持ち、合金の素材として利用。

パラジウムは白金族中で耐酸性が最も弱い。酸化力のある硝酸など)には溶ける。酸化剤が存在すると塩酸にも溶ける。

名称

名前はこの前年に発見された小惑星パラス (pallas) にちなんだもの[2]

用途

自分の体積の935倍もの水素を吸収するため、水素吸蔵合金として利用される。加工のしやすさから電子部品の材料としても使われたが、供給シェアの6割をロシアに依存しており、価格が不安定なことからニッケルなどの金属への代替が進められている。

特筆すべきは、パラジウムは日本の歯科治療(インレー)の合金として利用されている。いわゆる「銀歯」とは、金銀パラジウム合金のことで、銀歯には20%以上のパラジウムを含んでいる[3]

ジュエリー用貴金属として

貴金属としてジュエリーにも利用されている。

最も多いのは、プラチナ950や900の、またホワイトゴールドの割り金としての利用である。プラチナの場合は硬さの調節と色調のため、ホワイトゴールドは金色の白色化のために利用される。近年、価格の高いプラチナや、ホワイトゴールドに替わって、パラジウムをメインに使用した合金のジュエリーが生産され始めている。パラジウムは鋳造時にガスを大量に吸い込んで鬆(す)が出やすく、大気中でのろう付も枯れやすく難しいため、最近までジュエリーに加工されなかったが、技術の進歩で開発が進んで新しいジャンルとして注目されている。

ジュエリー用パラジウム合金は、ISO9202、JIS-H6309が、Pd950と、Pd500を品位区分として定めている。また、CIBJO(国際貴金属宝飾品連盟)は、前記2種に、Pd999を加えている。Pd950は、ネックレスやリングなどの一般的なジュエリーに用いられている。Pd500は、との合金として、ソフトホワイトの名称で変色しない銀合金として用いられていた時代があったが、現在は銀合金というよりパラジウム合金として認知されている。

造幣局の貴金属品位証明制度は、、銀、プラチナ合金の品位検定を行っている[4]が、パラジウム合金は品位検定を行っていない。

触媒として

工業的には自動車の排気ガス浄化用の触媒三元触媒)やエチレンからのアセトアルデヒドの合成(ワッカー酸化)に用いる触媒など、様々な反応の触媒として使われている。有機合成分野においては接触還元の触媒として、活性炭に担持させたパラジウム炭素が常用される。また主にホスフィン錯体が、クロスカップリング反応やヘック反応などC-C結合生成反応の触媒として用いられる。実験室から工業レベルまで応用範囲は広く、これらパラジウム触媒を用いる反応の開発に対し、リチャード・ヘック根岸英一鈴木章らに2010年のノーベル化学賞が贈られている。

歴史

1803年にイギリス化学者物理学者ウイリアム・ウォラストン (W. H. Wollaston) によって発見[2]

産出

2007年においてパラジウムの世界の産出量は、ロシアが44%、南アフリカ共和国が40%、カナダが6%、アメリカ合衆国が5%を占める。

パラジウムは、プラチナニッケルなどの副産物として生産されるため、生産量は主産物の産出動向に左右される。2010年代、南アフリカのプラチナ鉱山で閉鎖が相次ぐとパラジウムの生産量が減少して価格が高騰。2018年には過去最高を記録した[5]

また、2022年にはロシアのウクライナ侵攻に対する、ロシアへの経済制裁により、歯科治療自動車部品等に使われるパラジウムが不足し価格が高騰すると懸念されている。[6]

同位体

出典

  1. ^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds (PDF) (2004年3月24日時点のアーカイブ), in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
  2. ^ a b 桜井弘『元素111の新知識』講談社、1998年、218頁。ISBN 4-06-257192-7 
  3. ^ 東北大学、歯科金属アレルギーの発病メカニズムを解明!(マイナビニュース、2022年9月29日掲載)
  4. ^ 貴金属製品の品位区分と証明記号 独立行政法人造幣局
  5. ^ アングル:急騰するパラジウム、16年ぶりの「金と等価」に接近”. ロイター (2018年11月19日). 2018年11月19日閲覧。
  6. ^ 日本放送協会. “ロシアのウクライナ侵攻 パラジウム高騰 歯科治療「銀歯」に影響 | NHK”. NHK首都圏ナビ. 2022年6月4日閲覧。

関連項目

外部リンク



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