情報学とは? わかりやすく解説

情報学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/01/27 10:16 UTC 版)

情報学(じょうほうがく)とは、情報の生成、収集、処理、伝達、利用、蓄積というすべての過程を科学的手法で研究する学問である。

情報学という語が指す学術分野は、基本的には情報に関する分野であるが、歴史的な事情により、多義的であり、特に英語と日本語の対応に相違がある[1]

概要

現在の情報学とは、情報に関する学術研究を基礎理論から社会的応用に至るまで総合的に行うことで、情報の統一的かつ体系的な理解を可能にする学問である[2]

日本においてはかつて、コンピュータサイエンスや情報工学、図書館情報学と指すものが曖昧であったが、2000年に設立された国立情報学研究所が再定義を行った。

社会情報学(social informatics)やバイオインフォマティクス(生命情報学)等といった「~informatics」=「~情報学」と呼ばれている分野もあるが、その場合の「情報学」は「Informatics」を指す(インフォマティクスも参照)。

教科「情報」については、その英訳としての英文表記に関しInformaticsを使うように、2017年4月18日に情報処理学会から提言[3]が出され、文部科学省が出した「平成30年改訂高等学校学習指導要領 教科・科目名 英訳版(仮訳)」[4]においてInformaticsと改められた。

日本における「情報学」の呼称

1960年代後半から1970年代にかけて、日本のアカデミズムに米国の「Computer Science」が導入された。このとき、工学部を中心とした研究者はハードウェアを含めた実学を「情報工学」と称した。一方、数学的な計算の理論やソフトウェアの数理的側面を重視した学問領域では、「電子計算機」という語に含まれていたハードウェア偏重のニュアンスを避ける傾向にあった[1]。その結果、東京大学理学部(1975年学科設立)をはじめとする理学系研究機関は、米国では図書館情報学等の分野で用いられていた「Information Science」という語を借用し、これをComputer Scienceに相当する理系分野の名称として「情報科学」と和訳・採用した[1][5]

これにより、日本においては「Information Science=計算機科学」という、国際的な定義とは異なる独自の用語法が定着することとなった[1]

その後、米国から本来の「Information Science(図書館情報学)」が本格的に導入される段階となり、用語の重複問題が顕在化した。図書館情報学とは、「図書」というメディアに限定されず、情報の格納、分類、検索、集約、解析する学問分野である。本来であればこの分野が「情報科学」と訳されるべきであったが、前述の通り既に計算機科学の分野がこの名称を使用していたため、用語の住み分けが困難となった。このため、本来の「Information Science(図書館情報学)」分野は、「図書館情報学」と訳すか、あるいは自然科学的なニュアンスを弱めた「情報学」という呼称を用いることで、理系の「情報科学」との混同を回避した[1]。この時期、「情報」を冠する学部・学科名において、内容が乖離しているにもかかわらず、英語名称や日本語名称が交錯する「ねじれ現象」が固定化された。

1990年代に入り、インターネットの普及とともに技術と社会の融合が進むと、欧州由来の概念である「Informatics(情報学)」が注目されるようになった。これは計算機科学から人文・社会科学的側面までを包括する広い概念である。日本学術会議や2000年に設立された国立情報学研究所(NII)は、従来の縦割り的な「情報科学」や「図書館情報学」を統合する上位概念として、このInformaticsに対応する「情報学」の体系化を推進し再体系化した[2]

教育

日本

情報学の分野

ここでは、日本学術会議による「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 情報学分野」[6]を参考に、情報学の分野およびその背景、概要について述べる。中等教育に関しては、情報 (教科) の記事を参照。

