第二次大戦期の研究業績とは? わかりやすく解説

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第二次大戦期の研究業績

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 05:19 UTC 版)

オペレーションズ・リサーチ」の記事における「第二次大戦期の研究業績」の解説

第二次世界大戦勃発するとORはアメリカとイギリス科学者たちによって組織的に研究されるようになり、イギリスパトリック・ブラケットドイツ海軍潜水艦Uボート)が実施した群狼作戦脅威対処し、またイギリス本土防空戦術確立するためのORが研究された。 1941年ブラケットロイヤル・エアクラフト・エスタブリッシュメント(RAE)から海軍移籍し最初イギリス空軍沿岸司令部(Coastal Command)で研究したのち、1942年にはイギリス海軍本部研究した沿岸司令部オペレーショナル・リサーチ・セクション(CC-ORS)におけるブラケットチームには、その後ノーベル賞受賞することになる学者二人含まれており、その他のメンバーその後それぞれの分野第一人者になっていくことになる優秀な面々そろっていた。彼らは戦争遂行にかかわる数多く重要な分析業務携わった。 たとえば当時イギリス輸送船損害抑えるために護送船団方式採用していたが、これについて、商船軍艦随伴させるべきだという原則についてはだいたい意見一致していたが、船団規模大小については意見一致がなかった。船団はいちばん遅い船に合わせて移動するので、小さな船団の方が速力速いまた、小さな船団の方がドイツ海軍Uボート発見されにくいはずだという意見もあった。一方多数船団まとめて大きな護送船団を組むようにすれば、それだけ多く軍艦護衛に付けることが出来る。ブラケットスタッフは、船団被害はその全船舶数よりも、むしろ護衛艦の数に大きく依存している事を示した。したがって大きな護送船団組んで船団の数を減らした方が、小さな護送船団何度も出すよりも護衛しやすいというのが彼らの結論だった。 また、イギリス空軍沿岸司令部が敵潜水艦捜索撃沈する際に用いている方法解析した際には、アナリスト一人航空機の色は何色なのかと尋ねた対潜任務にあたっている航空機のほとんどは爆撃司令部所属で、夜間作戦用の黒色塗装となっていた。CC-ORSの提言により、昼間作戦において、黒色塗装北大西洋灰色の空を背景としたカモフラージュ効果の点で最適かどうか確かめ実験が行われた。実験により、白色塗装航空機平均黒色塗装航空機より20%近い位置まで来なければ発見できない事が示された。この変更行えば潜水艦発見回数当たりの攻撃撃沈数はこれまでの30%増となるはずだった。 CC-ORSが手がけた他の仕事としては、航空機投下型の爆雷爆発深度平均100フィートから25フィート変更すれば撃沈率が向上するだろうと提言したものがある。その理由は、イギリス軍機がUボート到達する直前になってUボート側が英軍機を発見した場合100フィート爆発深度ではUボート損害与えられない考えられUボート100フィートまで潜航できるほどの十分な時間はないはずだ)、またUボート側がかなり遠くから英軍機を発見した場合は、Uボート潜航してから針路変更する十分な時間があるので、爆雷の有効半径20フィート内にそのUボートがいる可能性は低いと考えられるからであった。したがって標的位置推測するしかない深い所での撃沈試みるよりも、標的位置がよく分かる水面近く潜水艦攻撃する方が有効であった爆発深度設定100フィートから25フィート変更するまでは、潜航したUボート1%撃沈され、14%が損傷受けたが、変更後は7%が撃沈され、11%が損傷受けた(特に、潜水艦浮上時に発見され場合は、攻撃前に潜航できたとしても、成績11撃沈15損傷向上した)。ブラケット感想として「このような些細単純な戦術の変更によって、これほど作戦オペレーション上の利益あがった例は数えるほどしかないであろう」と述べている。 イギリス空軍爆撃司令部Bomber Command)のオペレーショナル・リサーチ・セクション(BC-ORS)では、爆撃司令部が行った調査報告分析した[要出典]。この調査では、爆撃司令部はある期間中ドイツへ爆撃任務から帰還した全ての爆撃機調査していた。ドイツ防空部隊対空砲)から受けた損傷をすべて記録した上で機体の最も損傷のひどい箇所装甲板追加すべきと勧告していた。