企画・撮影
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/16 16:54 UTC 版)
監督は人間観察の確かさに定評がある吉田大八。同じ角田光代原作で日本アカデミー賞最優秀作品賞他主要映画賞を独占した映画『八日目の蝉』をプロデュースし、続いて本作を企画したプロデューサーの池田史嗣によると、「奇しくも共に“逃亡する女性”がテーマ。でも、本作は『八日目の蝉』とは全く違うアプローチで挑まないと成功しないと直感的に思った。」ということで、『クヒオ大佐』『パーマネント野ばら』など女性の業を描いた作品で知られ、独特の映像センスで注目を集める吉田大八に白羽の矢が立てられ、『桐島、部活やめるってよ』公開直後の2012年夏頃にオファーされた。“女性とお金”という2つの切り口をもつ原作小説にも魅力を感じた吉田は、「主人公が何を手に入れて何を失い、どこへ向かうのかを自分なりのアプローチで映画にしたい」と受諾。そして、読後に最も強く残った“梨花が走る”という印象から全てのことを膨らませていき、マーティン・スコセッシ監督の映画『グッドフェローズ』(1990年)の反社会的な行為を行いながら道徳的な意味では全く反省しない主人公たちのように、梨花が大金を手にしてまるで別人になったかのように悩まず後悔せず使いながら破滅に向かって堕ちていく姿を「爽やかに」「疾走感をもって」描いたつもりだと話している。 主演の宮沢りえは、今回の出演話がきて台本を読んでみても、道徳的に許されない年下の大学生との不倫や犯罪である横領、そして激しい濡れ場のような衝撃的なシーンがあることもあって「やります!」と即決することはできなかったという。しかし30歳で出演した野田秀樹の舞台『透明人間の蒸気』で己の無力さに驚き、できるだけ舞台に専念すると決め、前述の野田や蜷川幸雄など演劇界の世界的巨匠の演出作に立て続けに出演し経験を積み上げながらも長い間映画の世界から遠ざかっていた宮沢にとって、40歳になってそろそろ映画と舞台をバランス良くやりたいと思い始めた絶好のタイミングであったことと、手強いと思いつつも台本に光を感じたこと、吉田大八監督と仕事をしてみたい、巨額横領に手を染めていく主婦という挑戦したことの無い役をやることで今まで無かった自分の顔を見てみたいという思いがあり、オファーを受けた。主人公については脚本を読んでもモデルが見当たらず、「生命力や、到達点を脇目に見ながら進むことへの貪欲さには共感できるものがある」と言いながらも、「こんな危険な道に進む梨花という手強い女を演じるには地球一周マラソンするくらいのエネルギーが必要だった。」と話している宮沢。しかしその結果創り上げられた宮沢の梅澤梨花像について、監督は「自分の想像をはるかに超えた様々な表情を目の当たりにして感動した」、原作者の角田も「度肝を抜かれた。どんどん悪い行動に走っていくのに、反比例して透明な美しさが増していくのがすごい迫力で素晴らしかった。私にはとても書けません」と絶賛のコメントを述べた。東京国際映画祭コンペティション部門プログラミングディレクターの矢田部吉彦も、「登場人物をいかに魅力的に描くかということに神経を注ぐ演出家である吉田監督と、抑圧からの解放を見事に演じきった宮沢さんの出会いは運命的であり、両者のケミストリーが今年の日本映画を代表する一本を生み出した」と評し、プロデューサーの池田史嗣も「2人の波長はほぼ初対面ながらとてもよく合い、性格的に“いい意味貪欲で勝負好きなギャンブラー”という共通点もあって、現場では上を目指して互いを高め合っていた。完全燃焼できたという自負がある」と、2人が組んだことが相乗効果を生んだいう見解を述べた。 梨花と不倫をする年下の大学生・平林光太役はキャスティングが難航したが、舞台『ぬるい毒』に続き吉田監督作品は2度目で信頼関係もある池松壮亮が起用された。