ヘルパンギーナ-とは? わかりやすく解説

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ヘルパンギーナ

別名:Herpangina

夏季に、主に乳幼児流行する急性のウイルス性咽頭炎感染すると、発熱、および、口内水疱ができて痛むいわゆる夏風邪として知られる

ヘルパンギーナは3日前後潜伏期間経て発症し数日ほど高熱出した後に回復に向かう。高熱から脱水症状陥るなどの危険性があるものの、基本的に重篤には至らない

ヘルパンギーナ

主に夏に流行するウイルス感染症の名称。通称夏かぜ」と呼ばれるのである乳幼児発症しすいとされており、高い発熱生じることや口腔内に水泡できることなどが主な特徴とされている。

ヘルパンギーナ【herpangina】

読み方:へるぱんぎーな

エンテロウイルスによって起こる咽頭(いんとう)炎の一種高熱咽頭粘膜発疹(ほっしん)が特徴乳幼児に多いが、特別な治療をしなくても1週間ほどで治癒する


ヘルパンギーナ

【英】:Herpangina

ヘルパンギーナは、発熱口腔粘膜あらわれ水疱性発疹特徴とし、夏期流行する小児急性ウイルス性咽頭炎であり、いわゆる夏かぜ代表的疾患である。その大多数エンテロウイルス属流行性のものは特にA群コクサッキーウイルス感染よるものである。

疫 学
疫学パターンエンテロウイルス属特徴沿う。すなわち熱帯では通年性みられるが、温
帯では夏と秋に流行みられる我が国では毎年5 月頃より増加し始め、6~7月にかけてピーク形成し8月減少9~10月にかけてほとんど見られなくなる。国内での流行例年西から東へ推移する。その流行規模はほぼ毎年同様の傾向があるが、19992001年3年間はそのピ ーク時において、定点当たり報告数が例年比べて高い状況であった患者年齢4歳以下 がほとんどであり、1歳がもっと多く、ついで2、3、4、0歳代の順となる。

病原体
エンテロウイルスとは、ピコルナウイルス科属す多数RNA ウイルス総称であり、ポリオウイルスA群コクサッキーウイルスCA)、B群コクサッキーウイルスCB)、エコーウイルス、エンテロウイルス6871 型)など多くを含む。
ヘルパンギーナに関してCA主な病因であり、2、34、5、6、10型などの血清型分離されるなかでもCA4がもっと多く、CA10、CA6 などが続く。またCB 、エコーウイルスなどが関係することもある。
エンテロウイルス属宿主ヒトだけであり、感染経路接触感染を含む糞口感染飛沫感染 であり、急性期にもっともウイルス排泄され感染力が強いが、エンテロウイルス感染としての性格上、回復後にも2 ~4週間長期にわたり便からウイルス検出される

臨床症状
2~4 日潜伏期経過し、突然の発熱続いて咽頭粘膜発赤顕著となり、口腔内、主として軟口蓋から口蓋弓にかけての部位直径1~2mm 、場合より大きいものでは5mmほどの紅暈で囲まれ小水疱出現する小水疱はやがて破れ、浅い潰瘍形成し疼痛を伴う。発熱については2 ~4 日間程度解熱し、それにやや遅れて粘膜疹も消失する発熱時に熱性けいれ んを伴うことや、口腔内の疼痛のため不機嫌拒食哺乳障害、それによる脱水症などを呈する ことがあるが、ほとんどは予後良好である。
エンテロウイルス感染多彩な病状を示す疾患であり、ヘルパンギーナの場合にもまれには無 菌性髄膜炎急性心筋炎などを合併することがある前者場合には発熱以外に頭痛嘔吐などに注意すべきであるが、項部硬直見られないことも多い。後者に関しては、心不全徴候出現に十分注意することが必要である。鑑別診断として、単純ヘルペスウイルス1型による歯肉口内炎口腔病変歯齦・舌に顕著)、手足口病(ヘルパンギーナの場合よりも口腔前方水疱疹が見られ、手や足にも水疱疹がある)、アフタ性口内炎発熱伴わず口腔内所見は舌および頬部粘膜に多い)などがあげられる

病原診断
確定診断には、患者口腔拭い液、特に水疱内容含んだ材料糞便髄膜炎合併した例では髄液などを検査材料としてウイルス分離を行うか、あるいはウイルス抗原検出する遺伝子診断PCR 法制限酵素切断法など)も可能である。確定診断にはウイルス分離することが原則である。
血清学診断は、急性期回復期ペア血清用い中和反応NT)、補体結合反応CF)な どで4倍以上の抗体有意な上昇確認することで行われるしかしながらエンテロウイルスでのCF交差反応が多いので、一般に行われないまた、実際に臨床症状による診断十分なことがほとんどである。

治療・予防
通常対症療法のみであり、発熱頭痛などに対してアセトアミノフェンなどを用いることもある。時には脱水に対する治療必要なこともある。無菌性髄膜炎心筋炎合併例では入院治療が必要であるが、後者場合には特に循環器専門医による治療望まれる
特異的な予防法はないが、感染者との密接な接触避けること、流行時にうがいや手指消毒励行することなどである。

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
ヘルパンギーナは5類感染症定点把握疾患定められており、全国約3,000カ所の小児科定点より毎週報告なされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下の2つ基準満たすもの
 1. 突然の高熱での発症
 2. 口蓋垂付近水疱しんや潰瘍発赤
上記基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、病原体診断血清診断によって当該疾患診断されたもの

