ファブル
「ファブル」とは、漫画ザ・ファブルに登場する暗殺を仕事とする組織とそのメンバーの呼称のことを意味する表現である。
「ファブル」とは・「ファブル」の意味
この説明では漫画「ザ・ファブル」のネタバレを含むため注意が必要である。ファブルとはザ・ファブルという漫画の中に登場する単語である。作中では、主に殺し屋によって構成される組織の名称、または組織のメンバーの呼称として使用される。ファブルは意味不明な造語ではなく寓話や作り話という意味である英単語のfableであり。作中でも「ファブル─寓話─…ウサギとカメやアリとキリギリス…」など様々なセリフでファブルに対して寓話という表現が多く使用されている。
作中の描写からファブルに所属する人間は偽名を名乗っている事が分かる。また、ボスと呼ばれる命令を出す人物が存在する事から寄合集団ではなくしっかりとした上下関係のある組織である事が分かる。他にも殺人を実行する暗殺者と移動などを含めた雑務を行うドライバーをペアとして組ませる描写があり、佐藤明の「暗殺を受ける者─計画を立てる者─そして暗殺を実行する者─分業体制が徹底されてる」というセリフから明確な規律やルールが存在する組織である事が分かる。
メンバーには女性である佐藤洋子が存在し、山岡と名乗るメンバーがボスに自衛隊に5年在籍していた人間を組織に加えたいと打診する場面や、不良が山岡に対して「弟子にしてください!」と懇願した際に許可を出している事から性別や職業に関係なくメンバーをスカウト、訓練している事を連想させる描写がある。
漫画版ザ・ファブルについて
漫画「ザ・ファブル」はファブルの殺し屋である主人公の佐藤明(仮名)とその妹を偽る事になった佐藤洋子(仮名)が反社会組織である真黒組の協力のもと、殺し屋である事を隠し普通の人間として大阪で生活する中で「普通の人間とはどういったものか?」に悩みながら人間離れした能力や思考が段々と普通の人間に変化し近づいてゆく過程を描いた漫画である。また佐藤明と佐藤洋子の字は素性を偽る説明の際に出るだけで作中では佐藤、アキラ、ヨーコ、ヨウコなどと呼ばれフルネームで呼ばれる事はほとんど無い。
殺し屋である事を活かしたアクションシーンだけで無く、ペットを飼育するシーン、デザイン会社オクトパスに入社し働くシーン、たこあげなどの正月の遊びを楽しむシーンなど日常生活やオクトパスの先輩であるミサキと佐藤明の様々な事件を通した交流、佐藤洋子がバーで男性をたぶらかすなどのキャラクター同士の恋愛シーンも多く描かれており、ラストではミサキと佐藤明は結婚までしている。
作者は南勝久、出版社は講談社である。
2023年1月21日現在はWebサイト「ヤンマガweb」やアプリ「LINE漫画」で全話無料公開されている。
スピンオフ作品として同じ作者の漫画「ざ・ふぁぶる」がコミックDAYSにて不定期で連載された。連載期間は2018年3月から2018年12月であり単行本が1巻発売されている。
映画版ザ・ファブルについて
ザ・ファブルは2作品実写映画化されている。
1作目は監督江口カン、脚本渡辺雄介、主演岡田准一、2019年6月21日公開の「ザ・ファブル」である。原作漫画の1巻から7巻の69話までを映画化したモノでありアクションシーンの振り付けには特殊部隊での訓練経験のあるアラン・フィグラルツを振付師として起用している。また一部の振り付けは岡田准一本人が担当している。
2作目は監督江口カン、脚本山浦雅大、江口カン、主演岡田准一、2021年6月18日公開の「ザ・ファブル殺さない殺し屋」である。原作漫画の7巻70話から13巻までを映画化したモノである。2021年2月5日に公開される予定だったが新型コロナウイルスの影響で公開が延期された。
Fable
寓話
寓話(ぐうわ、英: allegory, fable)とは、比喩によって人間の生活に馴染みの深いできごとを見せ、それによって諭すことを意図した物語。名指しされることのない、つまりは名無しの登場者は、動物、植物、自然現象など様々であるが、必ず擬人化されている。主人公が、もしくは主人公と敵対者が、ある結果をひき起こしたり、ある出来事に遭遇する始末を表現したりする本筋は、なぞなぞと同様な文学的構造を持ち、面白く、不可解な印象を与えることによって読者の興味をひき、解釈の方向を道徳的な訓話に向ける特性を持つ。民話によく見られるように、物語の語り末には寓意的な解釈を付け加えることが習慣的に行われてきた。
歴史
古代オリエント
寓話は、神話と同様にとても古い文献に発見されている。現時点では古代オリエントのものが最も古い。古代ギリシャ・ローマ以前の寓話は、アイソーポス(イソップ)以前の寓話 Ante-Aesopic fable と総称されている。19世紀後半から古代オリエントの楔形文字が解読され、1931年にドイツのアッシリア学者エーベリングがいくつかの文献をまとめて「バビロニアの寓話」として訳した[1]。その後も文献は発掘されたが、寓話の研究は衰えた。
