ムーサイオス
ムーサイオス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/09 05:31 UTC 版)

ムーサイオス(古希: Μουσαῖος Mousaios 英: Musaeus)は、ギリシア神話の人物[5]。オルペウスと並ぶ伝説的詩人[6]。オルペウス教やエレウシースの秘儀と関わる[6]。
人物
オルペウスと同様、神話と歴史のはざまにおり[10][8]、「ホメーロス以前の詩人」にあたる[11][1][2]。
人物像は曖昧である[6][7]。オルペウスの弟子とも、師とも、単なる模倣者とも、息子とも言われる[6]。あるいは、エウモルポス(エレウシースの秘儀の創始者)とセレーネー(月の女神)の息子[6][2]、エウモルポスの父[6]、アンティオペーモスの息子[6]、リノスの息子[2]、リノスの弟子にして愛人[2]、などとも言われる。出身地はトラキアともエレウシースとも言われる[6]。
ニュンペーたちに育てられた[2]、ボレアースから飛行能力を授かった[8]、アッティカにエレウシースの秘儀を導入した[2]、予言や治病もおこなった(アポローン的特徴)[6]、などとも言われる。
『オルペウス教のアルゴナウティカ』は、オルペウスが弟子ムーサイオスのため作ったという建前になっている[12]。
名前は「ムーサに属する人」を意味する[6]。エウセビオスらは音の近さからモーセと同一視した[6]。
著作
オルペウスと同様、著作が仮託された。『託宣集』『神統記』『デーメーテール讃歌』、エウモルポス宛ての『忠告(ヒュポテーカイ)』などの著作があり、断片が『ソクラテス以前哲学者断片集』にまとめられている[4]。
オルペウスやムーサイオスの仮託著作は、古典期アテーナイで祈祷師などにより流布されていた[5][3][9]。プラトーン『国家』などにその様子がうかがえる[5][3]。オノマクリトスがムーサイオスの著作を偽作または収集したとも言われる[13]。
脚注
- ^ a b 高津 1960, p. 277.
- ^ a b c d e f g 松原 2010, p. 1255.
- ^ a b c ジャンメール 1991, p. 547.
- ^ a b 山口 1996.
- ^ a b c d 藤沢 1987, p. 119.
- ^ a b c d e f g h i j k l ソレル 2003, p. 29ff.
- ^ a b グラント;ヘイゼル 1988, p. 552.
- ^ a b c ベルフィオール 2020, p. 811.
- ^ a b パーカー 2024, p. 30.
- ^ ソレル 2003, p. 16f.
- ^ ソレル 2003, p. 22.
- ^ ソレル 2003, p. 17;59.
- ^ ソレル 2003, p. 13.
参考文献
- マイケル・グラント;ジョン・ヘイゼル著、西田実ほか訳『ギリシア・ローマ神話事典』大修館書店、1988年。ISBN 978-4469012217。NDLJP:13154590/301
- アンリ・ジャンメール著、小林真紀子;福田素子;松村一男;前田寿彦訳『ディオニューソス バッコス崇拝の歴史』言叢社、1991年。 ISBN 978-4905913405。
- レナル・ソレル著、脇本由佳訳『オルフェウス教』白水社〈文庫クセジュ〉、2003年。 ISBN 978-4560058633。
- ロバート・パーカー著、栗原麻子監訳『古代ギリシアの宗教』名古屋大学出版会、2024年。 ISBN 978-4815811648。
- ジャン=クロード・ベルフィオール著、金光仁三郎監訳『ラルース ギリシア・ローマ神話大事典』大修館書店、2020年。 ISBN 9784469012897。
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店、1960年。 ISBN 978-4000800136。
- 藤沢令夫訳「国家」『プラトン全集 11』岩波書店、1987年。NDLJP:12289384/64
- 松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年。 ISBN 9784876989256。
- 山口義久訳「ムゥサイオス」『ソクラテス以前哲学者断片集 第I分冊』岩波書店、1996年。 ISBN 9784000920919。
- ムーサイオスのページへのリンク