蒸留器

蒸留器(じょうりゅうき、Still)とは、加熱をして選択的に沸騰させ、その後冷却して蒸気を凝縮させることによって液体混合物を蒸留するために使用される装置である[1]。蒸留器は一般的な実験で用いる蒸留装置と同じ仕組みを用いているが、規模は遥かに大きい。香水や医薬品、医薬品用の注射用水 (WFI) の製造、一般にさまざまな化学物質の分離と精製、およびエタノールを含む蒸留酒製造に用いられている。
応用
エタノールは水よりもはるかに低い温度で沸騰するため、混合物に熱を加えることにより、簡易的な蒸留によって水からエタノールを分離することができる。銅はアルコールから硫黄化合物を除去する事ができるため、蒸留器には歴史的に銅製の容器が用いられていた。しかし、現代の蒸留器の多くは、容器全体の浸食を防ぎ、廃棄物中の銅レベルを下げるために、銅のライニングを施したステンレス鋼パイプで作られている[2]。銅は全体的により良い味わいの蒸留酒を生み出すため、蒸留器の素材として好まれる。また、蒸留器内の銅と、発酵中に酵母によって生成される硫黄化合物との間の化学反応によって味が改善される。しかし硫黄化合物自体は風味に影響を及ぼすため、最終的に化学的に除去され、より滑らかで味の良い飲料が生成される。銅製蒸留器は、銅と硫黄の化合物である硫酸銅(II)が沈殿するため、約8年ごとに修理が必要になる。飲料業界は現代の蒸留装置を初めて導入し、現在の化学業界で広く受け入れられている装置規格の開発を主導した。


また、蒸留酒のジンの製造においては、ガラスやポリテトラフルオロエチレンを使用し、減圧下で製造することで、より新鮮な製品を製造することが可能なため、このような使用方法も増加している。この過程は3回蒸留した穀物アルコールから始まり、蒸留はリモネンや他のテルペン様化合物などの植物の香料を回収するためにのみ使用されるため、これはアルコールの品質とは無関係である。エチルアルコールは比較的変化しにくい。
最も単純な標準的な蒸留装置は一般に単式蒸留器として知られており、単一の加熱チャンバーと精製アルコールを収集する容器から構成される。単式蒸留器では凝縮が1回だけ行われるが、他のタイプの蒸留装置では複数の段階があり、より揮発性の高い成分 (アルコール) がより高度に精製されます。単式蒸留器の蒸留では分離が不完全になるが、これは一部の蒸留酒の風味にとってはむしろ望ましい場合がある。
より純粋な蒸留物が必要な場合、還流蒸留器を用いることが最も一般的である。還流蒸留器には蒸留塔が組み込まれており、通常、利用可能な表面積を最大化するために銅の容器にガラスビーズを充填して作成される[3]。アルコールが塔内で沸騰、凝縮、再沸騰すると、有効蒸留回数が大幅に増加する。ウォッカ、ジン、その他の中性穀物蒸留酒はこの方法で蒸留され、人間の消費に適した濃度に希釈されて飲用される。
自家製の蒸留所で生産されたアルコール製品は世界中で一般的ではあるが、場合によっては現地の法令に違反することがある。米国では違法蒸留器の製品は一般にムーンシャインと呼ばれ、アイルランドでポティーンと呼ばれる。ただし、ポティーンは 1661 年に違法となったものの、1997 年からアイルランドでは輸出が合法となっている。ムーンシャインという用語の意味について、多くの人はトウモロコシから蒸留された特定の種類の高アルコールプルーフをもつアルコールであると認識しているが、これは誤用であることに留意する必要があり、実際は違法に蒸留されたアルコール一般を指すのに使える用語である[4]。
関連項目
参考文献
- ^ “DISTILLATION APPARATUS”. Plymouth State University. 22 March 2014閲覧。
- ^ “Distillation by-Products as Animal Feeds”. Oxford University Press. 10 May 2021閲覧。
- ^ Kister, Henry Z. (1992). Distillation Design (1st ed.). McGraw-Hill. ISBN 0-07-034909-6
- ^ “About Moonshine Stills and Alcohol Stills”. 14 November 2014閲覧。
外部リンク
- Moonshine Still Moonshine Still Ghost from the past - Video
- Chisholm, Hugh, ed. (1911). . Encyclopædia Britannica (英語) (11th ed.). Cambridge University Press.
