ぷちまる【プチマル】(果樹)
※登録写真はありません | 登録番号 | 第10379号 |
登録年月日 | 2002年 7月 10日 | |
農林水産植物の種類 | きんかん | |
登録品種の名称及びその読み | ぷちまる よみ:プチマル |
|
品種登録の有効期限 | 25 年 | |
育成者権の消滅日 | ||
品種登録者の名称 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 | |
品種登録者の住所 | 茨城県つくば市観音台三丁目1番地1 | |
登録品種の育成をした者の氏名 | 吉田俊雄、根角博久、吉岡照高、家城洋之、伊藤祐司、野々村睦子、上野勇、山田彬雄、村瀬昭治、瀧下文孝 | |
登録品種の植物体の特性の概要 | ||
この品種は、「長実キンカン」に「4倍体ニンポウキンカン」を交配して育成されたものであり、果形が長球で、果重がやや軽、果皮色が濃橙、育成地(静岡県清水市)では1月上中旬に成熟する早生種の3倍体品種である。樹姿は中間、樹の大きさはやや小、樹勢は中である。枝梢の太さは太、節間長は短、とげの多少は中である。葉身の形は紡錘形、波状の程度は弱、葉身の大きさは極小、葉身長は短、葉身幅は極狭、網脈の鮮明度は不明である。翼葉の形は無、葉柄の長さは短、太さは細である。花序の形成は単生、花(花蕾)の重さは極軽、花弁の形は紡錘形、長さは短、幅は中、色は白、数は5枚、花糸の分離の程度は合一、花粉の多少はやや多である。果実の形は長球、果形指数はかなり小、果頂部の形は円、放射条溝及び凹環の有無は無、果梗部の形は切平面、放射条溝の多少は無である。果心の充実度は密、大きさは中、果実の重さはやや軽、果皮の色は濃橙、油胞の大きさはやや大、密度は疎、凹凸は平、果面の粗滑は滑、果皮の厚さは中、果皮歩合は極大、剥皮の難易は中である。じょうのう膜の硬さは中、さじょうの形は短、大きさは極小、色は橙である。果汁の多少はやや少、甘味は高、酸味及び香気の多少は中、種子数は無、胚の数は単胚である。発芽期及び開花期は極晩、成熟期は早で育成地においては1月上中旬である。隔年結果性は低、浮き皮果及び裂果の発生は無、貯蔵性は短である。「長実キンカン」と比較して、枝梢のとげが多いこと、種子数が無であること等で、「ニンポウキンカン」と比較して、種子数が無であること、単胚であること等で区別性が認められる。 | ||
登録品種の育成の経過の概要 | ||
この品種は、昭和62年に農林水産省果樹試験場興津支場(現独立行政法人農業技術研究機構果樹研究所カンキツ研究部(静岡県県清水市))において、「長実キンカン」に「4倍体ニンポウキンカン」を交配し、その実生の中から選抜、以後、増殖を行いながら特性の調査を継続し、平成11年にその特性が安定していることを確認して育成を完了したものである。 |
キンカン
キンカン | |||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() マルミキンカン
| |||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||
Citrus japonica Thunb. (1780)[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
キンカン(金柑) | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Kumquat、Cumquat |
キンカン(金柑[3]、学名: Citrus japonica)は、ミカン科ミカン属の常緑低木、あるいはキンカン属(学名: Fortunella)の常緑低木の総称である。別名キンキツ(金橘)ともいう。果実は小粒で甘酸っぱく、ほろ苦い後味が残るので知られる。
概要
中国の長江中流域原産。日本へは中国から伝わり、暖地で栽培されている常緑低木[4]。果実は直径約2 - 3センチメートル (cm) で、甘みと酸味がある[3]。生で皮ごと食べられる品種もある[3]。
名の由来は、黄金色のミカン(蜜柑)の意味から金橘、金柑の中国名が生まれて、日本ではそれを音読みしてキンカンとなった[5]。俳句では秋の季語になっている。 英語などの「Kumquat」もしくは「Cumquat」は「金橘」の広東語読み「gam1gwat1 (カムクヮト)」に由来する。
カール・ツンベルクによりミカン属(Citrus)に分類され、1784年刊行の『日本植物誌』("Flora Japonica")においてCitrus japonicaの学名を与えられていたが、1915年にウォルター・テニスン・スウィングルにより新属として分割され、ヨーロッパに紹介したロバート・フォーチュンへの献名として新たな学名(Fortunella)を与えられた。 しかし近年の系統発生解析は、キンカンがミカン属の系統に含まれることを示唆している[6]。
