日本の法制
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日本の労働基準法では、本記事で述べるような家庭内労働者を家事使用人と称している。そして同法は制定当初より「家事使用人」を同法の適用除外としている(制定当時は第8条、現行法では第116条)。その趣旨は、家事一般に携わる家事使用人の労働が一般家庭における私生活と密着して行われるため、その労働条件等について、これを把握して労働基準法による国家的監督・規制に服せしめることが実際上困難であり、その実効性が期し難いこと、また、私生活と密着した労働条件等についての監督・規制等を及ぼすことが、一般家庭における私生活の自由の保障との調和上、好ましくないという配慮があったことに基づくものと解される。 しかしながら、家事使用人であっても、本来的には労働者であることからすれば、この適用除外の範囲については、厳格に解するのが相当である。実際の労働者が「家事使用人」に該当するか否かは、従事する作業の種類、性質の如何を勘案して具体的に当該労働者の実態によって決定すべきであり、家事一般に従事している者がこれに該当する。法人に雇われ、その役職員の家庭において、その家族の指揮命令の下に家事一般を行う者は家事使用人である。個人家庭における家事を事業として請け負う者に雇われて、その指揮命令の下に当該家事を行う者は家事使用人に当たらない(昭和63年3月14日基発150号、平成11年3月31日基発168号)。その労働条件や指揮命令の関係等を把握することが容易であり、かつ、それが一般家庭における私生活上の自由の保障と必ずしも密接に関係するものでない場合には、当該労働者を労働基準法の適用除外となる家事使用人と認めることはできない。 労働基準法上の「家事使用人」に該当するならば、以下の法令についても適用除外となる。 労働安全衛生法 最低賃金法 賃金の支払の確保等に関する法律 じん肺法 家内労働法 炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法 労働者災害補償保険法 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 一方、以下の法令については「家事使用人」についても適用がある。 労働契約法 公益通報者保護法 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律 このうち、労働者災害補償保険法において、業務の実態や災害の発生状況からみて労働者に準じて保護するにふさわしい者であること、そして業務の範囲が明確に特定でき、業務災害の認定等が保険技術的に可能であることから、同法の特別加入制度によって「家事使用人」の保護を図っている。介護関係業務に従事するものについては介護保険サービスを提供する訪問介護員と同様の就労形態であることから平成13年より特別加入を認めてきたが、介護作業特別加入者の大半を占める家政婦が家事支援を行っている実態から、家事支援従事者についても平成30年より特別加入制度の対象とすることになった。
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日本の法制
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「労働時間#監視又は断続的労働に従事する者」も参照 日本の労働法制においては、労働時間は原則として1日8時間、週40時間以内に収めなければいけないが(法定労働時間、労働基準法第32条)、当直はこの法定労働時間の枠外である(労働基準法第41条)ことが最大の特徴である。従って、使用者は労働者に通常の労働時間とは別に当直をさせても割増賃金の支払いは必要ないが、使用者が当直制を採用するにはあらかじめ所轄労働基準監督署長の許可を受けなければならない(労働基準法施行規則第23条)。そのうえで、就業規則等に当直に従事する労働者の範囲、当直を行う時間帯、当直に対して支払われる手当の額等を定める必要がある。 所轄労働基準監督署長が行う許可の基準は通達によって示されていて(昭和22年9月13日発基17号、昭和63年3月14日基発150号)、以下のとおりである。 常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであって、定時的巡視、緊急の電話または文書の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限って許可する。 原則として、通常の労働の継続は許可しない。 当直の勤務に対して相当の手当が支給されること。具体的には、宿直勤務1回についての宿直手当(深夜割増賃金を含む。)又は日直勤務1回についての日直手当の最低額は当該事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金(法第37条の割増賃金の基礎となる賃金に限る。)の1人1日平均額の3分の1を下らないものであること。ただし、同一企業に属する数個の事業場について、一律の基準により宿直又は日直の手当額を定める必要がある場合には、当該事業場の属する企業の全事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者についての1人1日平均額によることができるものであること。 宿直については週1回、日直については月1回を限度とすること(宿日直を行いうるすべての者に宿日直をさせてもなお不足であり、かつ勤務の労働密度が特に薄い場合を除く)。 宿直については、相当の睡眠設備を設置すること。 満18歳未満の者については原則として許可しない(昭和23年6月16日収監733号)。 当直中に突発的に本来業務に従事した場合、当直として対応することは可能であるが、その際の労働に対しては割増賃金の支払いが必要となる。また、突発業務が頻繁に行われ通常の労働とほとんど変わりない場合は当直としての対応は認められず(通常の夜勤・休日労働とみなされ)、当直の許可は取り消され、この場合は交代制勤務の導入等、勤務体制の見直しが必要となる。実際に当直を用いている職場においては、上記の許可基準が守られているのか疑わしい職場も少なからずみられるところである。本来、職場の労働環境の改善は労使の自主的な交渉によって図るべきものであるが、それでも改善が見られない、あるいは明らかな法令違反が見られる等の事情がある場合には、労働者は弁護士・社会保険労務士等法律専門職に相談を行ったり、あるいは労働基準監督署への申告を行い改善を求めるという手段がある。
