【MiG-21】(みぐにじゅういち)
旧ソビエトのミグ設計局が開発した小型戦闘機。
NATOコードは Fishbed(フィッシュベッド) 。
アフターバーナー推力6.5トンのターボジェットエンジンを持つマッハ2級の機体として開発された。
中射程空対空ミサイルが装備できないもののR-13(AA-2「アトール」・R-60(AA-8「エイフィッド」)短射程空対空ミサイルとGSh-23L 23mm機関砲を装備する。
ベトナム戦争ではアメリカ軍のF-4と互角に戦いその高性能を見せ付けた。
1956年の初飛行以来、コピーを含めると13,000機を越える製造実績があり、中国やロシアでは小規模ながら改良型の生産が続いている。
使用国は旧ソビエトの連邦国を初めとする共産圏が主だが、冷戦期に大量に軍事援助として供与されたため、また冷戦崩壊後には多数の中古が流出したことから、わかっているだけでも40ヶ国近くの国で使用されている。
今となっては相当旧式な部類に入る機体であるが、大量に生産された事による調達の容易さや旧式ゆえに高度な整備技術が必要がないなど、小国においては貴重な空軍力となっている。
また、MiG-21の運用に慣れた国では独自に改修を施すなどして機体寿命の延長や性能を向上させていることから、当分の間は現役でありつづけると思われる。
主な戦歴
1960年代:ベトナム戦争
1960年代以降:アフリカ各地での紛争
1960年代~1980年代:各次中東戦争及び同地域におけるその他の武力衝突
1965年:第二次印パ戦争
1968年:プラハの春
1969年:珍宝島事件
1970年代以降:インドシナ方面での紛争
1971年:第三次印パ戦争
1978年以降:ベトナムによるカンボジア侵攻
1979年:中越戦争
1979年~1989年:ソ連のアフガニスタン侵攻
1980年~1988年:イラン・イラク戦争
1991年:湾岸戦争
1990年代:ユーゴスラビア紛争、コソボ紛争等旧ユーゴスラビア地域での内戦や戦争
1990年代後半:エチオピア・エリトリア国境紛争
その他、多くの紛争や内戦に使われている。
現在の各国での保有数(2003年 推測)
- アフリカ地域
- アルジェリア空軍:57機(MiG-21PFM/bis/UB)
- アンゴラ空軍:19機(MiG-21bis/UB)
- コンゴ空軍:10機(MiG-21bis/UB)
- エジプト空軍:40機(MiG-21PF/PFM/MF/UB)
- エチオピア空軍:29機(MiG-21MF/UB)
- ギニア空軍:5機(MiG-21PFM/UB)
- リビア空軍:40機(MiG-21bis/UB)
- マダガスカル空軍:8機(MiG-21bis/UB)
- マリ空軍:10機(MiG-21MF/UB)
- モザンビーク空軍:25機(MiG-21bis/UB)
- ナイジェリア空軍:12機(MiG-21MF/UB)
- ウガンダ空軍:6機(MiG-21bis/UB)
- ザンビア空軍:13機(MiG-21MF/UB)
- ユーラシア地域:
- トルクメニスタン空軍:3機(MiG-21)
- アゼルバイジャン空軍:不明(MiG-21)
スペックデータ
乗員 | 1名(単座型)/2名(複座型) |
全長 | 14.10m |
全高 | 4.13m |
全幅 | 7.15m |
主翼面積 | 23.0㎡ |
空虚重量 | 5,450kg |
最大離陸重量 | 10,470kg |
最大兵装搭載量 | 2,000kg |
エンジン | ツマンスキー R-25-300ターボジェット(推力40.2kN/69.65kN(A/B使用時))×1基 |
最大速度 | M2.05 |
上昇率 | 13,800m/min |
実用上昇限度 | 17,500m |
航続距離 | 795nm(増槽×1) |
固定武装 | NR-30 30mm機関砲×1~2門またはGSh-23L 23mm2連装機関砲×1門 |
兵装 | K-5AAAM、K-13AAM、R-60AAM、通常爆弾、ロケット弾ポッド(S-5・S-24を装備)、増槽等 |
MiG-21の主な種類(«»は製品番号を表す)
ソ連/ロシア/ウクライナ/グルジア/インド/ドイツ/ブルガリア
- Ye-2:
MiG-19から発展した後退翼機。エンジンはAM-9B(RD-9B)を1基搭載している。
- Ye-4:
三角翼機の1号機。主翼下面に大型の境界層版をつけていた。
- Ye-50:
Ye-2の発展型で、AM-9Yeジェットエンジンに加えS-155ロケットエンジンを追加した混合動力機。
- Ye-5:
Ye-4の発展型。
この機体を基にして新型前線戦闘機MiG-21の量産されることが決定された。
- Ye-6:
Ye-5の発展型で、信頼性に乏しかったRD-11エンジンをR-11F-300に換装するなどの改修を行った。
3号機はエンジンのストール防止用の空気取り入れ口を増設した。
この3号機を基に初めの生産型MiG-21Fが製作された。
- MiG-21F 《72》:
最初期型。エンジンはR-11F-300を搭載。
後に、MiG-21F-13同様の垂直尾翼の増積や、R-3(K-13)空対空ミサイルの運用のための改修が行われた機体もある。
- MiG-21F-13 《74》:
レーダーを装備していない昼間戦闘機型。
NR-30 30mm機関砲を1門装備している。
- MiG-21P:
TsD-30T全天候レーダーを搭載する迎撃戦闘機型の初期型。生産されなかった。
- MiG-21PF 《76》:
TsD-30TP(RP-21)レーダーを装備した全天候戦闘機型。
代わりに固定武装であった機関砲は廃されている。
- MiG-21FL 《77》:
インドでライセンス生産された型。R-11F-300エンジンとR-2Lレーダーを搭載。
性能はPF型と同じだが、吹き出しフラップがないなどの違いがある。
- MiG-21PFS 《94》:
PF型に主翼フラップの吹き出しを加え、離着陸距離が短くなった型。
R-11F2S-300エンジンを搭載。
- MiG-21SPS:
PFS型の東ドイツでの正式名称。
- MiG-21PFM 《94A》:
レーダーをTsD-30TP(RP-21)に新型化し、GP-9機関砲が装備されたPFSの改良型。
- MiG-21PFM 《94H》:
後期型で吹き出しフラップを備えた初期のMiG-21の主要生産型。
射出座席をKM-1に変更し、機関砲コンテナーの搭載能力が付加された。
なお、射出座席の変更に伴い風防はそれまでの前開きのワンピース型から横開きのツーピース型に変更されたが、ワンピース型同様に上方へやや膨らみをもった形状のものと上辺が直線的でリアビューミラーを装備したものとがある。
- MiG-21SPS-K:
SPSをPFM型に準じた仕様とした改修型。機関砲コンテナーを搭載可能。
- MiG-21PD(23-31):
PFMの改設計型でVTOL研究機。リフトエンジンを2基搭載する。
本機をベースに23-01(MiG-23PD 、NATOコード「フェイスレス」)が製作されたが採用されなかった。
- MiG-21R 《94R/03》:
背部燃料タンクを大型化し、胴体下面にセンサーポットを搭載した前線偵察機型。
- MiG-21RF:
R型の輸出型でコックピットの下に偵察カメラを積んだ型。
偵察ポットも搭載できる。
- MiG-21S 《95》:
燃料容量を増大し、パイロンを2個増設した第3世代型。
新型のRP-22「サプフィール22」レーダーとR-11F2S-300エンジンを搭載。
- MiG-21SM 《15》:
S型の改良型で、エンジンをP-13-300に強化し機関砲をGSh-23 23mm機関砲にした型。
MiG-21シリーズの中で最も多くの機体が製作されたとされる。
MiG-23などの主力戦闘機が登場した後は戦闘爆撃機として使用された。
- MiG-21I「アナローク(A-144)」:
Tu-144の開発のためにMiG-21Sの胴体を利用して製作された試験機。
- MiG-21M 《96》:
SM型のダウングレード輸出型。
電子機器能力が落とされ、レーダーは一世代前のRP-21ML、エンジンはPFM型と同じR-11F2S-300を搭載している。
インドでもライセンス生産された。
- MiG-21MA 《96A》:
改良型。単にMiG-21Mとも呼ばれる。
- MiG-21MF 《96F》:
SMの輸出型。
輸出型ではあるがRP-22「サプフィール22」レーダーやR-13-300エンジンを搭載するなど、ダウングレードはされていない。
ワルシャワ条約機構各国で主力機となった。
- MiG-21MF-75 《63》:
MF型の発展型。システムが若干近代化されている。
- MiG-21MFR:
老朽化したR型の代替としてMF型を改修した偵察機型。
R型で運用されていた偵察コンテナーを運用できるようにした。
しかし、老朽化により早期に退役している。
- M-21:
PF型やPFM型を改修した無人航空機型。
ソ連時代後期、標的機や各種試験機として多数が試験や訓練に使用された。
- MiG-21SMT 《50》:
SM型の改良型。胴体背部に大型の燃料タンクを装備し、ふくらみが大きくなっている。
- MiG-21ST:
SMT型の改修型。
- MiG-21MT 《96T》:
M型の発展型。エンジンはR-13F-300を搭載。
装備等はMiG-21MFと同様である。
