性加害
「性加害」とは、同意がない状態で行われる性に関する加害行為全般のことを広く意味する表現。
性暴力の加害者が行った行為や事象を指す言葉として、テレビや新聞・週刊誌などのマスコミが報道する際に用いることが多い表現。読み方は「せいかがい」。 性的な暴力を相手に加える性加害に対し、性暴力を被ることは性被害、また被害を受けた者は性被害者と呼ばれる。
性加害と報道
例えば、公然わいせつ罪や準強制性交等罪などによって逮捕された場合、報道機関によってその罪名とともに本人の名前が公にされることが多い。 他方で、警察による逮捕ではなく、過去の性的な嫌がらせを被害者が週刊誌へ告発する場合や、民事での訴えになる場合、それ自体によって直接逮捕に至ることはない。 この時、仮に告発内容が準強制性交等罪などに相当するものであっても逮捕に至っていない場合は、報道機関が準強制性交等罪という罪名で報道すること自体が、性加害者(と疑われる側)から名誉棄損罪で訴えられる可能性をはらむ。 また、被害の内容が具体的に公表されること自体が、性被害者にとっての心的な負担となり、いわゆるセカンドレイプを生み出す場合もあり得る。 このような事情により、逮捕や起訴されていない性犯罪に関する報道の際に、「性加害」という表現が使われる場合がある。性加害の定義や内容
性加害の定義は、刑法上の犯罪に相当するものから犯罪未満の行為まで広く使われることが多い。 内容としては、例えば、ホテルの部屋でベッドに押し倒す・勝手にキスをする・下着をはぎ取るなど、通常であれば明らかに犯罪に相当するものも多く含まれる。芸能界や映画界における性加害
2017年に米国で#MeToo運動が盛んになったのち、日本においても俳優や女優・映画監督などにおける性加害が告発される事例が増えている。性加害者の心理
性加害者の心理としては、一般的な性的満足を求めるような性欲とは異なり、性を通じて他社へ攻撃的で支配的なことがある。 また、なるべく大ごとにならないような相手を選んだり、まったく見ず知らずの人よりも知り合いに対して性的な暴力を加えたりする場合も多い。 さらに、発覚しなければ反省することがなく、仮に性加害が明らかになった場合であっても、性加害者はその加害行為自体を否定する傾向にあるとされる。性暴力
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性暴力(せいぼうりょく)とは、被害者との関係の如何を問わず、暴力または強制を伴った性行動や人身売買を行ったり、それらを行おうとしたりする行為を指す[1][2][3]。類義語に性的暴行や性加害があり、後者は「同意のない性に関する加害行為全般」を指す用語として使用されている[4]。
性暴力は平和な状況と武力紛争が起きている状況のどちらでも行われており、人権侵害のなかでも最も広範に発生し、トラウマを与えるものの1つであるとされている[5][6]。
概要
性的暴行の最中に発生する殺人や、性的暴行への対応として行われる名誉殺人は、性暴力の要素のひとつである。こういった点から、被害者は不相応な苦しみを強いられている[6]。あらゆる年齢の者が性暴力の被害者になりうる。また、両親、介護者、知人、見知らぬ他人、親密なパートナーのいずれであっても性暴力の加害者になりうる。性暴力が痴情による犯罪として発生することは稀であり、むしろ、加害者が自らの権威や優位を被害者に知らしめることを目的に行われることが頻繁にある。
あらゆる状況において性暴力の被害は大きな汚名であるとされていることから、その情報を開示する度合いは地域によって異なっている。一般的に性暴力は過少報告される現象であることから、これに関して公表されているデータは、この問題を実態より少なく見積もる傾向がある。加えて、性暴力は軽視されている研究分野でもあり、性暴力に反対する組織的な運動を展開するためには、より深く問題を理解することが不可欠である。ドメスティック・バイオレンスは、紛争と関わりのある性暴力とは区別される[7]。大抵の場合、配偶者に性的な行為を強制する者は、相手と結婚していることが自らの行為を正当化すると信じている。
紛争が起きている状況では、免責の循環過程にある戦争の反響として性暴力が発生する傾向にある[8][9]。しばしば、戦争の手段のひとつとして女性または男性を強姦することが行われる。これは敵に対する攻撃のひとつの方法であり、被害者の女性または男性を征服し、その体面を傷つけることの象徴として機能する[10]。こういった行為は国際人権法、慣習法、国際人道法によって固く禁止されていても、これらの法律が執行される仕組みは、地球上の多くの地域で脆弱であり、存在しないも同然であることさえある[5][6][11][12]。
性暴力は公衆衛生上の深刻な懸念にもなっており、被害者の心身の健康に短期的・長期的な影響を及ぼしている。具体的には、性的または生殖上の健康におけるリスクの増加[13]、自殺や自覚のない性感染症の感染のリスクまた性病パンデミックのリスクの増加が挙げられる。
脚注
- ^ World Health Organization., World report on violence and health (Geneva: World Health Organization, 2002), Chapter 6, pp. 149.
