イスラム革命防衛隊
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| イスラム革命防衛隊 سپاه پاسداران انقلاب اسلامی |
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上:革命防衛隊の徽章
下:革命防衛隊の旗 |
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| 創設 | 1979年5月5日 |
| 活動期間 | 1979年~現在 |
| 所属政体 | |
| 兵種/任務 | 陸軍 航空宇宙軍 海軍 ゴドス軍(国外軍事介入・秘密工作部門) バスィージ(民兵組織) |
| 人員 | 約19万人以上(推計、バスィージの動員兵を除く)[1] |
| 所在地 | テヘラン |
| 担当地域 | |
| 戦歴 | イラン・イラク戦争、レバノン内戦、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、シリア内戦、イラク内戦、12日間戦争、2026年イラン戦争 |
| 指揮官 | アフマド・ヴァヒーディー[2] |
イスラム革命防衛隊(イスラムかくめいぼうえいたい、ペルシア語: سپاه پاسداران انقلاب اسلامی, ラテン文字転写: Sepah-e Pasdaran-e Enghelab-e Islami、英語: Islamic Revolutionary Guard Corps、略称:IRGC、通称:パスダラン、革命防衛隊)は、イランの精鋭軍事組織。正規軍とは別に置かれた軍事組織であり、正規軍とともにイラン・イスラム共和国の軍隊を構成する[3]。
帝政期から続く正規軍に対し、革命防衛隊は、1979年のイスラム革命後に、イスラム革命イデオロギーを防衛するために創設された[4]。陸軍、海軍、航空宇宙軍、ゴドス軍(対外工作部門)、バスィージ(民兵)の5つの主要部門から構成される[5]。
国内での人権侵害[6]や、国外でのテロ活動やテロ組織支援などの対外工作[7]に深く関与し、アメリカ合衆国[8]や欧州連合(EU)[9]など、40カ国以上からテロ組織に指定されている[10]。
概要
イラン・イスラム革命後、革命政権の指導部は、旧帝政から引き継がれた国軍(ペルシャ語:ارتش、Artesh)の忠誠を疑い、国軍への対抗勢力としてイスラム革命防衛隊を創設した[11]。1979年5月5日、ホメイニーの指示の下、イスラム革命評議会の布告により正式に設置された[12]。
設立直後のイラン・イラク戦争中に急速に拡大し、少年兵を含む多数の歩兵を動員した人海攻撃を多用し、多数の死傷者を出した[13]。戦後も縮小されず、活動領域を拡大し、イランの政治・経済に大きな影響力を持つ巨大権力機構と化した[14]。
革命防衛隊は、陸軍、海軍、航空宇宙軍、ゴドス軍、バスィージの5部門から構成される[5]。航空宇宙軍は弾道ミサイル戦力を管轄し[5]、ゴドス軍は国外テロ活動を含む対外工作、ハマースやヒズボラなど外国テロ組織の支援などを担う[7]。バスィージは革命防衛隊傘下の民兵組織であり[5]、国内では抗議デモの弾圧などに投入され、人権侵害に関与してきた[6]。
1982年には、革命防衛隊の兵站・装備調達を担う革命防衛隊省が設置されたが[15]、1989年に同省と国防省が統合され、国防軍需省が新設され、国軍と革命防衛隊に分立していた兵站・装備調達機構が一本化された[12]。
1988年には国軍と革命防衛隊を統括するイラン軍参謀本部が設置され、両者は別個の軍事組織として存続しつつ、統合指揮を受ける体制となった[12]。
また、革命防衛隊は防衛産業、建設、石油など幅広い分野に経済権益を有しており、主な経済組織としてハタム・アル=アンビヤ建設本部、イスラム革命防衛隊協同財団、バスィージ協同財団(Basij Cooperative Foundation)などを傘下に置いている[16][17][18]。
2026年2月28日からのイラン戦争では、最高指導者アリー・ハーメネイーだけでなく革命防衛隊総司令官モハンマド・パクプール以下の革命防衛隊の上層部が多数死亡(後述)した。パクプールの死後にイスラム革命防衛隊司令官となったアフマド・ヴァヒーディーがイランの実権を掌握したと見做されている[19][20][21][22]。最高指導者にはハーメネイーの次男モジタバが選出されているが、この人選も革命防衛隊の意向と見られている[23]。
名称
正式なペルシア語名はسپاه پاسداران انقلاب اسلامی(Sepāh-e Pāsdārān-e Enqelāb-e Eslāmī)で、「イスラム革命の守護者たちの軍団」を意味する[14]。イランでは革命防衛隊は一般にسپاه(Sepāh)とも呼ばれる。سپاه(Sepāh)は「軍」「軍団」を意味し、正規軍であるイラン・イスラム共和国軍はارتش(Artesh)と呼ばれる[24]。
پاسداران(Pāsdārān)はپاسدار(Pāsdār、「守護者」)の複数形であり、革命防衛隊の構成員はپاسدار(Pāsdār)と呼ばれる。英語では正式名称としてIslamic Revolutionary Guard Corps(IRGC)が広く用いられるほか、Revolutionary Guards、Iranian Revolutionary Guards、Sepah、Pasdaranなどの呼称も用いられる[25]。日本政府は「革命防衛隊」または「イスラム革命防衛隊(IRGC)」の表記を使用している[26]。
歴史
設立の経緯
1979年2月1日、反帝政活動家のシーア派大アーヤットラーのルーホッラー・ホメイニーがテヘランに帰還し、同月11日、ホメイニーを支持するイスラム主義武装集団や左翼武装集団、反乱空軍兵などの反乱によりイラン帝政が倒れた(イラン・イスラム革命)[27]。
革命直後の混乱期、警察や軍の統制が弱まる中、革命派の複数の武装組織が各地の施設を占拠し、帝政関係者や「反革命分子」と見なした人々の拘束・殺害を行っていたが、それらの行動について、まだ統一された指揮系統は存在しなかった[28]。バーザルガーン暫定政府はこれらを一つの全国組織にまとめて指揮下に置こうとし、2月24日、バーザルガーンは「国民衛兵」(گارد ملی)として設置することを発表した。ただし、この時期から「革命防衛隊」も並行して用いられていた名称であり、いずれも各地の革命派武装組織を統合する新たな全国武装組織のことを指していた[29][30]。
しかし、ホメイニー派が主導するイスラム革命評議会は、武装組織を暫定政府の統制下に置くことに反対した。革命評議会側のモフセン・ラフィクドゥストは、暫定政府側の構想とは別に、各地で活動していた革命派武装組織の統合を進めた。ラフィクドゥストはモハンマド・ベヘシュティー、アリー・ハーメネイー、アクバル・ハーシェミー・ラフサンジャーニーらホメイニー派指導者や各武装組織の代表と協議し、統合組織の名称を「イスラム革命防衛隊」(سپاه پاسداران انقلاب اسلامی)と定め、アリー・ダーネシュ=モンファレド(علی دانش منفرد)を最初の司令官とする指揮部を編成した[29]。「国民衛兵」については、ホメイニーが旧帝政の皇帝直属の精鋭親衛隊を想起させるとして退け、代わって「軍団」を意味する「セパー」(سپاه)の名称を持つ革命防衛隊の方が採用された[31]。
複数の革命派武装組織が革命防衛隊へ統合されていく一方、その指揮権をめぐって暫定政府と革命評議会の対立は続いた。4月22日、再編された革命防衛隊は指揮評議会の設置を発表し、以後は暫定政府ではなくホメイニーと革命評議会から命令を受けると宣言した。これにより、革命防衛隊を暫定政府の指揮下に置く構想は事実上退けられ、革命評議会が組織の主導権を握った[32]。
5月5日、ホメイニーの命令により、革命防衛隊は革命評議会の監督下に正式に設置され、その指揮評議会も革命評議会によって承認された[29]。
「反革命分子」の弾圧
1979年5月5日のホメイニーの命令により発足したイスラム革命防衛隊は、設立当初よりホメイニーを中心とするイスラム革命体制に反対・抵抗する勢力を「反革命分子」として追跡・弾圧する任務に投入された[33]。正規軍、保守派、君主主義者、左派、マルクス主義者、自由主義者、民主主義者、民族主義者、少数民族、世俗主義者、宗教的マイノリティ、シーア派内反対派など、革命体制に反対する幅広い政治勢力がその対象となった[34][35]。
こうした社会の幅広い層への弾圧により、革命防衛隊は発足後1年ほどの間に、革命体制の最も主要な暴力装置へと急速に拡大した[33]。
正規軍・保守派・王党派の弾圧
革命防衛隊が発足する1979年5月までに少なくとも35人の正規軍将軍が処刑されていたほか、多数の高級将校が強制退役させられた[36]。その後も革命防衛隊は数多くの正規軍将兵の粛清にあたり、多数の正規軍軍人が処刑された[37][38]。
革命防衛隊は旧帝政の関係者も追跡し、皇帝協力者と見なした政府職員らを次々に拘束して処刑した[39]。旧帝政期の上院議員で皇帝の主治医でもあったジャムシード・アラム(جمشید اعلم)も拘束され、弁護士による弁護を認められないままイスラム革命裁判所での即決裁判で死刑判決を受けて処刑されている[40]。
革命防衛隊は、非王党派保守派の弾圧にもあたり、1979年から1982年にかけてエスファハーンで伝統的な宗教保守派を弾圧、保守派の革命委員会との武力衝突や、1980年1月6日の保守派幹部アミール・アッバース・バフレイニアンの暗殺にも関与した[41]。
マルクス主義・社会主義・共産主義者の弾圧
革命防衛隊は、保守派だけではなく、左派(マルクス主義者・社会主義者・共産主義者)の弾圧も行った。
1979年8月には革命防衛隊がイラン人民フェダイーン・ゲリラ機構のテヘラン本部を占拠し、他の左翼政党の事務所も襲撃された[42]。
1980年から1982年にかけては、マルクス・レーニン主義組織ペイカルの活動家や支持者を相次いで拘束して処刑した[43]。
さらに1983年2月と5月になると、それまでホメイニー政権を支持していた共産主義政党トゥーデ党にさえも大規模な弾圧を実施し、党指導部や一般党員を大量に拘束・拷問し、自白を強要。トゥーデ党は非合法化され、多数の党員が投獄・処刑されていった[44][45]。
自由主義者・民主主義者・世俗主義者の弾圧
革命防衛隊は、自由主義や民主主義や世俗主義を掲げる政治勢力も弾圧した。1979年8月、民主主義、報道の自由、政治的自由を要求する国民民主戦線がテヘランで大規模な抗議デモを実施したが、ホメイニー派が襲撃してデモ参加者を負傷させ、革命防衛隊も発砲して群衆を排除した[46]。その後、革命防衛隊は同党の指導者ヘダーヤトッラー・マティーン=ダフタリーを追跡し、同党は本部の閉鎖を余儀なくされた[47]。
1981年6月には、アボルハサン・バニーサドル大統領を支持する反体制派の抗議デモにも介入。革命防衛隊はデモ参加者に発砲して威嚇した[48]。
同月15日には民主主義・世俗主義を掲げる国民戦線がイスラム法に基づく刑罰の導入に反対したことで大規模な弾圧を受け、多数の活動家や支持者が拘束された[49]。国民戦線に所属していた元正規軍大佐ラヒーム・アルバーブも同日のデモで拘束され、イスラム革命裁判所で死刑判決を受け、同年10月に処刑された[50]。バニーサドルの失脚後も革命防衛隊は支持者への弾圧を続けた[51]。
民族主義者の弾圧
革命防衛隊は、モハンマド・モサッデクを支持するイラン民族主義者や汎イラン主義者に対しても弾圧を行った。
革命防衛隊は、モサッデクや民族主義者を「反革命勢力」として非難し、民族主義勢力の排除を進めた[52]。1981年1月には革命防衛隊は民族主義系組織の創設者シヤーヴァシュ・タヴァッコリーを拘束して、後に軍事法廷にかけ銃殺させている[53]。
革命防衛隊などによる民族主義勢力弾圧が進む中、1982年には民族主義政党イラン国民党の党首ダーリウシュ・フォルーハル(داریوش فروهر)も拘束され、エヴィーン刑務所に収監された。家族は数か月間にわたって所在を知らされなかった。フォルーハルは、旧帝政期に経験した通算14年間の投獄よりも、イスラム革命体制下での数か月間の拘束の方が過酷だったと証言している[54]。
少数民族・宗教的マイノリティの弾圧
革命防衛隊は、クルド人、アラブ人、トルクメン人、バローチ人、アゼリー系トルコ人などの少数民族が居住する周縁地域でも、「反革命分子」とみなした者への激しい弾圧を行った[55]。これらの地域では、革命体制による自治要求の拒否や革命防衛隊による襲撃・弾圧への反発から蜂起が起き、革命防衛隊をはじめとする革命体制部隊によるさらなる武力弾圧によって多数の死傷者が発生した[56][57][58]。
とりわけクルド人が多く居住するコルデスターン州や西アーザルバーイジャーン州、アラブ人が多く居住するフーゼスターン州では、革命防衛隊をはじめとする革命体制部隊による武力弾圧や処刑によって多数の死傷者が発生した[59][60]。
1980年2月のトルクメン・サフラの自治・土地改革運動の弾圧では、トルクメン人指導者たちが革命防衛隊によって拉致され、拷問を受けた末に銃殺され、遺体が道路沿いで発見されている[61][62]。革命裁判官サーデグ・ハルハーリーはこのうち94人を自ら殺害したことを認めた[63]。その後、同地域は革命防衛隊の占領下に置かれ、多数のトルクメン人が逮捕・投獄された[64]。
革命防衛隊は、バハイ教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒などの宗教的マイノリティも弾圧した。とりわけバハイ教徒に対しては大規模な弾圧を行った。1980年8月21日、革命防衛隊はテヘランで開催されていたバハイ教の全国精神行政会の会合を武装襲撃し、指導者9人と顧問2人を連行したが、この11人はそのまま消息を絶ち、行方不明となった[65]。
1981年12月には、革命防衛隊がバハイ教全国精神行政会の秘密会合を包囲し、指導者8人を拘束し、同月27日にも彼らを処刑した[66]。革命防衛隊による一般信徒への家宅捜索、宗教文書の押収、家族ぐるみの拘束も拡大した[67]。1983年6月にはバハイ教への信仰を捨てることを拒否した男性が革命防衛隊によって絞首刑に処され、妻と娘を含む女性10人も処刑されている[68]。
革命防衛隊はキリスト教の聖職者も弾圧した。1979年10月にはイラン聖公会の主教ハッサン・デフガーニー=タフティー(حسن دهقانی تفتی)を拘束した。主教は自宅でも武装集団による銃撃を受け、国外亡命を余儀なくされた[69]。1980年8月には司祭イラジ・モッタヘデ、ノスラトッラー・シャリーフィヤーンら聖公会の聖職者も相次いで拘束され、教会施設の接収も進んだ[70]。
革命防衛隊はユダヤ教徒にも弾圧を加えた。1979年にユダヤ教の象徴であるダビデの星が付いた宗教用品を次々と没収する弾圧を行ったのに始まり[71]、1983年には、革命防衛隊によってテヘランのシナゴーグで金曜夜の礼拝を終えた約2,000人ものユダヤ教徒が一斉に拘束された[72]。
シーア派内反対派の弾圧
革命防衛隊は、シーア派高位聖職者やその支持者であっても、ホメイニーに反対する者は徹底的に弾圧した。1979年7月には、フーゼスターン州のシーア派宗教指導者ムハンマド・ターヘル・ハーガーニーの自宅を襲撃し、本人をゴムへ連行して事実上の軟禁状態に置いた[73]。
1979年12月から1980年1月にかけては、ホメイニーへの権力集中に反対するシーア派の大アーヤトッラーであるカーゼム・シャリーアトマダーリー(محمدکاظم شریعتمداری)の支持者を武力弾圧した。革命防衛隊はタブリーズで抗議デモに発砲し、1980年1月9日には多数の死傷者を出した。さらに同月11日にはシャリーアトマダーリーを支持するムスリム人民共和党の本部を襲撃して党員らを拘束し、拘束者たちは、その夜のうちに革命裁判所の即決裁判で裁かれ、逮捕から数時間後の翌朝には銃殺された[74][75]。
1982年4月には、革命防衛隊がシャリーアトマダーリーの自宅を武装包囲し、宗教学校を占拠。革命防衛隊は本人や家族や側近を拘束し、病気のシャリーアトマダーリーに対する医師の診察まで妨害した[76][77]。
革命防衛隊の初代聖職者出身指揮官を務めたハサン・ラーフーティー(حسن لاهوتی اشکوری)も、ホメイニー批判を理由に1981年に拘束され、エヴィーン刑務所で急死した。遺族は法医学検査で猛毒のストリキニーネが検出されたと証言し、当局の心臓発作という説明を否定した[78]。
報道機関の弾圧
報道機関も革命防衛隊の弾圧の標的となった。1979年8月、武装した革命防衛隊員が革命政府に批判的だった有力紙『アヤンデガン』本社を占拠して発行を停止させ、少なくとも11人の職員を拘束した。新聞社の印刷施設も接収され、革命支持派の新聞発行に転用された[79][80]。同月9日には、報道の自由を求める抗議デモに革命防衛隊が介入し、威嚇射撃を行った[81]。
左派紙『ペイガーメ・エムルーズ』は革命防衛隊から社屋と印刷施設を焼き払うとの脅迫を受けて休刊し、独立紙『バームダード』にも警告が送られた[82]。同月には左派・自由主義系の新聞・雑誌22紙の発行を禁止し、共産主義政党や国民民主戦線の機関紙も閉鎖された[83]。
1981年6月、革命体制当局による『ミーザーン』や『エンゲラーベ・エスラーミー』など6紙の発行禁止に抗議するデモが呼びかけられると、革命防衛隊は6月9日、テヘラン大学周辺で抗議デモの阻止のため威嚇射撃を行った[84]。
イラン・イラク戦争
革命防衛隊の人海戦術
1980年9月22日からイラン・イラク戦争が始まると、革命防衛隊も正規軍とともに戦線へ投入された。しかし当時の革命防衛隊は、通常の軍隊としての訓練、装備、資源、組織的結束を著しく欠いた[32][85]。経験の乏しい若い指揮官に大幅な裁量が与えられ、十分な軍事訓練を受けていない兵士が未熟な指揮のもとに実戦投入された[86]。1981年に革命防衛隊最高司令官に就任し、その後戦争の大半を指揮したモフセン・レザーイーも、就任時にはわずか27歳だった[87]。
戦争中、革命防衛隊は傘下のバスィージを大量に動員し、戦死を「殉教」として神聖化し、死を恐れず自己犠牲に身を投じることをイスラム信仰とイスラム革命への忠誠の証として称揚した。戦争は「信者と不信者」「真実と虚偽」の闘争として宗教的に絶対化され、殉教を求めること自体が模範的な行為として宣伝された[88]。
殉教思想の下、革命防衛隊は少年兵を含む多数の兵士を動員し、人海戦術による正面突撃や地雷原除去の要員として使用した[89]。革命防衛隊はこのような自己犠牲を礼賛する宗教的動員を大量歩兵突撃と結び付け、人的資源を大量に消費する戦法を繰り返した[13]。
