カオティックファクター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 16:14 UTC 版)
《地獄》にのみ存在する、魔力型にも索引型にも分類できない魔法の総称。自然秩序の歪みをもたないはずの《地獄》に存在する魔法のため、「魔法は自然秩序の歪みに基づくものである」という魔法の原則を揺るがす存在であり、混沌因子(カオティックファクター)と呼ばれている。なぜか地獄由来の神話・伝説を具現化したような魔法が多い。 実はカオティックファクターも自然秩序の歪みに基づくものであり、観測者たる人間が信仰によって地獄の安定した秩序を歪ませることで生まれたが、救済のイメージを一つに定められなかったために、歪んだ自然秩序/神/魔法大系が一つに選択されずに複数重ね合わせた状態で存在している。故に地獄は数ある魔法世界の中で唯一複数の魔法大系を持つ世界となっている。また魔力型にも索引型にも分類できない魔法なのは、カオティックファクターの性質をきめた《地獄》の人間たちに、魔法知識が欠如していた故である。 再演の神が選択されたことで、再演大系が強まり、他の魔法は魔法消去を含めて弱体化・消滅しつつある。その後増幅器が設置されたことで再演大系は更にその力を増し、地獄を征服しようとする協会の軍勢を使い自分たちに抗う者を一掃しようとしたが、きずなが「運命の化身」によってその軍勢を返り討ちにしたことで魔法消去の復活を招いてしまう。人間を救うために過去を改変し続ける未来の再演魔導師達は、この一件を機に奇蹟を拒絶する人間に対して憎悪を抱いてしまい、「人間を救う秩序」としての純粋性を失ってしまう。そして魔法消去は一度自然秩序を再演大系に固定されながら復活した反動で未来に逆流し、再演世界を一気に瓦解させていくことになる。 魔獣使い(アモン) 自然信仰からうまれた魔法。 万物の根源、原初の霧とされる気を発生させ、そこからあらゆる自然物・自然現象を生み出すことができる。動物・水・木材など人間が生きるのに必要なものはなんでもそろえられるので、生活力は高い。魔法消去にはかなり弱い魔法であり、使い手たちは《地獄》にあって《悪鬼》社会とはかなり距離を置いた暮らしをしている。 防御魔法や自己再生魔法を得意としており、防御面は非常に優秀だが、生み出せるものが自然物に限られるため、火力そのものはいまいちであり、強力な防御魔法をもつ魔法使いは倒せない。 気はあらゆる自然物の「設計図」を内包しているため、術者がよく知らないものでも生み出すことができる。到達の化身万物は「気」から成り術者自身も「気」の一部であるという観測から、自身を「気」として変性する化身。自分自身を自然現象に変換することができる。 蛇の女王(アスタロト) 神話が複雑化したことで、自然以上のものも信仰の対象となった。そこから生まれた魔法。 術者の体から魔法卵を切り離し、そこから万物とあらゆる現象を生み出すことができる魔法。魔獣使いがあらゆる自然現象を作り出す魔法であるのに対し、蛇の女王の魔法卵は自然ならぬ奇跡(物理法則に従わない超常現象)さえも作り出すことができる。その成り立ちと機能から、魔獣使いの進化系として扱われた。自分の体のパーツを作って置き換えることで、治療や体の強化・改造も可能。また「万物を生み出す」という特性から、「ものを生み出す」魔法である索引型魔法の到達点ともされ、「ありとあらゆるものという概念」の索引がもしあるなら、魔法卵が生み出されるのではないかとも言われている。魔法卵はあらゆるものに分化する世界の万能細胞、世界卵とも言われている。 弱点は世界卵が術者の体の一部であること。そのため使えば使うほど術者の肉体が削られる。また奇跡をつくりだせるということは、逆に言うと世界卵によって生み出されたものは魔法消去の影響を受けやすいということでもある。舞花はこの魔法で自身を治療する際、地球の物理法則からはみ出したパーツを作ってしまったため、魔法消去者に観測されると破壊される体になってしまった。 本当に万物を生み出せる魔法であり、原理的には(大系の枠を超えて)神人遺物を生み出すことさえ可能である。ただし、魔法卵が「設計図」を内包しているわけではないので、「設計図」は自力で用意する必要がある。そのため舞花は、公館や協会と接触して「設計図」を得るまで、魔法を使いこなすことができなかった。輪廻の化身「魔法卵が世界をも生み出せるのならば、人間を生み出せない訳が無い」という観測から、術者自身(の複製)を生み出す分身型の化身。 舞花の複製もこの魔法で作られたものである。 