カニカニ銀とは? わかりやすく解説

カニカニ銀

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/16 07:26 UTC 版)

将棋 > 将棋の戦法 > 居飛車 > 矢倉 > カニカニ銀
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カニカニ銀・最序盤の一例

カニカニ銀(かにかにぎん)は将棋戦法のひとつ。急戦矢倉の一種[1]で、主に先手番で用いられる。奇襲戦法に分類されることもある[2]。考案者は棋士児玉孝一で、[3]2003年の第30回将棋大賞・升田幸三賞受賞戦法となった[4]

概要

歴史

青野照市富沢幹雄らが好んで用いていた急戦矢倉の二枚銀戦法にカニカニ銀の源流があるのではと推測したことがあり[5]、児玉もカニカニ銀は二枚銀急戦矢倉を母体にしたものとしている(しかし、全く違う戦法になってしまったともしている)[6]。 カニカニ銀に似た戦型は1950年11月7日 王将戦▲大山康晴 vs.△升田幸三でみられる。

戦法の命名者は森信雄[7][8][9]、動き回る銀をカニに例えた、あるいは2枚の銀をカニのハサミに例えたことに由来する[注 1]

指し方

飛車の活用の自由度の高さと[10]、急戦矢倉の中でも多彩な攻め筋を持つことが特長。二枚銀急戦矢倉とは異なり、玉と金を初期位置から一切動かさない(居玉[6]。5手目は▲6六歩ではなく▲7七銀と上がる[11]。飛車先不突矢倉は採用せず[11]、飛車先を2五まで伸ばし後手に△3三銀を指させて早くに角道を止めさせてから[12]。右銀を▲4八銀〜▲5六歩〜▲5七銀〜▲4六銀と活用させる[13]。その後、後手が5筋の歩を突いてくれば、▲5八飛と中飛車に振ってから▲9七角〜▲6六銀〜▲7七桂と布陣するのが一例で、敵陣の中央突破を目指す[14]。当初は後手が漫然と△3二金と上がる実戦例が多かったが、先手の中央突破を防ぐことが難しいため、△5二金右とあらかじめ備える指し方が多くなったという[15]

中央からの攻めを狙う場合は▲3六歩と3筋の歩を突くのは自玉の傷になりやすく、攻めも遅れる為、悪手になることが多い[16]

後手が中央からの猛攻を警戒して、5筋の歩を受けずに争点を作らせないようにしてきた場合、▲3六歩〜▲3五歩と右銀を早繰り銀調に使い、角は▲7九角と引き角にする[17]。通常の早繰り銀とは違い、銀が3五まで進出しても、銀交換を焦らずにプレッシャーをかけながら、時期を伺う[18]

この他に、5筋の位を取る手段もある。一例として第1図と第2図は1987年6月順位戦B級2組、先手児玉vs後手桜井昇戦。第1図以下は△6三銀に▲7九角△7四歩▲5六銀△3二金▲7五歩△7二飛▲7四歩△同銀▲9七角△6三金▲7八飛(第2図)と進めている。

カニカニ銀・対五筋歩突型の一例
桜井 △持ち駒 なし
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児玉 ▲持ち駒 なし
第1図 ▲5五歩まで
カニカニ銀・対五筋歩突型の一例
桜井 △持ち駒 歩
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児玉 ▲持ち駒 歩
第2図 ▲7八飛まで

後手の飛車先交換に対しては向かい飛車等から飛車交換を狙うのも1つの狙いで[19]、居玉であるが一段金なので飛車交換には強い。局面によっては飛車や角を細かく動かして戦いを求めることも大事としている[20]

実戦例

森内俊之は、第41期王座戦二次予選2回戦(1992年11月20日、対・青野照市)でカニカニ銀を用い、65手で勝利。[21]その1週間後の11月27日には児玉と森内の対局(第51期B級2組順位戦6回戦[22])があり、このときは、児玉のカニカニ銀を相手に森内が124手で勝った。

羽生善治は、第82期棋聖戦(防衛戦)の第1局(2011年6月11日、対・深浦康市)で、ほぼカニカニ銀の形から攻めて勝利。盤の中央での戦いで持駒とした金・銀を相手の飛車を奪う道具として投資するという内容であった。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ なお、カニカニと呼ばれる戦形も児玉は使うが、それはカニカニ銀とはまったく違うもので、児玉自身はカニカニ金とは呼んでいない。

出典

  1. ^ (児玉 1992, p. 3)。もっとも、「もはや矢倉ではない」という表現もみられる(児玉 1992, p. 9)
  2. ^ 神谷 2003, p. 130.
  3. ^ (児玉 1992, p. 3)を参照。
  4. ^ (神谷 2003, p. 225)(文庫版発行時に追加されたあとがき)による。
  5. ^ 青野 1989, p. 96.
  6. ^ a b (児玉 1992, p. 8)を参照。
  7. ^ (児玉 1992, p. 9)。児玉本人は「最初は「変な名前を付けて・・・」と思っていたが、そのうち「ピッタリだ。雰囲気が出てる」と思うようになった。」と感想を記している。
  8. ^ 将棋世界」(日本将棋連盟)2000年1月号付録「2000年棋士名鑑」の児玉孝一の項
  9. ^ 塚田 1998, p. 187.
  10. ^ (児玉 1992, p. 128)を参照。
  11. ^ a b (児玉 1992, p. 12)を参照。
  12. ^ (児玉 1992, p. 8)を参照。4八銀は進出させたいが、6九の金は玉から離したくないため。4八銀で飛車の横利きがとまり、後手△8六歩から△8八角成を狙われる
  13. ^ (児玉 1992, p. 15)を参照。
  14. ^ 児玉 1992, pp. 16–19, 34.
  15. ^ 児玉 1992, p. 14.
  16. ^ 児玉 1992, p. 92.
  17. ^ (児玉 1992, p. 92)を参照。
  18. ^ (児玉 1992, p. 105)を参照。
  19. ^ (児玉 1992, p. 66)を参照。
  20. ^ (児玉 1992, pp. 128–129)を参照。
  21. ^ 「棋譜データベース」より当該棋譜を参照。
  22. ^ 「棋譜データベース」より当該棋譜を参照

参考文献

外部リンク


カニカニ銀

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/19 06:37 UTC 版)

中飛車」の記事における「カニカニ銀」の解説

創始者児玉孝一急戦矢倉一種で、銀将前線送り出し矢倉を組む過程相手の対応によって中飛車に振る(振らない場合もある)。中飛車に振る場合5五龍中飛車と同様、攻撃端角含み持っている。玉を囲う5五龍中飛車異なり原則的に居玉のまま戦うのが特色

※この「カニカニ銀」の解説は、「中飛車」の解説の一部です。
「カニカニ銀」を含む「中飛車」の記事については、「中飛車」の概要を参照ください。

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