SIMカード
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第3世代携帯電話用のSIMカードは機能が拡張されており、W-CDMA(UMTS)に利用するものをUIMカードないしUSIMカード、CDMA2000に利用するものをR-UIMカードと言うが、基本的に互換性があるため、特に区別せずにSIMカードと呼ぶことが多い。
ボーダフォン(Vodafone)のかつてのロゴはこのSIMカードの形状がモチーフである。
概要
SIMカードには、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)と呼ばれる固有の番号が付与されており、これと電話番号を結びつけることにより通信を可能とする。SIMカードを抜き差しすることで、電話番号を他の携帯電話機に移したり、ひとつの携帯電話端末で複数の電話番号を切替えて使用したりすることができる。
ただし、SIMカードは頻繁に抜き差しすることを想定したものではなく、SIMカードの抜き差しの前に確実に電話端末の電源を切るようにするため、多くの電池交換可能な電話端末では、電池を取り外さないとSIMカードの抜き差しができないような構造になっている。いっぽうで電池交換不可能な端末では電池を外す制約がなく、必然的に電源を入れたまま抜き差しが可能となっているが、この場合でも端末(端末のオペレーティングシステム・ファームウェア)により、特に制約なく抜き差しが可能であったり、機内モードに切り替えることで差し替えが可能であったり、強制的に再起動がかかるなど挙動に違いがみられる。
日本国内で入手できるSIMカードは名目上、キャリア(通信会社)からの貸与であり、解約の際には返却する必要がある[注 1]。ただし、プリペイドSIMカードの場合は、最終使用時から一定期間の後に失効して発信も着信も出来なくなるため、解約手続きは不要である。失効する期限は、最終使用から半年程度が多い。ソフトバンクモバイルのプリモバイルの場合は、残高有効期限切れから360日以内にリチャージを行わないと自動解約扱いとなる。
規格
記憶容量は64kバイト程度。実用化されている最大容量は2005年時点で128Mバイトであった。2008年までに1Gバイトへと大容量化する方針のメーカーもある。小容量のカードでは契約者の個人情報や電話帳を50件ほど保存できるのみだが、大容量のカードではコンテンツ情報などを保存することもできる。
SIMカードと移動機との間は、半二重シリアル通信である。基本的な伝送速度は9,600ビット/秒で、伝送速度をネゴシエーションによって111,500ビット/秒まで上げることができる。
UICC(Universal Integrated Circuit Card)はGSMやUMTSの移動機に使われるスマートカードである。GSMネットワークではUICCはSIMアプリを内蔵し、UMTSネットワークではUSIMアプリを内蔵する。UICCにはこれ以外に様々なアプリケーションを内蔵することができる。
近年ETSI-SCPで標準化された高速UICC規格(IC USB)では、USB2.0の物理層の規格を修正し、通常速度12メガビット/秒で通信できる(ETSI TS 102.600)。この場合、UICCのC4とC8ピンを使い、物理層より上のUSB規格は互換性がある。
SIMカードの物理的な形状は当初は大きなカード状だったが、時代が下り、携帯電話やその部品が小型化されるのに従ってSIMカードもより小型に変更されており、2020年現在までにフルサイズのSIM、ミニSIM、マイクロSIM、ナノSIMの4つの規格が存在している。また、部品の更なる小型化のためにeSIMと呼ばれる物理的なカードの抜き差しを伴わない規格も存在する。
フルサイズのSIM
オリジナルのSIMカードはISO/IEC 7810 のID-1規格の外形寸法を持つ、いわゆるクレジットカードサイズ(幅85.6mm×高さ53.98mm×厚み0.76mm)の接触型ICカードで、1991年に登場し、初期の自動車電話や大型の携帯電話で使われた。最初のフォームファクタ(The first form factor)という意味で1FFとも呼ばれる。
後に登場した各種の小型SIMカードがクレジットカードサイズの状態で提供され、そこからICチップの部分だけを切り離して使用される形になっていることが多いのは、このフルサイズのSIMとの互換性を企図していた時代の名残である。
ミニSIM
ミニSIM(mini-SIM)はPlug-in UICCとも呼ばれ、カードの外形寸法はISO/IEC 7810 のID-000で規定され、幅25mm×高さ15mm×厚み0.76mmである。1996年に登場した。2FF(The second form factor)とも呼ばれる。