1981年11月のボスターンでの攻撃では、12歳ほどの少年を含む多数の子供が地雷原に送り込まれ、爆死させて地雷を除去した後、バスィージ、さらに革命防衛隊が続いて歩兵突撃した[90]。「アッラー・アクバル」(アッラーは偉大なり、الله اکبر)と叫びながら仲間の死体を踏み越え、地雷原や機関銃火へ突進し続けるイラン兵の姿は、迎え撃つイラク兵にも強い恐怖を与えた[91][92]。
こうした戦法は1982年春までの攻勢の中では一定の戦果を挙げ、ホッラムシャフル奪還などイラク軍を国境外へ押し戻した[85]。
しかし同年6月にイラク側が部隊の撤収を進めて停戦交渉に応じる姿勢を示した後も、ホメイニーは戦争終結を拒み、フセイン政権の打倒を掲げてイラク領内へ攻め込む方針を決定した。イラン正規軍の軍部には大規模攻勢を遂行できる能力はないとしてイラク侵攻に反対する意見が強かった一方、革命防衛隊の若き指揮官たちは、「革命的戦術」と「宗教的熱意」を持つ兵士を大量投入すればフセイン政権を打倒できるとして戦争拡大を支持した[34]。
同年7月に革命防衛隊は、約10万人を動員してイラク・バスラ方面へ侵攻し、ラマダン作戦を開始したが、砲兵・航空支援や訓練兵力の不足からイラク軍の防御線を突破できなかった[34]。この失敗でイラン側は2万~3万人の死傷者を出したと推計されている[93]。
1983年以降も革命防衛隊はイラク領内への大規模攻撃を繰り返し、1984年のマジュヌーン島攻撃、1985年のバスラ方面攻撃、1986年のアル・ファウ半島攻略、1987年のカルバラ第5号作戦 などの主要作戦に投入された[34]。これらの攻勢では、十分な訓練を受けていないバスィージとともに、砲兵・航空支援を欠いた大規模な正面攻撃や人海戦術を繰り返し、革命防衛隊は膨大な人的損害を被った。とりわけカルバラ第5号作戦では、少なくとも14万人が投入され、そのうち約7割を革命防衛隊とバスィージが占め、イラン側だけで約3万人が死亡、数万人が負傷したと推計されている[94]。
人海戦術による攻勢の成果は乏しく、アル=ファウ半島の占領など一部の局地的戦果を除けば、戦局を決定づける成果は得られなかった[34]。
1988年にはアル=ファウ半島を喪失するなど、軍事的敗北を繰り返した。ホメイニーは長年にわたる膨大な犠牲を顧みずイラクを手中に収めることに固執したが、イラク軍の長距離ミサイルが首都テヘランを襲い、自身の居住地区にまで着弾する事態となり[95]、自らの権力と生存を優先せざるを得ない状況に追い込まれると、ついにイラク占領とフセイン政権打倒を断念し、同年7月、拒否し続けていた国際連合安全保障理事会決議598を受諾した[34][96]。
戦時中の革命防衛隊の拡大
イラン・イラク戦争の長期化は、革命防衛隊を人員・装備・権限のいずれにおいても急速に肥大化させた。1981年11月には、急増する革命防衛隊と政府との連絡・調整を目的として革命防衛隊省が設置された[34]。戦争を通じて兵員と武器を大量に獲得し、1986年までには地上部隊の志願兵だけで約30万人に達したと推計され、この数字にはさらに多数のバスィージは含まれていない[34]。
その膨張は正規軍の地位低下と並行して進んだ。1982年半ば以降、革命政権は正規軍不信から、戦争遂行において正規軍を革命防衛隊に対する二次的な地位へと後退させ、革命防衛隊を攻勢作戦の中心に据えた[97]。さらに正規軍から多数の人員が革命防衛隊部隊へ移され、両軍の共同司令部や共同訓練が整備される一方、革命防衛隊の戦争戦略立案への影響力も大きく増大した[98]。
正規軍首脳が革命防衛隊の人海戦術に反対しても、その影響力を押し返すことはできなかった。正規軍地上軍司令官アリ・サヤド・シラジは、革命防衛隊司令官モフセン・レザーイーと戦争戦略をめぐって激しく対立した末、1986年7月に解任されたが、レザーイーはそのまま作戦指導の地位にとどまった[13]。
1985年9月にはホメイニーの命令により、革命防衛隊に正規軍とは別個の陸軍・海軍・空軍部門が正式に設置され、独自の統合幕僚組織も整備された[98]。アメリカCIAは1987年、革命政権が革命防衛隊を将来的に正規軍に取って代わる「革命の軍隊」の中核とすることを目指していると分析していた[98]。
軍拡と正規軍に対する優位性の確立
革命前の帝政イランはアメリカ合衆国を主要な兵器供給国としていたが、1979年革命後の革命体制は中華人民共和国から兵器輸入を行うようになった。ソビエト連邦は当初は「イスラム革命」の自国や中東全域への波及を恐れて革命体制と距離を置いていたが、イラン・イラク戦争後の1989年に革命体制はソ連と大規模な兵器調達契約を締結し、ソ連崩壊後もロシアから戦闘機、戦車、潜水艦などを輸入した[99][100]。
しかし、導入された新兵器の多くは正規軍ではなく革命防衛隊へ配備され、拡大する弾道ミサイル戦力も革命防衛隊の管理下に置かれた[101]。
その後も軍事資源の革命防衛隊への重点配分が続き、1990年代以降、革命防衛隊は軍事分野で正規軍に対する優位を維持した[102]。これに対し、正規軍陸軍は依然として帝政期に購入された兵器や、中国、北朝鮮、ロシアなどから輸入した比較的旧式・低性能の兵器への依存が大きく、海軍もキロ級潜水艦など一部を除いて旧式艦艇を多数使用し、空軍も帝政期に導入された米国製航空機を主力とし続けた[97]。
2019年のイラン国防予算では、正規軍より人員規模の小さい革命防衛隊に全体の29%が配分されたのに対し、正規軍への配分は12%だった[5]。2020年にも革命防衛隊には約69億6,000万ドル、正規軍には約27億3,000万ドルが割り当てられており、革命防衛隊は弾道ミサイル、非対称戦、国外のテロ組織支援などイランの主要な軍事能力への投資で中心的な地位を占めた[103]。
経済への浸食
1988年のイラン・イラク戦争終結後も、戦時中に巨大化した革命防衛隊は縮小されず、その人員、工兵組織、機械設備、政治的特権を利用して国家経済へ深く食い込んだ。アクバル・ハーシェミー・ラフサンジャーニー政権は戦後復興事業に革命防衛隊を投入し、ハータム・アル=アンビヤ建設本部を中心に、道路、ダム、パイプライン、石油・ガス、鉱業、運輸、通信などへ事業を拡大した。軍事組織として保有する莫大な人的・財政的・政治的資源を背景に民間企業との競争で圧倒的な優位に立ち、やがて国内最大のインフラ請負組織へ膨張した[104]。
同建設本部は革命防衛隊の収入源となって活動資金を供給しており、革命防衛隊は防衛産業、建設、石油などで数十億ドル規模の事業を支配している[16]。その経済活動は民間企業を圧迫し、民間企業に株式の譲渡を迫る事例も指摘されている[104]。
さらに革命防衛隊協同財団を通じて企業・金融部門にも巨大な経済権益を築いた。同財団は革命防衛隊司令官らによって同組織の投資を管理するため設立され、2010年時点では理事9人のうち8人を革命防衛隊高級幹部が占め、傘下には革命防衛隊員向けの金融機関として設立されたアンサール銀行なども置かれる[105]。同財団は革命防衛隊の「主要な経済的柱」として製造業・建設業などへの投資を管理し、その資金は革命防衛隊の国外での工作活動やテロ組織への資金供給にも利用された[17]。
傘下のバスィージもバスィージ協同財団を通じて独自の巨大な企業網を形成した。同財団のネットワークは少なくとも20の企業・金融機関から構成され、ペーパーカンパニーなどを利用してバスィージによる所有・支配を隠しながら、自動車、鉱業、金属、銀行などで数十億ドル規模の事業権益を保有している[18]。
革命防衛隊はさらに「民営化」を利用して国有資産にも食い込んだ。2006年から2010年に売却された約700億ドル相当の国有資産のうち、真正の民間部門に渡ったのは推計13.5%にすぎず、残りの多くは革命防衛隊系企業を含む準国営組織などに移転した。革命防衛隊系企業は2006年から2013年までに推計約1万件の事業を獲得したとされる[106]。
革命防衛隊が支配するイラン経済の規模については正確な把握が困難であり、推計には大きな幅がある。『フォーリン・アフェアーズ』は2013年に、革命防衛隊が子会社などを通じてイラン経済の約10%を支配していると推計した[107]。一方、『ワシントン・クォータリー』の研究は、革命防衛隊系企業の収益、密輸による収入、民営化によって取得した資産、準国営組織への支配などを基に、その支配規模をGDPの25~40%と推計しており、国際連合安全保障理事会のイラン制裁専門家パネルもこの数値を低く見積もった推計として引用している[108]。
革命防衛隊の経済活動は国外のフロント企業、石油取引、非公式な金融仲介網などにも及んでいる。2026年には、革命防衛隊が複数の国外企業を介してイラン産原油を販売し、その収益を革命防衛隊へ還流させる金融・貿易網を運営しているとして、アメリカ財務省が関係企業や個人を相次いで制裁対象とした[109]。
政治権力への拡大
革命防衛隊は政治への介入も強めた。ホメイニーの死後に最高指導者となったアリー・ハーメネイーは、革命防衛隊を自身の権力基盤の一つとして重用し、革命防衛隊上層部も改革派など革命体制の政治的路線を変更しようとする勢力に対する統制を強めた[110]。
イラン・イスラム諮問議会では以前から監督者評議会 が体制側の基準に基づいて候補者を事前に選別していたが、体制が容認する候補者の範囲から改革派が次第に排除されていく中、第7期イスラム諮問議会以降は革命防衛隊出身者の比重が急速に高まった。2004年には革命防衛隊出身者が290議席の少なくとも16%を占め、その数は2000年から2008年までに少なくとも2倍に増加した[111]。革命防衛隊出身議員らは、革命防衛隊の財務や最高指導者直属機関に対する調査を阻み、第6期イスラム諮問議会が試みていた体制中枢への監視を封じ込めた[111]。
監督者評議会による立候補資格審査にも革命防衛隊情報機関が深く介入している。2016年の議会選挙では、正式な法定審査機関ではない革命防衛隊情報機関が候補者に関する独自の情報を監督者評議会へ提供し、内務省側の審査を通過していた多数の候補者を失格に追い込むなど、候補者選別において、情報省、司法、警察などの法定審査機関を上回る影響力を行使している[112]。2019年に革命防衛隊情報機関長官ホセイン・タエブは、監督者評議会と革命防衛隊情報機関が「浸透者」や「反革命分子」の議会入りを阻止すると公言した[113]。
2005年にマフムード・アフマディーネジャードが革命防衛隊出身者として初めて大統領に就任すると、革命防衛隊出身者の政府中枢への進出はさらに加速した。アフマディーネジャード政権では多数の元革命防衛隊司令官が閣僚や政府高官に任命され、閣僚のおよそ3分の1を革命防衛隊出身者が占めた[111]。官僚機構でも改革派、実務官僚、穏健派が排除され、革命防衛隊出身者やその路線に近い人物への置き換えが進んだ[110]。
革命防衛隊出身者は、最高指導者が構成員を任命する公益判別会議の中枢にも入り込んだ。同会議は、イスラム諮問議会が可決した法案を監督者評議会がイスラム法または憲法に反するとして拒否し、両者が対立した場合にその帰趨を最終的に裁定するほか、通常の国家機構では解決できない問題を最高指導者の命令によって処理する権限を持つ。さらに公益判別会議が決定した法律はイスラム議会も監督者評議会も変更することができず、変更・廃止には公益判別会議自身による再審議を必要とするうえ、最高指導者の同意なしには他の国家機関による監査・調査も受けないという権力機構である[114]。
1981年から1997年まで革命防衛隊最高司令官を務めたレザーイーが、退任した同年にアリー・ハーメネイーによって公益判別会議書記に任命され、同会議の中枢となっている[115]。
さらに2005年、ハーメネイーは公益判別会議に、行政・立法・司法の三権が国家の基本政策をどのように実施しているかを監視し、その結果を最高指導者へ報告する権限を与えた。レザーイーは、この新制度の下では三権の長が公益判別会議による監督に従わなければならないと説明している[116]。
こうした政治への浸透によって、革命防衛隊は単に政府の命令を受ける軍事組織ではなく、国家政策そのものを左右する政治勢力となった。2010年までには国内政治、経済、外交・安全保障政策の主要な意思決定に深く関与するようになり、革命防衛隊は最高指導者に次ぐ有力な権力仲介者として位置付けられるまでになった[117][110]。
革命防衛隊の影響力は大統領の権限を上回る場合もあり、最高指導者とともに司法、メディア、監視機構にも強い支配力を及ぼし、大統領の交代による政策変更を制約する恒常的な権力基盤を形成した[11]。
対外工作活動・テロ活動
革命防衛隊、とりわけ国外工作を担当するゴドス軍は、暗殺、誘拐、爆破などテロ活動、国外テロ組織への資金・武器・訓練の提供など、幅広い対外工作に関与してきた。
ゴドス軍は、国外テロ組織を育成・支援するイランの主要機関であり、ヒズボラ、ハマース、パレスチナ・イスラーム聖戦、フーシなどの中東各地のテロ組織に資金、武器、訓練、技術、作戦上の指導を提供してきた[7]。
革命防衛隊自身のテロリズムの歴史
革命防衛隊自身もイラン・イラク戦争中の1980年代から世界各地で爆破、暗殺、誘拐などのテロ活動を行ってきた。イランイラク戦争当時はまだゴドス軍が編成されておらず、革命防衛隊は国外テロ活動の担当司令部としてラマダン司令部、アンサール司令部、ビラール司令部を設置し、それぞれイラク、トルコやパキスタンなどの周辺諸国、その他の国外地域におけるテロ活動を担わせた[118]。
1983年10月23日には、革命防衛隊とヒズボラが共同でレバノンのベイルートに駐留するアメリカ軍とフランス軍の兵舎への同時爆破テロを実行。このテロ攻撃によって米軍人241人とフランス軍人58人が死亡した[119]。1984年3月16日には、ベイルートでアメリカ中央情報局(CIA)の支局長ウィリアム・フランシス・バックリーがヒズボラに誘拐され、革命防衛隊の拠点で尋問と拷問を受けた後、イランに移送され、拘束中に死亡した[120]。
1985年から1986年にかけて、革命防衛隊はイラン情報省と共同でフランスのパリにおける連続爆破テロを計画し、ヒズボラ系のテロ工作員が実行した。一連の爆破事件によって多数の民間人が死亡・負傷した[118][121]。
1987年7月8日、革命防衛隊はパキスタンのカラチとクエッタでイラン反体制派の住居13軒をロケット弾、自動小銃、手榴弾でテロ攻撃し、多数の死傷者を出した。パキスタン警察は事件に関与した革命防衛隊員を特定・拘束した[122][123]。
1990年に革命防衛隊はアフマド・ヴァヒーディーを司令官とするゴドス軍を編成し、それまで分散していた国外工作部門を一つに統合した。これにより革命防衛隊の国外テロ活動の指揮権はゴドス軍に集約された[124][125]。
1990年3月13日、ゴドス軍がイラン情報省と共同で、トルコのイスタンブールにおいてイラン反体制派指導者の暗殺未遂事件を起こし[118]、4月24日には、情報省とともにスイスのジュネーヴ近郊でイラン反体制派指導者カゼム・ラジャヴィを暗殺した[126]。
1991年7月、イラン最高指導者ルーホッラー・ホメイニーの宗教的布告(ファトワー)によって小説『悪魔の詩』の著者サルマン・ラシュディの殺害が命じられたことを背景に、同書を日本語に翻訳した筑波大学助教授五十嵐一が、大学構内でゴドス軍の秘密工作員によって刺殺された(悪魔の詩訳者殺人事件)[127][128]。
1992年から1993年にかけて、ゴドス軍はイラン情報省と共同で、トルコやイタリアでイラン反体制派幹部を誘拐・暗殺した[126]。
1992年3月17日には、ゴドス軍がヒズボラを指揮してアルゼンチンのブエノスアイレスにあるイスラエル大使館への自爆テロを実行した(アルゼンチン・イスラエル大使館爆破事件)。爆発によって大使館の建物が崩壊し、29人が死亡、242人が負傷した[129]。
1992年9月17日にはドイツのベルリンで、イラン政府の命令を受けた革命防衛隊員などの暗殺犯がイラン反体制派の指導者4人をレストランで銃殺する事件を起こした(ミコノス・レストラン暗殺事件)[130][131]。
1994年7月18日には、ゴドス軍がアルゼンチンのブエノスアイレスでアルゼンチン・イスラエル相互協会爆破事件を計画してヒズボラに実行させ、85人を死亡させ、当時の革命防衛隊司令官モフセン・レザーイーや当時のゴドス軍司令官アフマド・ヴァヒーディーらにアルゼンチン司法当局から逮捕状が発給された[132]。国際刑事警察機構(インターポール)も、レザーイーやヴァヒーディーらに赤手配書を発行した[133]。
1996年6月25日には、ゴドス軍がヒズボラ・アル=ヒジャーズを指揮し、サウジアラビアで米軍施設を爆破するテロ攻撃を実行し、米軍人19人を死亡させ、数百人を負傷させた(ホバル・タワーズ爆破事件)[134][135]。
1998年、ガーセム・ソレイマーニーがヴァヒーディーの後任としてゴドス軍の第2代司令官に就任した。ソレイマーニーは最高指導者アリー・ハーメネイーの強い信任を背景にゴドス軍の組織と国外工作能力を大幅に拡大した[136]。ソレイマーニーの指揮下で、革命防衛隊はヒズボラなどの国外テロ組織への資金・武器供与や軍事訓練、現地の武装組織を利用したテロ攻撃の計画・指揮をさらに拡大し、国外におけるテロ活動と支援網を強化した[137][138]。
ソレイマーニーは当初アフガニスタンのターリバーンと敵対する北部同盟への軍事支援に重点を置いていたが、2003年のイラク戦争以降はイラクでの活動を拡大し、現地の民兵組織に対する武器・資金供与や軍事訓練を通じて、アメリカ軍やイラク政府関係者に対するテロ攻撃を支援した[139][140]。ゴドス軍ラマザン軍団司令官アフマド・フォルーザンデは、イラク政府関係者の暗殺を指揮したほか、米軍・イラク軍に対するテロ活動や宗派間対立を激化させる攻撃を支援した[141]。
1999年と2006年には、ゴドス軍がイラクでイラン反体制組織モジャーヘディーネ・ハルグの構成員や関連施設の労働者を乗せたバスを爆破するテロ攻撃に関与し、多数の死傷者を出している[142][143][144]。
2007年1月20日、ゴドス軍高官アブドルレザー・シャフライ が計画したイラクのカルバラーにおける米軍施設襲撃事件で、米兵5人が殺害されている[145]。
2010年7月には、ゴドス軍がイラクの控訴裁判所副長官ハサン・ナーイブの乗る車両に吸着爆弾を仕掛けて暗殺した[146]。
2011年には、ゴドス軍要員らがワシントンで駐米サウジアラビア大使アーデル・アル=ジュベイルを爆殺する計画を進め、麻薬組織の構成員と考えた人物に150万ドルで暗殺を依頼したが、実際にはこの人物はアメリカの麻薬取締局の情報提供者であったため計画は摘発された。ゴドス軍高官らの指示を受けていたマンスール・アルバーブシアルは後に有罪を認め、禁錮25年を言い渡された[147]。
