一万円紙幣 2024年度発行予定の新紙幣

一万円紙幣

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 22:17 UTC 版)

2024年度発行予定の新紙幣

  • 日本銀行券
  • 額面 壱万円(10,000円)
  • 表面 渋沢栄一
  • 裏面 東京駅(丸の内駅舎)
  • 印章 〈表面〉総裁之印(特殊発光インキ) 〈裏面〉発券局長
  • 銘板 国立印刷局製造
  • 記番号仕様
    • 記番号色 黒色
    • 記番号構成 記号:英字2文字+通し番号:数字6桁+記号:英字2文字
  • 視覚障害者用識別マーク 左右隅に斜線の連続模様(深凹版印刷)
  • 寸法 縦76 mm、横160 mm
  • 発行開始日 2024年令和6年)7月3日予定[50][51]
  • 未発行

2024年(令和6年)上期を目処に、偽造抵抗力の強化やユニバーサルデザインへの対応など目的として[35]一万円券・五千円券千円券の3券種が同時に改刷される[52]

刷新後の一万円券はD一万円券E一万円券と同様の褐色系を基調とした色合いで[53]、肖像が実業家の渋沢栄一、裏面は2012年(平成24年)に復原されたJR東京駅丸の内駅舎に変更予定である[54]。渋沢の肖像は、70歳の古希に撮影された写真を原画としているが、躍動感や若々しさを表現するため、原画の写真とは異なり60歳代前半の姿に改変した風貌が描かれている[55]。また、裏面の左側には丸の内オアゾ前付近から見た丸の内駅舎北ドームが、右下には東京中央郵便局屋上から俯瞰した丸の内駅舎の全体像が描かれるデザインとなる。日本銀行券において民間企業(ただし、その前身は日本国有鉄道(国鉄)という公共企業体であり、更にその前身は鉄道省という官庁であった。)が管理運営する営利施設が紙幣の図柄の題材となるのはこれが初めてである。

表面の肖像画・透かし・額面の基本的なレイアウトは変更されていないものの、D号券・E号券では漢数字で額面が記載されていた箇所にアラビア数字で「10000」と大きく描かれ、漢数字による額面の「壱万円」は左上隅に、従来右上隅にあった「10000」の額面は右下隅に入れ替わる形で配置されている。裏面の右上隅のアラビア数字も非常に大きく描かれており、従来の日本銀行券とは印象が大きく異なる。

記番号も8桁または9桁の形式から「AA000001AA」のような形式の10桁に変更される[54][注釈 6]

公表されている新たな偽造防止技術としては、高精細すき入れ模様とストライプタイプのホログラムが導入される予定である[56]。高精細すき入れは、渋沢栄一の肖像の透かしの背後に緻密な格子模様をすき入れたものである[57]。ホログラムの図柄は3Dホログラムで、見る角度によってホログラムの図柄の渋沢栄一の肖像の顔の向きが連続的に変化して回転しているように見えるものであり、紙幣の偽造防止対策として採用されるのは世界初である[57]。この他、E号券でも搭載されていた、マイクロ文字特殊発光インキ深凹版印刷潜像模様、パールインク、すき入れバーパターン等の偽造防止技術も引き続き採用される[58][59]

視覚障害者のための識別マークは券種識別性向上のため形状が変更され、左右隅に深凹版印刷による斜線の連続模様が配置されている[56]。また券種ごとにホログラムや透かしの位置を変えるなど識別マーク以外でも区別しやすいよう考慮されている[56]

券面の寸法については変更すると自動販売機ATMなどの紙幣取扱機器への影響が大きいため、従来通りとなっている[53]

2019年(平成31年)4月9日に改刷が発表され[52]2021年(令和3年)9月1日より新一万円券の製造が開始された[60]。発行予定日の5年も前に改刷が発表され2年半以上前から製造が開始されたのは、前回のE号券への改刷時に準備期間が短かったために自動販売機やATMの改修が間に合わず半数程度しか対応できなかった反省から[61]、自動販売機やATMその他の新紙幣を扱う各種機器の改修の際にテストを入念にし、障害やトラブルが起きないようにするためとされる[62]

一万円券製造開始時に発表された新一万円券の見本のデザインでは、2019年(平成31年)4月の改刷発表当時に公表された当初のラフスケッチから[52]の変更点として、表面の額面金額の大きなアラビア数字「10000」の下の発行元銀行名「日本銀行」の文字の更に下に「BANK OF JAPAN」の発行元銀行名の英語表記が追加されているほか、視覚障害者のための識別マークの斜線が9本から11本に増やされている[63]。発行元銀行名の表記について、ローマ字の「NIPPON GINKO」の表記は従来の日本銀行券でも採用されている券種が多かったが、英語の「BANK OF JAPAN」の表記は日本銀行券史上初となる。

使用色数は、表面13色(内訳は凹版印刷による主模様2色、地模様9色、印章1色、記番号1色)、裏面8色(内訳は凹版印刷による主模様1色、地模様6色、印章1色)となっている。


注釈

  1. ^ B号券以降の日本銀行券の中で記番号が4ヶ所に印刷されている紙幣は、この紙幣とC五千円券のみである。
  2. ^ 現在平等院鳳凰堂の中堂屋根上に取り付けられているものは複製品となっており、本物は屋内に保管展示されている。
  3. ^ マイクロ文字、特殊発光インキ、深凹版印刷、潜像模様、パールインク等。
  4. ^ 千円紙幣では前例あり。
  5. ^ このほか、E五千円券は「八角形」、D二千円券は点字の「に」を模した「丸印が縦に3つ」、E千円券は「横棒」の識別マークである。
  6. ^ B号券からE号券までの紙幣では全券種ともに製造番号の両端の英字が各1桁、つまり「A000001A」から始まっていた。「Z900000Z」まで使い果たすと左側の英字だけ「AA」と2桁に変わるが、右端の英字は必ず1桁であったため最終番号は「ZZ900000Z」となり、それを使い果たすと文字色を変更して「A000001A」に戻る形式だった。新紙幣では1桁制が廃止され両端とも初めから2桁の英字、すなわち「AA000001AA」から製造開始される形となった。
  7. ^ ただし、現在も有効券となっている紙幣を含めた場合はこの限りではない。

出典

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