カウンセリング 対比される概念

カウンセリング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 10:22 UTC 版)

対比される概念

心理療法

心理カウンセリングが精神心理的な相談援助そのものであるのに対し、心理療法は、その相談援助を通じ、クライエントが抱える種々の精神疾患心身症、精神心理的問題・不適応行動などに適応的な変容を図ることを目的とする理論と技法の体系である。したがって心理療法は、心理カウンセリングに含まれる概念のひとつに位置づけられている。精神療法心理セラピーサイコセラピーなどとも呼ばれる[23]

心理コンサルテーション

心理カウンセリングが自発的な理解や洞察への到達を目的のひとつとしているのに対し、心理コンサルテーションは具体的な対応策や考察を提供するものである。対象とされるのは、クライエント本人とは別に、「家族における保護者」「学校における教職員」「職場における管理職」など、クライエントが所属するコミュニティにおけるクライエントにとってのキーパーソン、および他の専門職である[24]

すなわち、心理カウンセリングが「クライエントへの直接的援助」であるのに対し、心理コンサルテーションは「クライエントへの間接的援助」であり、臨床心理学的地域(コミュニティ)援助に分類される。ただし、対応策や考察を提示するのは、あくまでも専門的見解の一端を示すためであり、それらに基づく対応を強要するためではない。心理職が示す専門的見解を通じ、相対する問題への理解を深め、共通理解の下でコミュニティ全体が主体的・効果的な対応をとれるように支援を行う専門業務である。心理コンサルティングとも呼ばれる[24]

なお、クライエント本人に対しても具体的な対応策や考察を提供する援助法は心理教育と呼ばれる[25]。心理教育は、抱える問題の性質やクライエントが置かれている環境、あるいは臨床的な状態などから導かれた臨床心理査定の結果、心理カウンセリングによる自発的な理解や洞察への到達を促すよりも、具体的な対応策や考察を提供した方がクライエントのメンタルヘルスに資する状況にあると判断される場合に選択され、社会生活・対人関係などに際して特徴的な困難を抱えるクライエントや、学校復帰・職場復帰などに際して不適応予防的な援助が必要となるクライエントなどに対して用いられる[25]

メンタリング

心理カウンセリングが自発的な理解や洞察への到達を目的のひとつとしている点と、メンタリングが自発的な成長・発達を促す点は両者の類似するところである。一方、取り扱う題材は、心理カウンセリングが精神疾患心身症、精神心理的問題・不適応行動などの援助・改善・予防・研究、あるいは人々の精神的健康の回復・保持・増進・教育と多岐にわたるのに対し、メンタリングは人材育成の分野に特化している。したがって、メンタリングはキャリア開発の文脈で用いられることが多い。また、心理カウンセリングにおける相談援助は、臨床心理学を学問的基盤としたものであるのに対し、メンタリングは必ずしもそうとは限らず、日常的・経験的・人間的な相談援助も含まれる。

コーチング

心理カウンセリングとの類似点・相違点はメンタリングとほぼ同様である。コーチングもまた、人材育成の分野やキャリア開発の文脈で用いられることが多い。したがって、コーチングとメンタリングは内包する意味合いが重なることが多いが、コーチングの方がより目標・目的指向的に用いられることが多く、特定のスキル向上や成果などを目指す場合がある。

人生相談

抱える問題・悩みなどに対し相談を行うという性質は似ている。しかし、人生相談という言葉の指す範囲が広いため、「相談を受けた側」の者が一般の人間であることが多く、何らかの専門性を有しているとは限らない。専門性を有する者への相談であったとしても、心理カウンセリングや心理コンサルテーションの様に、一定の原則・構造を伴わないものは人生相談の範疇として区別することがある。また、「相談を受けた側」から「相談を持ちかけた側」へ、日常的・経験的・人間的なアドバイスが行われることが通例である。なお、このアドバイスは、「相談を受けた側」の者が自身の半生において感じた主観的教訓であることがあり、「相談を持ちかけた側」が抑うつ傾向などの特定の状態にある様な時は、アドバイスにより逆に苦しめることがあることが知られている。したがって、独断で性急なアドバイスなどは行わず精神科医などの医師臨床心理士のような専門家との相談を検討するなどの配慮が必要となる。