日本の標準和名キンカン(学名:Citrus japonica)とよばれる種は、別名でマルミキンカン、マルキンカンともよばれている[1]。同属には、ナガキンカン(ナガミキンカン)[7]、ネイハキンカン(ニンポウキンカン、メイワキンカン)[8]、マメキンカン[9]、チョウジュキンカン(フクシュウキンカン)[10]、近縁のなかまにトウキンカン(別名:カラマンシー)[11]などがある。一般に栽培されている種がナガキンカンとよばれるもので、果実が丸いものをマルキンカンという[4]。マルキンカンは樹高が約2メートルで枝に棘があるものとないものがあり、ナガキンカンは樹高約3メートルで枝に棘がない[5]。
日本における2010年の収穫量は3,732 トンであり、その内訳は宮崎県2,604 トン、鹿児島県873 トン、その他255 トンとなっている[12]。
-
キンカンの果樹
-
葉と未熟果
-
熟した果実
利用
果実は食用に、また薬用に用いられ、10 - 11月ころによく熟した果実が収穫される[5]。
食用
果実は果皮ごとあるいは果皮だけ生食する。皮の中果皮、つまり柑橘類の皮の白い綿状の部分に相当する部分に苦味と共に甘味がある。果肉は酸味が強い。果皮のついたまま甘く煮て、砂糖漬け、蜂蜜漬け、甘露煮、マーマレードにする[3]。甘く煮てから、砂糖に漬け、ドライフルーツにすることもある。
キンカンの砂糖漬けは、果皮に刃物で切れ目を入れて、軽く茹でてから竹串などで種子を除いて、果実量60 - 70%ほどの砂糖と水をかぶるほどの鍋に入れてから落し蓋をして、中火からとろ火で汁がなくなるまで煮詰めたあと、陰干しにする[13]。
薬用
マルキンカン、ナガキンカンともに薬用とされる[4]。
果実は民間薬として咳や、のどの痛みに効果があるとされ、金橘(きんきつ)と称することがある[4]。果実にはいずれの種にも、有機酸、糖分約8%、灰分約0.5%を含み、果皮中には少量のヘスペリジン(ビタミンP)、精油などを含んでいる[5]。有機酸には制菌作用、ヘスペリジンは毛細血管の血液透過性を増大させたり、抗菌や利尿などにも役立つとされている[5]。また、精油は延髄中枢を刺激して、血液循環を良くして、発汗作用の働きがある[5]。
民間療法では、風邪や咳止めにキンカンの砂糖漬けを2 - 3個カップに入れて熱湯を注いで飲む方法や、生の果汁をおろしショウガ、ハチミツと一緒にカップに入れて熱湯を注いで混ぜて飲むなどの方法が知られている[4][13]。疲労回復や保健に、10月ころに変色し始めた果実を焼酎1リットルあたり300グラムの割合でビンに入れて漬け込み、冷暗所に3か月保存したものを毎日盃1杯ほど飲むとよいといわれている[4][13]。ただし、手足がいつも火照るような人への連用は避けるべきとされる[4]。
観賞用
観賞用として庭木として植えられることも多い。剪定に強いので生垣や鉢植え、盆栽にもできる。広東省や香港では、旧正月を迎える際に柑橘類の鉢植えを飾ることが多く、キンカンも好まれる。
種
キンカン属には4から6種が属する。カンキツの分類学者ウォルター・テニスン・スウィングルが4種、田中長三郎が6種と設定しており、前者はニンポウ・フクシュウキンカンを雑種として種から外している。
- マルミキンカン(丸実金柑)・マルキンカン(丸金柑)・ヒメタチバナ(姫橘) Fortunella japonica
- ナガミキンカン(長実金柑) Fortunella margarita
- フクシュウキンカン(福州金柑)・オオミキンカン(大実金柑)・チョウジュキンカン(長寿金柑) Fortunella obovata
- ネイハキンカン・ニンポウキンカン(寧波金柑)・メイワキンカン(明和金柑) Fortunella crassifolia
- ホンコンキンカン(香港金柑)・マメキンカン(豆金柑)・キンズ(金豆) Fortunella hindsii - 観賞用
- ナガハキンカン(長葉金柑) Fortunella polyandra
主な品種
- ぷちまる - 種無し金柑(正確には数粒のしいな種子が入ることがある)
- ナガミキンカン×四倍体ニンポウキンカンの交配から生まれた三倍体種間雑種。
- スウィートシュガー - 極甘品種の金柑
- 交雑種
- ライムクアット - マルミキンカンとメキシカンライムの交雑種
- サンクアット - マイヤーレモンとの交雑種
- オレンジクアット - ウンシュウミカンとネイハキンカンの交雑種
- シトレンジクアット - ナガミキンカンとシトレンジ(オレンジとカラタチの交雑種)の交雑種
マルミキンカン
特徴
樹高は2mほどになる。枝は分岐が多く、若い枝には短い刺があることがある。
葉は互生する。長さは5-7cm、長楕円形で厚みがあり周囲には浅い鋸状歯がある。葉が上側に反っていることが多い。葉柄には小さな翼があるがないものもある。
夏から秋にかけて3-4回、2-3cmほどの白い五弁の花をつける。雌しべは1本、雄しべは20本。花の後には直径2cmほどの緑色の実をつける(初夏につけた花は実がならないことが多い)。晩秋から冬にかけて実は黄色く熟する。
ニンポウキンカン
歴史