生み出された分身はほぼ完全な複製であり、姿形や記憶に至るまで本体を忠実に再現している。ただし、肉体の持つ自然秩序の歪みまでは再現できないので、分身の持つ自然秩序の歪みは蛇の女王ではなく、他の魔法大系のものになる(もしくは、歪んだ秩序を持たない肉体になる)。言い換えると、自分の螺旋同位体を生み出す魔法。この制約は、「同じ時間軸に同一人物は複数存在できない」というルールに基づくらしく、術者が死ぬ瞬間に使用したときには、蛇の女王を受け継いだ複製を作成できる。 生み出された複製は本物の人間であり、魔法を使うこともできるが、破滅の化身やゆらぎの化身と違い、本体とは魔法大系が変わってしまうので、本体から受け継いだ記憶が役に立たない。例えば円環大系に属する分身を作ったとしても、その分身も本体と同じく蛇の女王を使うための知識や技術しか持たず、円環大系魔法を使うための知識や技術は持たないということになる。そのため分身が魔法を使いこなすためには、一から学習をやり直す必要が有る。 破壊(アバドン) 八咬誠志郎の能力。観測した物を総て破壊・消滅させてしまう最悪のカオティックファクター。終末信仰から生まれた。観測されたものは青い炎をあげながら残骸すら残すことなく消失する。この現象は魔法消去との類似性が指摘されている。魔法ですら感覚しただけで破壊するため、言い換えれば攻撃力と防御力を併せ持つ魔法消去のような物。魔法消去は魔法使いの体まで破壊するわけではないが、《破壊》は魔法も魔法使いの体も破壊するため、魔法使いからは悪鬼以上に恐れられている。しかし自分の体すら破壊してしまう危険があるため、普段は感覚を磨耗させて押さえ込んでいる。作中特に理由は示されていないが、魔法としては例外的に観測者たる人間を直接破壊できる。自然現象から極めて遠い能力のため、魔法消去自体には最弱といわれるほど弱い。 再演大系 再演大系もカオティックファクターの一種であり、過去にアモンと交流があったらしい。また地獄の神の中には「人間を操る秩序」である再演大系の神が含まれている。 カオティックファクターであるにもかかわらず索引型としての法則性を持つのは、地球人の信仰ではなく、地球に住み着いた神音世界人の信仰によって生まれたためである。 「人を救う秩序」ではあるが、再演秩序は何をもって人が救われるかを真に理解しているわけではないため、機械的に人口を増やすことをもって「救い」と定義している。そのためその救いは功利主義的なものであり、大多数を救う代わりに少数に犠牲を強いる。 また「人口を増やす」という性質が再演秩序の中に組み込まれているために、人間が絶滅すると再演秩序は回復不能の矛盾をきたしてしまう。この矛盾を修正するために、再演の神は賢者の石を誘導装置にして人間が絶滅した時間軸を他の時間軸に無理やり合流させてしまう。これは同時に再演魔法によって生じた時間分岐という「時間構造の歪み」を軽減する効果ももたらす。そして再演の神も他の神と同じく「歪みを修正する」という役割を持つことから、人類絶滅(とそれに伴う時間軸の合流)は再演の神にとってある意味「都合の良い」状態となってしまう。結果的に再演の神は「人口を増やそう」とする性質と同時に、「人類を絶滅させよう」とする相反する性質を併せ持ってしまっている。故に再演世界が成立するということは、単に操られるというだけでなく、絶滅の運命が確定してしまうことでもある。 魔法消去 魔法消去もカオティックファクターの一種であるらしい。観測した魔法を消去する魔法。 いかなる魔法にも効果があるが、魔法は瞬時に消えるわけではなく、時間経過とともに徐々に減衰・消滅していく、持続的な現象である。そのため消しきれずに不完全ながら魔法が効果を発揮する場合もある。またどんな魔法にも一律に働くわけではなく、出力が小さく、自然秩序から遠い魔法であるほど消しやすい(短時間で消せる)し、その出力が大きく、自然秩序に近い現象であるほど消しにくい(消すのに時間がかかる)。そのため大出力で攻める、あるいは魔法を自然秩序に近づけるというのが、魔法使いの対悪鬼戦の基本である。また、「魔法を制御する魔法」は特に自然秩序から遠いため、魔法消去環境においては魔法はまず制御を失い精度を落とす。魔法を消しきれなかった場合でも魔法消去者は魔法を知覚出来ず、魔法の向こう側を見通すこともできないので、魔法が存在する場所は知覚の空白となり、あたかも光っているかのように錯覚する。魔法消去者が魔法を知覚できないとはいっても観測の力であることには変わりなく、より多くの感覚器官でより強く魔法を感覚するほど消去は早くなるし、逆に再帰迷宮のように五感でとらえられない魔法は消去できない。 