王家の人々
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 15:12 UTC 版)
ルイ16世 フランス国王。アントワネットの夫。祖父ルイ15世の崩御により即位。趣味は読書と鍛冶と狩猟。小太りでおとなしく優柔不断だが、真面目で家庭的な優しい性格で、国民からも慕われていた。しかし、ヴァレンヌ事件をきっかけに国民の信頼を失って処刑される。タンプル塔へ移される直前、フェルゼンから再び逃亡計画を持ちかけられるものの、国民はおろか国外へ逃亡した貴族達からも見放された事から、「もはや私は 世界中から見捨てられてしまった…」とつぶやいていた。 あまりにも美しくて魅力的な妻に愛していると告げることは出来ず、王妃としての義務を果たした彼女がフェルゼンと恋仲になっても 責めることなど出来ないと痛む心を隠し、アントワネットが「フェルゼンに帰国命令を出しましょう」と告げるも彼の人柄を知っていたので思い留まらせた。 本作の参考となったツヴァイクの小説『マリー・アントワネット』では背が低く小太りとなっているが、史実では長身で筋肉質であり、当時としては思い切った政策を打ち出そうとするくらいには果断な面があった。更には、アントワネットとの間に王子・王女が誕生するまで7年の歳月が経ったのは結婚当時は未成熟の子供であり、不能で包茎手術を受けたという事実は無かった。 ルイ15世 フランス国王。ルイ16世の祖父。享楽的で国民のことは省みず、宮殿で贅沢な毎日を送っている。愛らしいアントワネットが孫嫁となり満足するが、彼女と愛妾デュ・バリー夫人の対立に頭を痛める。後に天然痘を患い崩御する。深夜、埋葬のためにサン・ドニ教会に棺が運ばれたが、その棺を守るのはオスカルを含めた近衛兵40名と小姓36名だけだった。度重なる戦争につぎ込んだ軍事費が原因で財政は逼迫しており、その負の遺産を国もろとも引き継いだアントワネットに憎悪の矛先が向く原因の1人である。 アデライード内親王、ヴィクトワール内親王、ソフィー内親王 ルイ15世の4女、5女、6女。ルイ16世の叔母でもある。娼婦で父ルイ15世の愛妾デュ・バリー伯夫人を毛嫌いし、アントワネットにデュ・バリー伯夫人を無視するよう唆す。オスカル曰く「オールドミスの叔母君たち」。舞踏会でアントワネットがデュ・バリー伯夫人に声をかけようとするのを阻止するため、アデライードが寸前でアントワネットを連れ出した。ルイ15世の死去により、王女としての栄光は終わった。フランスとオーストリアの同盟の破綻による戦争の危機より、自分達のデュ・バリー伯夫人に対する憎悪を優先させて宮廷内に不和を引き起こし、その騒動にアントワネットを巻き込んだ。 オルレアン公フィリップ フランスの王族。居城のパレ・ロワイヤルを平民の文化人たちに解放しており、黒い騎士の根城にもなっていた。 史実では、王妃マリー・アントワネットを盛んに中傷し、その政敵であったことでも知られており、王位を狙ってイメージ戦略でアントワネットの評判を悪くし、「首飾り事件」を攻撃材料として利用した。王政復古を狙うデュムーリエ将軍によるオルレアン公擁立の陰謀が破綻し、ルイ14世の庶系のパンティエーヴル公爵ルイ・ジャン・マリーの娘ルイーズ・マリーとの間に生を受けた嫡男ルイ・フィリップが革命政府に叛旗を翻したデュムーリエと共にオーストリア軍に投降したため、ジロンド派によって共和制転覆の嫌疑をかけられ、財産没収の上に逮捕された。無実を訴えるも有罪とされ、ルイ16世が処刑された同じ年の1793年11月6日の夕刻、断頭台の露と消えた。自身が王位に就くことはなかったが、嫡男ルイ・フィリップが国民の怒りを買って英国に追放されるまで七月王政のルイ・フィリップ1世として王位に就く。続編『栄光のナポレオン-エロイカ』の中盤で甥のアンギアン公が登場するが、冤罪事件で処刑されてしまう。 1回きりしか出番のなかった原作とは異なり、アニメ版ではアントワネットのフランス入り阻止を企むなど、王位を狙って様々な策謀を巡らす。初期は露骨に野心剥き出しで高圧的な命令口調だったが、黒い騎士事件の折は物静かな紳士的な丁寧口調で巨悪らしさを醸し出していた。 アルトア伯 ルイ16世の末弟。原作ではルイ・ジョゼフがまだムードン城で静養して存命中の頃から、早く死ねばいいと言い放っており、甥に対する情愛の欠片も見当たらない。 プロヴァンス伯 ルイ16世の次弟。原作のみ。作中で「ロシアに亡命した王弟殿下」と言われる人。第2王子ルイ・シャルルはフェルゼンとの間の不義の子に違いないと弟のアルトア伯と陰口を叩き合った。 エリザベス内親王 ルイ16世の妹。原作のみ登場。