日本への渡来は江戸時代の文政9年(1826年)のこと。現在の中国浙江省寧波(ニンポウ、当時・清)の商船が遠州灘沖で遭難し清水港に寄港した。その際に船員が礼として清水の人に砂糖漬けのキンカンの実を贈った。その中に入っていた種を植えたところ、やがて実がなり、その実からとった種が日本全国へ広まった[14]。
主なブランド
- たまたま - 宮崎県産。JAブランド。開花結実から約210日以上を経過し、糖度が16度、直径2.8 センチメートル以上のニンポウキンカンにつけられる。
- たまたまエクセレント - 宮崎県産。JAブランド。上記の「たまたま」の中でもさらに糖度18度、直径3.3 センチメートル以上のニンポウキンカンにつけられる。
- 春姫 - 鹿児島県南西部産。JAブランド。開花結実から約210日以上を経過し、糖度が16度、直径2.8 センチメートル以上のニンポウキンカンにつけられる。
脚注
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Citrus japonica Thunb. キンカン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月22日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Fortunella japonica (Thunb.) Swingle キンカン(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月22日閲覧。
- ^ a b c d 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 192.
- ^ a b c d e f g 貝津好孝 1995, p. 92.
- ^ a b c d e f 田中孝治 1995, p. 133.
- ^ Tshering Penjor; Masashi Yamamoto, Miki Uehara, Manami Ide, Natsumi Matsumoto, Ryoji Matsumoto, Yukio Nagano (April 25, 2013). “Phylogenetic Relationships of Citrus and Its Relatives Based on matK Gene Sequences” (英語). PLOS ONE 8 (4): e62574. doi:10.1371/journal.pone.0062574 .
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Citrus japonica Thunb. 'Margarita' ナガキンカン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年1月22日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Citrus japonica Thunb. 'Crassifolia' ネイハキンカン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月22日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Citrus japonica Thunb. 'Hindsii' マメキンカン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月22日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Citrus japonica Thunb. 'Obovata' チョウジュキンカン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月22日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Citrus microcarpa Bunge トウキンカン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月22日閲覧。
- ^ 農林水産省特産果樹生産動態等調査2013年7月23日閲覧
- ^ a b c 田中孝治 1995, p. 134.
- ^ 古角孝之「風邪の民間薬「キンカン」(ミカン科)」『科学の眼 2010年12月15日 No. 449』姫路科学館、2010年。
参考文献
- 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、192頁。ISBN 978-4-415-30997-2。
- 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、92頁。ISBN 4-09-208016-6。
- 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、133 - 134頁。ISBN 4-06-195372-9。
外部リンク
- ぷちまるのページへのリンク