2012年には、アゼルバイジャン、トルコ、ジョージア、ケニアなどで革命防衛隊によるテロ計画が未然に摘発された。同年、インドでは革命防衛隊によるイスラエル外交官を標的とした爆破テロが発生して負傷者が出た[148]。
2017年にはドイツ・イスラエル系団体をテロ攻撃対象として監視していた革命防衛隊要員がドイツで有罪となり、2018年にもドイツ当局が革命防衛隊要員10人によるテロ計画を摘発した[135]。同年3月、ゴドス軍はアルバニアのティラナで、イラン反体制派の指導者らが出席する新年祝賀行事への爆破テロを計画したが、事前に摘発され、2019年10月23日、アルバニア警察はゴドス軍のテロ工作網を摘発したことを公表した[149]。
2020年1月にゴドス軍司令官ガーセム・ソレイマーニーが米軍無人機の攻撃で死亡した後には、革命防衛隊は米政府高官に対する暗殺工作を開始。2021年から2022年にかけて革命防衛隊員シャフラム・プルサフィは、「報復」としてジョン・ボルトンの暗殺を米国内で請け負わせようとしたとして米司法省から訴追されている[150]。さらに2024年にはイスラム革命防衛隊情報機関4000部隊司令官ラフマン・モガダムの命令を受けた革命防衛隊工作員ファルハド・シャケリが、ドナルド・トランプ暗殺を計画し、米司法省から訴追された[151][152]。
また同年、革命防衛隊から派遣された工作員アシフ・マーチャント(Asif Merchant)が、ドナルド・トランプ、ジョー・バイデン、ニッキー・ヘイリーら米国の政治家・政府高官を暗殺するため殺し屋を雇おうとした事件が摘発されており、マーチャントは2026年に米連邦裁判所でテロ行為と殺人請負の罪で有罪となった[153]。
同年、オーストラリアでも、革命防衛隊がユダヤ教徒向け食品店やシナゴーグを標的とする連続放火テロを指揮し、2025年11月27日にオーストラリア政府が革命防衛隊をテロ支援国家機関に指定する契機となった[154]。
2022年7月、革命防衛隊の指示を受けた国際犯罪組織が、米国在住のイラン系ジャーナリストキリスト・アリ・ネジャドの暗殺を計画した。実行役は自動小銃を用意して自宅周辺を監視したが、警察に逮捕され、暗殺は未遂に終わった。2025年3月20日、実行を指揮した犯罪組織幹部2人に対し、米国の連邦陪審は殺人依頼や殺人未遂などの罪で有罪評決を下した[155]。
2024年、イスラエル総保安庁は、革命防衛隊情報機関の4000部隊とゴドス軍の18840部隊が、ヨルダン川西岸の武装組織に地雷、対戦車ミサイル、ロケット弾、爆発物、突撃銃などを密輸し、イスラエル人やイスラエル軍を標的とするテロ攻撃に使用させようとしていたことを公表している[156]。また同年には、イラン情報機関がベンヤミン・ネタニヤフ首相、ヨアヴ・ガラント国防相、総保安庁長官ロネン・バーらの暗殺を工作員に命じた事件も摘発された[157]。
2024年1月29日、英国政府は、革命防衛隊ゴドス軍第840部隊が英国内で『イラン・インターナショナル』の司会者2人を暗殺する計画に関与したとして同部隊を制裁対象とし、2022年以降に英国内だけでイラン政府による殺害・誘拐の信頼性のある脅威が少なくとも15件あったと発表した[158]。
2026年にモサド、イスラエル総保安庁、イスラエル国防軍は、革命防衛隊情報機関4000部隊が、イスラエル政府・治安当局高官、軍事施設、港湾、イスラエル船舶などを標的とする国外テロ工作網を運営していたと発表した。同工作網はラフマン・モガダムが指揮し、革命防衛隊情報機関長マジド・ハデミの指示・承認の下で活動していた[159]。
2026年6月にはアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、オーストラリアなど24カ国が共同声明を発表し、革命防衛隊情報機関とゴドス軍が欧州、北米、オーストラリアでイラン反体制派、ジャーナリスト、ユダヤ人・イスラエル関連施設などを標的とする殺害計画やその他の工作に関与しているとして非難した。また、革命防衛隊などが国際的な犯罪組織を工作に利用していると指摘した[160]。
革命防衛隊のサイバーテロ活動
革命防衛隊はサイバーテロ活動も積極的に行っている。
2011年から2013年にかけて、革命防衛隊は傘下のサイバーテロ企業を通じて、アメリカ合衆国の銀行など46の組織に大規模なDDoS攻撃を実行した。攻撃は延べ176日間に及び、数十万人の利用者がオンラインバンキングを利用できなくなるなど、金融サービスに大規模な障害が発生した。また、2013年には革命防衛隊系の工作員がニューヨーク州のボウマン・ダムの制御システムに不正侵入し、水位や水門の状態などの情報を盗み出した[161]。
2013年以降、革命防衛隊が支援するサイバーテロ組織APT33は、サウジアラビアの航空宇宙産業やエネルギー関連企業などを標的とするサイバー攻撃を実施した。同組織は情報窃取のための不正侵入やマルウェアを使用した攻撃を展開し、2019年にはサウジアラビアの組織を攻撃する大規模なサイバー工作網を構築していたことが確認された[162][163][164]。
2016年から2021年には、革命防衛隊のサイバーテロ部門の構成員らがアメリカの財務省、国務省、防衛産業企業などを標的とするサイバー侵入活動を実施した。工作員らは偽装メール、悪意あるソフトウェア、身元を偽ったオンラインサービスなどを利用して機密情報への不正アクセスを試みた[165]。
2018年には革命防衛隊のために活動していたイラン人9人を、世界各国の大学、企業、政府機関、国際連合などへのサイバー侵入によって学術データや知的財産を盗み出したとして米司法省が起訴している[166]。
2021年には、革命防衛隊と関係するサイバーテロ集団がアメリカ国内で企業や公共施設へのランサムウェア攻撃を実行し、6月には小児病院のコンピューターシステムに侵入して情報を窃取し、データを暗号化した。さらに10月には地方電力会社のネットワークに侵入し、暗号化技術を悪用して業務を妨害した。2022年9月、米財務省はこれらの攻撃に関与した革命防衛隊系の工作員10人と企業2社を制裁対象に指定した[167]。
2023年10月には、革命防衛隊のサイバーテロ部隊「シャヒード・カーヴェ・グループ」がイスラエル国内の監視カメラにランサムウェア攻撃を実行した。さらに革命防衛隊のサイバーテロ組織「コットン・サンドストーム」がシナゴーグの電子表示装置に不正侵入し、反イスラエルの宣伝文を表示させた[168]。
2023年から2024年には、革命防衛隊サイバー電子司令部と関係するハッカー集団「CyberAv3ngers」が、アメリカの水道施設、下水処理施設、エネルギー関連施設などの産業制御システムに大規模なサイバー攻撃を実行した。少なくとも75台の制御装置への侵入に成功し、うち34台以上が水道・下水道関連施設の設備だった。工作員らは制御プログラムを書き換え、設備の機能を妨害した。米財務省は2024年2月、これらの攻撃に関与した革命防衛隊サイバー電子司令部の幹部6人を制裁対象に指定した[169][170]。
2024年には、革命防衛隊の工作員3人がドナルド・トランプの大統領選挙陣営にサイバーテロ攻撃を仕掛け、内部文書や電子メールを盗み出した。さらに盗み出した情報を報道機関や対立陣営に流出させ、2024年アメリカ合衆国大統領選挙への介入を試みた。9月27日、米司法省はこの件で革命防衛隊員のマスード・ジャリーリー(مسعود جلیلی)、セイエド・アリー・アーガーミーリー(سید علی آقامیری)、ヤーセル・バラーギー(یاسر بلاغی)の3人をコンピューター犯罪やテロ組織への物的支援などの罪で起訴した[171]。
弾圧体制の強化
抗議運動弾圧と弾圧機構の整備
1989年のホメイニーの死後も革命防衛隊による「反革命分子」への弾圧は続いた。1991年にも政治的逮捕は主として革命防衛隊によって行われ、恣意的拘禁、拷問、強制的な「自白」、政治犯の処刑などが続いた[172][173]。
1992年には、政府への大規模な抗議運動がマシュハドを中心にイラン各地に拡大した(1992年マシュハド抗議運動)。5月30日のマシュハドでは、革命防衛隊が抗議者に無差別発砲し、多数の市民を殺害・傷害・拘束した[174]。
事件後、革命防衛隊は、主要都市における抗議運動弾圧専用部隊としてアシュラ部隊(Sepahian-e-Ashora)を新設した[174]。傘下のバスィージも武装強化され、数万人が工場、職場、学校、街頭を巡回して市民を監視し、女性への警告や直接逮捕を行う権限まで与えられた[175]。
1994年8月3日、ガズヴィーンで大規模な抗議運動が発生した際[176]、現地に駐屯していた国軍と革命防衛隊の部隊が住民への武力行使命令を拒否したため、政府は他地域から革命防衛隊とバスィージを投入し、その弾圧で多数が殺害・傷害・拘束を受けた[177][178]。
軍と革命防衛隊の現地部隊が弾圧を拒否したことに不信を抱いた上層部の間で、弾圧機構の中心をバスィージに担わせる意見が強まった[179]。イラン当局はバスィージを国内の抗議運動に対する弾圧へ一層投入するようになり、1995年には17都市でバスィージなどによる抗議運動弾圧を想定した軍事演習も実施された[179]。
1995年4月4日、テヘラン郊外のイスラムシャフルで、バス運賃の値上げや水不足、物価高騰などに抗議する大規模なデモが発生し、弾圧に投入された革命防衛隊の発砲で死傷者が多数出た[180]。この抗議運動の拡大で、政府はテヘランに新たな弾圧司令部と軍政機構を設置し、革命防衛隊陸軍も首都における抗議運動弾圧を統括するサーラッラー司令部を新設。同司令部は革命防衛隊司令官を名目上の司令官とし、実務上は副司令官が指揮を執る体制とされ、抗議運動が起きた時にはテヘラン州の革命防衛隊、バスィージ、警察、情報省などの弾圧機関を一元的に指揮する機構とされた[181]。
革命防衛隊の弾圧体制は、個々の部隊をその都度投入する方式から、アシュラ部隊やバスィージの専門部隊と、複数の弾圧機関を統括する常設司令部を組み合わせた体制へと組織化された[181]。
改革派の弾圧強化
1997年に改革派のモハンマド・ハータミーが大統領に就任した後、改革派・独立系新聞が急増すると、革命防衛隊はこれらの新聞や記者に対する弾圧にも関与を強めた。1998年3月にはモハンマド・ホセインザーデ・ヘジャージーがバスィージ司令官に就任し、バスィージによる反体制派や改革派への弾圧を強化するとともに、私服組織アンサール・ヘズボラとの連携を拡大した[182]。
同年、革命防衛隊総司令官ヤフヤ・ラヒーム・サファヴィが、改革派政権のせいで、革命政府に批判的な新聞が増加し、大学でも革命政府批判が広がっていると非難し、「反革命分子はどこにいようと根絶する」「首を切り、他の者の舌を切らなければならない」と公然と威嚇した[183]。
1990年代初頭から、イランでは改革派・反体制派の政治活動家、作家、知識人らが相次いで暗殺されるイラン連続殺人事件が発生していた。1999年1月、情報省(MOIS)は一部の「逸脱した」職員による独自行為と発表したが[184]、実際には最高指導者アリー・ハーメネイーの下に置かれた暗殺委員会のメンバーである革命防衛隊副司令官モハンマド・バーゲル・ゾルガドルが監督して行った暗殺とみられ、ゾルガドルは信頼する司令官を選抜して情報省と連携させて暗殺にあたらせ、その中にはゴドス軍司令官ガーセム・ソレイマーニーらも含まれたという[185]。
学生デモ弾圧と弾圧機構のネットワーク化
1999年7月8日、改革派新聞『サラーム』の発行禁止や、新聞規制法改正案に抗議したテヘラン大学の学生らによるデモが開始され、翌9日に警察が学生寮を襲撃すると、その憤慨で抗議デモがさらに拡大(1999年イラン学生抗議運動)[186]。
弾圧を躊躇する改革派のハータミー大統領に対し、ガーセム・ソレイマーニーら革命防衛隊上級指揮官24人は、連名で脅迫状を送り、改革派政権の消極的対応を非難したうえで「我々の忍耐は尽きた」「これ以上あなたの不作為を容認しない」と通告し、ただちに「革命的決断」を下すよう迫った[187]。
革命防衛隊が抗議運動弾圧を開始し、テヘランでは革命防衛隊サーラッラー司令部の指揮下でバスィージなどが学生らへの暴行に投入された[181]。当時の革命防衛隊空軍司令官モハンマド・バーゲル・ガーリーバーフも弾圧に直接参加し、ガーリーバーフは後年、1999年の抗議運動で自らこん棒を持って街頭に出て、学生らを殴打したことを認めている[188]。
1999年の学生抗議運動弾圧後、革命防衛隊を含む国内弾圧機構の組織化がさらに進められた。2000年以降、革命防衛隊情報部門、バスィージ、アンサール・ヘズボラ、情報省外の情報組織、秘密拘禁施設などを結び付けた「並行機関」(nahad-e movazi)と呼ばれる弾圧体制が拡大し、武装、通信機器、移動手段、計画・連携能力の強化を図った[189]。
2003年6月10日のテヘラン大学学生による抗議運動に端を発し、大学以外の市民にも広がって、イスラム聖職者による宗教支配体制に反対し、政治的自由や民主化を要求する大規模な抗議運動が発生した[190]。この際も革命防衛隊はバスィージを弾圧に投入し、オートバイで抗議参加者を追跡し、こん棒、鎖、ナイフなどを用いて学生や市民を襲撃[190]、大学寮にも侵入して学生を暴行するなど徹底的に弾圧した[191]。
この時期、革命防衛隊の弾圧機構は、革命防衛隊情報部門、秘密拘禁施設、体制派弾圧組織を組み合わせて反体制活動家を監視・拉致・拘禁・拷問する機構へと肥大化していた。2000年から2004年にかけてこれらの弾圧機関が組織性、資源、計画能力、相互連携を拡大し、2003年6~7月の抗議運動では武装した当局がテヘラン大学周辺に検問所を設け、革命防衛隊情報部門などが秘密拘禁施設を用いて政治活動家を隔離・尋問・拷問していた[189]。
頻発する抗議運動に革命防衛隊は、弾圧体制のさらなる制度化を狙い、2005年には革命防衛隊戦略研究センターを新設、元革命防衛隊陸軍司令官モハンマド・アリー・ジャアファリーが責任者に就任した。同センターでは独裁体制下の民主化運動・反政府運動の事例が研究され、ジャアファリーは国内で多発する抗議運動について革命防衛隊が対処すべき「主要な脅威」として位置付けた。この構想は、後のバスィージの革命防衛隊への一層の組み込みと州単位の革命防衛隊への大規模再編につながった[192]。
地方弾圧部隊と住民監視網の肥大化
激しい差別や土地収用に晒されていたフーゼスターン州のアラブ系住民が2005年4月にアフヴァーズを中心として大規模な抗議運動を行い[193][194]、さらに2006年5月にも、国営紙『イラン』がアゼリー人をゴキブリにたとえる人種差別的な漫画を掲載したことを契機に、タブリーズ、オルーミーイェ、アルダビールなど北西部各地で大規模な抗議運動が発生したが、いずれも革命防衛隊とバスィージが抗議参加者を襲撃し、多数を殺害・負傷させ、拘束した[195]。
同時期、革命防衛隊傘下のバスィージでは、抗議運動の武力弾圧を担うアシュラ大隊・アル=ザフラ大隊が2005年の約2,000個から2007年には約2,500個へ増加した[196]。
さらに2006年には、それまで中央に集中していたバスィージの情報収集機能が各地域へ拡散され、地域組織ごとに住民監視・情報収集部門が置かれた。構成員は「アヨーン」(Ayon、「目」)や「アシュラフ」(Ashraf、「監視」)と呼ばれる監視網にも組み込まれ、政治活動、学生運動、地域団体、出版・文化活動などを地域単位で監視・報告する網が拡大した[196]。
州軍団への再編
2007年9月1日、革命防衛隊戦略研究センター所長として抗議運動弾圧研究を進めてきたジャアファリーが革命防衛隊総司令官に就任した。ジャアファリーは国内の抗議運動を革命防衛隊が対処すべき「主要な脅威」と位置付け、バスィージを革命防衛隊の指揮系統へさらに深く組み込むとともに、革命防衛隊を州単位の指揮組織へ分割する再編を開始した[192]。
2008年にイスラム革命防衛隊州軍団が設置され、各州の革命防衛隊陸軍部隊とバスィージ地域組織を同じ州司令部の下に置く構造へ再編された。全国は31の州司令部に分割され、テヘランには二つの司令部が置かれた[192][197]。
この再編によって、革命防衛隊は各州の革命防衛隊陸軍部隊とバスィージを同じ指揮系統で動かせるようになり、地方で発生する抗議運動に対する革命防衛隊の弾圧能力も州単位で確保された[192]。
緑の運動弾圧と革命防衛隊情報機関の創設
2009年6月の大統領選挙後、不正選挙に抗議する緑の運動が全国へ拡大すると、革命防衛隊と傘下のバスィージが大規模な武力弾圧に投入された。革命防衛隊、バスィージなどの弾圧部隊は非武装の抗議参加者に対して実弾、催涙ガス、ゴム弾を使用し、多数の死傷者を出した[198]。
バスィージは学生寮や街頭で抗議参加者を殴打・拘束し、独自の拠点にも連行した。拘束された男性の一人は、地下室へ連行された直後にバスィージ3人から顔や膝から血が流れるまで殴打され、同じ場所に拘束された他の者も次々と激しく暴行されたと証言している[199]。革命防衛隊情報部門も、政治的理由で拘束した者を秘密拘禁施設に収容して尋問する弾圧に関与していた[200]。
「緑の運動」弾圧後、革命防衛隊情報局は革命防衛隊情報機関へ格上げされ、反体制派の監視、拘束、尋問などを担う独立性の高い情報・弾圧機関となった[201]。バスィージ司令官として緑の運動弾圧にあたったホセイン・タエブが革命防衛隊情報機関の最初の司令官となった。
同年にはバスィージも再編され、州革命防衛隊に対する計画、予算、兵站などを担う組織となった。これにより、州革命防衛隊、革命防衛隊情報機関、バスィージの地域組織と住民監視網が結び付けられ、革命防衛隊は街頭での武力弾圧だけでなく、住民監視、逮捕、秘密拘禁、尋問まで全国規模で担う巨大な国内弾圧機構へと肥大化した[197]。
2010年代には、街頭での武力弾圧と並行して、革命防衛隊情報機関による政治活動家、記者、学生、研究者、市民活動家などの監視・拘束も拡大した[202]。また、インターネットやソーシャルメディア上の活動についても革命防衛隊情報機関による監視が拡大し、多数の利用者が投稿内容などを理由に召喚・拘束された[203]。
2010年代も、2011年-2012年イラン抗議運動[204]、2017年-2018年イラン抗議運動[205]、2019年-2020年イラン抗議運動[206]など大規模な抗議運動が相次ぎ、革命防衛隊とバスィージは都度弾圧に投入された。
マフサ・アミニ抗議運動弾圧
2022年9月13日、ヒジャブ着用規則に違反したとして道徳警察に拘束された22歳のクルド人女性マフサ・アミニが、拘束中に受けた暴力によって同月16日に死亡した。この事件をきっかけに、イラン全土で「女性、命、自由」をスローガンにマフサ・アミニ抗議運動が発生した[207][208]。抗議運動は女性に対するヒジャブ強制への反対から、イスラム共和国の政治体制そのものに対する大規模な反体制運動へ発展した[209]。
