インフルエンザとは? わかりやすく解説

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インフルエンザ


インフルエンザ(influenza)は、インフルエンザウイルス病原とする気道感染症であるが、「一般かぜ症候群」とは分けて考えるべき「重くなりやすい疾患」である。流行周期的に現われてくるところから、16世紀イタリア占星家たちはこれを星や寒気影響influence)によるもの考え、これがインフルエンザの語源であると言われている。インフルエンザは、いまだ人類残されている最大級疫病である。
なお、鳥インフルエンザについては別稿で扱う予定である。

疫 学
毎年世界各地大なり小なりインフルエンザの流行みられる温帯地域より緯度の高い国々での流行冬季にみられ、北半球では1~2月頃、南半球では7~8月頃が流行ピークとなる。熱帯・亜熱帯地域では、雨季中心としてインフルエンザが発生する
わが国のインフルエンザの発生は、毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり翌年1~3月頃に患者数増加し4~5月にかけて減少していくパターンを示すが、夏季患者発生しインフルエンザウイルス分離されることもある。流行程度ピーク時期はその年によって異なる。
インフルエンザ流行大きい年には、インフルエンザ死亡者数および肺炎死亡者数顕著に増加しさらには循環器疾患始めとする各種慢性基礎疾患死因とする死亡者数増加し結果的に全体死亡者数増加することが明らかになっている(超過死亡)。ことに高齢者この影響を受けやすい。
わが国感染症発生動向調査における1999/2000~2003/04の過去5シーズン前年第36週翌年35週)でのインフルエンザ届け出状況をみると、多い方から順に2002/03、1999/2000、2003/04、2001/02、2000/01シーズンであった

病原体

 インフルエンザウイルス(図)にはA,B,Cの3型があり、流行的広がり見せるのはA型B型である。A型B型ウイルス粒 子表面には赤血球凝集素HA)とノイラミニダーゼNA)という糖 蛋白があり、これらが感染防御免疫標的抗原となっている。 とくにA型では、HAには15種類NAには9種類抗原性異な亜型存在し、これらの様々な組み合わせを持つウイルスが、ヒト以外にもブタトリなどその他の宿主広く分布している。

A型インフルエンザでは、数年から数十年ごと世界的な大流行見られるが、これは突然別亜型ウイルス出現して、従来亜型ウイルスにとって代わることによって起こる。これを不連続抗原変異antigenic shift)という。1918年スペインかぜH1N1)が出現しその後39年続いた1957年にはアジアか ぜ(H2N2)が発生し11年続いた1968年には香港型(H3N2)が現れ、ついで1977年ソ連型(H1N1)が加わり、現在はA型であるH3N2H1N1、およびB型3種インフルエンザウイルス世界中で流行している。
わが国では、1999/2000~2003/04の過去5シーズンにおける分離インフルエンザウイルス亜型でみると、AH1型は1999/2000、2000/01、2001/02の3シーズン連続してある程度分離されたが、2002/03、2003/04の2シーズン連続してほとんど分離されなかった。AH3型は過去5シーズン連続して分離されたが、2000/01シーズンには少なかったB型は、1999/2000シーズンにはほとんど分離されず、2000/01、2001/02、2002/03の3シーズン連続してある程度分離され2003/04シーズンには少なかった
一方同一亜型でも、ウイルス遺伝子に起こる突然変異蓄積によって、HANA抗原性少しずつ変化する。これを連続抗原変異antigenic drift)という。インフルエンザウイルス では連続抗原変異頻繁に起こるので、毎年のように流行繰り返す

臨床症状
A型またはB型インフルエンザウイルス感染受けてから1~3日間ほどの潜伏期間の後に、発熱通常38上の高熱)、頭痛全身倦怠感筋肉痛関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状がこれに続き、約1週間経過軽快するのが典型的なインフルエンザで、いわゆる「かぜ」に比べて全身症状が強い。とくに、高齢者や、年齢問わず呼吸器循環器腎臓慢性疾患を持つ患者糖尿病などの代謝疾患免疫機能低下している患者では、原疾患増悪とともに呼吸器二次的な細菌感染症を起こしやすくなることが知られており、入院死亡の危険増加する小児では中耳炎合併熱性痙攣気管支喘息誘発することもある。
近年幼児中心とした小児において、急激に悪化する急性脳症増加することが明らかとなっている。厚生労働省インフルエンザ脳炎脳症臨床疫学的研究班」(班長岡山大学医学部森島恒雄教授)で行った調査によると、毎年50200人のインフルエンザ脳症患者報告されており、その約1030%が死亡している。臨床経過病理所見からは、ライ症候群とは区別される疾患考えられるが、原因不明である。現在も詳細な調査続けられている。

