蒸溜所
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「ジャパニーズ・ウイスキー」の記事における「蒸溜所」の解説
ジャパニーズ・ウイスキーの製造はスコッチ・ウイスキーの製造方式を再現するというところから始められた。竹鶴などのジャパニーズ・ウイスキーの先駆者たちはスコッチ・ウイスキーの製造過程を学び、その製法を日本で再現しようと多くの苦労を重ねた。日本初の蒸留所が造られた山崎は経済的な制約があり、より便利な場所に建設することが重視されたが、余市は特にその地形や気候がスコットランドに似ているため、蒸留所の設置場所として選定された。北海道厚岸町に蒸留所を建てた堅展実業もスコットランドのアイラ島に似た風土から立地を決めたが、スコットランドよりは年間の寒暖差は大きく、熟成樽の隙間から蒸散して原酒が減る「天使の分け前」がスコットランドの2倍近いものの、熟成は速いという。 日本にある蒸留所のうち、主なものを以下、会社別に挙げる。 サントリー山崎蒸溜所(大阪府三島郡島本町) 白州蒸溜所(山梨県北杜市白州町) 知多蒸溜所(愛知県知多市)- グレーンウイスキー専業。サントリー知多蒸溜所株式会社 ニッカウヰスキー - アサヒグループ余市蒸溜所(北海道余市郡余市町) 宮城峡蒸溜所(宮城県仙台市) キリンディスティラリー - キリン系列富士御殿場蒸溜所(静岡県御殿場市) 宝酒造松戸工場(千葉県松戸市) 白河工場(閉鎖)- 旧大黒葡萄酒株式会社白河工場。2003年閉鎖、松戸へ移転。 本坊酒造マルス信州蒸溜所(長野県上伊那郡宮田村) マルス津貫蒸溜所(鹿児島県南さつま市加世田津貫) - 2016年11月、同社創業の地に新設された蒸溜所。熟成を経た製品の出荷は2020年を予定。 山梨蒸溜所(閉鎖) - 1960年~1981年稼働 鹿児島蒸溜所(閉鎖) - 1953年~1984年稼働 若鶴酒造三郎丸蒸溜所(富山県砺波市) - 富山の日本酒メーカーとして名高い若鶴酒造は、1952年にはウイスキー製造免許を取得し、自社で蒸留を行ってきた。製造を開始した翌年の1953年に製造設備全てが焼失したが、半年もかからずに再建。以降小規模ながらウイスキー製造を続けてきたが、施設全体の老朽化が著しく、これを見学可能な蒸留所として改修するため、2016年にクラウドファンディングを利用した資金集めを行い、これに成功した。世界初となる銅と錫の合金を使用した国産の鋳造ポットスチル「ZEMON」を2機設置、稼働させている。見学ラインは、実際の製造工程を機器の間近で見ることができる様に整備されている。クラウドファンディングにより整備されたゲストハウスは見学者の他、地域の会合などに使用できる様に解放されており、また、オンライン配信の機材を備えリモート見学会などのイベントに活用される。 江井ヶ嶋酒造江井ヶ嶋酒造ウイスキー蒸溜所(兵庫県明石市) - 江井ヶ嶋酒造のウイスキー製造開始は早く、1919年には製造免許を取得している。現在の蒸溜所は1984年に新設したもの。 ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所(埼玉県秩父市)- 2004年に閉鎖した東亜酒造羽生蒸溜所(埼玉県羽生市)の原酒を引き取って 創業。秩父市に新たに蒸溜所を作り、2008年2月に稼働。 秩父第2蒸溜所(埼玉県秩父市)- 最初の蒸溜所の近隣に設置された蒸溜所。2018年4月着工、2019年10月本格稼働開始。当初は秩父蒸溜所の5倍の生産量だが将来的に2シフト制にして10倍にする。 宮下酒造岡山蒸溜所(岡山県岡山市)- 独歩ビールなどで有名な宮下酒造が創業100周年を記念し、本社工場(岡山県岡山市中区)内でウイスキーの製造を2012年6月から開始している。