年次有給休暇の計画的付与
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「年次有給休暇」の記事における「年次有給休暇の計画的付与」の解説
使用者は、労使協定 により、年次有給休暇の日数のうち5日を超える部分を労働者の請求する時季によらず、労使協定で定めた計画的時季に付与することができる(第39条第6項)。これを年次有給休暇の計画的付与、計画年休などという。昭和63年の改正法施行により導入された。その趣旨は、日本における年次有給休暇の取得率が、完全取得が原則である欧米諸国と比べてきわめて低い水準にとどまっていることにかんがみ、年次有給休暇の取得率を向上させ、労働時間短縮を推進するためには、職場において、労働者が自己の業務を調整しながら、気がねなく年次有給休暇を取得できることとすることが有効であることから、労働者の個人的事由による取得のために一定の日数を留保しつつ、これを超える日数については、労使協定による計画的付与を認めることとしたものである(昭和63年1月1日基発1号)。 計画的付与の方式としては、事業場全体の休業による一斉付与方式、班別の交替制付与方式、年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式等が考えられるが、それぞれの場合に労使協定において定められるべき事項としては、次のものが考えられるものであること。なお、特別の事情により年次有給休暇の付与日があらかじめ定められることが適当でない労働者については、年次有給休暇の計画的付与の労使協定を結ぶ際、計画的付与の対象から除外することも含め、十分労使関係者が考慮する(昭和63年1月1日基発1号)。 事業場全体の休業による一斉付与の場合には、具体的な年次有給休暇の付与日 班別の交替制付与の場合には、班別の具体的な年次有給休暇の付与日 年次有給休暇付与計画表による個人別付与の場合には、計画表を作成する時期、手続等 計画年休で日付が特定されると、その後に事情が変わったとしても、使用者からも労働者からも、また両者が合意したとしても、その日付を変更することができない(昭和63年3月14日基発150号)。フレックスタイム制の適用を受ける労働者であっても同様である。いいかえれば、毎年度最低5日分の年次有給休暇は純然たる個人的利用に委ねられる。計画的付与は、当該付与日が労働日であることを前提に行われるものであり、退職予定者については退職後を付与日とする計画的付与はできない。請求しうる年次有給休暇日数が5日以下の労働者については、計画的付与の対象とすることはできないが、年次有給休暇の日数が足りない、あるいはない労働者を含めて年次有給休暇を計画的に付与する場合には、付与日数を増やす等の措置が必要なものであること(昭和63年1月1日基発1号)。 当該労使協定は、行政官庁に届出る必要はない。また、当該協定は、労働基準法違反の罰則の適用を受けない免罰的効力のほか、当該計画的付与部分に対する労働者の時季指定権と使用者の時季変更権を消滅させる効力を有する。なお協定により事業場全体の休業による一斉付与を行った場合、年次有給休暇の権利のない者を休業させればその者に休業手当を支払わなければならない(第26条、昭和63年3月14日基発150号)。 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法では、事業主等の責務を適切に対処するための指針により、計画的付与制度の活用を図ることを事業主の努力義務としている(同法4条、平成22年12月9日厚労告409号)。
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