フルサイズのSIMよりも後に登場した規格ではあるが、携帯電話の本格的な普及期には既にフルサイズのSIMをそのまま使用する端末は廃れていたため、このミニSIMが「標準SIM(Standard SIM)」「普通のSIM(Normal SIM)」と呼ばれることが多い。
マイクロSIM
マイクロSIM(microSIM、micro-SIM)はミニSIM(mini-SIM)より小型の規格で、大きさは幅15mm×高さ12mm×厚み0.76mmである。欧州電気通信標準化機構(ETSI)の規格であるETSI TS 102 221 V9.0.0により定められた。3FF(The third form factor)、Mini-UICCとも呼ばれる。2003年に登場した。
今でも一部のMVNOの端末で使われている。また、NTTドコモではmicroSIMを「mini FOMAカード」または「miniUIMカード」と称していた。
ナノSIM
ナノSIM(nanoSIM、nano-SIM)はマイクロSIMよりも小型の規格で、大きさは幅12.3mm×高さ8.8mm×厚み0.67mmである。ETSIのETSI TS 102 221 V11.0.0規格により定められた。2012年に登場[2]。4FF(The fourth form factor)とも呼ばれる。
Appleが2012年にiPhone 5で採用し、2020年現在では殆どのメーカーの携帯電話でこのナノSIMが主流となっている。
eSIM
eSIM(Embedded-SIM)は、SIMカードに相当する機能を端末に内蔵し、SIMカードに書き込まれる情報を遠隔でダウンロードすることができる規格である。2016年に登場した。物理的なカードの受け渡しが不要となるため携帯電話回線の利用開始を迅速に行えるというメリットがあり、またカードの着脱が不要となるため端末にカードスロットを設ける必要がなく、更なる小型化や自由度の高い端末デザインが可能である[3]。
通常は極小サイズのチップとして端末内に表面実装され、電気的なインターフェースは従来のカード型のSIMと同一である。M2M(機器間通信)機器向けのフォームファクタという意味でMFF2とも呼ばれる[4]。ただし、GSMA RSPバーション2ではチップ形状だけでなくカード型のものも定義されており、規格上はEmbedded(組み込まれた)の原義から外れる実装もありうる[5][6]。
遠隔ダウンロード型のSIMとしては2014年にAppleがApple SIMという独自のサービスとして先行して実現[7]していたが、初期のApple SIMは端末に従来型のSIMカードを挿入する必要があった。eSIM規格に正式対応した最初の端末は2016年に登場したサムスンのGear S2となった。その後、アップルも2017年頃からはApple SIMも埋込み型になり、2018年発売の端末からはeSIM規格にも対応した[8]。
注釈
出典
- ^ “SIMカード(シムカード)の意味”. goo国語辞書. 2019年11月26日閲覧。
- ^ “New SIM card format for slimmer, smaller phones” (英語). ETSI 2018年4月24日閲覧。
- ^ “NTT DOCOMO Technical Journal - NTTドコモ”. 2019年6月11日閲覧。
- ^ “Clearing up the term “eSIM”” (英語). Hologram. 2019年11月23日閲覧。
- ^ “利用シーンを拡大するコンシューマ機器向けeSIM ... - NTTドコモ”. 2021年1月4日閲覧。
- ^ “SGP.22 RSP Technical Specification Version 2.2.2”. 2021年1月4日閲覧。
- ^ Apple SIMの衝撃 キャリア主体のスマホ販売が激変する
- ^ “iPad - Cellular - Apple”. 2020年10月16日閲覧。
- ^ GemAlto, 12 Feb. 2009
- ^ “第2章 IMT-2000で必要な各種番号とダイヤル手順”. 平成11年度電気通信番号に関する研究会の報告. 総務省 (2000年6月2日). 2010年7月7日閲覧。
- ^ NTTドコモ - 「FirstPass」(ファーストパス)のサービス終了
- ^ 日本通信がプリペイド SIM「3GB 定額」を発売、30日間有効
- ^ 【格安データ通信SIM】OCNが1日50MB→70MBに IIJmio対抗!?