- ^ [Elements of Crimes, Article 7(1)(g)-6 Crimes against humanity of sexual violence, elements 1. Accessed through “Archived copy”. 2015年5月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年10月19日閲覧。]
- ^ McDougall (1998), para. 21
- ^ “「性加害」とはどういう意味? 関連する刑法を解説”. ベリーベスト法律事務所 木更津オフィス (2024年1月25日). 2024年2月11日閲覧。
- ^ a b Lindsey (2001), pp. 57–61
- ^ a b c “Advancement of women: ICRC statement to the United Nations, 2013” (2013年10月16日). 2013年11月28日閲覧。
- ^ [Human Security Report (2012), Sexual Violence, Education and War: Beyond the mainstream narrative, Human Security Research Group, Simon Fraser University, Canada, Human Security Press]
- ^ International Committee of the Red Cross (2008). Women and War. Geneva: ICRC. p. 12
- ^ OCHA (2007), pp. 57–75
- ^ Swiss S et al. Violence against women during the Liberian civil conflict. Journal of the American Medical Association, 1998, 279:625–629.
- ^ Physicians for Human Rights (2002). War-related sexual violence in Sierra Leone : a population-based assessment : a report. Boston, MA: Physicians for Human Rights. ISBN 978-1-879707-37-5
- ^ OCHA (2007)
- ^ Holmes MM et al. Rape-related pregnancy: estimates and descriptive characteristics from a national sample of women. American Journal of Obstetrics and Gynecology, 1996, 175:320–324.
参考文献
- Lindsey, Charlotte (2001). Women Facing War. Geneva: ICRC
- McDougall, Gay J. (1998). Contemporary forms of slavery: systematic rape, sexual slavery and slavery-like practices during armed conflict. Final report submitted by Ms. Jay J. McDougall, Special Rapporteur, E/CN.4/Sub.2/1998/13
- OCHA (2007). The shame of war: sexual violence against women and girls in conflict. OCHA/IRIN
関連項目
外部リンク
性加害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 22:09 UTC 版)
沖縄県の中学校で、部活動の副顧問をしていた男性教諭からわいせつ行為を受けた女子生徒が、高校進学後自殺した事件も起こっている。 平成20年には宮城県立中学校で、陸上部顧問が女生徒の自宅を訪問した際に女生徒にキスをして、その後も複数回校内でキスをしたうえで着用している服を脱がすなど行った。目撃した講師が校長に報告し教員に注意をすると、女生徒に対し多分首になる、首になったら死ぬことしか考えられないなどと伝え、それを聞いた女生徒は教師をかばう手紙を書いている。本件が明るみになり教師は懲戒処分となったが、キスの事実の否認と女生徒が嫌がっていなかったことを理由に懲戒処分には裁量権を逸脱・濫用した違法があったとして、その取消を請求し、女生徒がセクハラ行為をある程度受容していたこと自体は相手方の同意に関わらず一律禁止の趣旨に照らし棄却されている。 また、小学校3年生の担任が複数の受け持ち女児を呼び出し日々下着の中に手を入れるなどの猥褻行為を行い懲戒処分で失職となった教員が、その後障害のある子どもたちの支援施設に就労している実態もある。 大分県立高校(校名は非公表)の男性教諭が、2018年10月以降に教え子の女子生徒に対して淫らな行為をし、女子生徒は関係に悩み自殺未遂し意識障害の状態となった。大分県教育委員会はこの男性教諭を2019年7月に懲戒免職処分としたが、生徒のプライバシーにかかわるなどの理由で公表していなかった。生徒の両親は2020年1月14日付で県を相手取り大分地方裁判所に提訴し係争中である。 2021年6月には、東京都足立区で男性教諭(33)が自分が5年間勤務する小学校の女子トイレに小型カメラを置き、児童を撮影した疑いで児童ポルノ禁止法違反で再逮捕された。既に都迷惑防止条例違反容疑で逮捕されていた。同教諭は特別支援学級を担当していた。横浜市教育委員会では2021年、男性教員(37)が修学旅行で脱衣所に盗撮用カメラを設置および児童の下着を盗んだことで逮捕されて懲戒処分を行った。 2021年10月には、東京都板橋区で小学校教諭の男性(29)が教え子を教室に鍵をかけて閉じ込め、胸を触るなどのわいせつな行為をしたうえ口止めして逮捕された。 2021年10月には兵庫県教育委員会が特別支援学級の女子生徒の下半身や胸を触るなどで男性教諭を懲戒免職処分とし、これを知りながら管理職に報告を怠った40代の女性教諭も減給処分とした。 2021年9月、大阪府警察は教え子の男子生徒にわいせつな行為をしたとして、府内の元私立中教諭の男(37)を準強制わいせつ容疑で逮捕、別の男子生徒に裸の動画を送らせたとして、滋賀県内の公立小学校の男性教諭(32)を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)容疑で書類送検した。後者はツイッターで女性になりすまし、約7年前から男子中高生ら400人以上にわいせつな動画を送付させていた。 2021年8月には、大阪市内の私立高校の男子野球部員にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつの疑いで同校野球部の元コーチ(31)が逮捕された。 被害当時は幼く被害を訴えられない場合があり、2021年12月には、約30年前に元教師の男性から性暴力を受けたという三重県の40代の女性らは担任だった元教師から修学旅行などで胸を触られたり、キスをされたりして同窓会で被害者が複数いることが判明したことから、加害男性に直接面会し謝罪させ、市教育委員会に性暴力について適切な対応や予防策を求める要望書を提出した。
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