わざくらべとは? わかりやすく解説

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わざくらべ

★1a.名手どうしが、わざを競う

歌行燈泉鏡花若き能楽師恩地喜多八叔父とともに伊勢訪れた時、古市按摩で宗山と名乗る謡の名人がいると聞き叔父内緒で宗山と芸くらべをする。喜多八絶妙な拍子打って宗山の謡の呼吸崩し、声を出せなくなった宗山に侮蔑言葉浴びせる。宗山は憤って縊死する。

『今昔物語集』24-5 絵師川成飛騨の工(たくみ)は、互いに腕前競う仲だった。飛騨の工は、新築の堂に絵師川成招いたが、その堂は四面の戸が閉じた開いたりして、どうしても中に入れないよう造ってあった。絵師川成困惑し飛騨の工は大笑いした。その仕返し絵師川成は、自家の襖に本物そっくり腐乱死体描き、それを飛騨工に見せておびえさせた。

★1b.名手女神が、わざを競う

石見国布引山高木敏雄日本伝説集』第21布引山女神が「私は1日1夜に布を織って山を巻こう」と言い飛騨の匠(たくみ)が「自分1日1夜に寺を建てようと言って互いのわざを競う飛騨の匠は、夜明け近くなっても寺が出来上がらず気を揉んで山の方を眺める。すると、早くも布が織れたらしく、山は一面白くなっていた。飛騨の匠は「もう駄目だ」と思い勝負諦めた。実は、白い布と見えたのは月の光だった(石見国布引)。

月の光を、白い封筒見間違える→〔月〕5の『懶惰の歌留多』(太宰治)。

月の光を、見間違える→〔見間違い〕6の『なめとこ山の熊』(宮沢賢治)。

『変身物語』オヴィディウス)巻6 機織り上手の娘アラクネが「女神ミネルヴァ(=アテナ)様も私とわざを競われたらよいのだ」と言い怒ったミネルヴァアラクネとの間に機織り競技が行なわれるアラクネミネルヴァ劣らぬ美し織物を織るので、ミネルヴァアラクネの額を打つ。アラクネ縊死し、蜘蛛化す〔*この神話にもとづく荒絹志賀直哉)では、機織り競技はなく、山の女神が、機織り娘荒絹と牧童阿陀仁の恋に嫉妬して荒絹蜘蛛のごとき姿に変えた、とする〕。

★1c.予言者どうしが、わざを競う

ギリシア神話アポロドロス摘要6章 予言者カルカスが、野生無花果いちじく)の木を見て「実がいくつあるか」と問い予言者モプソスが「1万と1メディムノス」と正しく答えた次にモプソスが、孕んでいる1頭の牝豚を見て腹の中に何匹子豚がいるか」と尋ねたが、カルカス無言だった。モプソスは「10の子豚がおり、そのうちの1匹は雄で、明日生まれるだろう」と言いそのとおり実現したので、カルカス気落ちして死んだ

★2.幻術などを競う

『今昔物語集』1-9 大勢外道舎利弗とが、王の前で術くらべをする。外道たちは、大樹洪水大山青龍・大牛・大夜叉現じ舎利弗攻撃するが、舎利弗は、風・大象・力士金翅鳥獅子毘沙門出しことごとく打ち勝つ。こうして、仏法優れていることが広く認められた。

『西遊記』百回本第45回 虎の精の化身である虎力大仙三蔵法師が、雨乞いの術くらべをする。虎力大仙呪文に応じて、風が吹き湧いたので、孫悟空空中飛び風・雲の神や司る龍王に、「妖怪協力するな」と命ずる。虎力大仙雨乞い失敗し次いで三蔵法師が経を念ずると、悟空合図龍王大雨降らせた。

用明天王職人鑑初段 敏達天皇の時、仏道尊ぶ花人親王外道奉ずる山彦王子争いそれぞれの経巻火をつけると、仏典焼け外道の書は焼けなかった。しかし花人親王祈りに応じて焼け残り巻軸から7千余巻の経文浮かび釈迦如来の姿が現れて、如来肉髻から発する光が外道の書を灰燼となした。

*→〔雨乞い〕1の『列王紀』上・第18章・〔〕3の『出エジプト記第7章

★3.変身くらべ。二者互いにさまざまなものに変身しつつ闘う

『西遊記』百回本第61回 牛魔王が、こうのとり・黄白鶴じゃこうじか大豹大熊次々変身し、それに対抗して孫悟空も、海東青1種)・烏丹鳳・虎・獅子大象と姿を変えて激しく闘う天神たちが皆悟空味方して牛魔王取り囲み牛魔王逃げ場失って降参する

泥棒名人とその大先生グリム)KHM68 泥棒大先生のもとで魔法習った弟子が馬になり、彼の父親がその馬を百ダーレルで大先生に売る。馬は雀になって逃げ出すが、大先生も雀になって追い、戦う。負けた大先生入ってになり、弟子になってまた戦う。大先生雄鶏になると弟子になり、雄鶏の頭をかみきってしまう。

★4.人間化けくらべ。

おさん狐伝説おさん狐」と呼ばれる美しい娘に化け野道を歩く能役者前に現れる能役者相手だと気づいて鬼の面をつける。すると、おさん狐も鬼に化ける能役者が翁の面をつけると、おさん狐老人になる。能役者次々に面を付け替えおさん狐もそれに合わせて変身するが、とうとう降参して、「化け方を教えてほしい」と頼む(広島市中区江波周辺)。

★5.けちくらべ。

しわい屋落語) けちな男が住む家へ、ある夜、もう1人のけちが、けちくらべに訪れる。主のけちは、明かり節約して真っ暗な中に、裸で座っている。頭上には、天井からたくあん石細引き吊るしてあり、「いつ石が落ちて来るかと、ハラハラして汗をかいているので寒くない。だから着物いらないと言う。客のけちは、「とてもかなわない」と降参して帰る

*「天上から吊るしたたくあん石」は、ダモクレスの剣故事連想させるダモクレスは、僭主ディオニュシオス王をうらやんでいた。ある時、王はダモクレス宴会招き、王の席に座らせた。その頭上には、刃を下に向けた剣が、1本の毛で吊るされていたので、ダモクレスは王の地位の危険であることを悟った

ほらふきくらべ→〔嘘〕8の『てんぽ競べ』(昔話)。




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