地獄に存在する神の中でも「観測した魔法を消去する」という極めて単純かつ強大な力を誇っており、特にチャンネルが合っていなくても勝手に魔法消去という強すぎる電波を受信するため地獄の住民はそのほとんどが魔法消去の悪鬼となる。普段から意識して魔法消去を行なっている者ほどその影響を強く受けるようである。 再演の神が選択されたことでその影響を弱め、消滅しつつある。しかし仁は「意識的にチャンネルを合わせる」ことでより強力な魔法消去能力を手に入れている。その効力は消去を停止してなお未来からの遡行消去で魔法が破壊できるほど。また、未来に自分が使う魔法消去の魔炎を補足することで、適切なタイミングで消去を発動することができる。チャンネルが合っていない普通の魔法消去で上がる魔炎はオレンジ色の光を発するのに対し、仁の強化された魔法消去による魔炎は金色に発光する。 真なる悪鬼(トゥルー・デーモン)一般的な悪鬼は常に魔法消去を発動させているのに対し、自身の意志でいつでも魔法消去を停止・使用のスイッチのON・OFFが可能な悪鬼。 それぞれの魔法に存在する「最も魔法消去の影響をうけやすいタイミング」を測って効率的に魔法を無効化したり、対象の魔法使いに気づかれずに忍び寄り不意を打ったところで魔法消去を行うことが可能。これらの特徴から通常の悪鬼以上に恐れられている。魔法消去を停止している真なる悪鬼は魔法使いから見たとき同じ魔法使いに見え、魔法消去を発動させている間は真なる悪鬼にも魔法は観測できず、どの程度魔法を破壊できたかわからないという弱点が存在する。また、魔法消去を停止している間は通常の悪鬼と違い魔法の恩恵を受けることができる(ただし、しばらく効果を発揮し続ける類の魔法は魔法消去を発動した瞬間に破壊されるため、重篤な傷の治療魔法をかけられている間などは事実上魔法消去を封じられる)。 「先祖返りの悪鬼」とも言われ、過去にはもっと多くの真なる悪鬼が居たことを仄めかされているが、作中に登場するのは武原仁ひとりのみ。魔法が見えない通常の悪鬼とは違い、奇跡の存在を知っているのに関わらずそれを拒み、挑むことから古来の魔法使いから「真なる悪鬼」と恐れられてきた。「神人」たちからは再演大系の神に唯一対抗できる存在として(再演干渉をシャットアウトでき、かつ魔法による転送・支援を受けられるため)《増幅器》への刺客に想定されていた。 間接消去・遡行消去魔法消去は直接観測した場合のみならず、通信機器や記録媒体によって間接的に観測した場合も発動する。これらは間接消去とよばれ、魔法使いの戦闘で利用されることもある。また記録媒体を後で観測した場合や、螺旋の化身のように魔法が大規模で未来にまで影響を及ぼす場合、時間を超えて未来の観測者から魔法消去が発動することがある。これを遡行消去と呼ぶ。その場合、記録した時点・魔法を発動しようとした時点で魔法が消去され、魔炎が上がる。とくに後者は記録媒体も魔法消去者もいない状況で発生しうるため予測しづらい。ただし後述の遡行抵抗に妨げられるため、遡行消去の効果はよほどのことが無い限り、限定的である。 遡行抵抗魔法消去は「異世界の歪んだ秩序」「この世界の秩序に従わないもの・現象」をこの世界から引き剥がす力であるため、「この世界(地獄)の秩序に従うもの・現象」は引き剥がすことができない。そのため、魔法で引きおこされる事象に「地獄の自然秩序に従うもの」が混ざっていると、魔法を完全には剥がせなくなってしまう。「魔法消去は時間を超えるが、結果はひっくり返せず、因果の縛りは受ける」とも表現される。 例えば魔法でつけられた傷は「この世界の秩序に従うもの」であるため、魔法消去で消すことはできない。非常に強力な魔法消去であれば遡行抵抗を突破できるが、その場合でも「傷が消える」のではなく、「時間を遡って、傷の原因となった魔法が消える」。 また、「この世界の秩序に従う物体」を魔法で動かしている場合、途中で魔法消去を受けても物体は消えないし慣性は残る。物体も、慣性も、「この世界の秩序に従うもの」だからである。 この遡行抵抗を利用し、魔法に地獄の物理現象を挟み込むことで、魔法に魔法消去への耐性を持たせることができる。例えば円環大系が「魔法消去に強い」と言われるのは、人工稲妻が「電位差による放電現象」という「地獄の物理現象」を挟み込んでいるため、遡行抵抗の恩恵を受けられるからである。
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