低い有給休暇取得率の原因と対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:10 UTC 版)
「年次有給休暇」の記事における「低い有給休暇取得率の原因と対策」の解説
年次有給休暇取得率調査年取得率平成9年 54.1% 平成10年 53.8% 平成11年 51.8% 平成12年 50.5% 平成13年 49.5% 平成14年 48.4% 平成15年 48.1% 平成16年 47.4% 平成17年 46.6% 平成18年 47.1% 平成19年 46.6% 平成20年 46.7% 平成21年 47.4% 平成22年 47.1% 平成23年 48.1% 平成24年 49.3% 平成25年 47.1% 平成26年 48.8% 平成27年 47.6% 平成28年 48.7% 平成29年 49.4% 平成30年 51.1% 平成31年 52.4% 令和2年 56.3% 日本は最低賃金の低さ、労働時間の長さ、長時間労働・有給休暇・休日の日数のどれをとっても先進国中、最低の部類であり労働水準に関しては未だ発展途上である。 厚生労働省の「令和2年就労条件総合調査」によれば、平成31年・令和元年(又は平成30会計年度)1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除く)は、労働者1人当たり平均18.0日であるが、そのうち実際に労働者が取得した日数は10.1日、取得率は56.3%であり、取得日数、取得率とも昭和59年以降で最多となった。その要因として、平成31年4月より義務付けられた「有給5日取得」の影響とみられるが、政府の2020年目標である70%には遠く及んでいない。取得率を企業規模別にみると、従業員1,000人以上の企業では63.1%取得しているが、100人未満の企業では51.1%となっていて、企業規模が小さいほど取得率は低くなる傾向は従前から変わっていない。なお取得率を男女別にみると、男性は53.7%、女性は60.7%であり、男性の取得率が低くなっている。 また、内閣府の「平成25年ワーク・ライフ・バランスに関する個人・企業調査」における企業調査により、「自分に与えられた役割を果たし、付与された有給休暇のほとんどを消化すること」が人事評価でどのように考慮されるかについてみると、「人事評価では考慮されていない」が84.5%と極めて高くなっている。 これらの要因としては、日本では年次有給休暇の消化を容易にするための人員構成が「経営効率化や人材育成の面で無駄が多い」として、年次有給休暇の消化に消極的な経営者が多いうえ、労働者の側にも労働組合の未組織や年次有給休暇の取得をためらわせる社内風土の存在等様々な事情が絡んでいるためではないか、と言われている。一つの要因として、組織学者の太田肇は労働政策研究・研修機構の調査結果を援用しながら「周りから認められるために」休暇取得をためらう実態があることを明らかにしている。 年次有給休暇を時間単位で取得できる制度がある企業割合は「平成29年就労条件総合調査」では18.7%であり、年次有給休暇の計画的付与制度がある企業割合は「令和2年就労条件総合調査」では43.2%である。 職場の雰囲気や事業主・経営者など使用者側の意向などの理由により、労働者の権利として法的に認められているはずの年次有給休暇の取得をためらわせたり取得しづらい労働環境などは本来は労使交渉で解決するべきものであるが、労働者が年次有給休暇を申請したときに、取得できる状況であるにもかかわらず使用者側が年次有給休暇の取得を認めない場合は、使用者側の労働基準法違反として所轄労働基準監督署へ相談、申告したり、終局的には裁判所へ提訴する手段もある。 厚生労働省は日本の労働者における有給休暇の取得率の低さを問題視し、うつ病や過労死、過労自殺に繋がる大きな要因であると危惧しており、労働時間の短縮や年次有給休暇の完全取得を事業主に促進する取り組みを旧労働省時代から進めている。 1990年の「連続休暇取得促進要綱」では 「年次有給休暇の平均20日付与、20日取得」という目標のもとに「意識改革とシステムづくり」等を強調する。1995年の「ゆとり休暇促進要綱」では「まとまった日数の連続した休暇」「個人の希望を活かした休暇」「ライフ・スタイルやワーク・スタイルに合わせた目的別休暇」といったコンセプトを提唱する。2000年「長期休暇の普及に向けて」では「1週間程度を最低単位として2週間程度の休暇」と期間を明示し、週休2日の週休日と年次有給休暇を組み合わせて実現を図ろうとする。2004年「職業生活活性化のための年単位の長期休暇制度等に関する研究会報告書」では「一定以上のまとまった期間、 少なくとも1年以上の期間を対象」とする休暇を提唱する。2010年4月1日から適用された「労働時間等の見直しガイドライン」では当面の目標として2020年までに年次有給休暇取得率を70%まで上げるよう求めている。2020年5月に閣議決定された「少子化社会対策要綱」では2025年までに取得率を70%にする目標が掲げられた。2014年度からは毎年10月を「年次有給休暇取得促進期間」と定め、集中的な広報活動を行っている。ただしこれらはいずれも労使の自主的な交渉を促すものであり、法的な強制力はない。
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