大和言葉 大和言葉の概要

大和言葉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/13 06:46 UTC 版)

語種 > 大和言葉

概要

現在「大和言葉」といえば一般には、漢語外来語を除いた日本語の固有語を指すようになっている。また「和語」もこの意味で扱われることが多いが、学術上では区別されることもある。すなわち、「大和言葉」といった場合には日本(やまと)に大陸文化が伝来する以前の、日本列島で話されていた言語そのものを指すというニュアンスがあるのに対し、「和語」とは、漢語・外来語とともに、語彙の種別を表す用語としての側面が強調される。また「やまとことば」が自己言及的であるのに対し、「和語」は漢語であり、そうではないといった違いもある。

ただし後述するように、「やまとことば」という語は古くは「和歌」の意味で用いられ、また「女房言葉」の意味で用いられることもあった。

大和言葉の特徴

語彙

漢語や外来語と動詞「する」からなる複合語を除くほとんどの動詞形容詞、および、全ての助詞が大和言葉である。みる(見る)、はなす(話す)、よい(良い)、が(主格の助詞)、うみ(海)、やま(山)、さくら(桜)などがあげられる。

音韻

大和言葉の音韻には以下の特徴がある。

  • 語頭に濁音半濁音が来るものは一部の語彙に限られる。「だく(抱く)」、「ばら(薔薇)」等の場合、古くは語頭にイ・ウ・ムなどを持つ語形があり、「いだく」、「いばら・うばら・むばら」という形があった。その他「ビュービュー」「ピカピカ」などのオノマトペ、動植物名(ブリ、ブナなど)、清音から交替して作られたもの(ジジ<チチ、ババ<ハハ、ガニマタ<蟹・股など)、概してマイナスの意味を持つ語(ズルイ、ブツ(打つ)など)がある。
  • 語頭にラ行音が来ない。これはアルタイ諸語と共通する特徴である。古語の「らうたし」、「らうがはし」のラウは漢語と推定される。

また合成語が作られる際、前の語の母音が変化することがある。き + たつ(木 + 立つ) → こだち(木立)、さけ + たる(酒 + 樽) → さかだる(酒樽)など。ただし、「こ」「さか」が古語である。[1][2]

大和言葉の漢字依存

大和言葉は隣国の中国から漢字を借り入れたことによって微妙な意味の差を漢字で表現できるようになった。例えば、「なく」を漢字で書くと、「泣く」、「啼く」、「鳴く」のどれかを使うことによって微妙な意味の差を表現できる[3][4]。一方で、中国文学者の高島俊男は、大和言葉に漢字を当てるのはおかしく、例えば、「とる」の意味は大和言葉では1つなのであり、「取る」、「採る」、「捕る」、「執る」、「摂る」、「撮る」と書き分けるのは無意味であると主張している[5]

民俗学者柳田國男は、大和言葉にどのような漢字を書くのか尋ねることを「どんな字病」と名付け、警告した[6]。最近はパソコンですぐに難しい漢字が出てくるためになおさら安易に漢字を多用する傾向があるといわれている[7]

国文学者中西進は、漢字依存が大和言葉のもつ本来の意味を失わせてしまい、例えば、「かく」に「書く」、「描く」などと漢字を変えて区別するようになったことにより、縄文土器を製作する際、柔らかい粘土を先の尖った物で引っ掻いて模様を描くことからわかるように、掻いて表面の土や石を欠くという「かく」の本来の意味がわかりにくくなったと指摘している[8]


注釈

  1. ^ 「固有語」や「和語」の意味で『日本国語大辞典』(第2版)に挙げられた用例はすべて中世以降のものである。

出典

  1. ^ 「こ」の検索結果 - 広辞苑無料検索 (sakura-paris.org) https://sakura-paris.org/dict/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91/prefix/%E3%81%93 2022年5月8日閲覧。
  2. ^ 「さか」の検索結果 - 広辞苑無料検索 (sakura-paris.org) https://sakura-paris.org/dict/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91/prefix/%E3%81%95%E3%81%8B 2022年5月8日閲覧。
  3. ^ 山口仲美 『日本語の歴史』(初版)岩波書店岩波新書〉 (原著2006年5月19日)、p. 211頁。ISBN 4-00-431018-0 
  4. ^ 中西 2003, p. 215.
  5. ^ 高島俊男 『漢字と日本人』(初版)文藝春秋文春新書〉 (原著2001年10月20日)、pp. 86-88頁。ISBN 4-16-660198-9 
  6. ^ 中西 2003, p. 15.
  7. ^ 中西 2003, pp. 215–216.
  8. ^ 中西 2003, pp. 216–217.
  9. ^ 『源氏物語 一』(『新日本古典文学大系』19、岩波書店、1993年)より。


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