最近ではアキモトの研究がヴァンダービルト大学から発表されているのみである。彼の研究によると、古代オリエント(メソポタミア、エジプト、地中海東岸、アナトリア)では、寓話は口承文学として文字以前からあり、文字の発達とともに粘土板にも現れた。シュメール語やアッカド語の短い寓話が、諺やその他の民話といっしょに収集された粘土板は、そのほとんどが学校の遺跡から発見されている。
ヒッタイト語とフルリ語のバイリンガルで残る寓話集は、神話と伝説の中に盛り込まれていて、ある話し手が次から次へと寓話を語っては解釈して聞かせていくという形式をとっている最も古いもので、ヒッタイト版が紀元前1400年頃、その原本となったフル人の寓話はもっと古く、紀元前16から17世紀頃のものと推定されている。Ninurta-uballitsu ニヌルタ・ウバルリトゥスウの古代アッシリア寓話集は、紀元前883年に完成と記されていて、編纂者名前と編纂年の判明している最古の寓話集である。古代アッシリア王家の書簡の中にも寓話を使ったものが発見されている[2]。
古代ギリシャ
寓話と言えばイソップ寓話である。彼の名を冠する寓話がこのギリシャ人の作品であるかは不明で、ヘロドトスの記述外での彼の歴史的な存在も確かではないにせよ、紀元前6世紀以降の寓話は、イソップの寓話 Aesop's fable またはイソップ的寓話 Aesopic fable と総称されている。伝説的イソップと文芸ジャンルとしての寓話は、ローマと東ローマの寓話収集家および作家の手によりギリシャ語とラテン語の文献が伝承された。
インド
サンスクリットで書かれた説話集『パンチャタントラ』では、釈迦が生まれ変わるたびに色々な動物として暮らす話を、教訓的な寓話として表現している[3]。
欧州
ギリシャ語とラテン語を読み書きするキリスト教の聖職者により、寓話は中世からルネサンス期を通じて受け継がれた。グーテンベルグの印刷機の発明のすぐ後に、ハイリッヒ・シュタインヘーベルがラテン語とドイツ語のバイリンガルによる「エソプス」という題の寓話集を出版してから民間に広まっていった。近世には個性的な寓話作家も現れ、チョーサーやラ・フォンテーヌなどの作品はよく知られている。
英仏: Fable(英語版)(フランス語版), 独: Fabel(ドイツ語版), 伊: Favola(イタリア語版), 西: Fábula(スペイン語版)などの各言語版ウィキペディアにある寓話の記事には、国ごとの寓話の発展が記されている。
日本
イソップは、日本における寓話の祖先でもある。16世紀のキリシタン(切支丹)によって欧文から日本語に翻訳された『伊曾保物語』は、イソップ寓話を基にした寓話集である[4]。なお、『イソホノファビュラス』のローマ字版は、大英博物館に所蔵されている。
寓話的な著作を書いた作家の例
文学における「寓話的」表現とは、寓話と同様な比喩を使うことで、作品を楽しく読めるように面白おかしくし、本質的な作品の意図を隠す手法である。実際には、一般にアレゴリーを「寓話的な表現」と邦訳して、ジャンルの区別がないままに使われている。以下に挙げる作家は、イソップやラ・フォンテーヌなどの専門的な寓話作家ではないことに注意が必要である。
- 安部公房
- 宮沢賢治
- 星新一
- 時雨沢恵一
- イヴァン・クルィロフ
- フランツ・カフカ
- ホルヘ・ルイス・ボルヘス
- カレル・チャペック
- ジョージ・オーウェル
- アマドゥ・クルマ
- イタロ・カルヴィーノ
- スタニスワフ・レム
- スワヴォーミル・ムロージェク
- シャーリイ・ジャクスン
- パトリシア・ハイスミス
- アンジェラ・カーター
- ジャック・ウォマック
- アンドレイ・クルコフ
- エーリッヒ・ケストナー
- ベンジャミン・エルキン
出典
- ^ Ebeling, Die Babylonishe Fabel und ihre Bedeutung für die Literaturgeschichte (1931).
- ^ Kazya Akimoto, Ante-Aesopica: Fable Traditions of Ancient Near East. (Vanderbilt University: 2010, UMI/ProQuest AAT 3441951)
- ^ Dharma, Krishna (transl.) Panchatantra - A vivid retelling of India's most famous collection of fables (2004: Badger CA, USA: Torchlight Publishing: ISBN 978-1-887089-45-6)
- ^ 国文学研究資料館 『伊曽保物語』
関連項目
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