学校保健法における取り扱い
ヘルパンギーナは学校において予防すべき伝染病中には明確に規定されてはなく、一律に学校長判断によって出席停止扱いをするもの」とはならない。したがって欠席者多くなり、授業などに支障をきたしそうな場合流行大きさ、あるいは合併症発生などから保護者の間で不安が多い場合など、「学校長学校医相談をして第3学校伝染病としての扱いをすることがあり得る病気」と解釈される
本症では、主症状から回復した後も、ウイルス長期わたって便から排泄されることがあるので、急性期のみの登校登園停止による学校幼稚園・保育園などでの厳密な流行阻止効果期待できない。本症の大部分軽症疾患であり、登校登園については手足口病と同様、流行阻止目的というよりも患者本人の状態によって判断すべきである考えられる


文 献
1. Cherry JD.Herpangina. In Textbook of pediatric infectious diseases, 4th ed. WB Saunders,1998. pp156‐158.
2. Anonymous. ヘルパンギーナ 19951996病原微生物検出情報月報第17巻9号、1996.
3. Anonymous. エンテロウイルスサーベイランス19821999病原微生物検出情報月報第21巻10号、2000.

国立感染症研究所感染症情報センター 谷口清州


ヘルパンギーナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/04 17:04 UTC 版)

ヘルパンギーナ
概要
診療科 感染症内科学
分類および外部参照情報
ICD-10 B08.5
ICD-9-CM 074.0
DiseasesDB 30777
MedlinePlus 000969
eMedicine med/1004
MeSH D006557

ヘルパンギーナ: Herpangina)は、コクサッキーウイルスの一種が原因となって起こるウイルス性疾患。原因ウイルスは、ピコルナウイルス科エンテロウイルス属に属するコクサッキーウイルスA群(2,3,4,5,6,10型)が主で、他にB群やエコーウイルスで発症する場合もある[1]。エンテロウイルス感染症の病型は非特異的熱性疾患が多いが、ヘルパンギーナは手足口病プール熱などとともに特異的な病態をもつ疾患として位置づけられる[2]。温帯地域では夏季を中心に流行する急性熱性疾患[2](いわゆる夏かぜの代表的疾患[3])である。

Herpanginaは、angina(ラテン語で扁桃炎)に、herp(ギリシャ語で「這う」[4])を冠したもの。

疫学

ヘルパンギーナを含むエンテロウイルス感染症は、熱帯地域では季節性に乏しく一年中発生するが、温帯地域では主に夏季に流行する[2]。日本では5-9月頃にみられ、7月がピークとなる。例年、西から東へと推移する。感染者の年齢は5歳以下が9割以上で、1歳代がもっとも多い[3]。感染経路は、感染者の鼻や咽頭からの分泌物便などによる糞口感染、飛沫感染、さらに周産期では母子感染もある[2]。ウイルス排泄が盛んな急性期の感染力が最も強く、回復後も2-4週間にわたり便から検出される[1]

症状

潜伏期は2-4日程度。典型的には突発的な高熱で始まり、咽頭の口蓋弓部に水疱や潰瘍を形成し、それとともに食欲減退、咽頭痛、流涎などの症状を伴うようになる[2]。口腔内の痛みや不快感から、乳児の場合には哺乳を嫌がり、脱水症状を起こすこともある[2]。しかし、通常は数日で解熱して口腔内潰瘍も治癒する[2]。ただし、発熱時に熱性痙攣を伴うことがあり、まれに無菌性髄膜炎急性心筋炎などを合併することがある[1]

症例がより多い手足口病とは、発熱が39〜40℃の高熱となり、発疹が口腔に限られる点が異なる。

成人は免疫力や体力が強く感染しにくいが、免疫力が低下していると家庭内で感染することがある[3]。成人が感染した場合には高熱などやや重い症状が持続し、強い倦怠感や関節痛などを伴うことがある[3]

治療

特効薬など特異的な治療法はなく、対症療法によって症状を緩和する[3]。また、拒食や哺乳障害による脱水症状を警戒する。

無菌性髄膜炎や心筋炎の合併例では入院治療が必要となる。

予防

ワクチンなど特異的な予防法はなく、感染者との密接な接触を避け、流行時はうがいや手洗い、手指の消毒を励行する。エンテロウイルスはエンベロープをもたないウイルスであり、消毒には次亜塩素酸ナトリウムポピドンヨードグルタルアルデヒドなどは有効であるが、消毒用エタノールの効果は弱く、ベンザルコニウムクロルヘキシジンには効果がないとされる[2]

国立感染症研究所による日本全国の約3000の小児科定点医療機関が報告した2020年7月13日から19日までのヘルパンギーナの患者報告数は、過去10年平均のおよそ10分の1となり、同時期のコロナウイルス感染症の流行による手洗い等の対策が他の感染症の流行対策にも効果を及ぼしているとみられている[5]

出典

  1. ^ a b c ヘルパンギーナとは 国立感染症研究所
  2. ^ a b c d e f g h 細矢光亮「小児のエンテロウイルス感染症」『日本環境感染学会誌』第32巻第6号、一般社団法人 日本環境感染学会、2017年、344-354頁、doi:10.4058/jsei.32.344 
  3. ^ a b c d e 感染症とたたかう 第6号”. 国立大学法人 長崎大学. 2023年6月6日閲覧。
  4. ^ 英語版の「語源」より
  5. ^ 手足口病は19年の100分の1 夏に流行する感染症激減 コロナ予防効果か 毎日新聞 (2020年7月28日) 2020年7月29日閲覧。

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