当局は革命防衛隊、バスィージなどを弾圧に投入。各地で抗議参加者に対して実弾、散弾、金属弾、催涙ガスなどが使用され、多数の市民が殺害・負傷・拘束された[210][209]。
革命防衛隊情報機関も弾圧の中心的役割を担った。同機関は抗議運動の弾圧を調整・管理するとともに、インターネット利用の監視・通信速度の制限、反体制派の監視・拘束などを行った。革命防衛隊作戦部門も抗議運動弾圧に直接関与し、革命防衛隊とバスィージは抗議参加者に対して実弾を使用した[211]。
革命防衛隊と傘下のバスィージは各地で抗議運動の弾圧に投入され、実弾や半重機関銃などを使用して多数を殺害・負傷させ、負傷者のための血液を運搬していた車両への攻撃も行ったほか、大量拘束、暴行、強制的な「自白」などにも関与した[212][17]。拘束後の虐待にも革命防衛隊とバスィージが関与した。革命防衛隊、バスィージ、警察、情報機関などが拘束した抗議参加者に対し、殴打、鞭打ち、電気ショック、性的暴力などの拷問・虐待を行い、子供もその対象となった[213][214]。
この抗議運動では、2000年代後半から整備されてきた革命防衛隊州軍団、バスィージの地域組織、革命防衛隊情報機関からなる全国的な弾圧機構が一体的に動員され、さらに抗議運動が拡大した地域では革命防衛隊陸軍まで直接投入された[197][212]。弾圧後も革命防衛隊とバスィージによる地域社会への監視は強化され、2023年にはゴム州などでバスィージを街区単位で配置して反政府運動監視、ヒジャブ強制を行わせる人権抑圧体制強化が行われた[215][216]。
2025年-2026年抗議運動弾圧
2025年12月28日、深刻な経済危機を背景にテヘランで抗議運動が始まり、急速にイラン全国へ拡大した。抗議運動は経済政策への不満から、イスラム革命体制そのものに反対する大規模な抗議運動へ発展した[217]。
革命防衛隊と傘下のバスィージが各地で弾圧に投入されて、抗議参加者に発砲し、3万人以上が殺害された[218][219][220][221]。
革命防衛隊の州軍団も弾圧に直接関与した。米財務省は、革命防衛隊部隊が負傷した抗議参加者が収容されていた病院に侵入し、病院敷地内で催涙ガスや金属弾を発射して患者、家族、医療従事者を襲撃した事例を報告したほか、抗議参加者の殺害に関与した複数の革命防衛隊州軍団司令官を人権侵害を理由に制裁対象へ指定した[222]。
戦争や軍事介入
革命防衛隊はイラン・イラク戦争後も、レバノン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、イラク、シリアなど国外の戦争に繰り返し軍事介入し、外国領内への部隊投入、軍事拠点の設置、現地部隊の編成・訓練、砲撃・爆破・ミサイル攻撃、戦闘指揮などを行ってきた。
レバノン内戦への軍事介入
レバノン内戦では、イラン・イラク戦争中の1982年から革命防衛隊はレバノンへの軍事介入を開始しており、大規模部隊をシリア軍支配下のベッカー高原に送り込んだ。革命防衛隊はバールベック周辺に司令部、兵舎、訓練キャンプなどの軍事拠点を設置して駐留し、現地のシーア派武装勢力を組織・武装・訓練して、後にヒズボラとなるテロ組織の形成を支援した[223]。
革命防衛隊は現地テロ組織の支援だけではなく、レバノンへの部隊投入直後から現地で直接戦闘を行い、1982年11月にはバールベックのレバノン軍兵舎への攻撃に関与し[224]、1983年3月4日には親イラン勢力とともにレバノン軍部隊を待ち伏せして6人を殺害、12人を負傷させた[225]。
こうした革命防衛隊によるテロ的な軍事行動は、レバノン駐留多国籍軍や米国施設に対しても及んだ。1983年4月18日には革命防衛隊の指揮のもとベイルートの米国大使館が爆破されて63人が死亡した[226]。同年10月23日には、革命防衛隊の指揮のもと米海兵隊・フランス軍兵舎爆破事件が発生し、米軍人241人、フランス軍人58人が死亡した[227][228]。これに対し同年11月にフランス軍はバールベック周辺の革命防衛隊や親イランテロ組織の軍事拠点を空爆した[229]。
1988年には革命防衛隊はヒズボラ部隊を指揮して親シリア派シーア派武装組織アマル運動と交戦。同年4月にはアマルの攻勢によってヒズボラと革命防衛隊がレバノン南部から追放されたが、5月には約500人の革命防衛隊員がヒズボラ部隊を指揮してベイルート南部でアマルと激しい市街戦を展開した[230]。戦闘は機関銃、迫撃砲、戦車砲などを使用する大規模な市街戦となり、数週間で約300人が死亡、約1,000人が負傷した[231]。同月にはアマル側が、500~1,000人の革命防衛隊員がヒズボラとともに戦闘していると報告し、停戦交渉では革命防衛隊を武装解除してベイルート南部から撤去することも議題となった[232]。
1990年にレバノン内戦が終結した後も革命防衛隊は直ちには撤退せず、ベッカー高原に残留した。革命防衛隊の大部分が同地域から撤収したのは1991年とされる[233]。
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争への軍事介入
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では、革命防衛隊は1992年末からボスニア・ヘルツェゴビナ領内へ部隊を送り込み、ボスニア政府軍への軍事訓練・作戦指揮を行うだけでなく、革命防衛隊員自身も戦闘員として戦争に参加した。米政府は、1993年には数百人の革命防衛隊員がボスニア国内に展開していたと分析している[234]。米国防大学の研究では、紛争中に約1,500人の革命防衛隊の戦闘員・軍事顧問がボスニア政府側を支援したと推計されている[235]。
革命防衛隊員はボスニア軍部隊に軍事顧問・指揮官として入り込み、セルビア人勢力やクロアチア人勢力との前線戦闘にも参加したとされる[236]。革命防衛隊が訓練に深く関与した第7ムスリム旅団など、ボスニア政府軍のイスラム系部隊は中央ボスニアの戦闘に投入された[237]。
1994年5月には、大量の兵器・軍事装備を伴った革命防衛隊の大隊が新たにボスニアへ投入された。国際連合人権委員会特別報告者の報告書によれば、この革命防衛隊大隊はボスニア政府軍支配地域で特殊作戦を計画・実行し、反対派とみなされた人物の排除などにも関与した[238]。
革命防衛隊は通常の前線戦闘だけでなく特殊作戦にも関与しており、革命防衛隊員がボスニア軍の編制に入り、独立した部隊として新兵訓練と特殊作戦を担当していた[239]。元革命防衛隊幹部サイード・ガーセミも後年、ボスニアで革命防衛隊員が赤新月社要員を装って活動し、外国人イスラム戦闘員を軍事訓練していたと証言した。ただし革命防衛隊は、この証言をガーセミ個人の発言として否定している[240]。
戦争末期の1995年にもCIAは350~400人の革命防衛隊員がボスニア国内に残り、ボスニア軍の軍事訓練・指揮に従事していると分析していた[241]。デイトン合意成立後、革命防衛隊員の残留は外国軍撤収条項に抵触する問題となり、米国は革命防衛隊の撤収を要求した。1996年初頭にも約200人が残留していると報告され、米上院では必要であればNATO部隊によって革命防衛隊を撤去するための部隊を準備するよう求める決議案が提出された[242]。
その後、ボスニア政府は米国からの軍事援助を受ける条件として革命防衛隊など外国軍事要員の排除を進め、革命防衛隊の組織的な軍事駐留は解消された[234]。
アフガニスタン紛争への軍事介入
革命防衛隊は1990年代半ばからアフガニスタン紛争への軍事介入を拡大し、ゴドス軍要員をアフガニスタン国内へ送り込んだ。1996年から2001年にかけてゴドス軍将校は反ターリバーン勢力である北部同盟の支配地域で活動し、現地の反ターリバーン部隊の編成・訓練、軍事顧問活動を行った。これらの活動はゴドス軍司令官ガーセム・ソレイマーニーや同軍幹部イスマイル・ガーニーらの指揮下で行われ、ターリバーンとの戦闘に投入された[243]。
革命防衛隊ゴドス軍は、親イランのアフガン人部隊「セパー・エ・モハンマド」(Sepah-e Mohammad)を再編し、ターリバーンに対する軍事作戦に投入した。同部隊はヘラート市内で武装蜂起を試みるとともに、ヘラート州の国境地区へ武装部隊を送り込んだが、前者は鎮圧され、後者も待ち伏せ攻撃を受けて失敗した[244]。
1997年以降、革命防衛隊は同部隊を再び動員し、タハール州、ファラー州、ヘラート州などアフガニスタン各地へ投入した。革命防衛隊はハザラ人勢力や、アフマド・シャー・マスードらタジク人勢力を含む北部同盟にも軍事顧問を送り込み、ゴドス軍要員がアフガニスタン国内で部隊の訓練・編成・作戦調整を行った[244]。ソレイマーニーも北部同盟との主要な軍事連絡役として活動し、1998年にゴドス軍司令官となった後は北部同盟に対する革命防衛隊の軍事活動をさらに拡大した[245]。
1998年には革命防衛隊がアフガニスタン国境の兵力を大幅に増強し、ソレイマーニーも国境方面で軍事活動を指揮した。革命防衛隊を含むイラン軍は戦車、砲兵、装甲車、航空戦力などを国境地域へ集結させ、アフガニスタン西部への大規模な軍事作戦が可能な態勢を構築した[246]。革命防衛隊総司令官ヤヒヤ・ラヒーム・サファヴィーは、複数個師団を投入してヘラートまで侵攻し、ターリバーンを殲滅する作戦を策定し、最高指導者アリー・ハーメネイーに作戦実施の許可を求めている[247]。同年10月には同国境地帯でターリバーン部隊との直接戦闘も発生し、迫撃砲や機関銃が使用される戦闘が約3時間続いた[248]。この軍事対立はイランとターリバーン支配下のアフガニスタンとの全面戦争寸前まで拡大した[249]。
2001年のアフガニスタン戦争では、ゴドス軍は軍事顧問にとどまらず実戦にも関与した。米下院国土安全保障委員会の公聴会で提出された証言によれば、ゴドス軍将校はアフガニスタンのシーア派部隊を率い、北部同盟、アメリカ軍・イギリス軍特殊部隊とともにターリバーンと戦闘し、ヘラートおよびアフガニスタン西部の制圧作戦に参加した[250]。
ターリバーン政権崩壊後、革命防衛隊はそれまで戦っていたターリバーンとの関係を転換し、少なくとも2006年以降はゴドス軍が一部ターリバーン要員に小部隊戦術、爆発物、迫撃砲などの軍事訓練を行い、武器を供給した[132]。
アゼルバイジャンへの軍事介入と侵攻
1993年、イスラム革命防衛隊は第一次ナゴルノ・カラバフ戦争に軍事介入し、アゼルバイジャン領内へ軍事顧問・司令官を派遣するとともに、武器・軍事装備を投入した。革命防衛隊の要員はアゼルバイジャン軍の装備、訓練、作戦指導を行い、一部は戦闘にも直接参加した[251]。
革命防衛隊はさらに、グルブッディーン・ヘクマティヤール率いるヒズブ・イ・イスラーミーを利用し、アフガニスタン人戦闘員をアゼルバイジャンへ投入した[252]。同年秋までに1,000人以上のアフガニスタン人戦闘員がアゼルバイジャンへ到着し、南西部の戦線へ配備された。10月21日にはジェブライル方面でアゼルバイジャン軍とともに攻撃を開始し、アルメニア側陣地との戦闘に参加した[253]。11月までにアフガニスタン人部隊は1,000~1,500人規模に達し、ザンギラン方面で行われた攻撃ではアゼルバイジャン軍の攻勢を先導または支援したが、アルメニア側の反撃を受けて敗退した[254]。
イラクへの軍事介入
革命防衛隊は、イラン・イラク戦争終結後もイラク領内への軍事攻撃を繰り返し、イラク北部に拠点を置くイランの反体制組織を攻撃した。1993年7月には革命防衛隊がイラク領クルディスタンのスレイマニヤ州に越境侵入し、イランのクルド人反体制組織の拠点を攻撃したほか、イラク側のクルド人部隊とも交戦した[255]。
1994年と1996年には、革命防衛隊がイラク北部のイラン・クルド民主党の拠点を砲撃し、イラン空軍も空爆を実施した[256]。
1996年7月には約1,000~3,000人の革命防衛隊員がイラク北部に侵入し、砲兵やロケット砲を投入して反体制組織の拠点や難民居住地を攻撃した。この攻撃によって約2,000人のイラン人クルド人難民が避難を余儀なくされた[257][258]。
イラクに拠点を置くモジャーヘディーネ・ハルグに対してもミサイル攻撃を繰り返した。1994年11月6日にはイラク領内のアシュラフ駐屯地に向けてスカッド弾道ミサイルを発射した。1999年6月10日にもアシュラフ駐屯地がミサイル攻撃を受け、周辺のイラク人民間人にも負傷者が発生したと報告された[259]。
2003年のイラク戦争では、革命防衛隊の軍事部門として編成されたバドル軍団がイラン国境からイラクへ侵入し、米軍のバグダード進撃と並行して各地の都市・政府機関を占拠し、バアス党関係者や旧イラク軍関係者への報復攻撃・暗殺を行った[260]。
フセイン政権崩壊後、バドル軍団はバドル機構へ改称して政治組織化する一方、武装組織としての結束を維持し、構成員を新生イラクの内務省・警察へ浸透させた。2005年にはバドル機構とマフディー軍の構成員が内務省治安部隊、とりわけ警察部隊に広く入り込んでいた[261]。
また、革命防衛隊はゴドス軍要員をイラクへ送り込み、シーア派武装組織への資金・武器供給、軍事訓練、作戦指導を拡大した。革命防衛隊とヒズボラは自己鍛造弾(EFP)、ロケット弾、迫撃砲などを供給し、アサイブ・アフル・アル=ハクやカターイブ・ヒズボラなどの親イランテロ組織を育成して、米軍・連合軍、イラク政府部隊、民間人への攻撃を支援した[262]。
米軍撤収後の2012年以降もゴドス軍の軍事顧問がイラク国内に残り、現地武装勢力への指導を継続していた。2013年にはイラク人戦闘員をシリア内戦へ送り込んでいる[263]。
2014年6月、革命防衛隊はイスラム国とイラク政府軍の戦闘を利用してイラクへの軍事介入と支配力の拡大を進め、ガーセム・ソレイマーニーらを送り込んで長年育成してきた親イランテロ勢力を再編・動員した[264]。イスラム国の撤退後、革命防衛隊の指揮・支援下にあるシーア派テロ組織は、スンニ派住民への報復として超法規的殺害、拉致、拷問、略奪、放火を繰り返し、住民の帰還を妨げるため住宅、商店、モスク、公共施設を組織的に破壊し、住民を追放した[265]。
2020年には革命防衛隊がイラク国内の米軍拠点へ弾道ミサイルを発射し、2022年にはイラク・クルディスタン地域をミサイル・無人機で攻撃して民間人を死傷させた[266][267]。
2024年1月には革命防衛隊がアルビールの住宅地域を弾道ミサイルで攻撃して民間人を死傷させ、イラク政府から主権に対する侵略と非難された[268]。2026年には革命防衛隊がイラク南部に直属の秘密軍事細胞を組織し、イラク領内からクウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦への無人機攻撃を実行した[269]。
シリア内戦への軍事介入
2011年3月、シリアのバッシャール・アル=アサド政権(当時)は政治改革などを求める平和的な抗議運動を発砲、拘束、拷問などで弾圧し、それを契機に反政府運動が急速に拡大し、2012年には本格的なシリア内戦へ発展した[270]。革命防衛隊は遅くとも2011年4月までにアサド政権の弾圧に加担し、ゴドス軍はシリア総合情報局を支援した[271]。
2012年には革命防衛隊員をシリア領内へ投入する本格的な軍事介入が行われ、ゴドス軍はシリア軍の訓練、部隊編成、作戦立案を担うとともに、ヒズボラやイラクの親イランテロ組織を動員して地上作戦を組織した[272][273]。革命防衛隊自身も遅くとも同年1月までには実戦に参加しており、19日にはゴドス軍の革命防衛隊少佐モハッラム・トルクがダマスカスで戦死した[272]。2013年2月にはゴドス軍高級司令官の革命防衛隊准将ハッサン・シャーテリーがザバダニ付近で、11月にはゴドス軍司令官の革命防衛隊准将モハンマド・ジャマリザデ・パガレがアレッポで戦死した[263][272]。
2013年以降、革命防衛隊はイラン国内のアフガニスタン人を徴募したファテミヨン師団を編成させて、シリアのダマスカス、アレッポ、ホムスなどの前線へ送って次々と戦死させた。脅迫されて強制的に徴募された者も多かった[274]。前線に送られた戦闘員には14歳の児童も含まれ、複数の少年兵が戦死している。15歳未満の児童の戦闘参加は国際法上の戦争犯罪に当たる[275]。革命防衛隊指揮官は軽火器しか持たない部隊に前進を命じ、拒否すれば射殺すると脅迫し、実際に命令を拒否した者たちの脚を銃撃した。逃亡した者には、投獄だけでなく、家族に危害を加えることが示唆された[274]。
2014年以降は革命防衛隊陸軍も組織的に実戦へ投入され、2015年夏にはゴドス軍と陸軍を中心とする約700人がシリアで活動していた。同年9月にはさらに約2,500人が増派され、イラン軍事要員は約3,000人規模に達した。増派部隊はロシア軍の空爆と連携してアレッポなどの戦闘に投入され、同年後半だけで1,000人を超える革命防衛隊地上部隊が直接戦闘に参加した[272][276]。2016年の東アレッポ制圧後には、革命防衛隊とその指揮下部隊によるシリア国民や病院職員の虐殺、負傷者を搬送する救急車への発砲などが行われている[277]。
また、2018年以降、革命防衛隊はシリア領内からイスラエルへの直接攻撃を繰り返し、発射弾はアイアンドームに迎撃されるかイスラエル領に到達せず、攻撃は相次いで失敗した[278]。イスラエル軍はこれに反撃し、シリア国内の革命防衛隊の司令部、武器庫、情報施設、訓練施設、兵站拠点などに攻撃を行い、革命防衛隊のシリアの軍事インフラは大きな損害を受けた[279][280]。
2023年10月7日のハマースによるイスラエル南部へのテロ攻撃を受けて、イスラエルが全面反撃を開始すると、シリアの革命防衛隊の武器輸送・指揮網もイスラエル軍の空爆で大打撃を受け[281]、ヒズボラもイスラエルとの戦闘で消耗したため、シリアでのイラン勢力の軍事的支援能力は大幅に低下した[282]。
シリア駐在の革命防衛隊幹部もイスラエル軍の空爆で続々死亡し、2023年12月25日にはゴドス軍幹部の革命防衛隊准将ラジ・ムサビら[283]、2024年1月20日にはゴドス軍のシリア情報部門責任者サーデグ・オミードザーデら[284]、同年4月1日にはゴドス軍高級司令官の革命防衛隊准将モハンマド・レザ・ザヘディらがシリアで死亡した[285]。
2023年12月以降の高級幹部の相次ぐ空爆死を受け、革命防衛隊は2024年初頭からシリアへの高級司令官の配置を縮小し、高級司令官と数十人の中堅将校をシリアから撤収させた[286]。
