中国庭園
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/10 00:33 UTC 版)
中国庭園(ちゅうごくていえん)、園林(えんりん)とは、中国において古代から伝わる庭園や造景芸術のことであり、ほかの東アジアの庭園に大きな影響を与えた[1]。
名称
中国語では「園林」という漢字表記で書き、日本庭園のように小さな家内空間を意味する「庭」という漢字を使わず、代わりに植物育成場を意味する「林」の漢字で広い中華風の庭園を表す。
日本語では「園林」が定訳に至ってないため、「日本庭園」という言い方に倣って「中華庭園・中華式庭園・中国風庭園」などの和訳もしばしば使われている。
定義
中国庭園、つまり「園林」というものは、必ず池・石・木・橋・亭などの五つの要素が全て揃って、一つを欠いても「園林」として成立しない。
日本庭園のルーツは中国庭園にあり、日中両国の庭園は似ている部分が多い。中国庭園の「池を中心とした神仙世界を表現してきた」ところには日本と同じだが、中国人ならではの美学も多く、日本庭園との相違点はかなりある。最大の違いは中国庭園は人間と自然の調和を求め、世の中に存在しない仙土・桃源郷を人間界に現実化させることを最大の目的とする。その為、中国庭園は執着に水墨画・漢詩・道教・仏教・儒教・紅楼夢の中の名シーンを忠実に再現しつつ、日本のように純粋に美を追求する事や自由に庭園をデザインする事は出来ない[2]。
歴史
中国庭園の歴史は長く、歴史的に分類すると
- 生成期(漢朝、紀元220年の前)
- 転換期(魏晋南北朝時代、紀元220年-589年)
- 興起期(隋・唐・五代十国時代、589年-960年)
- 成熟期(宋・元・明、960年-1736年)
- 硬化期(清、中華民国1736年-1911年)
五つの時期に分かれている[3]。
特徴
分類的には、皇家園林・私有園林・寺廟園林[4]・衙署園林・祠堂園林・書院園林・仏教園林[5]などがある。
代表的な中国庭園は避暑山荘・頤和園・蘇州古典園林などで、世界遺産にも登録されている。
中国では宮城や離宮・陵墓あるいは私邸や仏教寺院や道観・文廊などあらゆる建築に庭園が伴い、独自の環境文化を発展させてきた。
古くは神仙思想に傾倒した秦始皇帝や漢武帝が造営した、海浜風景をモチーフとした蓬萊山と証する中ノ島をおく神仙式庭園が流行した。日本の浄土庭園もその影響を受けている。こうした写意庭園に対し、南北朝ごろから士大夫らの隠遁思想を反映して自然のままの風趣を重視する林泉式庭園が、また隋唐代には池や運河を開削した船遊式庭園が造営されたが、宋代になると文人らが禅宗思想の影響で詩画芸術を造園に組み込んだいわゆる文人庭園が盛行し、現在見る中国庭園の原型が形作られている。
四川庭園
「四川庭園」または「八州式庭園」は、四川省および重慶地方で発達した中国庭園の主要な地域様式の1つである。四川省の庭園の多くは成都平原にあり、地元の重要な有名人を記念するために政府によって公共庭園として造られた。このことは、華東地域の私的庭園(例:蘇州)や北京の皇帝庭園と異なる点である。
成都の新都区にある東湖は、唐代(618-907)に造られた2つしかない現存する中国庭園の1つである。
-
ヤンファチ
-
盛安桂湖
嶺南庭園
嶺南庭園(れいなんていえん、広東語 Jyutping: Ling5 naam4 jyun4 lam4、繁体字中国語: 嶺南園林)は、中国南部の広東省嶺南地方に伝わる庭園様式で広東式庭園とも呼ばれる[6][7]。四川庭園や江南庭園と並んで、中国庭園の代表的な様式の一つ。