この勧告採用されなかった。なぜなら、その箇所損傷受けて生還しているということは、その箇所はたいして重要でないということであり、そんな箇所装甲板重量加えれば航空機運動性悪影響与えるからである。また、航空機乗員一部削減すれば航空機一機あたりの人的被害軽減できるとする爆撃司令部からの提案も、空軍司令部により却下された。ブラケットチームは、帰還した爆撃機無傷だった箇所にこそ装甲板追加すべきだという論理的な勧告行った。その理由は、爆撃司令部調査ではイギリス生還した機体だけを調査したため、バイアスかかっているからである。生還した機体において無傷箇所は、おそらく機体の重要部分である。つまりそこに敵弾当たれば撃墜されしまって帰還できないのである(したがって無傷航空機だけが生還できることになる)。作戦行動研究部員として働いていたフリーマン・ダイソン作戦行動数理モデル化統計的研究担当し爆撃隊員安全性経験出撃回数)とは関連も無い、銃座飛行速度鈍ら機銃手が必要となるため結果的には無駄である、などの調査結果提示したが、これらは軍の常識合わないため却下された。 「費用対効果」はオペレーションズ・リサーチ多用される指標である。連合軍側の航空機飛行時間投入した費用」とし、ある海域発見できたUボートの数を得られた「効果」として比較すれば、より費用対効果の高い地域航空機振り向けることができる。「費用対効果」の比較によって、計画有用な「有効比率」を割り出すこともできた。例え撃沈一隻あたりの機雷敷設数は60個という比率は、さまざまな戦例において共通であったイギリスの港に対すドイツ軍機雷ドイツ海上ルートにおけるイギリス軍機雷日本海上ルートにおけるアメリカ軍機雷)。 またアメリカでは1942年アメリカ海軍はオペレーションズ・リサーチ・グループ(ORG)を設置して特定の部隊をどの地域派遣するのか、部隊訓練計画どのように立案するのか、膨大な部隊どのように補給整備計画的に行うのか、などの問題数学的に研究された。これらの研究成果として対潜戦用い捜索理論戦略爆撃での費用分析などが見られる沖縄戦にて沖縄本島近海展開した連合軍艦隊における特攻対策にも応用されている。 アメリカではオペレーションズ・リサーチにより、マリアナ諸島からのB-29による日本爆撃における標的命中率は2倍になった。これは飛行時間の中の訓練比率を4%から10%引き上げたためである。また、1隻の潜水艦担当哨戒海域発見した目標に、他のすべての潜水艦攻撃できるためのもっとも有効な編成は、3隻チームであることも解明した。また夜間戦闘機には、それまでツヤ消し迷彩塗装よりも、ツヤのあるエナメル塗装が最も有効なカモフラージュとなり、更に表面滑らかな仕上げにより表面摩擦も下がり対気速度も増す事を突き止めた陸上では、イギリス軍需省の陸軍オペレーショナル・リサーチ・グループ(AORG)のオペレーショナル・リサーチ分隊複数)はノルマンディー上陸作戦とともに上陸しヨーロッパ大陸進軍していくイギリス軍について歩いた。彼らは砲撃爆撃対戦車射撃有効性などについて解析行った戦後出版され1952年頃日本に輸入され初期のOR普及貢献したMorse,P.M. and G.E.Kimball:"Methods of Operational Research"(『ORの方法』)に軍事関係事例掲載されているのは、こうした背景持っているからである。 日本においても、第二次世界大戦時数学統計学専門家集めた同様の組織存在した後藤正夫によれば内閣戦力計算室が設置されニューギニアの戦いにおいての戦力見積もり部隊配置研究している。しかし、東条英機内閣総理大臣視察行った際、その日以って廃止されと言うこのように研究なされたといっても、その量や積極性においては米英より劣るようなエピソードであった。この時代のORは理論化が十分ではなく経験定式化したものでもORによって導き出され結果大同小異であった旨の反論なされている。永井上述護送船団問題艦艇航空攻撃回避問題において日米最終的に導き出した回避法共通する性質があったことを指摘しており、日本成功例としては「航空機による攻撃効果問題」とも言うべき空母運用問題である、第一航空艦隊空母集中配備例示した。

※この「第二次大戦期の研究業績」の解説は、「オペレーションズ・リサーチ」の解説の一部です。
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