空力を考えたその他のパーツ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/13 03:38 UTC 版)
「エアロパーツ」の記事における「空力を考えたその他のパーツ」の解説
以下のパーツは空気力学的な性能向上のために取り付けられる部品ではないためエアロパーツとは呼ばないが、空力を加味して設計された車のパーツ類の例である。 空力形回転灯 被視認性を向上させるため、高所に設けられた幅広回転灯・連装回転灯を空力に配慮された(回転灯色染)半透明カバーで覆った物。単装でも空力に配慮された(回転灯色染)半透明カバーを被せる場合もある。空力形状支持棒で屋根から浮かせて取り付ける場合・不透明な空力形状土台で屋根から浮かせてその上に取り付ける場合などもある。内部・土台には、アンテナ・拡声器等が実装されている場合もある。法的制限から多くは緊急車両に実装されているが、レーシング場のセーフティカー等にも実装されている。格納式・取り外し式にした場合、非使用時の空力性能を向上させる効果もあるが、実際には取り締まり効率の向上や、常時・平時に周囲に無用の威嚇を与えないことが主目的。 砲弾形ヘッドライト クラシックカーで前方燈火類を車体外に実装するにあたって、後流が安定し空気抵抗が低下することが期待できる椎の実形状の筐体に納める。実際の砲弾銃弾と違い、尖った方を後方に向ける。当初は電灯普及以前で、相応の容積が必要なアセチレンランプ等が使われており、空力・前方視界等のために可能な限りコンパクトにされたボンネット内に前照灯を納める発想は無かったし、方向指示器や車幅灯も無かった。但し一部のネイキッド (オートバイ)・クルーザー (オートバイ)などの自動二輪車用には意匠として採用されたり、交換取り付けされたりする事がある。 車体内前照灯 前方燈火類を車体内に納め、ボンネット前車輪カウリングと一体化して空力・前方視界・衝突安全性向上を図るパッケージング。車体外ヘッドライトがボンネットに付く形を経て、徐々に移行した。今日では常識とされるパッケージングである。ただしフォグランプ類が車体外に設けられるケースは、今日でも多い。 リトラクタブル・ヘッドライト、ポップアップ式ヘッドランプ 自動車の車体前部の高さを下げることは空気抵抗の減少につながるが、前頭部に装備するヘッドライトの最低地上高は歩行者に対する安全上の理由等から規制があり、極端に低い位置には設置出来ない。また米国では「規格型」のライトハウジング以外が使用できなかった期間が長く続き、その中で空力的・法的・意匠的メリットを求めて採用された時期がある。収納時には後述の異形前照灯と同様なメリットがあるも、点灯時には空力的デメリットがあり、歩行者等交通弱者との衝突時に引っ掛かり易い他、ライト常時点灯を義務づけられている国もあるため、現代では稀になった。 ワイパースポイラー 高速走行時のワイパーの浮きを抑え、ワイパーの効きを維持する。 エアロガーニッシュ グリルガーニッシュとも呼ばれる。グリル部に装着し、エンジンルーム内に進入する気流と受け流す気流を調整する。一定の冷却効果を狙ったものもある。 エアロガーニッシュは一見してドレスアップの目的のみに装着されると考えられる場合が多いが、実際にはサイドスポイラーより気流の影響を受けるエアロパーツとして知られ、各メーカーでは度重なる風洞実験を繰り返しながら設計される。ラジエターがフロントグリル後部に設置されているタイプの自動車においては、開口部の大きさに重きが置かれ、アンダーグリル部にラジエターが装着された自動車は、ボンネット上部に風を受け流すパーツとして、その角度に重きが置かれて設計される場合が多い。車の空力デザインで冷却系の空気抵抗は大きく、車全体の33.4%と言われている。 ミラーレス カメラとディスプレーを使って、騒音・乱流・空気抵抗の元となるドアミラー・サイドミラー・フェンダーミラー等を廃する。日本では2016年6月より公道で合法化された。 エアロアンテナ 車体外に設けるアンテナを空力に配慮した形状にするカバー。シャークフィンアンテナ、ドルフィンアンテナなどと言われている。アンテナ構造自体を空力に配慮した逆L型アンテナとする場合や、エレメントの途中にコイルを挿入するなり折り返すなりした上で軟質樹脂等で覆って極端に全長を短くしたアンテナや、窓内にシート状のアンテナを張る場合もある。風切り音低下を含めた空力性能の向上に加え、アンテナのフラッター現象防止によるアンテナ破壊予防・送受信安定化効果もある。旧来の伸縮・出し入れ・起倒式モノポールアンテナ(英語版)と比べ、悪戯や不注意や洗車機でアンテナが破損し難いメリットも大きい。但し一般に非振動時の純粋なアンテナ性能は、車外に設けた適切なアンテナ長のモノポールアンテナより何れも劣るので、ブースターを取り付けたり、送受信機の性能を上げるなど、相応の対応が必要となる。 