嶺南地方は、福建省南部、広東省、広西省にまたがる嶺山脈の南側で、ユーラシア大陸の南東端に位置している。寧蒗山という自然の壁と広大な河川網により、日照時間が長く、季節風も定期的に吹いている。一年を通して植物が生い茂り、亜熱帯のような自然景観を呈している。このような豊かな自然景観を背景に、嶺南の人々は他の漢民族地域の庭園とは異なる、豊かで色彩豊かな伝統的な庭園を作り上げてきた[8]。
- 私有の嶺南庭園
ギャラリー
-
「阿房宮図」に描かれた中国庭園
-
王羲之が描いた中国庭園の絵図
-
中華庭園の特徴「橋」
-
窓のデザイン
-
「徽派」という一種の中国庭園
-
水墨画を意匠とした中国庭園
-
石舟は池に合わせて、景色と調和している
-
書院造の中国庭園で、日本の庭園もこの要素を取り込んだといわれる
-
宋時代の中国庭園を完全再現したもの
-
19世紀の中国庭園の写真
日本にある中国庭園
- 天華園 - 登別市上登別町(1999年に閉園し現存しない)
- 百合が原公園瀋秀園 - 札幌市北区
- 大師公園瀋秀園 - 川崎市川崎区
- 清五郎にいがた村天寿園 - 新潟市
- 日中友好庭園 - 岐阜市
- 燕趙園 - 鳥取県湯梨浜町
- 冠岳 (鹿児島県いちき串木野市) - 徐福伝説にちなんで1992年(平成4年)に開設された中国庭園
- 松山公園福州園 - 那覇にある中国式の庭園
- 泗水公園孔子園 - 熊本県にある
- 浦川公園武漢の森 - 大分市
- 響灘緑地大北亭 - 北九州市若林区
- 維新100年記念公園 中国庭園樂亭 - 山口市
- 鶴見緑地中国庭園 - 大阪市
- 森の里若宮公園風月亭 - 神奈川県厚木市
- 本牧市民公園上海横浜友好園 - 中区
- 下北さくら一つ森公園友誼園 - 秋田市
アメリカにある中国庭園
- メトロポリタン美術館アスター中国庭園 - ニューヨーク
ヨーロッパの庭園への影響
マルコポーロはすでにヨーロッパの庭園とは全く異なる中国庭園について紹介していたが、その説明はヨーロッパの庭園デザインに大きな影響を与えるにはあまりにも曖昧であった。しかしのちにイエズス会 マッテオ・リパが中国へ派遣され、多くの彫刻とともに中国の庭園デザインの銅版画等を持ち帰ったことにより、その美しい庭園デザインは受け入れられていった。20世紀には、第18回シノワズリーファッション博の一環として 中国のモチーフがヨーロッパ中で採用された。 中国庭園と塔の残響は、 ドレスデン近くのサンスーシ 、 ベルサイユ 、 シェーンブルン 、 ピルニッツ城のエキゾチックな家具に残っている。
脚注
- ^ 中国の庭園 著者: 楼庆西
- ^ 『與貝聿銘對話』,Gero von Boehm,聯經出版,2003
- ^ 『中国古典園林史』
- ^ 『中国園林』5-6頁
- ^ 『中国古典園林史』19-22頁
- ^ “岭南园林的营造手法与艺术特色”. 30 July 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。17 September 2017閲覧。
- ^ 劉庭風. (2003). 嶺南園林: 福建, 臺灣園林. 同濟大學出版社.
- ^ Yuanyuan, C. (2008). Inspiration of Lingnan Garden to Inhabitation Landscape Design [J]. Huazhong Architecture, 11, 042.