  1. ^ Q5:カウンセリング効果の実際は?:専門家が事例と共に回答~職場のメンタルヘルス対策Q&A~. “Q5:カウンセリング効果の実際は?”. 2022年3月25日閲覧。
  2. ^ weblio辞書 (2014年). “大辞林 - カウンセリング”. 2020年9月24日閲覧。
  3. ^ a b c 日本臨床心理士資格認定協会 (2009年). “臨床心理士の専門業務”. 2010年2月2日閲覧。
  4. ^ a b American Psychological Association (2010年). “Ethical Principles of Psychologists and Code of Conduct”. 2010年12月1日閲覧。
  5. ^ a b 東京学芸大学 (2005年). “カウンセラーの職業倫理について”. 2010年12月2日閲覧。
  6. ^ 全国保健・医療・福祉心理職能協会 (2005年). “国家資格化の必要性”. 2010年2月15日閲覧。
  7. ^ 警察庁 (2009年). “平成20年中における自殺の概要資料” (PDF). 2010年2月1日閲覧。
  8. ^ a b 厚生労働省 (2008年). “平成20年(2008) 患者調査の概況 - 2 受療率” (PDF). 2010年2月1日閲覧。
  9. ^ 文部科学省 (2008年). “参考図表4 全児童,生徒数に占める「不登校」の比率” (PDF). 2010年2月1日閲覧。
  10. ^ 文部科学省 (2010年). “平成21年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果” (PDF). 2010年12月1日閲覧。
  11. ^ 労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2019年12月17日閲覧。
  12. ^ 文部科学省 (2004年). “スクールカウンセラーについて”. 2010年2月20日閲覧。
  13. ^ 国民生活センター (2010年). “消費者からの相談事例 - 内容に納得できないと解約を申し出た自己啓発用教材”. 2010年3月2日閲覧。
  14. ^ 法テラス (2010年). “法律関連用語集 - 詐欺”. 2010年2月9日閲覧。
  15. ^ 法テラス (2010年). “法律関連用語集 - 錯誤”. 2010年2月25日閲覧。
  16. ^ モンスター心理カウンセラー事例集、心の問題がむしろ悪化!?”. ダイヤモンド・オンライン. 2021年8月7日閲覧。
  17. ^ a b 日本臨床心理士資格認定協会 (2009年). “臨床心理士の職業倫理”. 2010年2月2日閲覧。
  18. ^ 日本臨床心理士資格認定協会 (2009年). “臨床心理士資格認定の実施 - 受験資格基準”. 2010年2月1日閲覧。
  19. ^ 学会連合資格学校心理士認定運営機構 (2009年). “資格取得 - 申請条件”. 2010年2月1日閲覧。
  20. ^ 臨床発達心理士認定運営機構 (2009年). “資格をとるには?”. 2010年2月27日閲覧。
  21. ^ a b c d 国民生活センター (2010年). “消費者からの相談事例 - 学習・おけいこ”. 2010年2月24日閲覧。
  22. ^ 文部科学省 (2003年). “「ディプロマ(ディグリー)・ミル」問題について”. 2010年1月30日閲覧。
  23. ^ Yahoo!辞書 (2010年). “大辞林 - 心理療法”. 2010年12月1日閲覧。
  24. ^ a b 心理学用語集 (2010年). “コンサルテーション”. 2010年12月1日閲覧。
  25. ^ a b 内閣府 (2007年). “政策統括官 共生社会政策担当 - 青少年育成 - YA養成プログラム 第5章 第7節 5 心理教育”. 2010年12月1日閲覧。


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