将棋用語一覧 い

将棋用語一覧

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/01 15:46 UTC 版)

居(い)
【接頭語】玉将や大駒が初期位置から動いていないこと。居玉、居飛車、居角[1]
居飛車
飛車を1〜4筋に配置する戦法(初期位置の2筋から動かさないことを含む)。対して、序盤で飛車を5筋から左に動かす戦法を振り飛車と呼ぶ。居飛車戦法を主に採用する棋士を「居飛車党」という。
居飛車の税金
居飛車対振り飛車において、居飛車の飛車側の端歩(居飛車側を先手とすると1六歩)を突くこと。振り飛車側からの角の覗き(1五角)を防ぐ意味がある。この覗きは、王手飛車となる可能性のある手でもある。振り飛車側を牽制する目的として指される。
以下
その指し手以降の手順。〈例〉「▲6八飛以下△8六歩▲同歩△同飛▲6五歩と進んだ」
家元制度
江戸時代にあった将棋界の制度で、寛文年間に将棋三家が将棋の家元として徳川家から召し抱えられる。
行き所のない駒、行かずの駒
下がることができない桂馬、香車、歩兵を、それ以上動けないようなマスに(不成で)動かしたり、打ったりする反則。具体的には、敵陣一段目の歩兵・香車、敵陣一・二段目の桂馬で、これらの駒をそれらの場所に打つことはできず、盤上の駒を進める場合は必ず成らなくてはならない。
行く(いく)、行き(いき)
棋譜で、同じ種類の大駒が同じマスに複数枚移動可能な場合に、駒が前に進む指し手を表す表記。駒を後退させる場合は「引く」。
いじる
歩などで陣形を乱すこと。〈例〉「玉周りをいじられるのは怖い」
いじめる
特定の駒に狙いをつけ、追い回して捕獲を図ったり、動きや利きを制限させること。特に小駒で、斜めに動けない飛車と、前後左右に動けない角の弱点を突く場合に使う。
忙しい
次に自分の駒が取られるなど相手の攻めが迫っており、指し手が制限され、急いで攻めていかざるを得ない状況にあること。
石田流(いしだりゅう)
石田検校創案の三間飛車の戦法。
痛い
厳しい手を形容する語。特に厳しいことを「激痛」という。〈例〉「歩の叩きが痛い」
一段金
金が自陣一段目にある状態。「一段金に飛車捨てあり」という格言があり、相手からの飛車の打ち込みに強いとされる。
一番長い日
順位戦A級一斉対局が行われる最終日のこと。将棋界の一番長い日と呼ぶことが多い。この日の結果で名人挑戦権やプレーオフ、また残留とB級1組への降格者が決まるため、決着が深夜に及ぶことも珍しくない。対局者は自分以外の対局の結果を知ることはできない。
1森下(いちもりした)
森下卓は駒得を重視するため持駒には歩が5枚あることが多い、という話から転じた、持駒に歩が5枚あることをいう俗語。
一門(いちもん)
あるプロ棋士と、そのプロ棋士と師弟関係にあるプロ棋士、奨励会員、女流棋士からなる集団。プロ棋士の師弟制度は元来はプロ候補者の棋力、素行、連絡先などの保証のために作られたが、現在はその目的を越えて師弟関係にある人どうしが、弱い家族的関係を持つことが多い。そのためその集団を指して一門という語が用いられる。ある人がプロ棋士○○の一門に属していることを「○○門下」と言う。プロの対局においては対局者の師弟関係はルール上は影響しない。しかし順位戦は例外で、C級2組、C級1組、B級2組では八百長を防ぐために師弟関係にある棋士どうしを当てないように対戦表が作られる。
一局、一局の将棋
将棋では1ゲームのことを一局といい、「一局の将棋」とは本譜とは異なる、形勢互角な手順や局面を指していう。〈例〉「これも一局の将棋としか言いようがない(形勢不明の変化である)」。
一間(いっけん)
1マスのこと。
一間竜(いっけんりゅう)
竜王を敵玉から1マス空いた地点に動かす手筋。合駒されても王手する、送りの手筋(後述)を使うなどして攻めを続けることができる。
一丁半(いっちょうはん)
上手が飛車と左側の香二枚を落として指す飛香落ちのこと。
一着(いっちゃく)
手(一手、指し手)と同義だが、強調していう語。〈例〉「急所の一着」
一直線(いっちょくせん)
  1. 指し手の変化の余地がほぼない状態。変化するとたちまち不利になる局面状態。〈例〉「一直線の変化」
  2. 相手の手にかかわらず自分が指したい手や攻めの手を指す。〈例〉「一直線の攻め合い」、「一直線穴熊」
一手一手(いっていって)
一手受けても即座に攻められ、この先どう指しても勝敗が覆らない状況。〈例〉「後手玉は囲いが残っていてなかなか詰まないが、先手は攻めがほどけないので一手一手ということで投了した」[1]
一手違い、一手勝ち、一手差
一方の玉が詰んだが、パスすると他方の玉が詰むような最終局面の状態。
一手ばったり
それまで互角、どちらがはっきりした有利とも言えず難しい局面、あるいは有利(優勢・勝勢)のところ、一手の大悪手を指して負け(敗勢・必敗)にしてしまうこと。
一手パス
利益が生じず、パスに近いような意味のない指し手。〈例〉「大駒を逃げると一手パスになる」
一手指した方がよく見える(いってさしたほうがよくみえる)
局面が伯仲していることをいう常套句。プロによる大盤解説で、どちらが有利(不利)かという断言ができない、または複雑な手順をしゃべるのが面倒というときの婉曲表現としても用いる。
一手すき
「詰めろ」と同義。1手指すと「詰めろ」になる局面は「二手すき」といい、以下同様に「n手すき」という。
一歩で一手を稼ぐ
位置を良くするために相手の駒が一つ下がったあとで、その駒を歩で叩いて直前、または少し前の形に戻すこと。歩切れのため歩が1枚欲しいという場合は別として、基本的には単純に一手を稼がれないような手順を選ぶ。
一般棋戦
タイトルを除いた棋戦のこと。特に全棋士の出場が可能な朝日杯将棋オープン戦NHK杯テレビ将棋トーナメント銀河戦将棋日本シリーズを同一年度で制することをグランドスラムと呼ぶこともある。
一分将棋
  1. 1手を指すまでに毎手必ず60秒(プロ)か60秒弱(アマチュア)の時間の余裕が与えられるが、それ以上の時間はないというルールでの対局。記録係がおらず、自分でチェスクロックを押して時間を計測する場合はその分にかける時間が事実上差し引かれ、60秒弱になる。持ち時間#将棋も参照。〈例〉「時間も遅いですし1分将棋で1局やったら帰りましょう」
  2. プロ公式戦でのストップウォッチ方式(1分切り捨て)では考慮時間が1分かからずに指した場合の消費時間はカウントされないので、持ち時間残り数分前に始まる秒読みが1分以内で指す目安になる。その状況を1分将棋という。そこから拡大して、持ち時間がなくなったあとの状況も一分将棋という。〈例〉「1分将棋での驚異的な粘りのかいあって名人の逆転勝ちとなった」
伊藤氏
江戸時代の将棋家元の一つ。
伊藤流
将棋の駒の並べ方のひとつ。
移動合い
王手に対し、持ち駒ではなく盤上の駒で合い駒をすること。
居飛車党(いびしゃとう)
居飛車を対局に多く用いる人。居飛車を得意にする人。
イモ筋
本筋から外れた筋の悪い手。
イモ攻め
重く、あまりにもセンスが無くて筋悪であるが、対応を誤ると一気に不利になる攻撃法。
嫌味
相手が一目では分からない、悪くなるような変化があるように思わせる手のこと。その手を指すことは、「嫌味をつける」と呼ぶ。〈例〉「後手が嫌味をつけたことでまた形勢不明になった」
入り王(いりおう)
入玉の古い言い方。
入れる、入れない
  1. 局面の展開の中で、ある手を指しうるタイミングが数パターンあるとき、どこかでその手をさすことを「入れる」、指さないことを「入れない」と言う。その時点ではよくわからないが将来の手順に影響する可能性のある微妙な手についてよく用いる。〈例〉「桂馬と銀引きの交換をどこで入れるか迷った」
  2. 序盤~中盤の途中で、展開にかなり影響するような特定の手をさしておくことを「入れる」という。〈例〉「攻める手もあるが、ここで金上がりを入れてからのほうが本筋だろう」
隠居
将棋では、狙われた駒を取られないよう逃げたり避けたりすることでその駒の働きが悪くなったり活用しにくくなったりしてしまうこと。〈例〉「飛車が隠居している」
引退
将棋界では自発的な引退の他に、規定による引退もある。