- ^ 日本初・SIMカードの自販機が関空に設置されたので買いに行ってきました
- ^ 訪日外国人旅行者向け音声通話付きプリペイドSIMカードを全国のテレコムスクエア空港カウンターにて発売
- ^ WILLCOM|キッズケータイ papipo!(ぱぴぽ)
- ^ シャープシステムプロダクト - 業務用携帯端末RZ-H220
- ^ ミヨシ電子 - MR2100
- ^ WILLCOM for Business - テレメタリング
- ^ WILLCOM - Hondaが提供する「インターナビ・プレミアムクラブ」向けに、W-SIM対応のインターナビ・データ通信Bluetoothを提供
- ^ パナソニックシステムソリューションズ - IP音声会議ホン KX-TS745JP-K
- ^ XGPは電話として使えるのか、SIMカード採用の意図は(ITmedia)
- ^ “ソネット、関空の自販機でプリペイド式SIMパッケージ発売”. (2014年4月22日) 2014年4月22日閲覧。
- ^ ドコモ井伊社長「ahamoはiPhone対応」、eSIMにも意欲 ケータイ Watch 2021年1月14日
- ^ 報道発表資料 : ドコモオンラインショップやahamoサイトにおけるeSIMの提供を開始 NTTドコモ 2021年9月1日
- ^ au、20GB/月額2480円のオンライン専用ブランド「povo」、使いたい機能をトッピングで追加 ケータイ Watch 2021年1月14日
- ^ auが「eSIM」の発行を開始 8月26日から ITmedia Mobile 2021年8月26日
- ^ 「UQ mobile」、9月めどにeSIM対応へ ケータイ Watch 2021年8月26日
- ^ ソフトバンクのahamo対抗はLINE活用の新ブランドで! 月20GBを月2980円 ASCII.jp 2020年12月22日
- ^ ソフトバンクはなぜ3ブランドで料金プランを刷新したのか? 榛葉副社長に聞く ITmedia Mobile 2020年12月22日
- ^ eSIMを7月14日に提供開始 ソフトバンク 2021年7月14日
- ^ a b 回線を合理的に使い分ける「eSIM」 使い方とメリットは? Forbes JAPAN 2020年3月26日
- ^ IIJ、個人向けモバイルサービス ギガプラン タイプAにおいて、音声通話機能付きeSIMの提供を開始 インターネットイニシアティブ 2022年9月15日
- ^ テレコムスクエア、国内外で使えるプリペイド式eSIMサービス提供 ケータイ Watch 2020年12月21日
- ^ KDDI、eSIM活用でオンライン特化のMVNO新会社「KDDI Digital Life」 ケータイ Watch 2020年10月30日
- ^ eSIM開放やキャリアメール持ち運びの課題は? 総務省が「スイッチング円滑化タスクフォース」で論点整理 ITmedia Mobile 2020年11月27日
- ^ 総務省、eSIM普及に向けた会合――MNO4社が抱える課題とは ケータイ Watch 2020年12月11日
- ^ フィンランドでのSIMカードを身分証明書として使う動き
- 1 SIMカードとは
- 2 SIMカードの概要
- 3 NFC
- 4 データ
- 5 世界で一般的なSIMカードの使用
- 6 脚注
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