監督は起用理由を「“熱いのに冷たい”演技ができるし、純粋で色気があって残酷な光太を今の彼で見たかったから。りえさんに差し出すなら、池松しかいなかった」と語っている。池松もそんな期待に応え、「役柄には1ミリも共感できない。他の監督なら断っていたけど、大八さんの作品には出たくないわけがない。光太といる時の梨花の顔を1番輝かせて善悪を一瞬でもひっくり返せれば」と監督の作品だからこその出演を決め、役に没頭する宮沢の姿をとにかく見つめて味方でいるよう心がけ、監督が求める宮沢の新しい表情を引き出すという役割を果たした。 吉田監督は原作を読んだ時に世の中に対して牙を向いているような印象を受け、映像化する際にはその読後感と同じように挑戦する姿勢を見せなければ失礼だと感じたため、小説にはいないオリジナルの人物を登場させている。主人公の梨花に「使わないお金なんてちょっと借りてもお客さん意外と気付かないと思うんですよね」と悪魔のように囁き、無邪気で天真爛漫でありながら梨花の転落を加速させるこの映画のジョーカーとなる存在であるわかば銀行のテラー(窓口係)・相川恵子役には大島優子が抜擢された。監督は起用理由を「この役柄は梨花のダークサイドから生まれた幻のようなイメージのため、現実にしっかり根を下ろした存在感と、捕まえようとしても上手くつかめない人間離れした悪魔的な雰囲気や浮遊感を併せ持っているところがピッタリだと直感的に思ったから」だと述べている。大島は、目線の置き方や細かな表情など細部にわたる監督からの指示や意図を汲み取りながら、故意では無くあくまでも自然で本能的にふと出てしまった言葉が梨花に影響を与えてしまうといった演技を心掛けたという。その他、梨花と対照的に厳格でストイックな勤続20年以上の仕事のできる先輩事務員・隅より子役には小林聡美が起用された。ベテラン銀行員の雰囲気を出すため1日10分以上札束を数える練習を重ね、今まで演じることが多かった親しみやすいキャラクターに相反するよう、とにかくとっつきにくい雰囲気を出して演じたところ、自分で見ても想像以上に怖くなってしまったという。終盤の梨花と対峙するシーンについては、「表面上は戦っているように見えながら、役柄だけではなく宮沢さんと自分自身も共感してしまった部分でもある」と話し、宮沢も「とてつもない緊張感で興奮のマックスにいながら静かなエネルギーを出し合うという素晴らしい時間でした。」と、見どころの一つとして挙げている。宮沢、大島、小林の共演について監督は、「この3人を揃えられたことを褒めてほしい」と自信を見せている。 撮影は2014年1月27日に東京でクランクインし、神戸市の旧居留地や神戸市営地下鉄、実際のラブホテルでも撮影された。銀行の撮影には茨城県水戸市の中核施設・オハナコートの一画にある旧常陽銀行双葉台出張所が使われている。当初は風景のみ取り入れる予定だったタイの映像は、宮沢の提案でデモの厳戒態勢中だったバンコクで出演者ありで撮影され、同年3月30日にクランクアップした。監督は、“感情が世界の論理に牙を剥く瞬間”をどう描くかをカトリック聖歌とシド・ヴィシャスの「マイ・ウェイ」を交互に聴きながら悩み、どういったエンディングにするかも決めないまま撮影を開始。宮沢演じる梨花がどうなっていくかを見極めながらラストを決めるという、監督曰く「贅沢で無責任」な撮り方を実践した。
※この「企画・撮影」の解説は、「紙の月」の解説の一部です。
「企画・撮影」を含む「紙の月」の記事については、「紙の月」の概要を参照ください。
企画・撮影
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 03:59 UTC 版)
「ゆるキャン△ (テレビドラマ)」の記事における「企画・撮影」の解説
