ムーサ【Mūsa】
読み方:むーさ
⇒ミューズ
ムーサ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/22 20:13 UTC 版)
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   | ギリシア神話 | 
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| 主な原典 | 
|  イーリアス - オデュッセイア 神統記 - 仕事と日 イソップ寓話 - ギリシア悲劇 ビブリオテーケー - 変身物語  |  
    
| 主な内容 | 
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| 主な神殿・史跡 | 
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ムーサ(古代ギリシア語: Μοῦσα、古代ギリシア語ラテン翻字: Moũsa、ラテン語: Musa)またはムサは、技芸[1]・文芸・学術・音楽・舞踏などを司るギリシア神話の女神[2]。
ムーサが司る技芸は古代ギリシア語でムーシケー(古希: μουσική、古代ギリシア語ラテン翻字: mousikḗ[1])と言い、そこに含まれているのは科学的音楽理論に関連する芸術全般[3]・さまざまなリズムによる時間芸術(音芸術・詩の朗誦の芸術・舞踊など)[1]・総合芸術である[3]。ムーシケー(技芸)は、英語のミュージック(music)の語源[1][注釈 1]。
「ムーサ」の複数形はムーサイ[4](Moũsai[4], 古希: Μοῦσαι、羅: Musae)。英語・フランス語のミューズ (英語・フランス語単数形: Muse、フランス語複数形 Muses) やミューゼス (英語複数形: Muses) としても知られる。ドイツ語ではムーズ (Muse)、イタリア語ではムーザ (Musa) などとなる。
ムーサたちはパルナッソス山に住むとされており、またヘリコーン山との関係が深い。ヘリコーン山にあるアガニッペーの泉とヒッポクレーネーの泉を主宰する場合にローマ神話の泉の女神「カメーナエ」と同一視された(詳しくはペーガソスを参照のこと)。ムーサたちを主宰するのは芸術の神・アポローン(「アポローン・ムーサゲテース (Apollon Mousagetēs)」という別名を持つ)である。しばしば叙事詩の冒頭でムーサたちに対する呼びかけ(インヴォケイション)が行われる。なお『ホメーロス風讃歌』にはムーサたちに捧げる詩がある。
ムーサたちの一覧
ヘーシオドスの『神統記』によれば、大神ゼウスとムネーモシュネーの娘で9柱いるとされており、「黄金のリボンをつけたムーサたち」と形容することがある。別伝ではハルモニアーの娘とする説や、ウーラノスとガイアの娘とする説もある。ピーエリア王ピーエロスの娘・ピーエリスたち(ピーエリデス)とも同一視された。
古くはその人数は定まっておらず、ヘリコーン山で崇められた最初のムーサたちではウーラノスとガイアの娘であるアオイデー(歌唱、Aoide)、ムネーメー(記憶、Mneme)、メレテー(実践、Melete)の3柱、それをムネーメーを除くテルクシノエー(魅惑、Thelxinoe)とアルケー(始源、Arche)を加えたゼウスとネダーの娘である4柱、レスボス島とシケリア島ではネイロー (Neilo)、トリトーネ (Tritone)、アソポー (Asopo)、ヘプタポラー (Heptapora)、アケロイース (Achelois)、ティポプロー (Tipoplo)、ローディア (Rhodia) の7柱とされていたが、ヘーシオドスによって9柱にまとめられた。その他、シキュオーンやデルポイではネテー (Nete)、メセー (Mese)、ヒュパテー (Hypate) の3柱で、竪琴の3本の弦の化身であった。また、アポローンの娘であるケピソー (Kephiso)、アポローニス (Apollonis)、ボリュステーニス (Borysthenis) の3柱とする説もある。
アルクマーンによる3柱
アルクマーンによると、ウーラノスとガイアの娘。主に詩歌の形式と技巧を司る。
| ムーサ | el | la | 名前の意味 | 
|---|---|---|---|
| アオイデー | Αοιδή | Aoide | 歌唱 | 
| ムネーメー | Μνήμη | Mneme | 記憶 | 
| メレテー | Μελέτη | Melete | 実践 | 
キケローによる4柱
キケローによると、ゼウスとネダー(またはプルシアー(Plusia))の娘。主に曲芸の形式と技巧を司る。
| ムーサ | el | la | 名前の意味 | 
|---|---|---|---|