さらに同年12月、反体制派の攻勢によってアサド政権軍が急速に崩壊すると、革命防衛隊はシリア各地の拠点から撤収を開始し、イラクやレバノンなどへ退避した[287]。革命防衛隊と親イラン勢力の撤収によって、革命防衛隊の軍事顧問に依存していたアサド政権軍は作戦指揮能力をさらに失い、12月8日にアサド政権は崩壊した[288]。
2023年10月7日のハマースによるテロ以降の戦争
2023年10月7日、革命防衛隊が長年にわたり支援してきたパレスチナのテロ組織ハマースが、イスラエル南部への大規模なテロ攻撃を実行した。革命防衛隊ゴドス軍や陸軍のサーベリーン特殊部隊はハマース戦闘員の訓練にも関与し、同組織の軍事力強化を支えてきた[289]。
10月7日テロを受け、イスラエルはハマースに大規模な反撃を開始した。イスラエル軍はガザ地区でハマースの司令部、軍事施設、武器庫、地下トンネル網などを次々と破壊し、ヤヒヤ・シンワルをはじめとする政治・軍事指導部の大半が死亡するなど、ハマースは壊滅的な打撃を受けた[290]。
革命防衛隊が構築してきた国外テロ組織網も次々と戦争に参戦した。レバノンのヒズボラはイスラエルへの攻撃を開始したが、イスラエル軍の反撃によって最高指導者ハサン・ナスララをはじめとする多数の幹部が死亡し、戦闘員の死者は最大約4,000人に達するなど、軍事組織に壊滅的な損害を受けた[291]。さらに、革命防衛隊とヒズボラが長年支援してきたシリアのアサド政権も、イスラエル軍の空爆によってシリア駐留の革命防衛隊や軍事支援網が弱体化し、ヒズボラもイスラエルとの戦闘で大きな損害を受けていたことで支援を失い、2024年12月8日に反体制派の攻勢によって崩壊した[292][293]。革命防衛隊はシリアに築いてきた主要な軍事拠点を失い、イランからイラク、シリアを経由してヒズボラへ兵器を供給する重要な経路も断たれた[294]。
2025年6月13日からの12日間戦争では、革命防衛隊は本国でも大きな打撃を受けた。イスラエル軍の空爆で、革命防衛隊総司令官フセイン・サラミ、航空宇宙軍司令官アミールアリ・ハジザデ、革命防衛隊情報機関長官モハンマド・カゼミ、イラン軍参謀総長モハンマド・バーゲリー、ハターム・アル・アンビヤー中央本部司令官ゴラム・アリ・ラシッド、同アリ・シャドマニら革命防衛隊の最高位の将軍たちが続々と死亡したほか[295]、革命防衛隊の弾道ミサイル発射機、ミサイル製造・保管施設、防空システム、軍事司令部なども次々に破壊された。同月16日までに弾道ミサイル発射機120基以上が破壊され、これはイランの保有する発射機の約3分の1に相当した[296]。アメリカ軍もイランの核施設への攻撃に参加し、核開発施設に攻撃を加えた[297]。
続く翌2026年2月28日からのイラン戦争でも、アメリカ軍とイスラエル軍がイラン全土の軍事拠点に大規模な空爆を実施。これにより最高指導者アリー・ハーメネイーが死亡したのみならず、革命防衛隊も総司令官モハンマド・パクプール、バスィージ司令官ゴラムレザ・ソレイマニ、革命防衛隊海軍司令官アリレザ・タングシリ、革命防衛隊情報機関長官マジド・ハデミら最高幹部が相次いで空爆により死亡し、前年に続いて多数の高級将校を失った[298][299][300]。革命防衛隊の司令部、情報施設、弾道ミサイル基地、ミサイル・無人航空機製造施設、軍需工場、防空施設、海軍基地なども集中的に空爆され、同年4月6日までにアメリカ軍だけでイラン国内の1万3,000か所以上の目標を攻撃し、イランの艦艇155隻以上を損傷または破壊した[301]。アメリカ情報機関の同年3月下旬の評価では、イランのミサイル備蓄の約3分の1が破壊され、さらに約3分の1が損傷・破壊されたか地下施設に埋没したと推計された[302]。
革命防衛隊が支援するヒズボラも2026年3月にイスラエルへの攻撃を再開したが、イスラエル軍の大規模な反撃によってさらに数千人規模の戦闘員を失うなど、戦闘力が大きく損なわれた。レバノン政府もヒズボラの軍事活動を禁止し、革命防衛隊がレバノンに築いてきた軍事的影響力はさらに低下した[303]。
革命防衛隊の軍事力やテロ支援能力は大きく弱体化した一方、イラン国内では最高指導者アリー・ハーメネイーの空爆死によって宗教指導者や政府の権力が低下し、軍事を掌握する革命防衛隊への権力集中が進んでいると見られている。これにより、イランの統治体制が従来の宗教権威主義体制から革命防衛隊を中心とした軍事権威主義体制へ移行する可能性も指摘されている[304][305]。
パクプール戦死後、革命防衛隊総司令官に就任したのはAMIA爆破事件の被疑者であるアフマド・ヴァヒーディーである。
- 2023年10月7日のハマースによるテロ以降の戦争で死亡した主な革命防衛隊の最高幹部
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革命防衛隊総司令官ホセイン・サラミ革命防衛隊少将。12日間戦争で空爆死。
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革命防衛隊総司令官モハンマド・パクプール革命防衛隊少将。イラン戦争で空爆死。
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革命防衛隊海軍司令官アリレザ・タングシリ革命防衛隊准将。イラン戦争で空爆死。
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革命防衛隊航空宇宙軍司令官アミールアリ・ハジザデ革命防衛隊准将。12日間戦争で空爆死。
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革命防衛隊情報機関長官マジド・ハデミ革命防衛隊少将。イラン戦争で空爆死。
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バスィージ司令官ゴラムレザ・ソレイマニ革命防衛隊准将。イラン戦争で空爆死。
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イラン軍参謀総長モハンマド・バーゲリー革命防衛隊少将。12日間戦争で空爆死。
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ハターム・アル=アンビヤー中央本部司令官ゴラム・アリ・ラシッド革命防衛隊少将。12日間戦争で空爆死。
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ハターム・アル=アンビヤー中央本部司令官アリ・シャドマニ革命防衛隊少将。12日間戦争で空爆死。
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ゴドス軍レバノン軍団司令官モハンマド・レザ・ザヘディ革命防衛隊准将。2024年4月、シリアで空爆死。
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ゴドス軍レバノン軍団司令官アッバス・ニルフォルーシャン革命防衛隊准将。2024年9月、レバノンで空爆死。
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ゴドス軍シリア情報部門長サーデグ・オミードザーデ革命防衛隊准将。2024年1月、シリアで空爆死。
任務
イラン・イスラーム共和国憲法第150条は、イスラム革命防衛隊について「革命とその成果を守る」役割を継続するため存続させると定めている[306]。革命防衛隊の活動は、国内の反体制派や抗議運動に対する監視・拘束・弾圧、通常戦、弾道ミサイル・無人航空機の運用、海上での非対称戦、国外への軍事介入、外国テロ組織・武装組織への軍事支援、国外での秘密工作やテロ活動などに及んでいる[12][307]。
国内では、革命防衛隊とその傘下のバスィージが、反体制派や政治的反対勢力に対する情報収集・監視、抗議参加者の拘束、抗議運動や反体制運動の弾圧に投入されてきた[12][308]。バスィージは革命防衛隊の指揮下で国内各地に組織網を形成し、反体制活動に関する情報収集や抗議運動の弾圧を担う一方、戦時には多数の人員を動員してゲリラ戦・非正規戦を行う戦力としても位置付けられている[12]。
軍事面では、革命防衛隊は正規軍(Artesh)とは別に、陸軍、海軍、航空宇宙軍を保有し、通常戦力と非対称戦力の双方を運用している[5][307]。航空宇宙軍は革命防衛隊の弾道ミサイル、巡航ミサイル、無人航空機などの主要な長距離攻撃戦力を管轄している[5]。
革命防衛隊海軍は主としてペルシア湾とホルムズ海峡で活動し、小型高速攻撃艇の大量運用、スウォーム戦術、対艦ミサイル、機雷、沿岸からの接近阻止・領域拒否戦力などを組み合わせ、より大規模な通常海軍に対抗する非対称海上戦を重視している[309]。高速艇、ミサイル、沿岸戦力を多層的に運用し、ホルムズ海峡の狭い海域を利用して敵艦艇の行動を妨害・攻撃することがその戦術の中心となっている[309]。
国外ではゴドス軍が革命防衛隊の対外作戦を担い、外国への要員・軍事顧問の派遣、テロ組織・武装組織への資金、武器、訓練、軍事技術、作戦上の支援を行ってきた[7]。ヒズボラ、ハマース、パレスチナ・イスラーム聖戦、カターイブ・ヒズボラなどのテロ組織に対する資金・武器・訓練などの支援に加え、フーシやイラク・シリアの外国武装組織への軍事支援にも関与してきた[7]。
ゴドス軍は外国のテロ組織を支援しているだけではなく、自らも国外で秘密工作やテロ活動を実行してきた。欧州、中東、アフリカ、北米などで、反体制派、イスラエル人・ユダヤ人、米国政府関係者などを標的とした暗殺・誘拐・テロ計画に関与している[7][307]。
兵士
徴兵制度
イランでは18歳以上の男性に兵役が義務付けられており、徴集兵は正規軍のほか、イスラム革命防衛隊や警察部隊にも配属される。兵役期間は配属地域や任務などによって異なり、2026年時点では原則として14か月から24か月となっている[310]。
1991年に制定された革命防衛隊人事法第6条では、革命防衛隊の人員を常勤職員、徴集兵、契約職員、バスィージ要員の4種類に区分しており、第11条は徴集兵を一般兵役法に基づいて義務兵役または予備役勤務に従事する者と規定している。このため、革命防衛隊には自発的に入隊した職業軍人だけでなく、徴兵義務によって一定期間勤務する徴集兵も所属している[311]。
革命防衛隊は徴集兵について思想的・政治的な選別を行っている。2009年の抗議デモ「縁の運動」後、革命防衛隊は2010年に徴集兵の選抜制度を変更し、傘下の民兵組織であるバスィージの活動員が優先的に配属される制度を導入した[312][313]。革命防衛隊に配属された徴集兵の70%以上がバスィージの活動員であり、一部の大都市ではその割合が100%に達しているとされる。これらの徴集兵はバスィージの地域組織を通じて選抜され、革命防衛隊の各部隊や関連機関に配属される。また、バスィージで軍事訓練を修了していた者は、徴兵後の基礎訓練を免除される場合がある。イラン全体で年間約40万人が徴兵され、そのうち約5万人が革命防衛隊に配属されると見られている[313]。
ただし、革命防衛隊に配属される徴集兵の全員がバスィージ活動員というわけではない。バスィージの活動員が不足する貧困地域などでは、一般の徴兵対象者が本人の希望によらず革命防衛隊に配属される場合がある。こうした徴集兵は革命防衛隊の徴兵受け入れ人数の最大20%を占め、その大半は高卒以下の学歴である。また、大学院修了者などの徴集兵であれば、アムリイェ(امریه)制度を利用し、革命防衛隊の関連機関で事務職や専門職に従事する場合もある[313]。
徴集兵は原則として配属される軍種や部隊を自由に決定することはできず、徴集兵の配属先には、革命防衛隊、正規軍、警察などの人員需要と、学歴や専門技能のほか、軍内部の人脈などが左右する。大学卒業者は徴集兵であっても少尉などの将校階級を与えられる場合がある[314]。一方で、縁故を利用して希望する部隊への配属を得る者もいる。イラン代表のサッカー選手メフディ・タレミ(مهدی طارمی)は、父親が革命防衛隊に所属していた経歴と軍内部の人脈を背景に、2010年から2012年にかけて地元ブーシェフルの革命防衛隊海軍で兵役に従事した[315]。
革命防衛隊では、軍の関連施設やスポーツ団体で兵役に従事する制度も存在する。たとえば。徴兵対象となったサッカー選手は、革命防衛隊陸軍系のファジュル・セパーシー・シーラーズなどの軍系列クラブに配属され、兵役期間中も競技活動を続けることができる。2026年9月には、イラン代表のゴールキーパーであるアリレザ・ベイランヴァンドの兵役履行先として同クラブが指定されたが、本人は医学的な兵役免除の審査を申請している[316]。
兵役対象者には徴兵前に兵役検査を受けることが義務付けられている[310]。検査結果に応じて上から、通常兵役、非戦闘任務配属、一時的兵役免除、永久兵役免除の4区分に分類される[310][317]。永久免除は、悪性腫瘍、1型糖尿病、冠動脈疾患、てんかん、統合失調症、重度視力障害など、重大な疾患持ちが対象となり得る他、身長145cm未満(大学卒業以上は140センチ未満)も対象となる[317]。一方、重度の肥満(BMI35超)は永久免除の対象とは認められず、原則として非戦闘任務配属となる[317]。比較的軽度な疾患・障害持ちも非戦闘任務配属となることが多い[317]。一時的兵役免除は、回復可能な疾患持ちで、原則1回につき最長1年間兵役が免除され、回復後に再度兵役検査にかけられる[317]。ちなみに兵役検査の基準は正規軍も革命防衛隊も同じである[317]。
規模
革命防衛隊の現役兵力は19万人以上と推計されている[11][318]。このほか、傘下のバスィージは約60万人を動員可能な規模を有する[11]。
革命防衛隊:19万人以上
比較すると、正規軍(Artesh)の現役兵力は約42万人であり、内訳は以下の通りである[11][318]。
正規軍:約42万人
-
- 陸軍:約35万人
- 海軍:約1万8,000人
- 空軍:約3万7,000人
- イラン・イスラム共和国防空軍:約1万5,000人
編成と装備
革命防衛隊の装備は、イラン革命以前に親密な関係にあったアメリカや欧州諸国から導入された兵器と、革命後に導入された旧ソ連・ロシア、中華人民共和国、北朝鮮などの兵器、さらに外国製兵器を基に国内で生産・改修された国産兵器が混在している[5][319][320]。
革命前の親米帝政期にはアメリカから大量の軍用機、戦車、火砲、ヘリコプターなどを購入したほか、イギリスをはじめとする欧州諸国からも兵器を輸入していた[321]。革命後に反米へ転じた後、中国、北朝鮮、旧ソ連・ロシアなどから兵器を導入するようになった[322]。イラン・イラク戦争中には中国が戦車、火砲、航空機、対艦ミサイル、小火器などを供給し、北朝鮮も主要な武器供給国となった[323][320]。
この結果、設計年代や製造国の異なる旧式兵器が多数混在し、革命以前の西側製装備も一部が現在まで使用されている状態になっている[5]。
陸軍
革命防衛隊陸軍は15万人以上の兵員を擁すると推計され、革命防衛隊で最大の部門である[11]。部隊は全国31州に置かれた州軍団とテヘランを担当する軍団を基礎とする地域別の指揮体系に編成され、このほか歩兵、機甲、砲兵、特殊作戦部隊などを保有している[5]。旧来の師団・旅団編制も一部に残されている[5]。
地上部隊では軽歩兵・コマンド部隊の比重が大きく、機甲部隊では1970年代設計の旧ソ連系戦車・装軌車両や、イラン革命以前に導入されたアメリカ製戦車など旧式装備も使用されている[5]。砲兵部隊は牽引砲、自走砲、多連装ロケット発射機を運用し、防空部隊も旧ソ連系を中心とする自走式・移動式対空兵器を保有している[5]。
小火器は、H&K G3のライセンス生産品と不正コピー、中華人民共和国製の56式自動歩槍を含むAK-47・AKM系列、CQ 311系列などを使用している[324][325]。中華人民共和国製CQ系列はアメリカのM16系列を基にした無許可コピーであり、イランでもCQを基にしたS-5.56などの不正コピーが生産されている[325]。
海軍
革命防衛隊海軍は約2万人の兵員を擁し、このうち約5,000人が海兵隊員と推計されている[326]。
正規軍のイラン・イスラム共和国海軍とは別個に編成され、主としてペルシア湾とホルムズ海峡を担当する一方、正規軍海軍はオマーン湾以遠の外洋での活動を主に担っている[327]。正規軍海軍には革命以前に導入された英国・米国などの旧式艦艇が長く残され、既存艦の改修・延命への依存が大きい一方、革命後の海軍装備への投資は高速攻撃艇、沿岸対艦ミサイル、機雷など革命防衛隊海軍が運用する非対称戦用装備へ重点的に配分されてきた[327][328]。そのため、革命防衛隊海軍の装備の中心は大型水上戦闘艦ではなく、小型の高速攻撃艇・哨戒艇である[327][5]。保有艇の正確な総数は不明であるが、米海軍情報局と米国防情報局はいずれも、革命防衛隊海軍がペルシア湾一帯に数百隻の小型艇を配備しているとしている[327][5]。
革命防衛隊海軍の小型艇戦力には中華人民共和国製および北朝鮮製の艇が多数含まれ、1996年から2006年までに両国から約46隻の高速攻撃艇を導入した[327]。北朝鮮からは4種類の魚雷艇を導入し、このうち2種類は半潜水型または潜水型の小型艇であった[327]。
- 高速攻撃艇・沿岸戦闘艇
- 中華人民共和国製ホウドン級(トンダル級)ミサイル艇:約10艇[327][5]。1990年代に中国から導入された艇で、当初は中国製C-802対艦ミサイルを装備していた[327]。
- ペイカープ級:ペイカープI型約15艇、ペイカープII型約25艇、ペイカープIII型約5艇[327][5]。ペイカープI型は北朝鮮から導入された小型艇を基礎とし、その後イラン国内で派生型が生産された[329]。
- 北朝鮮からはこのほか複数種類の魚雷艇・半潜水型・潜水型小型艇も導入された[327]。
- スウェーデン製ボガマール・マリン級高速艇:約20艇[327][5]。
- このほか、Tir、Tarlan、Kashdom II、Ashoora、Siraj、Ra'd(ラアド)など多数の小型哨戒艇・高速艇を保有するが、一部の艇種については正確な保有数が確認されていない[327][5]。
小型艇の多くは大型軍艦と比較して武装・防御力が限定され、機関銃、ロケット、魚雷、小型対艦ミサイルなどを搭載する[327]。多数の小型艇を分散して運用することを前提としているが、2026年イラン戦争では米国・イスラエルの空爆で革命防衛隊海軍の基地・艦艇が多数攻撃された[330]。
- 揚陸・支援艦艇
2020年には商船を改造したシャヒド・ルーダキーが革命防衛隊海軍に編入された。同艦は本来の軍用艦として建造されたものではなく、貨物船を改造してヘリコプター、小型艇、車両などを搭載できるようにした支援艦であり、防御力は限定的である[331]。
