こくれん‐あんぜんほしょうりじかい〔‐アンゼンホシヤウリジクワイ〕【国連安全保障理事会】
読み方:こくれんあんぜんほしょうりじかい
国連安全保障理事会(こくれんあんぜんほしょうりじかい)(Security Council)
国連安全保障理事会(安保理)は、国連の軍事活動を主として扱う機関である。国際平和維持のため、紛争に介入して解決策を勧告する。その他、国連の命令に従わない国には、経済制裁を発動することがある。PKO(平和維持活動)の発動を決めるのも安保理である。
軍事の面では、安保理は国連総会よりも強い。国連総会の場合、国連決議には強制力がない。国連決議に従うかどうかは加盟国の自由である。対して、安保理の決定には法的強制がある。加盟国は安保理の決議に従わなければならない。
安保理は、常任理事国と非常任理事国から構成される。常任理事国は、アメリカ、イギリス、ロシア、中国、フランス、の5ヶ国である。メンバー交代はない。非常任理事国の方は、選挙によって構成国が変わる。非常任理事国は全部で10ヶ国である。
重要事項の決定には、常任理事国全ての同意と、非常任理事国を10含ヶ国のうち4ヶ国の賛成が必要である。特に、常任理事国には拒否権がある。常任理事国が1ヶ国でも事項に反対すると、その案は通らない。
(2000.09.18更新)
国際連合安全保障理事会
![]() |
![]() | |
---|---|
各国語表記
United Nations Security Council | |
![]() 国際連合安全保障理事会会議場(2005年1月) | |
概要 | 主要機関 |
略称 | UNSC |
代表 |
![]() |
状況 | 活動中 |
活動開始 | 1946年 |
本部 |
国連本部ビル (アメリカ・ニューヨーク州のニューヨーク) |
公式サイト | UNSC |
![]() ![]() |
国際連合安全保障理事会(こくさいれんごうあんぜんほしょうりじかい、英語: United Nations Security Council、UNSC)は、国際連合の主要機関の1つ。世界の平和と安全の維持に主要な責任を負っており、国際連合の6つの主要機関の中で最も大きな権限を持ち、法的に国連加盟国に拘束力を持つ決議を行うことができる、事実上の最高意思決定機関である。
特徴
日本語では安全保障理事会・国連安保理・安保理(あんぽり)[2]とも略称される。
安保理が機能しなくなった場合、国連総会が「平和のための結集」決議に基づき、軍事的措置を含む行動を加盟国に対し勧告することができる。
構成
5か国の常任理事国(Permanent members 5, P5)と、加盟国の中から総会で選ばれる10か国の「非常任理事国(Non-Permanent members)」の計15か国から構成されている(国連憲章第23条1項)。1965年の改革以前は、非常任理事国は6か国で、計11か国であった[3]。
非常任理事国の任期は2年(国連憲章第23条2項)。現在は地域グループによって西欧その他2、東欧1、アジア太平洋2、中南米2、アフリカ3の配分になっている。
非常任理事国の選出は総会における選挙で行われる。毎年半数を改選し、投票は国連加盟国の無記名投票による。選出には2/3の賛成が必要で(国連憲章第18条2項)、どの国々も条件を満たさない場合は何度でも再投票を行う。日本は非常任理事国として11期務め、延べ22年間に渡って非常任理事国を務めたことになり、世界最多である。
各理事国の代表は、国連本部に常駐することが国連憲章で義務づけられている(国連憲章第28条1項)。これは緊急事態に際して迅速に集まって会合を開くことができるようにするためである。国際連盟がしばしば緊急時に素早い対応ができず、結果的に第二次世界大戦の勃発を防げなかったことへの反省からであった。
理事国
常任理事国
安保理常任理事国は、中国(中華人民共和国)、フランス、ロシア、イギリス[注釈 1]、アメリカの5か国である[4]。英語の「Permanent members」から「P5」と呼ばれる。
1945年10月24日の国際連合設立当時の安保理常任理事国はアメリカ、フランス、イギリス、中国(中華民国)、ソ連[注釈 2]で、いずれも第二次世界大戦に勝利した連合国である。
中国の国共内戦で1949年に中国共産党が中華人民共和国の建国を宣言し中華民国政府を中国本土から追い出したあとも、中華民国政府は台湾で存続し国連で「(安保理常任理事国としての地位を含む)中華民国の権利」を持ち続けたが、1971年10月25日に国連総会が2758号決議(アルバニア決議)で中華人民共和国の政府を国連での中国(China)の唯一の合法な代表として認めて、中華民国の持っていた権利は中華人民共和国に継承された[5]。また、1991年12月25日にソ連崩壊に伴い代表権がロシアに引き継がれた。ただし、常任理事国の国名が明記されている国連憲章第5章第23条そのものは2022年現在も改正されていない[6]。
現在の首脳
非常任理事国
非常任理事国は再任出来ず、必ず退任する。選出の手順はまず各地域グループが候補を選び、国連総会で承認される。
- 2025年度非常任理事国
国名 | 地域グループ | 任期 |
---|---|---|
![]() |
アフリカグループ | 2024年1月1日 - 2025年12月31日 |
![]() |
西ヨーロッパ・その他グループ | 2025年1月1日 - 2026年12月31日 |
![]() |
東ヨーロッパグループ | 2025年1月1日 - 2026年12月31日 |
