日露戦争と国体論とは? わかりやすく解説

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日露戦争と国体論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 14:34 UTC 版)

国体」の記事における「日露戦争と国体論」の解説

1904年明治37年1月談判破裂して日露戦争始まった当時としては日本未曾有の大戦争において、愛国気勢熾烈加え国体擁護すべき所以が更に盛んに唱道される。たとえば同年6月日比野寛教育勅語解説書として著した日本臣道論』は、国体に関して次のように論じる。曰く我ら臣民忠孝国体精華である。国体とは何かというと、国が存在すれば必ず国体伴い国家統治主宰力を掌握する人の数により国体異なる。我が帝国君主国体であり、天下大権唯一の聖天子掌握し万民皇室仰いで奉戴する。至忠我ら臣民本願であり、至誠建国太古より綿々として我が民族が独有するところである。皇室献身的奉仕をし、忠勇無二であるのは世界史上に異彩を放つ美点である、と。 日露戦争戦局進んで日本陸戦海戦連勝する国民意気昂ぶり戦勝要因探って国体優秀に及ぶことが盛んになる井上哲次郎1904年明治37年12月付け雑誌日本人』に「日本強大である原因」と題して戦勝国体と関係の深いことを説いて(1)日本民族皇室中心として鞏固な統一成していること、(2)日本民族比較的純粋であること、(3)日本文明今なお壮健であること、(4)一種武士道発達したこと、これは全く皇室中心とする歴史的発達淵源すること、(5)二千数百年の長い歴史有すること、(6)宗教冷淡であり迷信極めて少ないこと、(7)世界文明の粋を集めてまとめあげつつあること、を列挙する日本軍翌年3月奉天陥落させ、5月日本海海戦完勝すると、7月には加藤弘之が「吾が立憲的族父統治政体」と題して講演する曰く、同じ立憲君主国といっても、欧州諸国我が国とは異なる。なぜならば欧州諸国君主は皆尋常君主であるが、天皇はこれと違って日本民族族父であるとともに君主でもあるからだ。我が国建国以来帝室連綿と今日まで続き、しかもこれが日本民族宗家である。多少は他民族混合したが、今日は全く日本民族血統混じって民族になっていない。このようにが国は建国から今日まで日本民族族父たる天皇君位を保つ国であるので、これを立憲的族父統治国(Die Konstitutionelle Patriarchatie)と称するのを最適とする、と。以上のうな加藤所論は、多く国体論者国体尊厳であって強固な理由として第一に挙げる点である。 国体論は不可侵性を強め20世紀初頭までにほぼ定着する。これに挑戦した北一輝国体論及び純正社会主義』は発行禁止処分を受ける。 1907年明治40年8月加藤弘之が『吾国体と基督教』を著す。これは、日露戦争当初から非戦を唱えたキリスト教徒論戦挑むものであり、かつて1889~1890年明治2223年)頃に国家主義者キリスト教徒の間で行われた論争を再び引き起こしたものだが、主客地位逆転したところに時勢変化がある。同書次のように論じる(大意)。 宗教なるものが全て迷信であることは今さら論じるまでもないキリスト教仏教世界であって民族ではないか国家に害がある。人民世界教を信じれば国家支配を受ける以外に世界教の支配も受ける。国家有機体であるからその分子である国民万事国家のために行動すべきなのに、世界教の信者国家のために身を犠牲にすることはあり得ない。つまり国家主義合わない我が国体は、大父である帝室万世統治大権掌握して臣民撫育し、族子である我ら臣民統治受けて臣子としての道を尽くすというに過ぎない。これは世界唯一の国体である。皇祖皇祖大功臣を神として崇拝するのは祖先崇拝である。 仏教輸入され神よ尊い仏を持ち出したので、国体滅びてしまうと当時廃仏論者嘆いた仏教隆盛になると国体を汚すことが少なくなかった天皇三宝仏・法・僧)の奴と称したこと、本地垂迹説設けて神を仏の後身としたことなどが顕著な例である。ただ仏教多少日本同化した。 キリスト教唯一真神なるものを立てそれ以外崇拝物を全て偶像として排斥する。これが日本国体矛盾するのは明らかである。