月
★1a.月旅行。
『日月両世界旅行記』(シラノ・ド・ベルジュラック)第1部「月世界諸国諸帝国」 「私」はバネ仕掛けの器械に火力を加えて、月まで飛んだ。月世界には、かつてアダムとエヴァの住んだ楽園があり、現在はエリヤやエノクが住んでいた。「私」は楽園を追われ、太陽から移住して来た四つ足の生き物たちの間でしばらく暮らした後に、四つ足の生き物の1人に抱かれて、地球まで飛び戻った。
『月世界へ行く』(ヴェルヌ) 186X年11月30日。3人乗りの月ロケットが、フロリダから発射された。ロケットは月面に着陸せぬまま、月の周囲を永遠に回る衛星になりかかったので、月に降下するように軌道を修正した。するとロケットは、逆に地球へ向けて落下し始め、12月12日に太平洋に着水した。
『ほらふき男爵の冒険』(ビュルガー)「ミュンヒハウゼン男爵自身の話」 「ワガハイ(ミュンヒハウゼン男爵)」は熊を追い払おうと銀の手斧を投げたが、ねらいがそれ、手斧は空高く上がって月まで飛んで行った。「ワガハイ」は、成長の速いトルコ豆の種を1粒まく。芽はみるみる高く伸び、三日月の片端に巻きついたので、「ワガハイ」は豆のつるを攀じ登って、月まで手斧を取りに行った。
『ほらふき男爵の冒険』(ビュルガー)「海の冒険」第10話 「ワガハイ(ミュンヒハウゼン男爵)」が太平洋を航海中、大暴風雨のために、船が空中高く吹き飛ばされた。高空で新たな風が起こり、帆がふくらんで、船は猛スピードで雲の上を6週間航行し続け、ついに月に到着した。月には巨人たちが住んでおり(*→〔死体消失〕4)、折しも、太陽と戦争しているところだった。月の王は「ワガハイ」に将校を提供したが、「ワガハイ」はこれを辞退した。
『本当の話』(ルキアノス) 「私」は50人の若者たちとともに船に乗り、航海に出る。つむじ風が起こって船を巻き上げ、船は空を7日7晩翔(かけ)って、8日目に月に到着した。月には住民がおり、エンデュミオンが王だった(*→〔長い眠り〕3)。月は太陽と交戦中で、「私」もまきこまれて捕虜になったりしたが、やがて月と太陽の間に講和条約が結ばれる。「私」は月の住民たちの変わった生態を観察した後、船で地球へ戻った。
★1b.月への逃亡。
『捜神記』巻14-12(通巻351話) ゲイが西王母から不死の薬をもらったが、妻嫦娥はそれを盗んで月へ逃げた。
★2.十二個の月。
『山海経(せんがいきょう)』第16「大荒西経」 帝・俊の妻である常羲が、12個の月を産んだ。女がいて、12個の月に産湯をつかわせている〔*もとは絵があって、その説明文と考えられている〕。
*10個の月→〔太陽〕3cの巨人グミヤー(中国・プーラン族の神話)。
『金色夜叉』(尾崎紅葉) 1月17日の夜。月下の熱海海岸で間貫一は、鴫沢宮を「富山唯継の所へ嫁に行くのか」と、問い詰める。貫一は、「来年の今月今夜、再来年の今月今夜、10年後の今月今夜・・・・、一生僕は今月今夜を忘れぬ。来年の今月今夜の月を、僕の涙で必ず曇らせて見せる」と言い、激昂して宮を蹴り倒し、去って行く。
『サテュリコン』(ペトロニウス)「トルマルキオンの饗宴」 夜明け前の輝く月の光の下、ニケロスの知り合いの兵士は狼に変身した→〔狼〕2a。
『目羅博士』(江戸川乱歩) 月の光は冷たい火のような陰気な激情を誘発し、人の心を狂わせる。目羅博士は月夜をねらい、蝋人形を用いて3人の男を首吊り自殺させる。月光のもと、ぶらさがる蝋人形を見た被害者たちは、それを美しいと思い、「自分はあそこにいるのだ」と錯覚して、首を吊るのだった。
★4b.月を見ること・月の光に照らされることは、不吉であると考えられた。
『源氏物語』「宿木」 8月16日の夜、匂宮は二条院の中の君に「1人で月を見てはいけない」と言い置き、夕霧の六の君との婚儀のため六条院に出かける。中の君は思い乱れて夜更けまで月をながめ、老女房が「月見るは忌み侍るものを」と嘆く。
『更級日記』 菅原孝標女が17歳の年の5月1日、姉が子を産んで死去した。形見の幼児を孝標女が左右に寝かせると、板屋の隙間から月の光がさし、幼児の顔に当たるのが不吉だったので、1人を袖でおおい、もう1人を抱き寄せた。
『竹取物語』 ある年の春のはじめから、かぐや姫は月を見てもの思いをするようになった。家人が「月の顔見るは忌むこと」と制止したが、人のいない時に月を見ては、泣いた。その年の8月15夜に、かぐや姫は昇天した。
『絵本百物語』第42「桂男(かつらをとこ)」 月面に隈(くま)があり、俗に「桂男」という。これを長く見つめていると、桂男は手を出して、見る人を招く。招かれた人は命が縮まる、と昔から言い伝えられている(*月には桂の大木が生えている、との伝承もある→〔繰り返し〕1の『酉陽雑俎』巻1-33)。