| テルクシノエー | Θελξινόη | Thelxinoe | 魅惑 | 
| アオイデー | Αοιδή | Aoide | 歌唱 | 
| アルケー | Αρχή | Arche | 始源 | 
| メレテー | Μελέτη | Melete | 実践 | 
ヘーシオドスによる九姉妹
9柱それぞれの名前と司る分野、および持ち物は以下の通り。
   | ムーサ | el | la | 分野 | 持ち物 | 名前の意味 | 
|---|---|---|---|---|---|
| カリオペー (カリオペイア)  |  
     Καλλιόπη | Calliope | 叙事詩 | 書板と鉄筆 | 美声 | 
| クレイオー (クリーオー)  |  
     Κλ(ε)ιώ | Clio | 歴史 | 巻物または巻物入れ | 讃美する女 | 
| エウテルペー | Εὐτέρπη | Euterpe | 抒情詩 | 笛 | 喜ばしい女 | 
| タレイア | Θάλεια | Thalia | 喜劇・牧歌 | 喜劇用の仮面・蔦の冠・羊飼いの杖 | 豊かさ | 
| メルポメネー | Μελπομένη | Melpomene | 悲劇・挽歌 | 悲劇用の仮面・葡萄の冠・悲劇の靴 | 女性歌手 | 
| テルプシコラー | Τερψιχόρα | Terpsichore | 合唱・舞踊 | 竪琴 | 踊りの楽しみ | 
| エラトー | Ἐρατώ | Erato | 独唱歌 | 竪琴 | 愛らしい女 | 
| ポリュムニアー (ポリュヒュムニアー)  |  
     Πολυ(υ)μνία | Poly(hy)mnia | 讃歌・物語 | - | 多くの讃歌 | 
| ウーラニアー | Οὐρανία | Urania | 天文 | 杖・渾天儀・コンパス | 天上の女 | 
当初は特定の分野が割り当てられず、音楽・詩作・言語活動一般を司る知の女神たちであったようだが、古典期を通じてローマ時代の後期には各ムーサがつかさどる学芸の分野が定められ、現在広く知られる形が出来上がった。またツェツェース(Tzetzes, およそ1110年 - 1180年)による著作ではカリコレ (Kallichore)、ヘリケ (ヘリケー、Helike)、エウニケ (エウニーケー、Eunike)、テルクシノエ (テルクシノエー、Thelxinoe)、テルプシコラ (テルプシコラー、Terpsichore)、エウテルペ (エウテルペー、Euterpe)、エウケラデ (Eukelade)、ディア (ディーア、Dia)、エノペ (Enope) といった9柱のムーサが述べられている。
神話には、音楽の競技の場合に登場することが多い。アポローンとマルシュアースの音楽合戦の審判役をつとめたほか、タミュリス、セイレーンたちやピーエリスたちなどが、ムーサたちと歌比べの勝負を挑んだが敗北した神話が残っている。
文化への影響
ヨーロッパの多くの言語では、下記のとおり「音楽」を意味する語、また「美術館/博物館」を意味する語がこの名前から派生した。
| ラテン語 | イタリア語 | フランス語 | ドイツ語 | 英語 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 音楽 | Musica | Musica | Musique | Musik | Music | 
| 美術館/博物館 | Museum | Museo | Musée | Museum | Museum | 
古典古代の学堂であったムーセイオンは、もとは文芸の女神ムーサを祀る神殿であったが、後に文芸・学問を研究する場にも使われるようになった。ルネサンス以降に西洋に博物館が成立した際に、ムーセイオンの名が復活している。
ルネサンス期以降、ムーサたちにちなんで、Gradus ad Parnassum 『パルナッソスへの階梯』という名の詩学・音楽教本が多く書かれた。ドビュッシーのピアノ組曲「子供の領分」に含まれる第1曲「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」は、これにちなんだ題名で、これから始まる組曲の開始曲として配置されている。
ギャラリー
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    ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ『9人のムーサと古き3柱のムーサ』(1884年と1889年の間)リヨン美術館所蔵
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    ウスタシュ・ル・シュウール『メルポメネー、エラトー、ポリュヒュムニアー』(1652年と1655年の間)ルーヴル美術館所蔵