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日本の法制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:10 UTC 版)
労働における休み休憩時間6時間を超える労働に対しての付与義務 休日(公休日)当初より労働義務なし 法定休日(週休1日の原則, 労働させた場合は割増賃金が発生) 法定外休日(原則を超える日数) 休暇/休業本来は労働日だが義務免除 法定休暇年次有給休暇 産前産後休業 生理休暇 育児休業/子の看護休暇 介護休業/介護休暇 使用者の責めに帰すべき事由による休業 非法定休暇(特別休暇)夏休み サバティカル休暇 病気休暇 つわり休暇 慶弔休暇など 表 話 編 歴 本項で労働基準法について以下では条数のみを挙げる。 日本で労働者一般に対する年次有給休暇が導入されたのは戦後の1947年(昭和22年)に定められた労働基準法による(工場法には年次有給休暇についての規定はなかった。官庁職員については「官庁執務時間並休暇ニ関スル件」(大正11年7月4日閣令)による「賜暇制度」が年次有給休暇に相当するものとしてあった。)。制定当初は当時のILO52号条約に定められた最低日数(6日)に倣って労働基準法でも最低日数を6日としていたが、同条約他、国際条約等での日数引き上げに対応して1988年(昭和63年)4月に最低10日に引き上げ、同時に比例付与、計画的付与の規定も導入した。もっとも日本はILO第52号・第132号条約ほかILOの労働者保護に関する条約のほとんどを批准していない。また権利取得のために一定以上の出勤率を要求することも諸外国には見られない規定である。 労働基準法第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。 第39条は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するという趣旨から、毎年一定日数の有給休暇を与えることを規定している。年次有給休暇は労働者が休暇の時季指定をし、使用者による有効な時季変更権の行使がないとき(時季変更権の行使を解除条件として)に成立し、年次有給休暇が成立すると、その時季指定された日について労働義務が消滅する。法律上当然に労働者に生ずる権利であり、労働者の請求を待って初めて生ずるものではない。使用者の許可や承認は不要であり、そのような観念を容れる余地そのものがない。労働者が年次有給休暇の取得を請求する際の「請求」とは、休暇の時季の指定であり、この請求があった際に使用者が判断する要素は時季変更権の行使の可否のみである。年次有給休暇は労働者が請求する時季に与えることとされているので、本条(労働基準法第39条)所定の要件を満たした休暇権を取得した労働者に対しては、使用者はこれを積極的に与えるよう努める必要はあるが、労働者から具体的にその請求がない限り使用者はこれを与えなくても本条(労働基準法第39条)違反の責を負わないと解される(労働法コンメンタール3、厚生労働省労働基準局編)。請求にあたって労働者に請求の理由を使用者が求めることがあるが、これを禁止する法律はない。ただし、請求の理由をもとに時季変更権を行使することはできず、時季変更権を行使しない側の理由にすることができるだけである。 シフト制により労働日を指定される労働者の場合、シフトにより労働日が指定される前には、年次有給休暇の時季指定を行うことはできない。仮にシフトにより労働日が指定される前に特定の日に時季指定を行っても、特定の日がシフトにより労働日に指定されず所定休日に指定された場合には、その日を年次有給休暇として取り扱う必要はない。 休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項とされていて(第89条)、使用者は年次有給休暇に関する事項を就業規則に記載しなければならない。また労働条件の絶対的明示事項ともされていて(第15条)、使用者は労働契約締結に際して労働者に対して年次有給休暇に関する事項を書面で明示しなければならない。なお、管理監督者等の、いわゆる第41条該当者においても、年次有給休暇の規定は適用される。 世界各国の年次有給休暇の取得率と比較して日本の年次有給休暇の取得率は並外れて低いことが問題視されており、こうしたことが長時間労働や働きすぎを招いており、健康を害したり、精神疾患(うつ病など)や過労死、過労自殺に至る労働者が後を絶たない原因と考えられている。2010年の経済財政白書では「有給休暇の完全消化で大幅な個人消費の拡大が可能」としており。有給休暇の延べ残日数を1年で約450,000,000日程度と試算、これは1年を約365.25日とすると約12,320年120日になる。これが完全に消化されたと仮定して、雇用者1人につき1日当たり1,000円の追加的な消費が行われた場合、控え目に見てもGDPの約0.1%の個人消費が誘発され、長期の家族旅行などが追加的に行われるならより大きな効果も期待できるとしている。平成18年4月に施行された「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」の第2条では、「事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない」、と定めている。 詳細は「#低い有給休暇取得率の原因と対策」および「#各国の有給休暇」を参照
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日本の法制
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日本のCS放送における専門チャンネルの法的位置づけは、制度発足当初は「衛星役務利用放送」または「CS委託放送」であったが、2011年の放送法改正により「衛星基幹放送」「衛星一般放送」へと整理された。「基幹放送」はBS衛星放送と同じ受信装置を用いる放送を対象とし、「一般放送」はそれ以外の全ての放送を対象とする。
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