サイバネティックスとは? わかりやすく解説

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サイバネティックス【cybernetics】


サイバネティクス


サイバネティックス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/16 05:04 UTC 版)

サイバネティックス英語: cybernetics)は、通信工学制御工学を融合し、生理学機械工学システム工学、さらには人間、機械の相互関係(コミュニケーション)を統一的に扱うことを意図して作られ、発展した学問。一見無関係に見える複数の学問分野を、フィードバック制御という抽象的かつ共通のモデルを用いて説明可能にした。

語源はギリシャ語で「(船の)舵を取る者」を意味するキュベルネーテースギリシア語: Κυβερνήτης[注釈 1])。ノーバート・ウィーナー(Norbert Wiener)第二次世界大戦中に学際研究として構想し、戦後の1948年の著書「サイバネティクス」において「動物と機械における通信と制御」の問題について考察し、フィードバック制御という観点で抽象的に捉えると、通信工学、制御工学、神経生理学心理学、社会学を同じ俎上(そじょう)に載せることができると提案している[1]

当時はまだ情報理論の発展普及する前で、自動制御フィードバックがそれぞれ発展しても、両方の関連が認識されることすら年数を要したという時代であった[2]

1970年代にはサイバーシン計画など、未知への挑戦としてサイバネティックスを積極的に社会実装する動きがあった。情報化が大きく進んだ21世紀では当たり前のように用いられている考え方であって、特段に取り上げられることは無くなった。

日本での影響

日本では、ロゲルギストの集まりがサイバネティックスに刺激を受けたものとして知られる。また、鉄道におけるコンピュータ導入としては、穂坂衛らによる座席予約(マルス (システム)#開発の経緯)や近鉄と日本電気によるそれが初期のものとして知られるが、他の流れとして国鉄電気局通信課の小田達太郎によって通信分野を主として国鉄にサイバネティックスがもたらされ[3]日本鉄道サイバネティクス協議会などにサイバネティクスの名が付いている。

フィクションとサイバネティックス

サイバーパンクなどのSFにおいては、そうした学問の成果によって作られた技術・装置を指して「サイバネティックス」と呼ぶこともある。機械と人間の融合物を意味する「サイボーグ」もしばしば使われる。またそういったSFなどで、コンピュータの応用を指して漠然と「サイバー」の語が使われることがあり、そういった場合に接頭辞「サイバー」を「電脳」と訳すこともしばしば見られる(「サイバースペース」を「電脳空間」、など)。

近年では「サイバー」という接頭辞がフィクションの枠を超えて使われることもある。日本では「インターネットを使用した事件」といった文脈でインターネットなどを指して「サイバースペース」の語が使われることがあり、そういった警察の部署名などに「サイバー」という語が使われている。またコンピュータやネットワークを介する攻撃や犯罪はしばしば「サイバー攻撃」や「サイバー犯罪」と呼ばれる。

脚注

注釈

  1. ^ ラテン文字表記kybernētēs

出典

  1. ^ 杉本舞『ウィーナーの「サイバネティクス」構想の変遷 : 1942年から1945年の状況』京都大学文学部科学哲学科学史研究室、2008年1月31日。doi:10.14989/56991https://doi.org/10.14989/569912021年10月5日閲覧 
  2. ^ 高橋秀俊『コンピューターへの道』p. 44
  3. ^ 『サイバネティクスと鉄道 ―小田達太郎と鉄道通信―』1983年 (社)鉄道通信協会編集兼発行

基本文献

  • Norbert Wiener, Cybernetics: or Control and Communication in the Animal and the Machine 第1版 (1948) / 2nd edition (1961)
    • ノーバート・ウィーナー 『サイバネティックス: 動物と機械における制御と通信』池原止戈夫, 彌永昌吉, 室賀三郎訳、岩波書店 (1957)
    • 『サイバネティックス 第2版: 動物と機械における制御と通信』池原止戈夫, 彌永昌吉, 室賀三郎, 戸田巌訳、岩波書店 (1962) 、ほぼ第1部が旧版
  • Norbert Wiener, The Human Use of Human Being: Cybernetics and Societyw:The Human Use of Human Beings)第1版 (1950) / Revised (1954)
    • ノーバート・ウィーナー 『人間機械論: サイバネテイックスと社会』池原止戈夫訳、みすず書房 (1954)
    • 『人間機械論 第2版: 人間の人間的な利用』鎮目恭夫, 池原止戈夫訳、みすず書房 (1979)、新装版 ISBN 978-4-622-07883-8 (2014)
  • Norbert Wiener, I Am a Mathematician (1956)
    • ノーバート・ウィーナー『サイバネティックスはいかにして生まれたか』鎮目恭夫訳、みすず書房 (1956) 、新装版 ISBN 978-4-622-05105-3 (2002)
    • 自伝 Ex-Prodigy(1953) -『神童から俗人へ』鎮目恭夫訳、みすず書房 (1983) の続編にあたる

サイバネティックス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 10:01 UTC 版)

システム思考」の記事における「サイバネティックス」の解説

ベルタランフィ同時期にシステム側から生物システムの関係を研究していたのが、MITノーバート・ウィーナーらのサイバネティックス研究である。1940年ウィーナーアメリカ国防研究委員会NDRC主導研究加わり対空高射砲射撃制御自動追随装置開発始める。その研究課題について友人神経生理学者、アルトゥーロ・ローゼンブリュート(英語版)に話をしたことから、フィードバック制御という人体働きとの共通点気づき共同研究を行うことになった航空機による戦い主役となった第二次世界大戦では、対空砲などの兵器では、敵機動き計測しその動き予測しながら尚且その目的に弾を当てるための制御開発急務であったフィードバック制御理論取り入れて開発されたのがサーボ機構である。1942年ウィーナーは、ローゼンブリュートらとの共同論文Extrapolation, Interpolation and Smoothing of Stationary Time Series with Engineering Applications」を「脳抑制会議 (The cerebral Inhibition Meeting)」の場で発表する。この会議では、社会学者生理学者神経学者多く出席していた。この脳抑制会議が「サイバネティックス会議」とも呼ばれた戦後の「生物学社会科学におけるフィードバック機構循環因果律システムに関する会議 (The Feedback Mechanisms and Circular Causal Systems in Biology and the Social Sciences Meeting)」いわゆるメイシー会議つながっていく。

※この「サイバネティックス」の解説は、「システム思考」の解説の一部です。
「サイバネティックス」を含む「システム思考」の記事については、「システム思考」の概要を参照ください。

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