至尊として崇拝すべき天皇の上唯一真神戴くなどということは決し国体の許すところではない。以上。 以上のようにキリスト教排撃する加藤弘之対し世論喧々諤々となり、なかでもキリスト教徒弁難努めた海老名弾正プロテスタント牧師曰く科学主義称する加藤氏の説が全く我が国体と一致するとは考えられない御先祖皇祖)が神として高千穂天降りしたという事進化論矛盾する加藤氏進化論者でありながら人君下等生物後裔であることに言及しないが、大い困惑しているに違いない。神こそは人間以上であるから、神に仕える道と君主仕える道は全く異なる。君主神の命令に反するならば、断然君主背いて神に従うべきである、と。 山路愛山メソジスト派機関紙主筆経験者)いわく、古代より儒教・仏教我が国入って来て結局は我が国利益となった近来キリスト教同様の結果になるだろう。国体生命であるならば、宗教衣服のようなものであり、身体の成長にしたがって衣服様々に変えなくてはならない。国の生命さえ盛んであれば外教輸入されても憂う要はない。かえって国の利益となるだろう。古来仏教キリスト教について随分と反対論があっても我が国体が益々盛大になって存在しているのを見ても明らかである、と。 石川喜三郎ロシア正教会神学者曰く加藤氏我が皇帝の上唯一真神置いて尊崇するのは我が国体に有害であると論じるが、およそ尊崇すべきものは世の中に様々であり、必ずしも上下をいうべきものではない。唯一真神宗教上においてこそ人格的のように説くが、学理的にいえば唯一実在実体などと称するものであってこのような非人格的なものを尊崇することが国体に有害であるならば、たとえば科学法則尊崇することも不都合でないのか。 小山東助キリスト教傾倒する思想家曰く国家進化論題し日露戦争大勝利によって国体論が健全な発展失って無謀な国体論と化してしまった。我が国体の進化外国開化も採ることに起因したものなので、外国から世界教を輸入して国体憂う道理はない、と。 浮田和民熊本バンド曰く聖書全般通じて国体矛盾する論は少しも無い。加藤氏キリスト教国体大害あると主張するが、キリスト教より儒教のほうが有害である。儒教堯舜禅譲平和的な王朝交替)を理想とするからである。孟子民主的傾向が最も有害である。古代において我が国体に合わない儒道や仏動が輸入されたのは、つまるところ我が固有文明だけでは間に合わないからである。我が国には古来祖先崇拝があり、中世以来武士道盛んになったが、これだけでは足りない今日の日本国体族父統治時代過ぎ去っている。台湾人もいればアイヌ人もいるし、さらに朝鮮人満洲人日本人になるかもしれない。ならば今日族父統治論唱えるのは不都合である、と。 亀谷聖馨(仏教学者曰く仏教輸入されてから皇室仏教重んじ、特に聖武天皇仏教廃す時は皇統廃すぞと宣ったように国体仏教の関係は重大であった伝教大師最澄)も王城鎮護標榜して天台宗開きその他に王法為本教理とし立正安国眼目とした。こうして仏教皇室信仰得て国体擁護尽くした、と。 井上哲次郎曰く加藤氏国体論はあまりに窮屈である。我が国体は神武天皇時に定まって以降徐々に進歩発展してきた。国体形式一定不変であるが、その内容複雑な変化経た。これにより仏教同化させたのだから、キリスト教同化させることも出来るはずだ、と。 以上のように加藤弘之の『吾国体と基督教』はキリスト教側だけでなく仏教その他に反駁された。内務省神社局 (1921) によれば加藤弘之国体擁護するためにキリスト教攻撃したというよりも、キリスト教排斥するために国体論を利用した疑いがある。このため、その論を第三者から見ると、国体権威加えず逆に国体煩累及ぼした感じがあるという。 1908年明治41年佐藤鉄太郎海軍軍人)が『帝国国防史論』を著す。同書国体論及し曰く世人あるいは御国体を家族的観念の向上となし、これをシナ思想同一視する者あり。その根底不確実にして、しかも浅薄なるは吾輩嗤うところなり。我が国体は決し家族主義変化にあらずして、絶対位を中心として確立した神来理想的国体なり」と。 1909年明治42年5月佐々木高行(元参議工部卿侯爵)が國學院雑誌において「国体淵源」と題して国民権威認めところを国体と見るべしと論じる。

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