アントワネットの輿入れ直後、ノアイユ伯夫人がフランス宮廷のしきたりを説明した際に名前と姿が出ただけであり、兄夫婦のそばにいても作中で殆ど描かれることはなかった。革命の嵐が吹き荒れる中、ヴァレンヌ逃亡で突如登場してルイ16世処刑まで描かれた。王弟でありながら敬愛する長兄を見捨てて亡命したばかりか各国にフランスへの攻撃を唆した次兄のプロヴァンス伯と三兄のアルトア伯を憎悪 し絶叫してアントワネットに王家の誇りを忘れないでと諭された。 史実上の名は「エリザベート・フィリッピーヌ・ド・フランス」。長兄と次兄の夭逝により長子となった3番目の兄ルイ・オーギュスト(ルイ16世)に常に忠実であり、「天上のプリンセス」と呼ばれた人格者の誉れも高い女性。縁談を断り、国王である兄のそばに留まった。革命勃発後も兄国王一家と行動を共にする。処刑直前のアントワネットが手紙を送ろうとした相手である。アントワネットの死を知らないまま、自身もまたギロチンの露と消えた。コミックス第11巻に収録されたエピソード3で、姪であるマリー・テレーズが捕虜交換によりオーストリアに引き取られる前年、兄夫婦の刑死の翌年に処刑されたことが語られた。その回想の中でマリー・テレーズは「エリザベート叔母さま」と呼んでおり、史実通りの名前に変更されている。 マリー・テレーズ フランス王女。アントワネットの長女。長年、子に恵まれなかったルイ16世とアントワネットの待望の第1子。 史実では2男2女の4人のうち、夭折した妹マリー・ソフィー・ベアトリスを除く3人の中で唯一革命後まで生き残るが、革命の悲劇により女性としての魅力を欠如した大柄で赤ら顔の厳格な女性に成長し、流転の人生を送った。1775年、アルトア伯シャルル(復古王政のブルボン朝最後のフランス国王シャルル10世)の長男アングレーム公ルイ・アントワーヌと結婚し、相思相愛の夫婦だったが子供は出来なかったため、彼女の死によりルイ16世とアントワネットの血統は絶えてしまう。 ルイ・ジョゼフ 王太子(モンセニュール)(ドーファン)。アントワネットの長男。病弱だが聡明な少年で、オスカルに憧れている。脊椎カリエスのため僅か7歳で死去。亡くなる直前、オスカルと遠駆けに行った先でオスカルに愛を告白し、キスしていた。葬儀の際、財務大臣が「国庫は空っぽで葬儀費用が無い」と打ち明け、ルイ16世は銀の食器を売り払って葬儀費用を捻出したが、もはや王室には一国の王太子である彼の葬式を出す費用すらなく「これまでの贅沢の報いだというの!?」とアントワネットは愕然とする。 史実では数名の乳母の1人であるジュヌヴィエーヴ・ポワトリンヌから「結核」を移されてしまう。その後、結核菌が血管に入り込んで血流により運ばれて脊椎に転移したため、三部会会期中に「脊椎カリエス」により8歳の誕生日を迎えることなく7歳の半ばで死亡した。 ルイ・シャルル アントワネットの次男。ノルマンディー公。兄の死後、王太子となる。父王の処刑後、アントワネットと引き離される。作中では市民と陽気に歌ったり楽しそうに笑いながら母や姉のことを忘れていってしまうが、史実では劣悪な環境に置かれて矯激派のエベールにより後見人兼教育係として指名された文盲の靴屋アントワーヌ・シモンに「再教育」という名目で虐待され、わずか10歳で不幸な死を遂げた。(嫡流の男子でもあったため、王政復活の芽を絶つために革命政府の意向で抹殺された可能性もある。) マリア・テレジア アントワネットの母。オーストリア女帝。フランスとの戦争終結のために末娘のアントワネットをフランス王太子妃として送り出すが、彼女の性情を熟知していたので取り返しのつかない過ちを犯したのではと別れ際まで内心迷いを捨てきれなかった。アントワネットの未来を案じており、彼女が次第に贅沢三昧の日々を送るようになった挙げ句、小トリアノン宮に取り巻きだけを連れて閉じこもったことを知ったショックで病に倒れ、長男のヨーゼフ皇帝や臣下の見守る中で亡くなった。 作中では子供全員にとって愛情深き母親だったかのように描かれているが、外交に貢献できないと判断した病弱な次女マリア・アンナには愛情を抱けず酷薄だった。その一方で、4女マリア・クリスティーナを偏愛して恋愛結婚を反対していた夫フランツの死後、彼女にだけは恋愛結婚を許した。作中にある通りに死の間際までアントワネットを案じていた。原作では寝込んだ末に、アニメ版ではいつもの女帝としての装いで玉座に坐して亡くなった。 アルデロス公 スペインの皇太子。 マリア・ルイサ アルデロスの公妻。 マリア・アマリア (en) アルデロスの娘。
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