- MiG-21bis LAZUR 《75A》:
エンジンやレーダーを強化したSM型の能力向上型。
エンジンはR-25-300を搭載。
- MiG-21bis SAU 《75B》:
ソ連での最終生産型。改良された電子機器を搭載した。
- MiG-21bis《75》:
インドでのライセンス生産型。
- MiH-21bis:
ウクライナで開発された海外向け近代化改修型。
- MiG-21U-400 《66》:
複座の練習機型。NATOコードは「モンゴルA」。
- MiG-21U-600 《67》:
改良型。垂直尾翼が大型化されるなどしている。
«66»と«67»はどちらも単に「MiG-21U」と称されることも多い。
- MiG-21US 《68》:
U型の電波受信部などを変更し、吹き出しフラップとKM-1射出座席を追加した型。
NATOコードは「モンゴルB」。
- MiG-21UM 《69》:
US型の能力向上型。翼下パイロンを装備し電子機器が改良されている。
- MiG-21K:
ロシアによるSM型の近代化改修型。R-27RやR-73を運用可能とするなどした。
M/MF型を運用する国やMiG-21bisを運用する国へ提案されたが、受注に失敗し計画は破棄されてしまった。
- MiG-21UPD/MiG-21-93:
ロシアのミグが開発したMiG-21bisの近代化改修型。
アビオニクスを改修した他HUDやチャフ・フレアディスペンサーを追加装備。
装備面ではR-77 RVV-AE(AA-12「アッダー」)・R-27(AA-10「アラモ」)中射程空対空ミサイル・R-73(AA-11「アーチャー」)短射程空対空ミサイル・Kh-25(AS-10MP「カレン」)・Kh-31P(AS-17P「クリプトン」)対レーダーミサイル・Kh-35(AS-20「ウラン」)・Kh-17(AS-17A「クリプトン」)空対艦ミサイル・KAB-500KrTV誘導爆弾等を運用出来るようになった。
現在ではインドが既にロシアと契約を交している。
- MiG-21 BISON:
インドでのMiG-21-93の採用名称。
- MiG-21-93I:
MiG-21-93の派生型。
- MiG-21-98:
MiG-21-93の派生型。
ルーマニア/イスラエル/クロアチア
- MiG-21RFM:
ルーマニアでのMiG-21PFの名称。
- MiG-21RFM-M:
ルーマニアでのMiG-21PFMの名称。
- MiG-21-2000:
イスラエルIAI社による近代化改修型。
MiG-21-93と同等の改修がされているが、アビオニクスは西側規格である。
- ランサーA:
ルーマニア軍所属MiG-21M/MFの近代化改修型。
対地攻撃用に使用され、アビオニクスはエルビット社・アエロスター社が担当。
精密誘導兵器の搭載が可能となった。
- ランサーB:
ルーマニア軍所属MiG-21UM/USの近代化改修型。
ランサーAの機種転換訓練機として使用され、性能はランサーAと変わらない。
- ランサーC:
ルーマニア軍所属MiG-21M/MF/MF-75の近代化改修型。
防空用の迎撃専用機として使用されロシア製R-73やイスラエル製パイソン3と言った短射程空対空ミサイルを搭載できる。
- ランサーIII:
エルビット社・アエロスター社が現在提案しているMiG-21bisの近代化改修型。
- L-17D/MiG-21bisD:
クロアチアのMiG-21bis LAZURをランサー3規格に改修した簡易型。
- MiG-21UMD:
ルーマニアがクロアチアのMiG-21UMを近代化改修した型。
ユーゴスラビア/セルビア・モンテネグロ/セルビア
- L-12:
ユーゴスラビアでのMiG-21F-13の名称。
- L-14:
ユーゴスラビアでのMiG-21PFMの名称。
- L-14i:
ユーゴスラビアでのMiG-21Rの名称。
- L-15:
ユーゴスラビアでのMiG-21Mの名称。
- L-16:
ユーゴスラビアでのMiG-21MFの名称。
- L-17:
ユーゴスラビア軍使用の型。
性能面はMiG-21bis LAUZERとほぼ同じだがチャフ・フレアディスペンサーを追加装備している。
- L-17K:
ユーゴスラビアでのMiG-21bis SAUの名称。
- NL-12:
ユーゴスラビアでのMiG-21Uの名称。
- NL-14:
ユーゴスラビアでのMiG-21USの名称。
- NL-16:
L-17の複座型。性能面はMiG-21UMと同じ。
チェコスロバキア/チェコ
フィンランド
中国/パキスタン
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