製作に当たってテレビ東京プロデューサーの藤野慎也は「実写化なりのオリジナル表現にも挑戦しつつ、可能な限り原作コミックを忠実に再現したい」と考えていたことを明かしている。そのため、ロケーションに当たってはテレビアニメ版同様に富士の国やまなしフィルム・コミッションの協力を得て、モデルとなったキャンプ場7か所すべてから撮影許可を得た。撮影に当たっては一ヶ所ずつロケハンを行い、どのように撮れば各キャンプ場の魅力を引き出せるのか、スタッフ間で入念に話し合ったという。ただ、天候に左右されるため、例えば初日は浩庵キャンプ場でのロケを予定していたのが雪が降ったためスケジュールを大幅に修正、ふもとっぱらキャンプ場ではロケハン時には富士山からの日の出が全く見られない状況だったが撮影日当日は見事に晴れた、などのエピソードも語られている。 ヘッドクォーターのプロデューサー、熊谷喜一は原作を読んだ時点で「“ゆるさ”という言葉は“しなやかさ”でもあるなって感じた。5人の女子高生も、しなやかに人間関係を変化させていっていて、この“しなやかさ”こそが作品の魅力であり、面白さだな」と語り、S・D・Pプロデューサーの岩倉達哉も原作の感想として「ドラマがすごいしっかりとしていて、よくできている」とした上で、実写化の意図について「自然の中で彼女たちが見ているものには絶対に何かしらの価値があって、それを見るために面倒くさがらず、まずは動くっていうのがすごくすてきだなって感じたので、ドラマ化することで視聴者にも何か届くものがあるだろうなと思った」、熊谷も「リンたちが不便さを楽しむ様子や、たき火を見つめる彼女たちの向こう側に、彼女たちが得ようとしている“何か”が映ればいいなって思った」と語っている。 また、ディレクター陣やプロデューサー陣など制作スタッフが強く意識したのはアニメ版ではなく原作の方であり、熊谷は「原作をきちんと把握して、現実のキャンプ場、実際の土地を舞台にしたリアルな場所で芝居をすると、必然的にカット割りが似てくる。原作がリアルな場所を描いているからこそ、実写のほうも必然的にそこに近づく」と、原作を再現することで結果として自然とアニメ版と近い画作りになったとしている。 企画の立ち上げに当たっては熊谷が元々キャンプが趣味というのもあり、この数年のキャンプブームを感じる中で原作漫画にたどり着き、読了後ただのキャンプものに終わっていないことやソロキャンプだけでなくグループキャンプの良さも描かれていること、リアルな場所が描かれていることが実写化に向いている題材だと考え、岩倉に相談を持ちかけた。岩倉も原作に一度触れたことがあり、熊谷からの話をきっかけに再び読み直すと「女子高生たちの心のドラマがちゃんと描かれている」と、実写化にあうと感じていた。そして岩倉はテレビ東京でやるのが一番と考え、『勇者ヨシヒコシリーズ』で組んだことのある藤野に話を持っていった。 藤野も自らキャンプに興味を持ち始めており、2019年5月の時点で同じくキャンプを題材としたドラマ『ひとりキャンプで食って寝る』(2019年10月 - 12月放送)の制作が始まっていたことから、「自分でもこのようなドラマをプロデュースできたら」と思っていた所に岩倉から話が来たことで渡りに船とばかりに企画を進めることになった。冬季のロケになるため放送時期も含め早期に取り組む必要があると考え、独占配信を行っているAmazonプライムビデオに直ちに声をかけたところ乗り気となった事から企画が進み、通常なら1〜2年かかるところが数ヶ月で放送が決まっていったという。
※この「企画・撮影」の解説は、「ゆるキャン△ (テレビドラマ)」の解説の一部です。
「企画・撮影」を含む「ゆるキャン△ (テレビドラマ)」の記事については、「ゆるキャン△ (テレビドラマ)」の概要を参照ください。
- 企画・撮影のページへのリンク