![]() |
ラテンアメリカ・カリブ海グループ | 2024年1月1日 - 2025年12月31日 |
![]() |
アジア太平洋グループ | 2025年1月1日 - 2026年12月31日 |
![]() |
ラテンアメリカ・カリブ海グループ | 2025年1月1日 - 2026年12月31日 |
![]() |
アジア太平洋グループ | 2024年1月1日 - 2025年12月31日 |
![]() |
アフリカグループ | 2024年1月1日 - 2025年12月31日 |
![]() |
東ヨーロッパグループ | 2024年1月1日 - 2025年12月31日 |
![]() |
アフリカグループ | 2025年1月1日 - 2026年12月31日 |
- 日本の非常任理事国入り
- 2024年現在、日本は13回非常任理事国選挙に立候補して、1978年に辞退した1度[注釈 3]を除いて12回当選しており[7][8]、加盟国の中で最多となっている[9][10]。1958年-1959年、1966年-1967年、1971年-1972年、1975年-1976年、1981年-1982年、1987年-1988年、1992年-1993年、1997年-1998年、2005年-2006年、2009年-2010年、2016年-2017年に理事国を務めたほか、2023年-2024年の理事国に選出されている[9][10]。2018年現在の通算の期間は22年となった。日本が12回当選する一方、国連加盟国のうち140か国は1度だけの選出か未選出である。2008年10月17日に実施された2009-10年の改選に当たっては、アジア・グループ枠では日本の他にイランが立候補していた。
- サウジアラビアの辞退
- サウジアラビアは2013年10月17日に一度は当選したが、翌18日に安保理のメカニズム・二重基準が国際紛争への適切な対応を不可能にしていると批判して、非常任理事国入りを辞退するとの声明を行った[11][12][13]。このため、サウジアラビアの代わりとなる非常任理事国を選ぶやり直しの投票が12月6日に行われ、ヨルダンが選出された[14]。
決議
意思決定は9か国の理事国以上の賛成票による。ただし、重要問題である実質事項の決定においては、安保理常任理事国は拒否権を有し、1か国でも反対すると成立しない(大国一致の原則と言う、ただし紛争の平和的解決及び地域的取極又は地域的機関による地方的紛争の平和的解決に基く決定については、紛争当事国は投票を棄権しなければならない)。これを国家主権の平等に反しているとして疑問視する声も多いが、5か国の一致により決議の実効性を保ち、かつ安保理常任理事国が世界の安全保障に関して重大な責任を負う為、このような制度が設けられている。しかし、現実には国益偏重の拒否権行使が横行している。
世界の安全保障にとって脅威となる存在・国家が現れた場合、理事会で対応が議論されてしかるべき対応がなされる事になっている。これは、拒否権との矛盾が生じないように安全保障に関して理事国間で見解が決裂することはあり得ないという前提に基づくものである。しかし、実際には冷戦当初から安保理常任理事国で特にアメリカとソ連の対立により、意思決定が成されない事態が多く発生した(詳しくは、国際連合の歴史を参照)。
このため1950年に「平和のための結集決議」が採択されて、安全保障理事会が決定を下すことができない場合は緊急特別総会を開いて問題解決を行うことができるようになり、安全保障に関する一定の権限が総会にも付与された。
議長国
安保理議長国は構成国の英語名でアルファベット順・1か月単位で交代する持ち回り制となっている[1]。
国 | 月 |
---|---|
![]() (Algeria) |
1月 |
![]() (China) |
2月 |
![]() (Denmark) |
3月 |
![]() (France) |
4月 |
![]() (Greece) |
5月 |
![]() (Guyana) |
6月 |
![]() (Pakistan) |
7月 |
![]() (Panama) |
8月 |
![]() (Republic of Korea) |
9月 |
![]() (Russian Federation) |
10月 |
![]() (United Kingdom) |
11月 |
![]() (United States) |
12月 |
補助機関
安全保障理事会の補助機関として以下のようなものがある。
- 軍事参謀委員会
- 平和構築委員会
ほか
常任理事国改革
脚注
注釈
出典
- ^ a b “Security Council Presidency” (英語). 国際連合. 2025年2月2日閲覧。
- ^ “安保理(あんぽり)の意味”. goo国語辞書. 2020年10月20日閲覧。
- ^ Weiss, Thomas G. The Illusion of UN Security Council Reform (PDF) , Washington Quarterly, Autumn 2003
- ^ “安全保障理事会”. 2021年2月20日閲覧。
- ^ “General Assemhly-Twenty-sixth Session”. UN (1971年10月25日). 2024年8月14日閲覧。
- ^ 高橋洋一 (2022年3月18日). “国連安保理、常任理事国からロシアを外すだけでは不十分…改革に限界も G7中心の〝世界平和〟体制を”. 夕刊フジ 2022年7月14日閲覧。