2025年にはコンテナ船を改造した無人航空機運用艦シャヒド・バゲリが革命防衛隊海軍に編入された[332]。同艦も新造空母ではなく民間用コンテナ船を改造した艦艇であり、2026年イラン戦争では米軍の攻撃を受けて大きな損傷を受けた[333]。
- 沿岸対艦ミサイル
革命防衛隊海軍は沿岸配備型の対艦巡航ミサイルも運用している[327]。イラン・イラク戦争中には中華人民共和国製HY-2「シルクワーム」対艦ミサイルが導入され、その後も中華人民共和国製C-802およびC-700系列を基礎としたミサイルが導入・複製された[327]。C-802を基にしたNoor、その派生型であるGhader、Ghadirなどが沿岸対艦ミサイルとして配備されている[327]。
- 航空戦力
革命防衛隊海軍は少数のMi-171輸送ヘリコプターやAB-206軽ヘリコプターを運用している[327]。
- 海兵隊
海兵隊員は約5,000人と推計されている[326]。
航空宇宙軍
革命防衛隊航空宇宙軍は約1万5,000人の兵員を擁し、有人航空機部隊のほか、革命防衛隊の戦略ミサイル部隊や無人航空機部隊を管轄している[334]。有人航空機戦力は比較的小規模で、旧ソ連製・ブラジル製・中華人民共和国製などの旧式航空機が混在しており、正確な稼働数については不明な部分が多い[335]。
2026年版『World Air Forces』が2026年イラン戦争以前に記録した有人航空機戦力は、以下の通りである[336]。
- 攻撃機
- 旧ソビエト連邦製Su-22M4/UM3K:9機[336]。
- 練習・軽攻撃機
- ブラジル製エンブラエル EMB-312「ツカーノ」:15機[336]。
- パキスタン製MFI-17ムシュシャーク:25機[336]。
これらの有人航空機の多くは設計の古い機体であり、航空宇宙軍の航空機部隊は、正規軍空軍のような大規模な戦闘機部隊を構成していない[337][336]。また、2026年イラン戦争では、シーラーズで革命防衛隊航空宇宙軍のSu-22が攻撃対象となり、衛星画像では少なくとも2機のSu-22が地上で破壊されたことが確認されている[338]。このため、戦争前に公表された保有数と現在の実際の稼働数は一致しない[338]。
弾道ミサイル戦力については、正規軍空軍は保有しておらず、革命防衛隊航空宇宙軍が独占している。同軍隷下のアル=ガディール・ミサイル軍団(Al-Ghadir Missile Command)がそれを運用している[339]。
米国のWisconsin Project on Nuclear Arms Controlは、航空宇宙軍隷下の部隊として第5ラアド・ミサイル旅団、第7アル=ハディド・ミサイル旅団、第15ガエム・ミサイル旅団、第19ゾルファガール・ミサイル旅団、第23タウヒード・ミサイル旅団を挙げている[337]。
航空宇宙軍の弾道ミサイルには旧ソ連および北朝鮮由来の兵器を基礎としたものが含まれ、シャハブ1は旧ソ連製スカッドBと北朝鮮製派生型を起源としている[340]。シャハブ2は北朝鮮製「火星6」から派生した短距離弾道ミサイルである[341]。シャハブ3は1990年代に北朝鮮から取得した「ノドン1」を基礎として組み立てられた中距離弾道ミサイルである[342]。このほかファテフ110、ファテフ313、ゾルファガール、キアム、セッジールなどを運用している[343]。
2026年イラン戦争では、航空宇宙軍の弾道ミサイル発射機、貯蔵施設、製造施設、指揮施設が米国・イスラエル軍による大規模な攻撃対象となった[344][345]。イスラエル国防軍は4月20日、開戦時に存在したと推定する弾道ミサイル発射機の60%を無力化したと発表した[346]。同軍は3月24日時点で、弾道ミサイル部隊への600回以上の航空作戦を実施し、発射機、発射拠点、製造施設を継続的に攻撃した結果、革命防衛隊の弾道ミサイル部隊が弱体化したとの情報評価を公表している[345]。
米中央軍は5月19日、38日間の米・イスラエル軍の作戦により、イランの弾道ミサイル・無人機・海軍関連の防衛産業基盤の85%以上を損傷または破壊したと報告している[344]。米中央軍はさらに、兵器製造施設に対する1,450回以上の攻撃によって弾道ミサイルと長距離無人機の製造・備蓄能力が数年単位で後退し、製造工場と技術要員への損害によって失われた能力を短期間に補充できない状態になったと評価した[344]。弾道ミサイルの貯蔵施設や関連システムにも450回以上の攻撃が行われ、多数のミサイルや移動式発射機が破壊または地下施設内に埋没したと米中央軍は報告している[344]。
2026年9月には既存在庫の部品を用いた弾道ミサイルの組み立てが地下施設で再開されたものの、生産量は戦争前より少量にとどまっていると報じられた[347]。
無人航空機部隊 航空宇宙軍は独自の無人航空機部隊を保有し、モハジェル6、Shahed 123、サーエゲ、シャヘド129などを運用している[348]。同部隊はシリア内戦にも投入され、偵察・攻撃任務を行った[348]。
2011年にはイランがアメリカ製ステルス無人偵察機RQ-170 センチネルを回収し、その後、外形や構成を模倣したShahed 171やサーエゲが開発された[349]。2018年2月には、シリアからイスラエル領空へ侵入したイラン製Shahed 171系列の無人機がイスラエル空軍のAH-64攻撃ヘリコプターによって撃墜された[349]。
ゴドス軍
ゴドス軍(نیروی قدس、ニールーイェ・ゴドス、国外では「コッズ部隊(Quds Force)」とも表記される)は、イスラム革命防衛隊の対外工作活動を担う部門であり、国外での非正規戦、秘密工作、イランが支援するテロ組織への資金・武器供与・軍事訓練などに関与する[7]。具体的にはハマース、ヒズボラ、フーシなど中東各地のテロ組織の支援、イスラエル・アメリカ・ヨーロッパ・サウジアラビアなど西側諸国や敵対国に対する破壊工作、国外のイラン反体制派の殺害などである[350]。
ゴドス軍の兵力は約5,000人から1万5,000人と推定されている[351]。2026年現在の司令官はエスマイル・カーニである[352]。
地域別組織として、イラクを担当するラマザン軍団、アフガニスタン方面を担当するアンサール軍団、アラビア半島方面を担当するラスールッラー軍団、レバノンを担当するレバノン軍団、パレスチナテロ組織との連絡・支援を担当するパレスチナ軍団などがある[353][354][355]。
レバノン軍団は、イスラエル軍の斬首作戦の対象になる者が多く、司令官モハンマド・レザー・ザヘディが2024年4月にシリアで排除され、その後司令官となったアッバス・ニルフォルーシャンも同年9月にヒズボラ最高指導者ハサン・ナスララとともにベイルートで排除され、その後任ダーヴード・アスカリ(別名ダーウード・アリーザーデ)も2026年3月にイランで排除されている[354]。パレスチナ軍団司令官サイード・イザディも2025年6月21日にイランで排除されている[356]。
専門部隊の第400部隊は、国外での特殊作戦、秘密工作、テロ攻撃の計画・支援などを担当する[353]。
第840部隊は国外特殊作戦部隊として、外国人工作員や犯罪組織の構成員などを募集し、イスラエル人・ユダヤ人などを標的とするテロ攻撃を国外から指揮してきた[353][357]。第840部隊司令官アスガル・バゲリは2026年4月にイスラエル軍によって排除されている[358]。
第190部隊は、ゴドス軍による国外への武器密輸・輸送とその兵站を担当し、陸路、空路、海路を使用してシリア、レバノン、イエメンなどへ兵器を移送してきた[353][359]。第190部隊司令官ベーナム・シャフリヤリは、ヒズボラ、ハマース、フーシなどへの武器・資金移送を指揮していたが、2025年6月にイスラエル軍によって排除された[360]。
第340部隊は兵器研究・技術部門として、武器の開発や技術移転を担当し、ヒズボラ、フーシ、イラク・シリアのシーア派武装組織、パレスチナ・イスラム聖戦、ハマースなどへの兵器技術移転に関与している[353]。
ゴドス軍は国外のイラン大使館なども秘密工作の拠点として利用している。2007年のアメリカ・戦略国際問題研究所の報告書では、各国のイラン大使館内に一般の大使館職員も立ち入ることのできないゴドス軍専用の部門が設置されており、駐在大使でさえその活動を管理・把握しているか不明であるとされる[361]。
元CIA工作員のロバート・ベアによれば、ゴドス軍の構成員は通信傍受を警戒して電話などの通信機器を避け、命令の伝達には伝令を用いているとされる[362]。
バスィージ
バスィージ(サーズマーネ・バスィージェ・モスタズアフィーン)は、イスラム革命防衛隊の傘下に置かれる準軍事組織であり、イラン全土の各州・都市に組織網を持つ[18]。動員可能な人員については推計に幅があるが、約60万人を動員できるとする推計もある[11]。
ルーホッラー・ホメイニーは1979年11月25日、イスラム共和国を防衛するための「2000万人の軍隊」の創設を呼びかけ、これを受けて1980年4月30日に正式にバスィージが設立され[89]、イラン・イラク戦争で大量の義勇兵を前線に送り、少年兵を含む訓練の乏しい隊員を人海戦術に投入した[89]。
バスィージは平時には秘密警察の役割も果たし、革命体制への忠誠心の浸透、反体制活動の監視や弾圧などを担う[199]。革命体制の批判者を密告する者なども含めると、その広範な組織網は500万人規模とも報じられている[363][5][364]。
バスィージ構成員は、戦時に動員される一般隊員、政治・思想教育を受けた活動隊員、革命防衛隊と兼務する特別隊員などに区分される[365]。
バスィージはイラン全土に地域組織を持ち、末端組織である「抵抗基地」(پایگاه مقاومت بسیج)10〜15か所で「抵抗区」(حوزه مقاومت)を、さらに抵抗区10〜15か所で「抵抗地区」(ناحیه مقاومت)を構成する[366]。
また、職業・社会階層ごとの組織として「商工業者バスィージ」(بسیج اصناف)、「労働者バスィージ」(بسیج کارگران)、「遊牧民バスィージ」(بسیج عشایر)、「公務員バスィージ」(بسیج ادارات)、「生徒バスィージ」(بسیج دانشآموزی)、「大学生バスィージ」(بسیج دانشجویی)などが置かれ、学校、大学、官公庁、職場などにも組織網を広げている[89]。
弾圧実行部隊として、男性を主体として地域レベルの弾圧や緊急時の動員を担う「アーシューラー大隊」(گردانهای عاشورا)と、女性を主体とする「アル=ザフラー大隊」(گردانهای الزهرا)がある[367][368]。この部隊は各地のバスィージ組織に多数編成されており、2015年時点で、アーシューラー大隊は全国に約4,200個、アル=ザフラー大隊は約1,800個存在すると推計されていた[367]。
バスィージは選挙では対外強硬派を支持する投票人の動員に利用されるほか、不正選挙への関与も繰り返し指摘されている[369][370][89]。
バスィージは国外での戦闘要員の徴募・訓練にも関与しており、シリア内戦ではアサド政権を支援するために派遣されるイラン人戦闘員を募集・訓練した。少なくとも2015年初頭からバスィージは戦闘員を募集して軍事訓練を施し、シリアへの派遣待機者として登録していた[18][275]。
階級
対外軍事協力
革命防衛隊の対外軍事活動は、ゴドス軍によるテロ組織への武器、資金、軍事訓練、情報などの支援に加え、ロシア、中国、北朝鮮などとの軍事・兵器協力にも及ぶ。こうした活動は、イランの提唱する「イスラム革命」の輸出と、反米・反イスラエル・反西側諸国の立場を取る勢力の軍事的能力向上を目的としている[11][371]。
テロ組織への支援
革命防衛隊、とりわけ対外工作を担うゴドス軍は、中東を中心として多数のテロ組織に資金、武器、軍事訓練、情報、兵站、兵器技術などを提供し、イランの対外影響力を支える支援網を構築している。革命防衛隊またはゴドス軍が支援しているテロ組織として、レバノンのヒズボラ、パレスチナのハマース、パレスチナ・イスラーム聖戦(PIJ)、パレスチナ解放人民戦線総司令部(PFLP-GC)、アル=アクサ殉教者旅団、ハラカト・アル=サービリーン、イラクのカターイブ・ヒズボラ、アサーイブ・アフル・アル=ハク、ハラカト・ヒズボラ・アル=ヌジャバー、カターイブ・サイイド・アル=シュハダー、ハラカト・アンサール・アッラー・アル=アウフィヤ、カターイブ・アル=イマーム・アリー、バーレーンのアル=アシュタル旅団、サラヤ・アル=ムフタール、イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)などが挙げられている[372][373][7][135][374][375][376][377][378][379][380][381][382]。
支援規模は各テロ組織によって大きく異なり、特にヒズボラへの配分が突出している。2025年の推計では、革命防衛隊のヒズボラへの支援は約20億ドルに達したとされる一方、ハマースなどパレスチナのテロ組織への支援は年間最大約1億ドル、フーシ派への軍事・財政支援は年間約1億~3億ドルと推計されている[383]。
国際戦略研究所は、革命防衛隊がテロ組織支援の中でヒズボラを最優先にしてきた背景として、シーア派・ホメイニ主義の強い宗教的・思想的・組織的結び付きを持つ上、米国やイスラエルに対する攻撃能力を担う最重要組織と位置付けているためと分析している[377]。一方、ハマースなどのパレスチナのテロ組織は、宗教・思想・組織・戦略いずれにおいても、ヒズボラほど革命防衛隊との親和性が高くないため、支援の優先順位も低いと分析されている[384][377]。
イエメンでは、フーシ派が革命防衛隊から武器、ミサイル・無人航空機技術、訓練などの支援を受けており、その規模は年間約1億~3億ドルと推計されている[383]。ヒズボラより支援額が少ない背景には、フーシ派が独自の指導部と政治・軍事的意思決定能力を持ち、革命防衛隊との一体性・統制可能性が低いことがあると分析されている[385][382]。
ゴドス軍はターリバーンやアルカーイダにも支援を行ってきた。ターリバーンには少なくとも2006年から武器、資金、兵站、軍事訓練を提供し、米軍・連合軍への攻撃を支援したと米財務省・国務省が認定している[386][387]。アルカーイダについても、ゴドス軍が1990年代から同組織要員に爆発物・兵器訓練を行い、2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降には逃亡したアルカーイダ要員に避難場所、資金、武器を提供したほか、2003年にはアブー・ムスアブ・アッ=ザルカーウィーに資金・武器を供与してイラクへの移動を支援したことを米連邦裁判所が認定している[388][389]。
革命防衛隊のテロ組織支援の手法は、現金や兵器を直接引き渡すだけではない。軍事訓練、武器供与、人員派遣、共同作戦などの軍事的支援に加え、資金、兵站、戦闘員募集、社会サービス、政治・組織的支援などの非軍事的支援も行い、支援先の短期的な戦闘能力だけでなく、長期的な組織基盤の形成にも関与している[390]。
革命防衛隊のゴドス軍は、イラク、アフガニスタン、レバノンなどで、革命防衛隊やイラン政府が所有・支配する企業・団体を介し、表面上合法的な企業活動、経済投資、復興事業、社会サービス、宗教・慈善活動などを利用して情報活動やテロ組織への支援を隠蔽してきた[374]。さらにフロント企業を通じた資金洗浄、石油販売、武器密輸、宣伝活動、宗教団体への寄付金の流用なども確認されている[391]。
また革命防衛隊は、国外の犯罪組織や殺し屋を利用した暗殺・殺害工作にも関与している。2024年には革命防衛隊准将らが東欧の犯罪組織を雇い、米国内のイラン系反体制活動家を暗殺しようとしたとして米司法省に起訴されている[392]。米財務省も、革命防衛隊が反体制活動家、ジャーナリスト、米政府関係者らを対象とした国外での暗殺・拉致工作の中で、自身の関与を隠すため組織犯罪集団を利用していることを指摘している[393]。
ロシアのウクライナ侵略への支援
イスラム革命防衛隊は、ロシアのウクライナ侵略に無人航空機、弾道ミサイル、軍事技術、訓練を提供することで軍事的に加担している。
2022年10月、イギリス政府は、革命防衛隊要員がロシア占領下のウクライナ領内でロシア軍にイラン製攻撃用無人航空機の運用を指導していたとし、革命防衛隊航空宇宙軍無人機司令部司令官サイード・アガジャニを資産凍結・渡航禁止の制裁対象とした[394]。同年11月、欧州連合も、革命防衛隊総司令官フセイン・サラミと航空宇宙軍司令官アミールアリ・ハジザデについて、ロシアがウクライナ侵略に使用する無人航空機供給の責任者として制裁対象に指定した[395]。
2023年7月、欧州連合はイランによるロシアの侵略戦争への軍事支援に特化した新たな制裁制度を創設。イランへの無人航空機製造用部品の輸出を禁止するとともに、イランの無人航空機計画に関与する個人・組織を資産凍結・渡航禁止の対象とすることを可能にした[396]。同年12月、EUはこの制裁制度に基づく最初の指定を行い、革命防衛隊向けの無人航空機部品を製造し、ロシアに輸出されたシャヘド型無人航空機の部品にも関与したバハーレスターン・キーシュ社(شرکت بهارستان کیش)や、ゴドス軍の無人航空機計画の改良、飛行試験、技術支援、部品調達に協力していたキミア・パート・シヴァン社(شرکت کیمیا پارت سیوان、KIPAS)などを制裁対象に指定した[397]。この際にEUは、革命防衛隊がイラン国防軍需省とともに、無人航空機の調達、開発、製造、ロシアへの移転に関与していることを指摘している[398]。
革命防衛隊は無人航空機そのものの供与だけでなく、ロシア国内での生産能力の構築にも関与していると見られる。シャヘド系列無人航空機の生産を管理しているイスラム革命防衛隊航空宇宙軍自給自足ジハード機構は、イラン企業ボニヤーン・ダーネシュ・シャルグ社(شرکت بنیان دانش شرق)を仲介者として、ロシア・タタールスタン共和国エラブガ に作る無人航空機生産施設をめぐる協議に関与していた[399]。2023年1月5日には同機構の責任者アブドッラー・メフラービーが、イラン側代表団を率いてロシア・タタールスタン共和国のエラブガを訪れ、後にシャヘド136などの生産拠点となる施設の予定地を視察している[400]。そのため、2024年4月2日には、このエラブガにあるイラン設計無人航空機の生産施設がウクライナ軍の無人航空機の攻撃を受けている[401]。