日本学術会議と情報学

2016年現在、日本学術会議には、大きな分野別として「人文・社会科学」「生命科学」「理学・工学」の3部の部会がある。また、それとは直接の対応関係にはない30の分野別委員会が設けられており、そのうちのひとつが情報学委員会である。この組織構成は第20期(2005年 - 2008年)以降のものである。第19期までは、7部構成の下に180の研究連絡委員会があるという組織構成で、第4部(理学)に情報学研究連絡委員会、第5部(工学)に情報工学研究連絡委員会、電子・通信工学研究連絡委員会、基盤情報通信研究連絡委員会、が設けられていた[7]。このことや、情報処理学会の学会誌『情報処理』の、創刊以来の総目次[8]を見ても、1980年頃より、コンピュータ科学に近いが、コンピュータを重要な要素として含むものの、情報そのものにより重点がある分野として「情報学」という分野が捉えられていることがわかる。

「参照基準」とは

(2016年現在)日本学術会議には、前述の分野別委員会の他に、機能別委員会と課題別委員会という委員会群がある。課題別委員会のひとつに、大学教育の分野別質保証委員会があり、大学教育の分野別質保証に資するため、各分野の教育課程編成上の「参照基準」というものを、各分野別委員会に作成させ、とりまとめている[9]

情報学委員会では、既存の情報科学技術教育分科会が中心となり、この策定にあたった。経緯は、分科会委員長である萩谷昌己の筆により学会誌上に報告されている。[10][11]

背景

分類の背景となる事柄について述べる。参照基準では、情報学を、情報によって世界に意味と秩序をもたらすとともに社会的価値を創造することを目的とし、情報の生成・探索・表現・蓄積・管理・認識・分析・変換・伝達に関わる原理と技術を探求する学問である、と定義している。また、この種々累々にわたる情報の取扱いについて「情報を扱う」と総称する。

また、情報学を構成する諸分野は、単に情報を扱うというだけではなく、情報と対象、情報と情報の関連を調べることにより、情報がもたらす意味や秩序を探求しており、さらに、情報によって価値、特に社会的価値を創造することを目指している、としている。

以上の概念からは、当然のように応用分野も広く考えることができるが、参照基準の目的は専門家教育の質の保証であることから、専門家には「最も基本的な中核部分を体系的に学ぶことがきわめて重要」であるため、中核部分に焦点を絞っている。そのため、以下で述べる分野についても、情報学の中核部分に特に絞ったものとなる。

分野

参照基準では、次の5つの項目によって、情報学の中核部分を体系化している。

  1. 情報一般の原理
  2. コンピュータで処理される情報の原理
  3. 情報を扱う機械および機構を設計し実現するための技術
  4. 情報を扱う人間社会に関する理解
  5. 社会において情報を扱うシステムを構築し活用するための技術・制度・組織

以下では各項目について、付録ア~付録オに示されている表を参考に、それぞれの分野を示す(詳細は出典の文献を参照のこと。例示であって、網羅するものではない。ウィキペディアの記事名や構成の都合により調整してある箇所もある)。また、参考として示されている、国際学会ACMの Curricula Recommendations[12] における5分類(CS: Computer Science, CE: Computer Engineering, IS: Information Systems, SE: Software Engineering(日本でよく言われる、SE = システムエンジニア とは全く異なるので注意), IT: Information Technology)との対応についても示す。

まず総論的な解説であるが、1は記号論サイバネティックスに由来する概念を含み、情報・情報学の中核部分全体を分類・体系化する指針を与える。2は計算理論情報理論を含み、コンピュータ科学としてはその基礎分野で、Curricula Recommendationsでは「CS」の基礎的な内容にあたる(ここでいう「基礎」とは、「初歩」といったような意味ではない)。3はコンピュータ科学においてコンピュータシステムを設計し実現する技術で、Curricula Recommendationsでは「CE」と、「CS」の一部にあたる。4はメディア論コミュニケーション論を含み、社会情報学等と呼ばれる諸分野である。5は情報システムなどと呼ばれている分野で、Curricula Recommendationsでは「IS」と「SE」と「IT」に対応する。さらに、情報学の学修を通して、Computational Thinking(「計算論的思考」、en:Computational thinking[13]などのジェネリックスキルの修得が期待されている。