- ^ 我が国の過去の選挙結果 (PDF) - 外務省
- ^ “日本の国連安保理非常任理事国への選出について(外務大臣談話)”. Ministry of Foreign Affairs of Japan. 2022年6月9日閲覧。
- ^ a b “日本、問われる外交手腕 12回目の非常任理事国―国連安保理改選”. 時事通信社 (2022年6月10日). 2022年6月10日閲覧。
- ^ a b “日本が国連安保理の非常任理事国に当選 加盟国中最多の12回目”. 日本放送協会 (2022年6月10日). 2022年6月10日閲覧。
- ^ “サウジ、安保理非常任理事国を辞退”. 日本経済新聞. (2013年10月18日) 2013年10月20日閲覧。
- ^ “サウジアラビア:国連安保理「非常任」辞退 「二重基準」を批判”. 毎日新聞. (2013年10月19日). オリジナルの2013年10月20日時点におけるアーカイブ。 2022年6月10日閲覧。
- ^ “サウジアラビア、安保理の非常任理事国ポストを辞退”. 朝日新聞. (2013年10月19日). オリジナルの2013年10月19日時点におけるアーカイブ。 2022年6月10日閲覧。
- ^ “非常任理事国にヨルダン サウジ辞退を受け選出”. 朝日新聞. (2013年12月7日). オリジナルの2013年12月7日時点におけるアーカイブ。 2022年6月10日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 安全保障理事会(国際連合広報センター)
- UN Security Council - 国連安全保障理事会 公式サイト:英語版。他に5つの言語で利用できる。国連決議、各種報告書、会議のビデオなどが公開されている。
- United Nations (1983). Provisional Rules of Procedure of the Security Council, New York, United Nations. (S/96/Rev7) - 国連安保理の会議の手続きなどについて定めた文書。
国連安全保障理事会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/21 20:59 UTC 版)
「イランの核開発計画」の記事における「国連安全保障理事会」の解説
国連安全保障理事会はこれまで7本の対イラン決議を採択してきた。 ・決議1696号(2006年7月31日)は、国連憲章第7章を引用して、対イラン要求に法的拘束力を与え、イランにウラン濃縮活動停止を求めた。 ・決議1737号(2006年12月23日)は、イランがウラン濃縮活動の停止を拒み、核問題での協力を中断したことを受け、イランにIAEAへの協力を要求し、同国の核・ミサイル計画に関連する一連の個人、組織の資産凍結を定めた。同決議により制裁の実施を監視する委員会が設置された。 ・決議1747号(2007年3月24日)は、制裁対象となるイラン組織のリストを拡大し、国連安全保障理事会常任理事国にドイツを加えた6カ国によるイランの核開発計画に関する問題解決に向けた提案を歓迎した。 ・決議1803号(2008年3月3日)で、国連安保理は、個人、組織の制裁対象を拡大し、制裁対象の個人に渡航制限を課し、核・ミサイル関連技術と二重用途の物品の対イラン輸出を禁止した。 ・決議1835号(2008年9月27日)は、これに先立つ関連4決議を再確認した(関連する7決議のうち、国連憲章第7章を引用していないのは1決議のみである)。 ・決議1929号(2010年6月9日)は、対イラン武器禁輸の完全実施を定めイランの弾道ミサイル関連活動を全面的に禁止し、制裁に違反する出荷の査察と押収を認可し、イラン革命防衛隊(IRGC)とイラン国営船社(IRISL)の資産凍結を拡大した。決議は賛成12、トルコ、ブラジル2国の反対、レバノンの棄権で採択された。米国、欧州連合、オーストラリア、カナダ、日本、ノルウェー、韓国、ロシアなど多くの国が制裁の実施、拡大の手段を発動した。 ・決議1984号(2011年6月8日)は、決議1929号で設置した専門家パネルの任務を12カ月間延長した。
※この「国連安全保障理事会」の解説は、「イランの核開発計画」の解説の一部です。
「国連安全保障理事会」を含む「イランの核開発計画」の記事については、「イランの核開発計画」の概要を参照ください。
「国連安全保障理事会」の例文・使い方・用例・文例
- イタリア, チュニジア, アルゼンチンの 3 国が国連安全保障理事会のメンバーとして選出された.
- 米国が国連安全保障理事会の決議なしにイラクを攻撃した場合,首相は特に大変な思いをするだろう。
- 米国,英国,スペインは,イラクに対する武力行使容認を国連安全保障理事会に求める決議案を準備した。
- 小泉首相は日本の国連安全保障理事会常任理事国入りに意欲を示した。
- 会合の中で町(まち)村(むら)信(のぶ)孝(たか)外相は,国連安全保障理事会(安保理)は21世紀の現実を反映するように改革されるべきだと力説した。
- 日本政府はまた,国連安全保障理事会に北朝鮮に対する制裁措置を求める決議案を採択するよう求めた。
- 国王はまた,ブータンは日本の国連安全保障理事会の常任理事国入りを支持すると話した。
- 彼は国連安全保障理事会に全会一致で選ばれ,2017年の初めにパン・ギムン氏の後を継ぐ。
- 国連安全保障理事会のページへのリンク