古い文献での用例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/06 05:16 UTC 版)
『源氏物語』の「桐壺」の巻には、「やまとことのは」(大和言の葉)について次のような例が見られる。「やまとことば」とする用例も「東屋」の巻にあるが意味は同じである。 このごろ明暮れ御覧ずる長恨歌の御絵、亭子院のかゝせ給て、伊勢、貫之に詠ませたまへる、大和言の葉をも唐土(もろこし)の歌をも、たゞその筋をぞ枕言(まくらごと)にせさせ給ふ。 桐壺の更衣に先立たれた帝が、白居易作の『長恨歌』の内容をあらわした絵を明け暮れ眺めていたということであるが、ここではその絵に添えられた和歌を「大和言の葉」と称している。これはこの文脈であれば「言の葉」だけでも和歌の意味で通じるが、「唐土の歌」すなわち漢詩と対照させるための表現である。つまり、日本のものであろうと唐土のものであろうと、ということである。このように平安時代までの「やまとことば」という語には「日本語で使われてきた固有語」という意味の用例はない。なお、現在「やまとことば」と同意義とされる「和語」についても、やはり「和歌」の意味で使われた例が見られる。 しかし時代が下ると、「やまとことば」は「和歌」という意味から転じて「雅語」の意味で使われるようになり、さらに宮中や幕府などの上流階級の婦女子が使う言葉を指すようになる。これを「御所言葉」(女房言葉)ともまた「女中詞」とも称した。この雅語や女房言葉を意味する「やまとことば」に関わるものとして、室町時代末期か近世のごくはじめには成立していたといわれる『大和言葉』という辞書がある。これは本来和歌や連歌を詠む際の雅語を集めたものであったが、次第に女性が使う言葉の用例、すなわち女房言葉を集めた教養書として女性に読まれるようになった。後にこの『大和言葉』の内容を増補した『増補大和言葉』というものも出版されており、江戸時代末期に至るまで版を重ねている。
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