当初は焼酎用の「ステンレス製蒸留器で試験製造を行っていたが、2015年7月にウイスキー用の銅製ポットスチルを導入し、本格稼働させた。その後2017年には蒸溜所を同社直営観光酒蔵「酒工房 独歩館」横へ移転した。製品出荷は2018年 で、限定販売の「シングルモルトウイスキー岡山」および早期熟成酒「新歩」が販売されている。 笹の川酒造安積蒸溜所(福島県郡山市) - 笹の川酒造は戦後すぐにウイスキーの販売を開始し、1980年代の地ウイスキーブームの際には蒸溜所を設け稼働させていたが、ブーム後の需要低迷により1990年代に蒸溜所は閉鎖された(それまでに製造していたウイスキーの販売は継続)。しかしウイスキー需要が回復してきたため、2016年に設備を一新し、蒸留を再開した。 木内酒造八郷蒸留所(茨城県石岡市) - 「常陸野ネストビール」などの地ビールで有名な木内酒造は、2015年10月5日、額田醸造所(茨城県那珂市)内にウイスキーの製造プラントを新設し、製造免許を取得した。2016年2月、製造を開始した。さらに事業拡大をめざし、石岡市に蒸留所を新設することを決定した。稼働開始は発表時2019年6月ごろとされていたが、その後2020年春と変更。生産能力は年間で12万リットル。また同施設内には2020年に熟成棟を新設する予定。 堅展実業厚岸蒸溜所(北海道厚岸郡厚岸町) - 食品原材料の輸入や酒類の輸出を手がける堅展実業(本社:東京)が北海道厚岸町に新設した蒸溜所。2016年11月本格稼働開始、2018年2月に早期熟成酒の出荷を開始した。 ガイアフロー静岡蒸溜所(静岡県静岡市葵区) - 2015年3月、酒類の輸入販売を手がけていたガイアフロー株式会社は、2011年に閉鎖されたメルシャン軽井沢蒸溜所の製造設備一式を酒類の製造のために稼働させることを目的として取得(購入は子会社のガイアフローディスティリング株式会社)。さらに静岡市内に蒸溜所を建設することを発表した。2016年10月、製造を開始した。 長濱浪漫ビール長濱蒸溜所(滋賀県長浜市朝日町) - 2016年11月に新設された小規模蒸溜所。 小正醸造嘉之助蒸溜所(鹿児島県日置市日吉町神之川) - 長期貯蔵米焼酎「メローコヅル」などを手掛ける小正醸造が地元日置市に新設した蒸留所。2017年11月に稼働を開始。蒸留所の名前は同社の2代目社長・小正嘉之助に由来している。2018年から未熟成酒および早期熟成酒の販売を開始。 サクラオブルワリーアンドディスティラリーSAKURAO DISTILLERY(広島県廿日市市) - サクラオブルワリーアンドディスティラリー(当時は中国醸造)は1938年からウイスキー(当時の酒税法による2級ウイスキー)販売を始め(1989年で終了)、2008年には「戸河内ウイスキー」を発売している。これらは輸入モルトのブレンド品であるが、同社の100周年事業として2017年12月「SAKURAO DISTILLERY」を新設し、自社生産を始めた。2019年現在、同蒸留所の主力商品はクラフトジンであるが、2021年にウイスキーの出荷も予定されている。 株式会社金龍遊佐蒸留所(山形県遊佐町) - 金龍は山形県の焼酎メーカーであるが、2018年9月にウイスキー製造免許を取得し、11月から蒸溜所を本格稼働させた。3 - 5年の熟成後出荷予定。 松井酒造合名会社倉吉蒸留所(鳥取県倉吉市) - 松井酒造合名会社がウイスキー製造免許所得したのは2015年だが、自社蒸留施設について一切公表してこなかった。それにも関わらず製品に「倉吉蒸留所」の表記があり、これを一般客が問題にしたところ、代表者が開き直りとも思えるメッセージを自社Webサイト上で発表して物議を醸した。