- ^ 名勝「識名園」の創設(上巻)-琉球庭園の歴史- 著者: 古塚達朗
参考文献
- 周維権『中国古典園林史』[M]、第三版(北京清華大学出版社、2008年)
- 楼慶西『中国園林』(五洲伝播出版社、2003年)
- 田中淡『中国園林在日本』
関連項目
中国庭園
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/24 08:38 UTC 版)
詳細は「中国庭園」を参照 中国庭園芸術の発展は紀元前3000年までになることがあります。時間をさかのぼると中国庭園には数多くのしるし、比喩 、記号があります。古代エジプトの庭園や中東の庭園とは異なり、植物は中国では注目の的ではありませんでした。むしろ、中国庭園は人工の湖や丘、珍しい形の植物、そして石で構成された理想的な宇宙を反映していると考えられてきました。地球上の誰もが中国人がするように庭を耕しませんでした。その中で支配者と帝国は土地、水と労働力の消費のために農業を危険にさらしそしてしばしば国の運命に介入した贅沢をも開発しました。北京近郊の「皇居」は、周囲80キロメートルあり、芸術的な自然の模倣品です。そこには、最も小さな景色から最も広大な景色まで、あらゆる種類の風景が見られます。さまざまな地域、小川、河川、湖、村、そして城からの植物が絵を盛り上げます。しかし、村の住民は一種の俳優でした。裁判所の元帥の指示により、彼らは皇帝のために洗練させて漁師、船員、労働者、商人、農民、兵士などの服を着せてそれをエチケットとして実際の人々の出現を禁じる支配者に提示された。 中国四大名園避暑山荘 -承徳 頤和園 -北京 北京の庭 紫禁城庭園 -北京 北海公園 -北京 景山公園 -北京 円明園 -北京 五泉山静明園 円明園遺跡 北海静心済 御花園 宋慶齢故居 恭王府花園 郭沫若沫故居 可園 馬桂堂宅園 半畝園 景山公園 劉墉宅園 紫禁城内園囿 中山公園 天壇公園 香山静宣園 見心斎 乾隆花園 白雲観後院 碧雲寺水泉院 蘇州の庭 蘇州古典園林 -蘇州拙政園、留園、網師園、獅子林などの総称 滄浪亭 -蘇州 耦園 -蘇州 芸圃 -蘇州 西園 恵䕃園 怡園 半園 可園 環秀山荘 虎丘擁翠山荘 鶴園 暢園 織造署旧址 洞庭西・東山 戒憧律泰西園 保定市 石家荘 蓮花池 江南庭園 上海市 豫園 - 上海 秋霞圃(嘉定県) 古猗園(嘉定県) 曲水園(青浦県) 酔白池(松江県) 掦州の庭 大明寺 痩西湖 個園 小盤谷 片石山房 个園 -揚州 何園 -揚州 巻石洞天 山東省 大明湖(済南) 趵突泉(済南) 十笏園 孔府鉄山園 退恩園(呉江) 同里古鎮・退思園 魯迅公園 - 初期の英国式の庭園の面影は僅かに残るのみで、中国庭園風の色彩が強くなっている 月亮門 - 上海環球金融中心の円形の「穴」はこの中国庭園の壁にくりぬかれた円形の門をかたどったものとされた 盧廉若公園(旧盧廉若邸宅跡) - マカオ 星和園と裕華園 - Chinese Garden, Singapore 太陽島の庭園群 -ハルビン 寄暢園(中華民国) 西湖 四川省 成都武候祠 社甫草堂 望江楼 眉山三蘚祠 楽山鳥尤寺 日本にある中国庭園 天華園 - 1992年から1999年まで営業していた中国庭園のテーマパーク。北海道登別市 天寿園 - 新潟市。北京市林園局設計・施工。日本では初の池泉回遊式の中国山水庭園 桃花源 - 立野公園内、北京市海淀区から花桃「碧桃樹」が贈られたことを記念して開設、東京都練馬区 瀋秀園 - 大師公園園内。友好都市提携5周年を記念し、瀋陽市から贈られた。神奈川県川崎市川崎区 上海横浜友好園 - 本牧市民公園内にある中国式庭園で三渓園の南隣 日中友好庭園 - 岐阜県岐阜市にある庭園で岐阜公園の施設の一部 陽明園 - 中国浙江省余姚市と、滋賀県安曇川町との友好交流を記念して建設した中国式庭園 西芳寺庭園 - 黄金池を中心とする中国風の回遊式庭園。京都市西京区 燕趙園 - 東郷池, 皇家園林方式, 東郷温泉, 日本最大の中国庭園, 鳥取県東伯郡湯梨浜町 渝華園 - 広島市, 重慶市との友好都市提携五周年を記念して、平成4年(1992年)に 冠岳 (鹿児島県いちき串木野市) - 徐福伝説にちなんで1992年(平成4年)に開設された中国庭園 福州園 - 那覇にある中国式の庭園 このほか日本では、沖縄の名勝 仙巌園(磯庭園) や、小石川後楽園、広島の縮景園など、中国庭園の要素を加味した日本庭園も幾つか存在する。 ドイツにはフランクフルトの天安園や、他にミュンヘン、デュマゴルク、ドゥスブルクなどにある。
※この「中国庭園」の解説は、「アジアの庭園」の解説の一部です。
「中国庭園」を含む「アジアの庭園」の記事については、「アジアの庭園」の概要を参照ください。
- 中国庭園のページへのリンク