病原診断
急性期患者咽頭ぬぐい液やうがい液などを検体とし、発育鶏卵羊膜腔や培養細胞(MDCK細胞など)に接種しウイルス分離を行う。
血清診断には、従来から補体結合法CF)、赤血球凝集阻止反応HI)などがあるが、いずれも急性期回復期抗体価の4倍以上の上昇診断するので、確定診断には2~3週間要するCF抗体ウイルスの内部抗原認識する抗体で、インフルエンザA,B,Cの型別はできるが、A型ウイルスの亜型判別不可能である。この抗体感染後比較速やかに消失することが多いので、比較最近感染推定利用することができる。HI抗体感染後長期わたって検出され、また型別亜型別の判定抗原変異程度比較簡単に測定することが可能であり、血清疫学調査ワクチンの効果調べるのに有用である。遺伝子診断法(RT-PCR)も利用されるが、実験室内の交叉汚染特異性問題もあり、結果判定評価には慎重さ求められる
最近は外来、あるいはベッドサイドなどで2030以内迅速簡便に病原診断可能なインフルエンザ抗原検出キットが、ことにわが国において広く利用されるようになり、臨床現場におけるインフルエンザの検査診断容易になった。一方その限界抗ウイルス薬使用との関係など、新たな問題一部生じている。


治療・予防
従来対症療法中心であったが、1998年わが国でも抗A型インフルエンザとしてアマンタジン使用することが認可された。アマンタジンB型ウイルスには無効である。神経系副作用生じやすく、また、患者使用する比較早期薬剤耐性ウイルス出現するため、注意して使用する必要があるノイラミニダーゼ阻害薬ザナミビルオセルタミビル)は、わが国では2001年医療保険収載された。ノイラミニダーゼ阻害薬A型にもB型にも有効で、耐性比較的できにくく、副作用少ないとされており、発病後2日以内服用すれば症状軽くし、罹病期間の短縮期待できる
対症療法としての解熱剤、ことにアスピリンは、ライ症侯群との関係が推測されており、小児への使用原則禁忌である。また、インフルエンザ脳症悪化因子として、非ステロイド解熱剤のうちジクロフェナクナトリウムメフェナム酸同じく小児には基本的に使用しないように、とされている。解熱剤必要な場合は、なるべくアセトアミノフェン使用する肺炎気管支炎併発し重症化予想される患者に対しては、これらの合併症予防するために、抗菌薬投与が行われることがあるインフルエンザ脳症治療に関して確立されたものはなく、臨床症状重症度応じた専門医療機関での集中治療が必要である。
予防としては基本的事項として、流行期人込み避けること、それが避けられない場合などにはマスク着用すること、外出後のうがいや手洗い励行することなどが挙げられる。現在わが国用いられているインフルエンザワクチンは、ウイルス粒子エーテル処理して発熱物質などとなる脂質成分除き免疫必要な粒子表面赤血球凝集素HA)を含む画分を密度勾配遠沈法により回収して主成分とした、不活化HAワクチンである。感染発症そのものを完全には防御できないが、重症化合併症発生予防する効果証明されており、高齢者に対してワクチン接種すると、接種しなかった場合比べて死亡の危険を1/5に、入院の危険を約1/3~1/2にまで減少させることが期待できる現行ワクチン安全性きわめて高いと評価されている。
わが国においてはインフルエンザワクチン定期予防接種二類として、1)65歳上の高齢者、2)60歳以上65歳未満であって心臓腎臓もしくは呼吸器機能に、またはヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能一定の障害有するに対しては、本人希望により予防接種が行われ(一部実費徴収)、また万一副反応生じた際には、予防接種法基づいて救済が行われる。その他の年齢では任意接種となる。
また2004年7月からは、原則として発症者の同居家族共同生活者で、しかも特殊条件の者を対象リン酸オセルタミビル予防投与承認されたが、接触2日以内投与開始条件としている。

感染症法におけるインフルエンザの取り扱い
インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く)は五類感染症定点把握疾患定められて おり、全国約5,000カ所のインフルエンザ定点医療機関小児科約3,000内科約2,000)より毎週 報告なされている。報告のための基準以下の通りである。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下の4つ基準全て満たすもの
1. 突然の発症
2. 38超える発熱
3. 上気道炎症状
4. 全身倦怠感等の全身症状
なお、非流行期での臨床診断は、他疾患とのより慎重な鑑別が必要である。
上記基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、病原体診断血清学診断によって当該疾患診断されたもの

学校保健法におけるインフルエンザの取り扱い
インフルエンザは学校において予防すべき伝染病第2種定められており、通常解熱2日経過するまで出席停止となる。しかし病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない







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