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    ウスタシュ・ル・シュウール『クレイオー、エウテルペー、タレイア』(1652年と1655年の間)ルーヴル美術館所蔵
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    ピエール・ミニャール『カリオペー、ウーラニアー、テルプシコラー』(1746年)フォンテーヌブロー宮殿所蔵
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    ピエール・ミニャール『エウテルペーとクレイオー』(1746年)フォンテーヌブロー宮殿所蔵
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    ギュスターヴ・モロー『アポローンと9人のムーサ』(1856年)個人蔵
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    コンスタンチン・マコフスキー『ムーサの詩歌』(1886年)個人蔵
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    ロバート・ファガン『ウーラニアー、エラトー、カリオペー』(1793年と1795年の間)アッティンガム・パーク所蔵
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    ロバート・ファガン『テルプシコラーとポリュヒュムニアー』(1793年と1795年の間)アッティンガム・パーク所蔵
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    ロバート・ファガン『クレイオーとタレイア』(1793年と1795年の間)アッティンガム・パーク所蔵
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    ロバート・ファガン『エウテルペーとメルポメネー』(1793年と1795年の間)アッティンガム・パーク所蔵
 
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e 平凡社 2022, p. 音楽(ミューズ).
 - ^ 松村 2022, p. ミューズ.
 - ^ a b 中山 2022, p. ギリシア音楽.
 - ^ a b 世界大百科事典内のムーサイの言及
 
参考文献
- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波書店(1953年)
 - 呉茂一『ギリシア神話 上・下』新潮文庫(1979年)
 - 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店(1960年)
 - 中山, 明慶「ギリシア音楽」『日本大百科全書』DIGITALIO、2022年。「古代ギリシア人は科学的洞察力によって音楽の観察を行い、優れた音楽理論書を残し、これは続く中世の音楽理論の基礎となった。近代欧米のmusicなどの音楽総称語の語源が、この古代ギリシアのムーシケーmousikeに由来していることからも、古代ギリシア音楽がヨーロッパ音楽の大きな源となっていることがわかる。このムーシケーは、芸術全般、詩や音楽、舞踊をも含めた総合芸術の意味があり、今日の音楽の意味より幅広い。」
 - パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)
 - フェリックス・ギラン『ギリシア神話』中島健訳、青土社(1991年)
 - 平凡社「音楽(ミューズ)」『世界大百科事典』DIGITALIO、2022年。
 - ヘーシオドス『神統記』廣川洋一訳、岩波書店(1984年)
 - 松村, 明「ミューズ」『デジタル大辞泉』DIGITALIO、2022年。
 
関連項目
ムーサ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 14:50 UTC 版)
キマエラに生息する樹。発芽すると物凄い勢いで成長しドームを形成する。その時地中から水を汲み上げてくるのでキマエラの住民はムーサの発芽を心待ちにしている。ムーサの樹液はベラ・ソナーを除く他の植物が嫌がるほどの異臭を発するため移動の時に樹液を「におい袋」と呼ばれる袋に入れてよく持っていく。
※この「ムーサ」の解説は、「獣王星」の解説の一部です。
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