2024年6月、欧州連合は、イスラム革命防衛隊研究自給自足ジハード機構を制裁対象に指定した。EUは、同機構が革命防衛隊の無人航空機・ミサイル開発に関する研究、開発、調達に関与するとともに、ウクライナ侵略を支援するため、ロシアへのイラン製無人航空機の移転にも関与していると認定した[402]。
2024年9月、ロシアへの短距離弾道ミサイル移転が確認されると、イギリス政府は革命防衛隊航空宇宙軍宇宙司令部司令官アリー・ジャファラーバーディーと、同軍副司令官マジード・ムーサヴィーを資産凍結・渡航禁止の対象とした。ジャファラーバーディーは革命防衛隊の弾道ミサイル開発にも寄与する宇宙打上げ計画を監督し、ムーサヴィーは革命防衛隊航空宇宙軍の弾道ミサイル戦力の開発・運用を監督していた[403]。
同月、米財務省もロシアがウクライナ侵略に使用するためイランから短距離弾道ミサイルを受領したことへの制裁措置として、革命防衛隊航空宇宙軍サルマーン・ファールスィー宇宙司令部司令官アリー・ジャファラーバーディーを制裁対象に指定した[404]。
翌10月、EUもロシアへの弾道ミサイル移転への制裁措置として、革命防衛隊ゴドス軍、革命防衛隊ハータム・アル=アンビヤ中央司令部、革命防衛隊航空宇宙軍宇宙部門の高官らを追加制裁した[405]。
中華人民共和国との軍事協力
イスラム革命防衛隊は中華人民共和国と極めて緊密な関係を有し、軍事協力を深めている[406]。
イラン・イラク戦争中、革命防衛隊は中華人民共和国からシルクワーム対艦ミサイルを購入し、ホルムズ海峡東岸に発射施設を建設した。1987年には中華人民共和国がバンダレ・アッバース付近で革命防衛隊による同ミサイルの射程延伸を技術的に支援したと報告されている[407][408]。戦後もイスラム革命防衛隊海軍は中国製フードン級ミサイル艇、C-802対艦巡航ミサイル、C-14型ミサイル艇などを導入した[327]。
革命防衛隊海軍は中国人民解放軍海軍との共同演習にも参加しており、2024年3月には中国・ロシア両海軍との「海上安全保障ベルト2024」で海上射撃や船舶救出などの共同訓練を行った[409]。
また革命防衛隊は、中国・香港の企業や仲介者を無人航空機・弾道ミサイル関連物資の調達にも利用している。2023年にはイスラム革命防衛隊航空宇宙軍自給自足ジハード機構向けの無人航空機部品を供給した香港企業などが米国の制裁対象となった[410]。2025年には革命防衛隊向けに中国から弾道ミサイル用固体燃料原料を調達した企業が制裁され[411]、2026年にも中国・香港を拠点として革命防衛隊の兵器・航空宇宙資材調達を支援した企業や中国人関係者が相次いで米国の制裁対象となった[412][413]。
北朝鮮との軍事協力
イスラム革命防衛隊は、北朝鮮と極めて親密な関係を有し、深い軍事協力を進めている[414]。
北朝鮮と弾道ミサイル開発で協力
両者の関係は特に弾道ミサイル分野で深く、革命防衛隊航空宇宙軍が運用する弾道ミサイルの多くは、北朝鮮から供与されたミサイルや技術を基礎として開発されている。1987年以降、北朝鮮はスカッドB型をイランに多数供給するとともに、イラン国内での組立・製造設備の構築を支援し、これを基礎にシャハブ1が開発された[340]。
1990年には北朝鮮国防相呉振宇が革命防衛隊総司令官モフセン・レザーイーと会談し、射程約500キロメートルのスカッドCの売却を承認した。北朝鮮はミサイル本体だけでなく、整備設備、運用訓練、製造技術も革命防衛隊に提供した[415]。これを背景に、1990年代には北朝鮮の火星6(スカッドC型)を基礎としてシャハブ2が開発された[341]。
さらに1990年代半ばには、革命防衛隊は北朝鮮のノドンを基礎としてシャハブ3を開発し、航空宇宙軍の弾道ミサイルとして配備した[416][417]。
1990年代後半には、革命防衛隊は北朝鮮のミサイル技術者と共同でシャハブ4の開発を進めた[418]。シャハブ4は北朝鮮のテポドン1号を基礎とした長距離ミサイルとして開発された[419]。しかし、シャハブ4は、イラン側の技術力・開発能力の不足によって実用化に至らなかった[420]。
革命防衛隊関係者らは、2006年7月4日に北朝鮮がテポドン2号、ノドン、スカッド系列の弾道ミサイルを相次いで発射した際、現地で試験を視察していた[414]。2009年のテポドン2号発射にも革命防衛隊のミサイル開発に関与するイラン人技術者らが立ち会っており、テポドン2号系列の技術は革命防衛隊の長距離弾道ミサイル開発にも取り入れられた[414]。
その後も革命防衛隊は北朝鮮とのミサイル技術協力を継続し、2010年代にはイラン人技術者を北朝鮮に送って、80トン級ロケットブースターの開発に参加させた[421]。一方、テポドン2号を基礎とするとされたシャハブ5・6などの長距離ミサイル構想は、イラン側が大型ロケットエンジンの製造・統合技術を確立できなかったため、実用化には至らなかった[422][423]。
2017年、革命防衛隊航空宇宙軍は北朝鮮の火星10(BM-25)を基礎として開発したホッラムシャフルを公開した。北朝鮮型から機体を小型化した中距離弾道ミサイルで、最大射程約2,000キロメートル、重量約1,800キログラムの弾頭を搭載できるとされた[424][425]。
北朝鮮と核開発で協力
革命防衛隊と北朝鮮の核開発協力は1990年代初頭から始まった。1993年から1994年にかけて両国は核技術協力に関する合意を結び、北朝鮮が核技術や関連機器を提供する一方、革命防衛隊が北朝鮮側の主要な協力相手となった[418]。
北朝鮮はその後、革命防衛隊の秘密核研究施設に関連機器を供給し、革命防衛隊が開発を進めていた弾道ミサイルに搭載可能な核弾頭の研究にも協力した[418]。2006年の北朝鮮による最初の核実験後には、その実験データをイラン側へ提供する合意が結ばれた[414]。
2009年5月の北朝鮮による2回目の核実験には、革命防衛隊とイラン原子力庁の関係者からなる7人の代表団が立ち会い、平壌で北朝鮮側との高官協議も行った[418]。
2012年にはイランと北朝鮮が科学技術協力協定を締結した。この協定は、共同研究施設の設置、科学者の相互派遣、技術移転の枠組みなどを通じて、両国間の核・弾道ミサイル分野の協力を継続するものだった[426]。
2013年2月の北朝鮮による3回目の核実験には、イランの軍事核計画を指揮していた革命防衛隊将軍モフセン・ファフリザデが核専門家代表団を率いて立ち会っている[427]。ファフリザデは核弾頭をシャハブ3に搭載するための「Project 111」にも関与しており、北朝鮮との核協力は弾道ミサイル用核弾頭の開発とも密接に関連していた[427]。
その後もファフリザデが率いる防衛革新研究機構(SPND)は、北朝鮮との核弾頭開発協力を継続し[427]、2015年4月には北朝鮮の核兵器・核弾頭専門家を含む代表団がSPNDの核兵器化研究部門を訪問した[428]。同年6月までに、核弾頭設計を目的とした北朝鮮代表団の訪問は計4回に達した[429]。2017年には、イラン人核専門家が北朝鮮の研究施設で活動し、国際的な監視を避けて軍事核能力の開発を進めていた[430]。
革命防衛隊は2025年までに、革命防衛隊航空宇宙軍と防衛革新研究機構を通じて核弾頭計画を拡大し、シャールードの施設で核弾頭をガーエム100に搭載するための開発を進めていた。同時に北朝鮮の設計を基礎とするロケット技術も核兵器の運搬手段の開発に利用されていた[431]。
北朝鮮とのその他の協力
2005年、革命防衛隊は核関連施設を防護する地下施設の建設でも北朝鮮の協力を得ている。北朝鮮は革命防衛隊が進める地下壕やトンネルの建設に設計・技術面で協力し、地下施設の専門家ミョン・リュド(명류도)がテヘランで技術支援を指揮した[418]。
1990年代末、革命防衛隊は北朝鮮の技術協力を得て、レバノンにおけるヒズボラの地下壕・トンネルなどの地下軍事施設建設を拡大した[432]。2000年代には北朝鮮の教官や技術者が建設に参加し、工事は革命防衛隊将軍ミール・ファイサル・バケルザデの監督下で進められた[414]。
各国のテロ組織指定や制裁
アメリカ合衆国
2007年10月25日、アメリカ合衆国国務省は、大統領令13382号に基づき、イスラム革命防衛隊全体を大量破壊兵器拡散に関与する組織として制裁対象に指定した。これに伴い、アメリカ合衆国財務省は革命防衛隊傘下のハータム・アル=アンビヤ建設本部など9団体と、フセイン・サラミ、モルテザ・レザーイー、アリー・アクバル・アフマディアン、モハンマド・ヘジャジ、ガーセム・ソレイマーニーら幹部5人も同令に基づく制裁対象とした。また、国外工作部門のゴドス軍を、ターリバーン、ヒズボラ、ハマース、パレスチナ・イスラーム聖戦、パレスチナ解放人民戦線総司令部などのテロ組織への支援を理由として大統領令13224号に基づく特別指定国際テロリスト(SDGT)に指定した。これらの指定により、米国の管轄下にある対象者の財産・財産上の利益は凍結され、アメリカ人との取引も禁止された[386]。
2011年6月9日、2009年イラン大統領選挙抗議運動以降の抗議者に対する弾圧、殺害、拘禁などの重大な人権侵害への関与を理由として大統領令13553号に基づく制裁対象に指定された[6]。
2012年4月23日には、情報技術を利用した監視・拘束と人権侵害への関与を理由として大統領令13606号に基づく制裁対象にも指定された[433]。
同年成立したイラン脅威削減・シリア人権法は、革命防衛隊やその幹部、代理人、関連組織との重要な取引や物質的支援を行った外国人・外国企業にも制裁を科す制度を導入した[434]。これに基づき、イラン国営石油会社(NIOC)も革命防衛隊の代理人または関連組織と認定された[435]。
2017年8月2日成立の米国の敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)第105条は、革命防衛隊およびその幹部、代理人、関連者に大統領令13224号によるテロ制裁制度を適用することを義務付けた[436]。同年10月13日、OFACは革命防衛隊全体を、ゴドス軍への資金、訓練、人員、軍事装備その他の支援を理由として特別指定国際テロリストに指定した[437]。
2019年4月15日、アメリカ合衆国国務省は革命防衛隊全体を、ゴドス軍とともに移民国籍法第219条に基づく外国テロ組織(FTO)に指定した。外国政府の一部が外国テロ組織に指定されたのはアメリカ史上初めてであり、ヒズボラ、ハマース、パレスチナ・イスラム聖戦、カターイブ・ヒズボラなどへの資金、武器、訓練、技術その他の支援や、革命防衛隊自身によるテロ活動への関与が指定理由とされた[8]。外国テロ組織指定により、革命防衛隊への資金、金融サービス、訓練、武器、人員、輸送その他の「物質的支援または資源」の提供は連邦犯罪となり、外国人である構成員・代表者は入国拒否や退去強制の対象となった。また、アメリカの金融機関には革命防衛隊またはその代理人の資金を凍結し、OFACへ報告する義務が課された[438]。
その後もアメリカは、革命防衛隊の石油販売、金融・資金洗浄網、弾道ミサイル・無人航空機用物資の調達網などを対象とする追加制裁を行っている[439][440][441][442]。
カナダ
カナダでは2012年12月11日、イランの核開発への支援を理由として、革命防衛隊全体を特別経済措置法に基づく制裁対象に指定し、資産凍結や経済取引の禁止などを科した[443]。
同月20日には、革命防衛隊の対外工作部門であるゴドス軍を、ターリバーン、ヒズボラ、ハマース、パレスチナ・イスラーム聖戦などのテロ組織への武器、資金、軍事訓練の提供やテロ活動への関与を理由として、刑法第83.05条に基づくテロ組織リストに追加した[444]。
2022年11月14日には、イラン政府をテロ活動および組織的・重大な人権侵害に関与する体制として移民・難民保護法第35条第1項(b)に基づき指定し、2019年11月15日以降に政府高官を務めた多数の革命防衛隊上級幹部をカナダへの入国禁止・退去強制の対象とした[445]。
2024年6月19日には革命防衛隊全体を刑法第83.05条に基づくテロ組織に指定した。革命防衛隊がテロ活動を故意に実行、企図、参加、促進した、またはテロ活動を行う組織のために行動したと信じる合理的根拠があることが指定理由とされた。指定により、カナダ国内にある革命防衛隊の財産は凍結され、カナダ国内および国外のカナダ人が革命防衛隊の所有・支配する財産を故意に取り扱ったり、その利益のために金融サービスを提供したりすることは犯罪となった[446]。
イギリス
イギリスでは、EU加盟中の2008年6月24日に革命防衛隊航空宇宙軍が対イラン核制裁の対象となり、2010年7月27日には革命防衛隊全体、ゴドス軍、革命防衛隊ミサイル司令部などにも資産凍結が拡大された[447]。革命防衛隊全体は、イランの核計画への責任、弾道ミサイル計画の運用統制、核・ミサイル計画のための調達活動への関与を理由として指定された[448]。これらの指定はイギリスのEU離脱後、2020年12月31日からイラン(制裁)(核)(EU離脱)規則2019に基づくイギリス独自の制裁として引き継がれた[448]。
2022年以降には、抗議運動への弾圧を理由とする人権制裁も革命防衛隊幹部・関連組織に相次いで科された。同年10月10日にはバスィージ司令官ゴラムレザ・ソレイマニや革命防衛隊フーゼスターン州司令官ハサン・シャフヴァルプールらが資産凍結・渡航禁止の対象となり[449]、2023年3月20日には革命防衛隊協同財団の理事5人と地方司令官らが追加制裁された[450]。同年7月6日には革命防衛隊サイバー防衛司令部も、反体制派の電子メールやウェブサイトなどを監視し、表現・集会の自由に対する重大な人権侵害に関与したことを理由として制裁された[451]。
2023年12月14日にイラン制裁規則2023が発効すると、革命防衛隊による国外での敵対活動やテロ組織支援も制裁対象となった[452]。同日にはハマースやパレスチナ・イスラム聖戦への支援に関与するゴドス軍パレスチナ支部が指定され、2024年1月29日にはイギリスを含む国外で暗殺や生命への脅迫を計画・実行したゴドス軍第840部隊、同年2月27日には武器・軍事技術を国外の武装組織へ供給する第190部隊、第340部隊などが資産凍結の対象となった[158][453]。同年4月18日には、商船の拿捕やイスラエルへの軍事的威嚇への関与から革命防衛隊海軍も資産凍結の対象となった[454]。
2025年4月9日には、革命防衛隊本体、ゴドス軍、革命防衛隊海軍、第840部隊などの制裁対象組織に対し、資産凍結に加えてイギリス企業の取締役への就任や経営への関与を禁止する会社役員就任資格剥奪措置が追加された[455]。
さらに2026年7月17日、革命防衛隊は国家安全保障(国家脅威)法2026年によって改正された2023年国家安全保障法に基づく最初の「指定団体」の一つとなった。これにより、イギリスの安全を脅かす革命防衛隊の活動を称賛・奨励する支持表明、革命防衛隊への援助、革命防衛隊から金銭その他の物質的利益を受ける行為などが犯罪となり、最高14年の拘禁刑が科される[456]。
スイス
スイスでは、2011年1月20日に発効した対イラン制裁令に基づき、革命防衛隊全体がイランの核開発への責任、弾道ミサイル計画の運用統制、核・ミサイル計画に必要な物資の調達への関与を理由として資産凍結の対象となった[457][458]。革命防衛隊航空宇宙軍、革命防衛隊協同財団、アンサール銀行などの傘下組織・関連団体も個別に制裁対象となった[459]。
2022年には、ロシアのウクライナ侵略へのイラン製無人航空機供給に関与した革命防衛隊関係者・組織への制裁も開始され、同年12月8日には革命防衛隊航空宇宙軍が、シャヘド136やモハジェル6などの無人航空機の開発・ロシアへの供給への関与を理由として資産凍結の対象となった[460]。
2024年11月7日には、革命防衛隊海軍とイスラム革命防衛隊研究自給自足ジハード機構が、無人航空機・ミサイル開発や、ロシアおよび中東の武装組織への兵器・軍事技術移転への関与を理由として追加制裁された[461]。
2025年12月12日には、国連安保理の対イラン制裁再適用を受けて対イラン制裁令を全面改正し、2015年以前の核・ミサイル関連制裁を復活させた[462]。さらに2026年には、国内の抗議運動に対する弾圧への関与を理由として、革命防衛隊の地方部隊やその司令官らも相次いで資産凍結・入国禁止の対象となった[463]。
ウクライナ
ウクライナは2026年2月、革命防衛隊がテロ、暴力および民間人に対する侵略行為に関与してきたことから、ウクライナ保安庁(SBU)反テロセンターが管理するテロ組織一覧(Перелік терористичних організацій (груп))に革命防衛隊を追加してテロ組織に指定した[464]。これにより革命防衛隊の関連資産は凍結された[465]。
2026年3月12日、ウクライナはEU非加盟国だが、革命防衛隊をEUテロリスト・リストに追加した欧州連合(EU)の決定に合わせて同様の措置を実施することを表明した[466]。これにより、革命防衛隊に対する資産凍結や資金・経済資源の提供禁止など、EU諸国と同様のテロ対策制裁がウクライナでも適用されることとなった[9]。
リトアニア
リトアニアでは2024年10月3日、国会が決議第XIV-3016号を採択し、革命防衛隊をテロ組織と認定した[467]。
決議は、イランが2022年以降、ロシアのウクライナ侵略を支援し、ウクライナの重要インフラや民間人への攻撃に使用される無人航空機や弾薬をロシアへ供給し、2024年9月からは弾道ミサイルも供給したことを非難した[467]。また、イランが2024年4月13日および10月1日にイスラエルへ大規模な無人航空機・ミサイル攻撃を実施したことや、ハマース、ヒズボラ、パレスチナ・イスラーム聖戦、アンサール・アッラーなどのテロ組織を支援していることも非難し、革命防衛隊の活動を国際安全保障と安定に対する脅威と位置付けた[467]。
またリトアニアはEU加盟国であるため、2026年2月19日、革命防衛隊がEUテロリスト・リストに追加された後、リトアニアでもそのテロ対策制裁が適用された[9]。
コソボ
コソボ政府は2026年4月20日、革命防衛隊をテロ組織に指定した。指定は、革命防衛隊をEUテロリスト・リストに追加した欧州連合(EU)の決定、アメリカ合衆国による外国テロ組織(FTO)指定、国際連合安全保障理事会決議1747および1929などを根拠とした[468]。指定により、革命防衛隊の資産凍結と資金提供禁止が適用された[469]。
オーストラリア
オーストラリアでは2012年3月7日、イランの核・弾道ミサイル計画への関与を理由として、革命防衛隊を独自制裁規則2011に基づく指定団体とし、資産凍結や資産提供の禁止などの独自制裁を科した[470]。