注釈

  1. ^ 『日本将棋用語事典』p.7では、味の良し悪しはそれぞれ0.5ポイントくらいのプラスまたはマイナスがある、ともしている。
  2. ^ 本来の日本語としては「歩で叩く」の方が自然だが、将棋界では「歩を(使って)叩く」と言う習慣がある

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al 『日本将棋用語事典』
  2. ^ a b c d e f g 『将棋語辞典』
  3. ^ 『日本将棋用語事典』p.23
  4. ^ 『日本将棋用語事典』についてはこの項目の他、p.47「緩手」も参照。
  5. ^ 羽生善治が2010年度NHK杯テレビ将棋トーナメントに解説役として出演した際に説明。
  6. ^ 『日本将棋用語事典』p.69
  7. ^ 「あ!駒柱できました」2度の出現に解説陣「珍しいですね」 広瀬章人八段は「これはきっと“使われる”(笑)」/将棋・ABEMAトーナメント”. ABEMAニュース. 2023年5月30日閲覧。
  8. ^ 羽生善治氏が説く、「三手の読み」で未来を切り開く方法”. ログミー. 2013年3月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月9日閲覧。
  9. ^ 『日本将棋用語事典』 pp.92-93 「痺れました」、「痺れる」
  10. ^ a b 松下 1970, p. 24.
  11. ^ 修司, 相崎. “72歳現役棋士、桐山清澄九段に聞く「中原誠さんとの東西決戦で嵐になった日」のこと | 観る将棋、読む将棋”. 文春オンライン. 2020年7月30日閲覧。
  12. ^ 松下 1970, p. 26.
  13. ^ 将棋 多面指しでプロと交流”. ニュース和歌山 (2017年11月18日). 2018年3月9日閲覧。
  14. ^ 藤井聡太20歳「はっきり苦しい」王座戦で八冠ロード窮地→「毒まんじゅう」サク裂…《評価値6%》から大逆転の「6四銀」はナゼすごい?”. NumberWeb. 2023年6月27日閲覧。
  15. ^ タイトル100期か無冠転落か。羽生竜王VS広瀬八段、竜王戦七番勝負の展望は?(両者インタビューあり)|将棋コラム|日本将棋連盟”. www.shogi.or.jp. 2019年6月10日閲覧。





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