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蒸留所
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/13 14:48 UTC 版)
アイラ島で作れるウィスキー(スコッチ・ウイスキー)は「アイラ・モルト」として知られ、ピート(泥炭)によるスモーキーさが特徴である。 2016年現在では8つの蒸留所があり、島の南部の蒸留所、東から順にカリラ (Caol Ila)、アードベック (Ardbeg) 、ラガヴーリン (Lagavulin)、ラフロイグ(Laphroaig)では強烈なピートの香りのウィスキーが製造されている。島の北側ではボウモア、ブルックラディ (Bruichladdich)、ブナハーヴン (Bunnahabhain)、キルホーマン (Kilchoman)が生産されている。ブナハーヴン、ブルックラディのウィスキーはノンピートであるが、キルホーマンとブルックラディで生産されるポート・シャーロット、オクトモアと呼ばれる3種のウィスキーはやはり強烈なピート香を持っている。やはり強いピート香をもつポート・エレンは1983年に閉鎖され、現在は建物の一部が残るのみで、現在は隣接のモルト製造所(モルトスター)のみが操業を続けている。ポート・シャーロットのロッホ・インダールは1929年に閉鎖されている。ブルックラディ蒸留所では近年ボトリング・プラントが開かれ、ウィスキーのバッティングや瓶詰めも行っている。ブルックラディ蒸留所は、モルトをアイラで瓶詰めしている蒸留所である。また、アイラ島内で栽培した大麦を使用したり(「アイラ・バーレイ」シリーズ)、全ての樽をアイラ島内で熟成させるという、アイラ島のテロワールにこだわった蒸留所でもある。 2005年6月にロッホサイド・ファームにオープンしたキルホーマン蒸留所は、同年11月に最初の蒸留を行った。モルティング・フロアが2006年2月に火事にあったがポート・エレンのモルトスターから乾燥大麦麦芽の供給を受けて蒸留を継続、モルティング・フロアは異なる姿で再建され、現在は自家製乾燥大麦麦芽を製造している。この蒸留所は、ブルイックラディ蒸留所よりもさらに西、島の西半島中央にあるロッホ・ゴロムの南に位置する蒸留所であり、スコッチ・ウイスキーの蒸留所中最も西に位置する蒸留所となった。 近年、ブルックラディ蒸留所がかつてのロッホインダール蒸留所の建物にインヴァーレーヴン蒸留所の設備を設置してポート・シャーロット蒸留所の名前で蒸留所を開く計画があったが、中止となった。 ガートブレック蒸留所の建設がインダール湾沿いボウモア蒸留所の南3kmに進められ、弱い直火蒸留、木製発酵桶、蛇管式冷却器という伝統製法で生産する計画。2015年に蒸留開始、2018年以降出荷を予定している。 ウィスキーとは別に、新たにアイラ島のオリジナルなエールが作られている。アイラ・エールは2004年3月22日にオープンし、7種類のエールを継続的に生産し、また毎年行われるモルトと音楽のフェスティバルのために特別なビールも造っている。醸造所はブリッジエンドからわずかに外れたアイラ・ハウス・スクエアにある。 また、ブルックラディ蒸留所では、ザ・ボタニストというアイラ島唯一のジンが生産されている。9種類のジンの基本的なボタニカル(ジュニパーベリーなど)のほか、22種類のアイラ島に自生するボタニカル(花、ハーブ、樹木など)が使用されており、世界で唯一稼動していると言われるローモンド・スチルで蒸留されている(蒸留はブルックラディ蒸留所のスチルハウスにて行われている)。
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