数理モデル化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/06 05:13 UTC 版)
以下は力学系理論で扱われるもっとも単純な双安定系の一つを数学的に表現したものである。 d y d t = y ( 1 − y 2 ) {\displaystyle {\frac {dy}{dt}}=y(1-y^{2})} この系は y 4 4 − y 2 2 {\displaystyle {\frac {y^{4}}{4}}-{\frac {y^{2}}{2}}} の形を持つ曲線上を転がり落ちるボールを表しており、3つの平衡点 y = 1 {\displaystyle y=1} 、 y = 0 {\displaystyle y=0} 、 y = − 1 {\displaystyle y=-1} を持つ。真ん中の平衡点 y = 0 {\displaystyle y=0} は不安定、ほかの二点は安定である。時間とともに y ( t ) {\displaystyle y(t)} がどのように増減するかは初期条件 y ( 0 ) {\displaystyle y(0)} に依存する。初期条件が正の場合( y ( 0 ) > 0 {\displaystyle y(0)>0} )解 y ( t ) {\displaystyle y(t)} は時間とともに1に近づくが、初期条件が負の場合( y ( 0 ) < 0 {\displaystyle y(0)<0} )は−1に近づく。この意味で系のダイナミクスは双安定である。終状態は初期条件によって y = 1 {\displaystyle y=1} か y = − 1 {\displaystyle y=-1} のどちらかになる。この双安定領域の出現については、分岐パラメータ r {\displaystyle r} の値によって超臨界ピッチフォーク分岐が起きるモデル系 d y d t = y ( r − y 2 ) {\displaystyle {\frac {dy}{dt}}=y(r-y^{2})} を通して理解できる。 パラメータの特定範囲でのみ双安定性が発現する生化学システムも存在し、そのパラメータはフィードバックの強さと解釈されることが多い。典型的ないくつかの例では、パラメータの値が小さいときには一つの安定不動点しか存在しない。パラメータが臨界値を超えるとサドルノード分岐が起きて新たな不動点の対(一つは安定、もう一つは不安定)が生まれる。さらに増加すると別のサドルノード分岐により不安定解が最初の安定解と結合して消滅し、後で生まれた安定解のみが残ることがある。パラメータがそれらの臨界値の間にあるなら系は2つの安定解を持つことになる。そのような性質を持つ力学系の例には d x d t = r + x 5 1 + x 5 − x {\displaystyle {\frac {\mathrm {d} x}{\mathrm {d} t}}=r+{\frac {x^{5}}{1+x^{5}}}-x} がある。ここでは x {\displaystyle x} が出力であり、パラメータの r {\displaystyle r} が入力としてはたらく。 非線形な結合振動子にノイズを加えた系では、二つの安定なリミットサイクルの間を前後に飛び移る「モードホッピング」と呼ばれる不安定性が現れることがあり、そのポアンカレ断面上では通常の双安定性と同様のふるまいが見られる。
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