2024年に革命防衛隊が、シドニーのユダヤ系飲食店「ルイス・コンチネンタル・キッチン(Lewis’ Continental Kitchen)」への放火事件、メルボルン・シナゴーグ放火事件を起こしたのを受け、2025年11月27日、オーストラリア政府は、刑法第5.3A部に基づいて革命防衛隊を「ステート・スポンサー・オブ・テロリズム(state sponsor of terrorism)」に指定した。革命防衛隊は同制度による最初の指定団体となり、指定は同月28日に発効した[471]。
この指定により、革命防衛隊の活動を指揮すること、要員を募集すること、資金を提供・受領すること、訓練その他の支援を行うことなどに刑事罰が適用され、犯罪によっては最高25年の拘禁刑が科される[472]。
ニュージーランド
ニュージーランドでは2022年12月12日、マフサ・アミニ抗議運動に対する弾圧や人権侵害への関与を理由として、革命防衛隊総司令官フセイン・サラミ、バスィージ司令官ゴラムレザ・ソレイマニ、革命防衛隊情報機構司令官モハンマド・カゼミら革命防衛隊幹部を入国・通過禁止の対象とした[473]。その後も革命防衛隊の地方司令官やゴドス軍幹部などが順次追加され、2026年2月25日までにイラン当局者98人が入国禁止の対象となった[474]。
また、2022年12月14日にはロシアのウクライナ侵略に使用されるイラン製無人航空機の供給への関与を理由として、ロシア制裁法2022に基づき革命防衛隊航空宇宙軍司令官アミールアリ・ハジザデと無人機司令部司令官サイード・アガジャニを資産凍結、入国禁止、商取引制限の対象とした[475]。2023年2月17日にはイスラム革命防衛隊研究自給自足ジハード機構が[476]、同年5月1日には革命防衛隊航空宇宙軍と革命防衛隊海軍司令官アリレザ・タングシリが同制度による制裁対象となった[477]。
2025年10月18日には、国連安保理の対イラン制裁再適用を受けてUnited Nations Sanctions (Iran) Regulations 2025が発効し、国連安保理決議第1929号などで指定された革命防衛隊関係者・関連団体に対する資産凍結、入国制限、核・ミサイル関連物資の取引禁止などが再び実施された[478]。
イスラエル
イスラエルでは2012年12月6日、1948年テロ防止令(Prevention of Terrorism Ordinance, 5708-1948)第8条に基づき、革命防衛隊の国外工作部門であるゴドス軍がテロ組織に指定された[479]。
2024年1月15日に、2016年反テロ法(Counter-Terrorism Law, 5776-2016)に基づき革命防衛隊全体がテロ組織に指定された[480]。指定により、革命防衛隊の関連資産は差押え・没収の対象となり、資金提供などの支援行為も刑事罰の対象となった[481]。
その後も革命防衛隊の資金網への指定・資産凍結といった制裁措置が続けられ、2025年6月19日にはイラン中央銀行や複数のイラン系銀行・企業が、革命防衛隊やゴドス軍などへの資金供給を理由としてテロ組織に指定された[482]。
2026年7月1日、イスラエル国防省は2016年反テロ法第56条に基づき、革命防衛隊がヒズボラなどへのテロ資金移転に使用していた37の暗号資産ウォレットに行政差押命令を発した。同省テロ資金対策局(NBCTF)は、これらのウォレットで合計2400万新シェケルを超える暗号資産を確認し、革命防衛隊がこの金融網を通じてヒズボラなどのテロ組織へ長年にわたり数千万ドルを移転していたことを指摘している[483]。
サウジアラビア
サウジアラビアは、2018年10月23日、革命防衛隊をテロ資金供与に関与する組織として制裁対象に指定した。同時にガーセム・ソレイマーニーらゴドス軍幹部も指定された。ゴドス軍も同日付でテロ関連の制裁対象に指定されている。これにより、サウジアラビア国内にある対象者の資産・財産およびその収益は凍結され、対象者との取引が禁止された[484]。
2019年10月30日には、革命防衛隊の民兵組織バスィージ、バスィージ協同財団、およびその傘下・関連企業や銀行などを追加で制裁対象とし、資産凍結と直接・間接の取引禁止を科した[485]。
2022年には、ゴドス軍の支援を受けてフーシ派への資金供給に関与した国際的な企業・個人ネットワークや、ゴドス軍の石油販売・資金洗浄・ヒズボラへの資金移転に関与した資金調達者らも追加制裁された[486][487]。
アラブ首長国連邦
アラブ首長国連邦(UAE)は2018年5月10日、ゴドス軍への資金供給に関与した個人・団体を国内のテロリスト・テロ組織リストに指定した。これらの個人・団体は、ゴドス軍とその代理組織の活動資金とするため、数百万ドルの現金を調達・移転する金融網を構築していた[488][489]。
2019年10月30日には、テロ資金供与標的センター(TFTC)の加盟国と共同で、革命防衛隊傘下のバスィージを支える企業・金融網を制裁対象とした。指定された25対象のうち21対象がバスィージへの資金供給網を構成しており、バスィージ協同財団の支配下にある自動車、鉱業、金属、金融などの関連企業が含まれていた[490]。
バーレーン
バーレーンは2018年10月23日、革命防衛隊をテロ活動への関与を理由として制裁対象に指定した。同時にガーセム・ソレイマーニーらゴドス軍幹部も指定され、バーレーン国内にある対象者の資産が凍結され、取引が禁止された[491]。
2019年10月30日には、バスィージ、バスィージ協同財団、及びその傘下の企業・金融機関を、テロ資金供与標的センター(TFTC)の加盟国と共同で制裁対象に指定した[490]。
2022年6月6日には、ゴドス軍による石油販売、資金洗浄、ヒズボラへの資金移転に関与したアリー・カーシル、メグダード・アミニ、モルテザ・ハーシェミの3人をTFTC加盟国と共同で追加制裁した[492]。
レバノン
レバノン政府は、2026年3月5日、革命防衛隊員が国内で軍事活動を行っているとの情報が増加していることを受け、国防省、内務省、軍および治安機関に対し、国内に存在する革命防衛隊員を特定し、身分や活動上の名目を問わず軍事・治安活動を直ちに阻止するとともに、活動に関与する隊員を司法当局の監督下で拘束し、国外退去させるよう命じた[493]。
同月以降、この決定に基づく措置が実施され、革命防衛隊の幹部・軍事専門家数十人がレバノンから国外退去となった。国外退去した革命防衛隊員には外交旅券で入国していた者や、ヒズボラの戦闘部隊の再編を指導していた軍事専門家が含まれていた[494][495]。
日本
日本では2007年2月17日、国連安保理決議第1737号を受け、フセイン・サラミ、ヤヒヤ・ラヒーム・サファヴィーら革命防衛隊幹部を外国為替及び外国貿易法に基づく資産凍結等の対象とした[496]。
同年5月18日には国連安保理決議第1747号を受け、アリー・アクバル・アフマディアン、モハンマド・レザ・ザヘディ、モハンマド・ヘジャジ、ガーセム・ソレイマーニー、モハンマド・バーゲル・ゾルガドルら革命防衛隊幹部を追加で資産凍結等の対象とした[497]。
2008年4月22日には国連安保理決議第1803号を受け、革命防衛隊将軍モハンマド・レザー・ナクディらを追加で資産凍結等の対象とした[498]。
2016年1月22日、包括的共同作業計画(JCPOA)の履行と国連安保理決議第2231号を受け、革命防衛隊幹部・関連団体を含むイラン核開発関係者への資産凍結等が解除されたが[499]、2025年9月29日、国連安保理の対イラン制裁再適用を受け、革命防衛隊幹部・関連企業を含む43個人・78団体に対する外国為替及び外国貿易法に基づく資産凍結等を再導入した[500]。
韓国
韓国では2010年9月8日、イランの核開発および大量破壊兵器拡散への関与を理由として、革命防衛隊を独自の金融制裁対象に指定した。革命防衛隊を含む102団体・24個人との外国為替の支払い・受取りには韓国銀行の事前許可が必要となり、対象者の韓国への入国も禁止された[501]。
2016年1月17日、包括的共同作業計画(JCPOA)の履行に伴う国連安保理の対イラン制裁解除を受け、韓国も核問題に関連する対イラン制裁を解除したが[502]、2025年9月28日には国連安保理の対イラン制裁が再適用されたのを受け、革命防衛隊関係者・関連団体を含む43個人・78団体への資産凍結・入国禁止などの国連制裁措置も韓国で再び実施された[503]。
台湾
台湾は2007年4月27日、国際連合安全保障理事会決議1737および1747に基づく対イラン制裁を実施し、金融機関に対して、制裁対象となった革命防衛隊の組織・企業および幹部が関係する取引を疑わしい取引として扱い、法務部調査局へ直ちに届け出るよう命じた[504]。
コスタリカ
コスタリカでは2026年4月6日、国家安全保障会議が革命防衛隊、ヒズボラ、ハマース、アンサール・アッラーをテロ組織に指定し、同月8日に政府が公表した[505]。
指定は革命防衛隊を含む各組織について利用可能な情報を国家安全保障会議が分析した上で行われ、テロおよびテロ資金供与への対抗に関する国際的義務も根拠とされた[505]。政府は、これらの組織を維持する資金・兵站支援網が国内で活動することを阻止するため、情報機関および司法機関による予防、捜査、刑事訴追を強化した[505]。
ホンジュラス
ホンジュラス政府は2026年5月15日、革命防衛隊とハマースをテロ組織に指定した。指定により、革命防衛隊への資金供与・支援が禁止され、関連する資金移動が監視対象となった[506]。
ホンジュラス法では、テロ組織への資金・資産・金融サービスの提供や、武器、施設、輸送手段などの物的支援、その他の協力はテロ資金供与罪となり、30年以上40年以下の拘禁刑および罰金の対象となる[507]。
ドミニカ共和国
ドミニカ共和国は2026年5月12日、大統領令第321-26号により革命防衛隊全体をテロ組織に指定した。指定は革命防衛隊の全部門、支部、師団、部隊、特に国外工作を担当するゴドス軍に加え、その子会社、後継組織、別名、フロント企業および直接・間接に支配する団体も対象とした[508]。
国家安全保障・国防評議会は、革命防衛隊とゴドス軍がテロ攻撃の計画、資金供与、訓練および実行に関与していることに加え、民間人に対して暴力的・無差別な攻撃を行う非国家武装組織へ物資・兵站支援を組織的に提供してきたことを指定理由とした[508]。また、革命防衛隊などの指定組織が違法な資金調達や資金洗浄を利用して活動資金を確保していることを、国家、地域および国際安全保障と金融制度に対する脅威と位置付けた[508]。
指定後、国家情報局、国家反テロ局、移民総局などに革命防衛隊関係者や関連法人の監視リストを作成・更新させ、関係者の国内への入国阻止を含む措置を実施するよう命じた[508]。
アルゼンチン
アルゼンチンは2026年3月31日、革命防衛隊をテロ組織として、「テロ行為およびテロ資金供与に関係する人物・団体の公的登録簿」(Registro Público de Personas y Entidades vinculadas a actos de Terrorismo y su Financiamiento、RePET)へ登録し、同年4月6日に共同決議第3/2026号を官報で公布した[509]。RePET登録者・団体に関連する取引について金融機関などにはテロ資金供与の疑わしい取引として金融情報機関(UIF)へ報告する義務が生じ、UIFは革命防衛隊およびその支配下にある資産を行政的に凍結し、資産の移転・処分・利用を禁止できる[510]。
コロンビア
コロンビア政府は2026年9月24日、革命防衛隊をテロ組織に指定した。政府は革命防衛隊について、イラン国内で国民を弾圧するとともに、国外では秘密工作による攻撃を実行し、国際平和と安全に重大な危険を及ぼしていることを指摘した[511]。
指定後、コロンビア政府は革命防衛隊関係者の国内への入国を阻止するため、安全保障・入国管理措置を強化した[511]。
エクアドル
エクアドルは2025年9月15日、大統領令第128号により、革命防衛隊、ハマース、ヒズボラを組織犯罪のテロ集団に指定した[512]。
大統領令は革命防衛隊を含む指定組織を、エクアドル国民、憲法秩序、国家主権および領土的一体性に対する脅威と位置付けた[513]。政府は国家情報センターに対し、革命防衛隊などの指定組織がエクアドル国内の武装犯罪組織へ及ぼす影響や両者の関係を分析し、必要に応じて外国の情報機関と協力するよう命じた[513]。
パラグアイ
パラグアイは2025年4月24日、大統領令第3760号により革命防衛隊全体を国際テロ組織に指定した。革命防衛隊による組織的な人権侵害と世界各地におけるテロ活動への関与が指定理由とされ、パラグアイ政府はこれらを平和、人権および国際社会の安全に対する組織的な侵害と位置付けた[514]。
パラグアイ政府は、テロを推進・実行する組織の特定とその活動基盤の解体を国際テロへの対抗に必要な措置とし、革命防衛隊の指定を国際的なテロ対策への協力強化の一環とした[514]。同日、それまで武装部門を対象としていたハマースとヒズボラについても、指定を組織全体へ拡大した[514]。
トリニダード・トバゴ
トリニダード・トバゴでは2026年4月8日、司法長官が反テロ法(Anti-Terrorism Act)第22B条に基づき革命防衛隊の指定を高等裁判所へ申し立て、高等裁判所は、司法長官が提出した申立書、宣誓供述書および添付証拠を審査し、革命防衛隊を同法上の指定団体(listed entity)に指定した[515]。
裁判所は革命防衛隊が直接または間接に所有・支配する国内資産の即時凍結を命じ、代理人や仲介者を通じて保有する財産も凍結対象とした[515]。命令は同月13日に官報へ掲載された[516]。
国際機関
国際連合
2007年3月24日、国際連合安全保障理事会決議1747は、革命防衛隊傘下・関連組織としてコッズ航空産業、パルス航空サービス、ショア航空の3団体を資産凍結の対象に加えた。また、革命防衛隊副司令官モルテザ・レザイ、統合参謀長アリー・アクバル・アフマディアン、地上軍司令官モハンマド・レザー・ザーヘディー、海軍司令官モルテザ・サファリ、バスィージ司令官モハンマド・ヘジャジ、コッズ部隊司令官ガーセム・ソレイマーニーら革命防衛隊幹部7人も制裁対象とした[517]。
2010年6月9日の国際連合安全保障理事会決議1929は、革命防衛隊の指定された個人・団体だけでなく、その代理人、指揮下にある者、所有・支配する団体にも資産凍結を拡大した。ハータム・アル=アンビヤ建設本部をはじめとする革命防衛隊傘下・関連企業も追加指定され、国連加盟国には、革命防衛隊との取引がイランの核兵器運搬手段や核拡散活動に寄与し得る場合に警戒することが要求された[518]。
2025年9月27日、国際連合安全保障理事会決議2231のスナップバック手続により、決議1737、1747、1803、1929号などに基づく対イラン制裁が再適用され、43個人・78団体からなる制裁リストが復活した。復活した制裁対象には、ソレイマーニー、ザーヘディー、モハンマド・レザー・ナグディら革命防衛隊幹部や、ハータム・アル=アンビヤ建設本部をはじめとする多数の革命防衛隊関連企業が含まれている[519]。
欧州連合
欧州連合(EU)は2026年2月19日、革命防衛隊全体をEUテロリスト・リストに正式に追加し、テロ組織に指定した。これにより、EU加盟国内に存在する革命防衛隊の資金、金融資産その他の経済資源が凍結され、EU域内の個人・企業が革命防衛隊へ資金や経済資源を提供することが禁止された[9]。
同年3月12日までに、非加盟国のアルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アイスランド、リヒテンシュタイン、モルドバ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア、ウクライナの9か国も、革命防衛隊をEUテロリスト・リストに追加したEUの決定に合わせ、EU加盟国と同様の制裁措置を実施することを表明した[520]。
同月16日、EUは2026年イラン抗議運動への武力弾圧と重大な人権侵害に関与した16個人・3団体を追加制裁し、抗議参加者への暴力的弾圧に直接関与した革命防衛隊地方部隊の司令官のほか、テヘランで革命防衛隊とバスィージの弾圧部隊を統括したモハンマド・ラスールッラー軍団、ラザヴィー・ホラーサーン州で弾圧に関与したイマーム・レザー革命防衛隊を資産凍結などの対象とした[521]。
テロ資金対策センター
アメリカ合衆国、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタールの7か国で構成されるテロ資金対策センター(TFTC)は、革命防衛隊およびその関連組織の資金網に対する共同制裁を実施している[490]。
2019年10月30日、TFTC7か国は革命防衛隊とヒズボラを支援する25の個人・団体を共同で制裁対象に指定した。このうち21の企業・金融機関などは、革命防衛隊傘下のバスィージを資金面で支えるバスィージ協同財団の企業網を構成しており、自動車、鉱業、金属、銀行などの事業を通じて巨額の経済権益を形成していた。残る4人はイラクでヒズボラの作戦、情報、資金活動を指揮・調整していた人物で、イラン産原油の密輸や資金調達、革命防衛隊ゴドス軍のためのシリアへの戦闘員派遣などに関与したとされた[490]。
2022年6月6日には、TFTC加盟国がテロ組織の資金調達に関与した16の個人・団体を共同で制裁対象とした。この中には、革命防衛隊ゴドス軍の資金網に関与したアリー・カーシル、メグダード・アミニ、モルテザ・ハーシェミの3人が含まれた。カーシルとアミニは、約20人の個人やフロント企業からなるネットワークを通じ、金、電子機器、外貨など数千万ドル相当の取引を行ってゴドス軍とヒズボラを支援し、ハーシェミは香港および中国本土の企業を利用して両組織の資金洗浄やイラン向け物資の調達を行ったとされた[492]。同時に、革命防衛隊から資金・武器・訓練などの支援を受けていたとされるバーレーンのサラヤ・アル=ムフタールとアル=アシュタル旅団も共同制裁の対象となった[492]。
脚注
出典
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関連項目
- イスラム革命防衛隊階級
- 武装親衛隊 - 新政権を防衛するために従来の国軍と対置され、発展して対外戦争にも参加した点で性格が類似している。
- サウジアラビア国家警備隊 - 対立関係にあるが組織の任務・性格が類似している。
- 共和国防衛隊
- イラン・イスラム共和国軍
- 国家の内部における国家
- イラン・イラク戦争
- レバノン内戦
- ヒズボラ
- ハマース
- 2003年のイラン革命防衛隊Il-76MD墜落事故
- ウクライナ国際航空752便撃墜事件
- Irgcのページへのリンク