その後、2018年になってポットスチルを備えた倉吉蒸留所を新設、実際の蒸留を始めた。 八海醸造蒸留所名未定(北海道ニセコ町) - 日本酒「八海山」で有名な八海醸造が、「ニセコ温泉郷 いこいの湯宿 いろは」に隣接する町有地に建設する蒸留所。規模は延べ約1200m2。年間生産能力は90kL。2020年末の生産開始、2023年以降の製品出荷を目指す。 新潟小規模蒸溜所新潟亀田蒸溜所(新潟県新潟市南区)- 新潟県内で印章製造・販売店をチェーン展開する株式会社大谷が中心となり、企業や個人の出資を募る合同会社の蒸留所。大谷本社工場の倉庫を改装し、英フォーサイス社製の小型ポットスチルを設置。製造に際してはウイスキー文化研究所(東京)の指導を受ける。2020年4月の稼働を目指す。 新潟麦酒忍蒸留所(新潟県新潟市西蒲区)- 新潟の地ビールメーカーの蒸留所。新潟麦酒は輸入原酒をブレンドした「越ノ忍」が海外の品評会での受賞歴を持つが、2019年本社敷地内に蒸留所を新設した。 蒸留所名未定(新潟県佐渡市) - 佐渡市の株式会社環境保全事業との共同事業で、同社の倉庫を改装した蒸留所。原料の大麦には佐渡産のものが使われ、この調達も環境保全事業が担当する。製造は2019年9月を予定。将来的には貯蔵庫も設置し、観光施設としても活用の予定。 ヘリオス酒造蒸溜所情報不明 - 沖縄の総合酒造メーカーであるヘリオス酒造はウイスキー製造免許も取得しており、1980年代から製品の出荷も行っていた。しかし当時のウイスキーブームが下火となったため製造を休止。貯蔵していた在庫を、2016年にコンビニエンスストアのローソン限定で原酒を用いた「暦15年」と原酒は20%の「ピュアモルト暦」として販売した。2010年代に入ってウイスキーが再度ブームとなったため製造を再開し、2017年製造、熟成3年の新酒「許田カスクストレングス2020」を2020年末に販売した。 (以下は既に閉鎖しているが、製品の流通が続いているため参考のため掲載) メルシャン(閉鎖時はキリン)軽井沢ウイスキー蒸留所(長野県北佐久郡御代田町) - 旧・大黒葡萄酒/オーシャン株式会社(後の三楽オーシャン→三楽→メルシャン)軽井沢工場。2012年完全閉鎖。同蒸溜所の名前を冠した「軽井沢」は蒸溜所閉鎖後も海外オークションにおいて超高額で取引されている。なお、同蒸留所の製造設備一式は前述のようにガイアフローが購入、同社蒸留所の設備として再活用されている。
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「軽井沢 (ウイスキー)」の記事における「蒸溜所」の解説
軽井沢蒸溜所設立以前の1952年、大黒葡萄酒(後にオーシャンと社名変更)は塩尻でウイスキーの生産を開始していたが、これを本格化するため、1955年ワイン製造を行っていた軽井沢農場にウイスキー蒸溜所の建設を開始し、翌1956年にはウイスキーの生産が始まった。 蒸溜所自体は閉鎖まで同地にあったが、1962年にメルシャン(旧・三楽オーシャン→三楽)がオーシャンを買収、さらに2007年にキリングループがメルシャンを買収した。キリングループの傘下となったことで、グループ内の事業再編の対象となり、2012年には完全閉鎖となった。 2013年にはメルシャン株式会社が蒸溜所の土地・施設を御代田町土地開発公社へ売却。 2015年2月19日、ウイスキーの製造設備一式は御代田町からガイアフローディスティリング株式会社へ売却された。この設備の一部はガイアフローの静岡蒸溜所で利用されている。 本蒸溜所最後のモルト・マスターは、その後ベンチャーウイスキーのチーフ・ディスティラーを務めている。
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