標準偏差 標準偏差の概要

標準偏差

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/13 03:41 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
共通の平均を持つが、異なる標準偏差を持つ標本のヒストグラム例。赤で示された標本の標準偏差の方が青で示された標本の標準偏差よりも小さい。
平均 0, 標準偏差 σ正規分布確率密度関数。この分布に従う確率変数が 0 ± σ の間に値をとる確率はおよそ 68% であることが読み取れる。

母集団や確率変数の標準偏差を σ で、標本の標準偏差を s で表すことがある。二乗平均平方根 (RMS) と混同されることもある。両者の差異については、二乗平均平方根を参照。

母集団の標準偏差

n 個のデータ x1, x2, …, xn からなる母集団を考える。その母集団の平均(または母平均)μ は、次の通りに定義される:

このとき、母平均 μ を使って次式で得られる量 σ2分散(または母分散)と定義する。

この分散の非負の平方根 σ を、母集団の標準偏差と定義する[3]。分散はデータの散らばり具合を表す量であるが、元のデータを平方しているので元のデータや平均値と次元が異なり直接比較することができない。平方根をとると元のデータと同じ次元になるので、分散よりも標準偏差の方が散らばり具合を表す量として便利なことがある[4]

標本の標準偏差

母集団の中から、n 個のデータ x1, x2, …, xn からなる標本を抽出したとする。このとき、標本平均を次式で定義する:

この標本平均を使って次式で定義される量を標本の分散と呼ぶ。

標本の分散の平方根 s を標本の標準偏差と呼ぶ[3]

σ2 を母集団の分散、s2 を標本の分散とすると、

となることが示される。つまり、標本の分散は母集団の分散よりも小さくなる傾向がある[5]。そのため、標本の分散は母集団の分散の不偏推定量ではない。そこで、

を考えると、この量の期待値は母集団の分散に等しく、分散の不偏推定量になっている。こうして定義される u2不偏分散という。標本分散と呼ぶこともある。

u2平方根 u標本標準偏差ということもある。

不偏分散の平方根 u は、標準偏差の不偏推定量ではない。例えば母集団が正規分布に従う場合、標準偏差の不偏推定量 D は次式で与えられる[6]

ここで、Γガンマ関数u2 は不偏分散である。

標本サイズが大きくなれば、標準偏差の不偏推定量 D は、近似的に、平均からの偏差平方和を n − 1.5 で割った値の平方根として求められる[7]

名称の混乱

統計の教科書によっては n − 1 で割ったものが標本分散という名称になっており[8]、用語が混乱して使用されている場合がある。母平均が不明であって、代わりに標本平均を使用する場合には、期待値が母分散となる不偏分散を使用することが多い[9]

英語

英語では不偏分散による標準偏差のことを「sample standard deviation」(標本標準偏差)と呼ぶことが多い。この語はカール・ピアソンによって1893年に導入された[10]。ただし不偏分散による標準偏差を意味する英語の表現には混乱がある。

  • ウィキペディア英語版の「standard deviation」という記事では、不偏分散による標準偏差(平均からの偏差平方和を n − 1 で割った値の平方根)のことを「corrected sample standard deviation」と表記し、平均からの偏差平方和を n で割った値の平方根を「uncorrected sample standard deviation」や「the standard deviation of the sample」と表記している[出典無効]
  • アメリカの Fundamentals of Engineering (FE) の試験問題での「sample standard deviation」は n − 1 で割る方を意味する。
  • アメリカ・ユタ大学のトム・マロイは、統計学の学習者向けウェブページ[11]では、「sample standard deviation」を平均からの偏差平方和を n で割った値の平方根だと解説している。

日本語

日本語の「不偏標準偏差」という語にも混乱がある。日本の大学教授の間でも、不偏分散 u2 の平方根を、不偏標準偏差だと教える大学教員も多いが、標準偏差の不偏推定量 D を不偏標準偏差だと教える教員もいる。

  • 兵庫大学の河野稔によるウェブページ[12]や神戸大学の中澤港によるウェブページ[13]では前者である。
  • 東北学院大学の根市一志による資料[14]では後者である。

このように、同じ用語でも話者によって定義が異なる場合がある。




  1. ^ JIS Z 8101-1:1999, 1.13 分散.
  2. ^ 伏見, p. 364, 第 VII 章 確率と統計 63節 算術平均、標準偏差.
  3. ^ a b 栗原 2011, p. 47
  4. ^ 稲垣 1990, p. 21.
  5. ^ 例えば、標本サイズが 1 の場合、ばらつきがないので標本の分散は必ず 0 となるが、母集団のばらつきは通常 0 ではない。
  6. ^ 吉澤 1989, pp. 78–79.
  7. ^ Brugger 1969, p. 32.
  8. ^ 例:(東京大学教養学部統計学教室編 1991)。
  9. ^ 分散または標準偏差の図による解説と具体例は、(村瀬, 高田 & 廣瀬 2007, pp. 52–53)などを参照。
  10. ^ Earliest Known Uses of Some of the Words of Mathematics (S)”. 2016年1月30日閲覧。
  11. ^ Estimating Parameters Web Page
  12. ^ 健康統計学-散布度
  13. ^ 高崎経済大学非常勤講義 第4回「記述統計(2):代表値」
  14. ^ 標準偏差の不偏性





標準偏差と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

「標準偏差」に関係したコラム

  • FXやCFDの標準偏差チャネルとは

    FXやCFDの標準偏差チャネルとは、線形回帰線から一定の標準偏差分を乖離した直線のことです。標準偏差チャネルは、線形回帰線からプラスに乖離した直線と、マイナスに乖離した直線の2本の線を描画します。下の...

  • FXのボリンジャーバンドとは

    FX(外国為替証拠金取引)のボリンジャーバンド(略称、ボリバン)とは、現在の為替レートが高値圏にあるか安値圏にあるかを判断するためのテクニカル指標です。また、ボリンジャーバンドはトレンドの転換点を見つ...

  • 株式分析のヒストリカル・ボラティリティとは

    株式分析のヒストリカル・ボラティリティ(Historical Volatility)とは、過去の株価のデータから、将来の株価の変動率を求めるテクニカル指標のことです。ヒストリカル・ボラティリティは、H...

  • FXのチャート分析ソフトMT4のStandard Deviationの見方

    FX(外国為替証拠金取引)のチャート分析ソフトMT4(Meta Trader 4)のStandard Deviationの見方について解説します。Standard Deviationは、過去の為替レー...

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「標準偏差」の関連用語

標準偏差のお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング



標準偏差のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの標準偏差 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2019 Weblio RSS