★5.月から手紙をもらう。
『懶惰の歌留多』(太宰治)「に」 あの夜、「私」は死のうと思い、酔いどれて魔窟の一室にころがりこんだ。真っ暗な部屋で眼をさますと、枕もとに真白い角封筒が1通、きちんと置かれていた。手を伸ばして取ろうとすると、むなしく畳をひっかいた。それは月かげだった。カアテンの隙間から月光がしのびこんで、真四角の月かげを落としていたのだ。「私」は月から手紙をもらった。言いしれぬ恐怖であった。
*月の光を、白い布に見間違える→〔わざくらべ〕1bの石見国布引山(高木敏雄『日本伝説集』第21)。
*月の光を、雪や霜に見間違える→〔見間違い〕6の『なめとこ山の熊』(宮沢賢治)。
*月の光を浴びた白狐が、白人女性に見える→〔温泉〕5の『白狐の湯』(谷崎潤一郎)。
★6.空の月に追いかけられる。
『一千一秒物語』(稲垣足穂)「友だちがお月様に変った話」 ある夜「自分」は、友だちと散歩しながらお月様の悪口を云い、横を向いたら、友だちはお月様になっていた。逃げると、お月様は追っかけて来た。曲り角でお月様は「自分」を押し倒して、その上をころがって行った→〔板〕3b。
『笑う月』(安部公房) 「ぼく」は、笑う月に追いかけられる夢を繰り返し見た。小学生の頃から、半年か1年に1度、かれこれ30年にわたって、笑う月におびやかされた。それは直径1メートル半ほどの、オレンジ色の満月で、地上3メートルばかりのところを、ふわふわと追いかけてくる。「花王石鹸」の商標を正面から見たような顔が、くっきりと掘り込まれていた。
『パンチャタントラ』第3巻第1話 象の群れが湖へ水を飲みに来て、周辺の兎たちが踏みつぶされる。1匹の兎が「私は月世界から遣わされた兎だ」と称し、「月の神様の従者である兎たちが殺されたので、月の神様はお怒りである。もう湖に来てはならぬ。月の神様は今、湖水の中で瞑想をしておられる」と象の王に告げる。象の王は恐れ、湖水に映る月を拝んで、去る。
『井戸の中の月』(イギリスの昔話) 10人のアイルランド人が井戸に映る月を見て、「チーズだ」と思う。数珠つなぎになってそれを取ろうとするが、一番上の男が力を入れようと、両手に唾を吐きかけるために手を放したので、9人は井戸に落ちる。一番上の男も、「おれの分を食っちゃずるいぞ」と言って井戸に飛び込み、10人全員溺れる。
『ゑんがく』(御伽草子) 池の面に映る月を見て、水底の月を取ろうと千匹の猿が手に手を取り合い、古木にぶらさがる。枝が折れて猿たちは池に落ち、皆溺れ死んだ。それより、そこを「猿沢の池」という。
李白の伝説 唐代の詩人李白は、自らを「酒中の仙」と称したほどの酒好きだった。彼は酔余の果て、水に映る月影をとらえようとして溺死した。
*李白と月→〔見間違い〕8の『秋五話』(稲垣足穂)「詩をつくる李白」。
★7c.空の月を取る。
『一千一秒物語』(稲垣足穂)「AMOONSHINE」 Aが竹竿の先に針金の輪をつけて、夜空の三日月を取った。それをサイダーの入ったコップへ放りこんだら、紫色の煙が立ち昇った。窓外を見ると、三日月はあいかわらず夜空にかかっている。コップの三日月は消え、サイダーが少し黄色くなっていた。Aはサイダーを飲み干してしまった〔*→〔星〕6bの『醒睡笑』巻之1「鈍副子」16、長い棹で星を取ろうとする物語の変型〕。
『黄漠(こうばく)奇聞』(稲垣足穂) ある日の宵、バブルクンドの王は、西空にかかる新月(三日月)が爽やかな光を放って、王の新月の旗じるしを見下ろしているのに気づいた。王は「空の新月を、我が旗につけよう」と、乗馬の一隊を率いて西へ向かう。岩山に沈みかけた三日月を槍の穂先にひっかけて地上へ落とし、青銅の箱に納めて、王はバブルクンドへ帰還する。王都は廃墟と化していた。箱の中から煙が立ち昇り、再び空に新月が輝いた。
『柔らかい月』(カルヴィーノ) Qfwfq氏が、何百~何千世紀も前を追憶して語る。「その頃も文明があり、摩天楼があった。ある夜、私は、未知の天体が近づいて来るのに気づいた。天文台に勤めるシビルは、『あれは地球の衛星(=月)になるのよ』と言った。月は柔らかく、蝋の滴(したた)りのようなものが無数に発生し、地球に向かって伸びてくる。それらは柔らかい隕石となって一晩中降りそそぎ、全地球を覆いつくした。現在の地球の表面は、すべて月なのだ」。
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