アルミテープ 2016年にトヨタ自動車は車体にアルミテープを貼ることで静電気を放電させ、空力を最適化する発明の国際特許を申請済みであることを公表した。(最近のトヨタの車両にはバンパーの裏側などにアルミテープが貼ってある)近年の車はプラスチックなどの非金属素材を多用しているため走行中にタイヤや空気摩擦により静電気が溜まりやすい状態にある。その静電反発は形状抵抗を増大させ、剥離領域の拡大により本来の空力性能が十分に得られなくなる。他にダクト類に貯まる静電気はダクトの中の空気の流れを阻害している可能性もある。。そこで車体に除電器として糊部分も導電性があるアルミテープを貼り付け電荷を大気中に放出することで、本来の空力特性に近づけることが出来る。その効果は空気抵抗減少による燃費改善・操縦安定性向上・直進性向上・運動性向上などで、効果的な設置場所やテープの加工方法なども公開されている。 異形前照灯・尾灯 自動車の車体前部の高さを下げることは空気抵抗の減少につながるが、前頭部に装備するヘッドライトの最低地上高は歩行者に対する安全上の理由等から規制があり、極端に低い位置には設置出来ない。丸形・角形規格品(デファクトスタンダード含)前照灯を廃し、ボンネット両端前部に空力に配慮した前照灯を配す。または丸形・角形規格品(デファクトスタンダード含)前照灯の前に空力に配慮した半透明カバーを設ける。特に現在主流となっている樹脂製ライトカバーは整形自由度が高いため、後端に角を設けて気流の離れを調整したり、突起を設けてボルテックスジェネレーターとするなどエアロパーツ的機能を積極的に付加させる例が増えている。空力的メリットの他に、歩行者等交通弱者との衝突時に、幾許でも引っ掛かりを避け衝撃を逃がす効果が期待できる。西欧が先行し、米国での「規格型」のライトハウジング使用義務終了に伴い、世界的に普及した。ただしフォグランプ類に規格品灯が使われる事は今日でも多い。 空力形衝突安全装置・自動運転装置 衝突安全装置・自動運転装置の車外センサーを空力に配慮した形状にする。 上下短横長形ナンバープレート 先端のナンバープレートを、冷却性能も含め空力に配慮した上下短横長形状にする。 主要国では実質法定最高速度の際立って低い日本では、冷却性能も含め空力に配慮する必要が無いので、上下長横短形ナンバープレート(ここではそれまでの横書単行から昭和30年3月28日運輸省令7号に始まる横書二行化ナンバープレートと、単行の他国ナンバープレートとの相対比較を意味する)を維持し続けている。(国際標準形に合わせた外交官用および、デパーチャーアングルが重要な米軍・自衛隊等を除く) フロントグリル 自動車のフロントグリルは車体の最前面にあり、車の「顔」となるためブランドを示すエンブレム等が配置されることもあるスタイリング上重要な部分であるが、真正面から空気に当たる部分であるために背後にラジエーターやインタークーラーが配置される。しかし車体の開口部は空気抵抗の要因ともなるため、冷却効率と空気抵抗の低減を両立したデザインが要求される。そのためチューニング車で冷却率を上げる目的でグリルを撤去する者もいるが、かえって冷却効率を悪化させていることが多い。近年ではグリルに自動で開閉するシャッターを設け、速度や熱状態により開閉させ、空気抵抗の低減を図る例も見られる。 エンジンカバー 複雑な配管やケーブルなどを隠すといった見た目上の役割や、遮音や遮熱、エンジンのヘッド部分や各種の補機類を汚れから守るといった役割があるが、ボンネット内の空気抵抗も考慮し設計される場合がある。 ボンネットスポイラー 高速走行時のフロントガラスへの虫除けとして装着される空力パーツ。商品名では「バグガード」とも呼ばれる。高速道路交通警察隊の高速パトロールカーによく装備されている。 ボンネット上を流れる空気をフロントガラスの前方で上方に流し、高速走行時に虫がフロントガラスに激突して視界を塞ぐことを防ぐためのもので、雨天の高速走行時には雨粒がフロントガラスに叩きつけることを軽減する効果もある。 通常はボンネットの中央もしくは中央やや後方よりに取り付けられるが、ボンネット前端部に装着するタイプのものもあり、それらは「ボンネットガード(ボンネットプロテクター)」「フロントプロテクター」などの商品名でも呼ばれるが、“フロントプロテクター”と呼ぶ場合、必ずしもこのボンネットスポイラー(バグガード)のことを指すとは限らない。 ホイールキャップ、アルミホイール 近年の車両、特にいわゆるエコカーに関しては軽量化のためにホイールのメイン素材をアルミとしつつ、さらに空気抵抗低減のためにホイールキャップを装着する例が見られる。(例:20系以降のトヨタ・プリウス、スバル・レヴォーグ等) またスチールホイール装着車に関してもエアロパーツとしての効果を期待してホイールキャップが装着される例が見られ、3代目eK/初代デイズの開発を追った番組では風洞実験でその効果を検証する一幕が登場していた。
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