情報一般の原理

記号論サイバネティックス認知科学

コンピュータで処理される情報の原理

計算理論情報理論

情報を扱う機械および機構を設計し実現するための技術

計算機械計算機工学

情報を扱う人間社会に関する理解

メディア論コミュニケーション論

社会において情報を扱うシステムを構築し活用するための技術・制度・組織

情報システムなど

その他

(ジェネリックスキル等)

  • Computational Thinking(計算論的思考)

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 連立方程式を解くのに、逆行列を直接求めるのは無駄であり、LU分解等の利用が常識である。
  2. ^ この「基本ソフトウェア」は、文字通り基本的なソフトウェアという意味であり、「オペレーティングシステムのよくわからない言い換え語」のそれではない。
  3. ^ たとえば、作者の死後70年まで継続して保護する、というルールの遵守など。

出典

  1. ^ a b c d e 高橋延匡 (2001-03). “情報処理学会における アクレディテーション 委員会活動”. bit 33 (3): 91. https://www.ipsj.or.jp/12kyoiku/acre/bit3.pdf. 
  2. ^ a b “[https://www.nii.ac.jp/chukaku/report/report3_j.html �$B>pJs8&5f$NCf3KE*8&5f5!4X$NAO@_$K$D$$$F�(B]”. www.nii.ac.jp. 2026年1月27日閲覧。
  3. ^ 高等学校教科「情報」の英文表記について-情報処理学会
  4. ^ 平成30年改訂高等学校学習指導要領 教科・科目名 英訳版(仮訳)-文部科学省
  5. ^ “[https://www.rs.noda.tus.ac.jp/~stomizaw/tomizawa/tominfo.html ���{���̏��Ȋw�ȁ@�i�x�V��j�j�������ȑ�w]”. www.rs.noda.tus.ac.jp. 2026年1月27日閲覧。
  6. ^ 「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 情報学分野」 https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-h160323-2.pdf
  7. ^ 日本学術会議と「情報学」の新展開, NAID 110004749775
  8. ^ https://www.ipsj.or.jp/magazine/contents_m_01-30.html https://www.ipsj.or.jp/magazine/contents_m.html
  9. ^ https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/daigakuhosyo/daigakuhosyo.html
  10. ^ 情報学を定義する -情報学分野の参照基準, NAID 110009795427https://www.ipsj.or.jp/magazine/9faeag000000hkfv-att/5507-kai.pdf
  11. ^ ぺた語義:情報学分野参照基準その後, NAID 110009866525https://www.ipsj.or.jp/magazine/9faeag0000005al5-att/peta5602.pdf
  12. ^ http://www.acm.org/education/curricula-recommendations
  13. ^ 『計算論的思考』(Jeannette M. Wing Computational Thinking, 中島秀之訳) (PDF)
  14. ^ Cybersociety 2.0: Revisiting Computer-Mediated Community and Technology https://www.sagepub.in/textbooks/Book7919
  15. ^ 『情報メディア学入門』 http://shop.ohmsha.co.jp/shopdetail/000000002937/
  16. ^ 科学技術コミュニケーション推進事業 https://www.jst.go.jp/csc/support/
  17. ^ https://www.engineer.or.jp/c_topics/000/000807.html の「添付資料」
  18. ^ 『ガバナンスとは何か』 http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002279

参考文献

外部リンク



情報学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/15 21:45 UTC 版)

Φシリーズ」の記事における「情報学」の解説

情報場に関する学問作中披露された情報学利用技術は「物体硬度強化」「テレパシー」「音の拡大」「透明化」など多岐にわたる

※この「情報学」の解説は、「Φシリーズ」の解説の一部です。
「情報学」を含む「Φシリーズ」の記事については、「Φシリーズ」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「情報学」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

情報学

出典:『Wiktionary』 (2021/08/21 09:34 UTC 版)

名詞

   (じょうほうがく)

  1. 情報すべての過程研究する科学分野。別名、情報科学

翻訳




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳

英語⇒日本語日本語⇒英語

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「情報学」の関連用語

情報学のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



情報学のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの情報学 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、WikipediaのΦシリーズ (改訂履歴)、チャールズ・サンダース・パース (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの情報学 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2026 GRAS Group, Inc.RSS