標準偏差 標準偏差の概要

標準偏差

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/09/01 09:12 UTC 版)

二乗平均平方根 (RMS) と混同されることもある。両者の差異については、二乗平均平方根を参照。

母集団の標準偏差

N 個のデータ x1, x2, ..., xN からなる母集団を考える。その母集団の相加平均(母平均)は、次のとおりに定義される:

m = \frac{1}{N} \sum_{i=1}^{N}x_i

このとき、母平均 m を使って次式で得られる量を分散(または母分散)と定義する。

\sigma^2 = \frac{1}{N} \sum_{i=1}^{N}(x_i - m)^2

この分散の正の平方根σを、母集団の標準偏差と定義する。分散はデータの散らばり具合を表す量であるとはいうものの、元のデータを2乗しているので、元のデータや平均値と直接比較することができない。そこで平方根をとって標準偏差にすると、平均値と同じ単位になるので比較ができるようになる。

統計値の標準偏差

母集団の中から, n 個のデータ x1, x2, ..., xn からなる標本を抽出したとする。このとき、標本平均を次式で定義する:

\bar{x} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n}x_i

この標本平均を使って次式で定義される量を標本の分散と呼ぶ。

s^2 = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n}(x_i - \bar{x})^2

標本の分散の正の平方根 s を標本の標準偏差と呼ぶ。

σ2 を母集団の分散、s2 を標本の分散とすると、

E[s^2] = \frac{n-1}{n} \sigma^2

となることが示される。つまり、標本の分散は母集団の分散よりも小さくなる傾向がある[1]。すなわち、標本の分散は母集団の分散の不偏推定量ではない。そこで、

u^2 = \frac{1}{n-1} \sum_{i=1}^{n}(x_i - \bar{x})^2

を考えると、この量の期待値は母集団の分散に等しく、分散の不偏推定量になっている。こうして定義される u2不偏分散という。標本分散と呼ぶこともある。

u2 の正の平方根 u標本標準偏差ということもある。

不偏分散の平方根 u は、標準偏差の不偏推定量ではない。例えば母集団が正規分布に従う場合、標準偏差の不偏推定量 D は次式で与えられる[2]

 D = \sqrt{ \frac{n-1}{2}} \frac{ \Gamma \left( \frac{n-1}{2} \right) }{ \Gamma \left( \frac{n}{2} \right)} u

ここで、u2 は不偏分散である。

標本サイズが大きくなれば、標準偏差の不偏推定量 D は、近似的に、平均からの偏差平方和をn-1.5で割った値の平方根として求められる[3]

 D = \sqrt{ \frac{1}{n-1.5} \sum_{i=1}^n(x_i - \bar{x})^2}

名称の混乱

統計の教科書によっては n-1 で割ったものが標本分散という名称になっており[4]、用語が混乱して使用されている場合がある。母平均が不明であって、代わりに標本平均を使用する場合には、期待値が母分散となる不偏分散を使用することが多い[5]。英語圏では、不偏分散による標準偏差のことをSample Standard Deviation(標本標準偏差)と呼ぶことが多いが、そうでない場合もある[6]。不偏分散u2の平方根を、不偏標準偏差 (unbiased standard diviation) と教える大学教員も多い。例えば、兵庫大学河野稔による健康統計学-散布度の解説が典型例であり、神戸大学中澤港による高崎経済大学非常勤講義 第4回「記述統計(2):代表値」の解説も同じである。一方で、標準偏差の不偏推定量 D を不偏標準偏差と教える教員もいる。例えば、東北学院大学根市一志による標準偏差の不偏性がそれである。このように、同じ用語でも教員によって定義が異なるので注意が必要である。Wikipedia英語版では、Unbiased estimation of standard deviationの項目で、標準偏差の不偏推定量が説明されている。

確率変数の標準偏差

離散型確率変数

X を離散型確率変数とする。X のとりうる値が x1, x2, ..., xnXxi をとる確率を pi で表す。ここで、

\sum_{i=1}^{n}p_i = 1

とする。このとき、

E[X] = \sum_{i=1}^{n} p_i x_i

を確率変数 X の期待値という。また、

V = E[(X-E[X])^2]=\sum_{i=1}^n p_i ( x_i - E[X])^2

を確率変数 X の分散という。この分散の正の平方根を標準偏差という。

連続型確率変数

X を連続型確率変数とする。連続関数 f(x) が

f(x) \geq 0, \int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx = 1

を満たし、かつ X の値が区間 [x1, x2] に属する確率が

\int_{x_1}^{x_2}f(x)dx

のとき、f(x) を X の確率密度関数という。このとき、

 E[X] = \int_{-\infty}^{\infty}xf(x)dx

を確率変数 X の期待値という。また、

 V = \int_{-\infty}^{\infty}(x - E[X])^{2}f(x)dx

を確率変数 X の分散という。この分散の正の平方根を標準偏差という。


  1. ^ 例えば、標本サイズが1の場合、ばらつきがないので標本の分散は必ず0となるが、母集団のばらつきは通常0ではない。
  2. ^ 吉澤康和『新しい誤差論 - 実験データ解析法』共立出版、1989年、pp.78-79。
  3. ^ Richard M. Brugger, "A Note on Unbiased Estimation of the Standard Deviation", The American Statistician (23) 4 p.32 (1969)
  4. ^ 例: 東京大学教養学部統計学教室編『統計学入門』東京大学出版会、1991年。ISBN 4-13-042065-8
  5. ^ 分散または標準偏差の図による解説と具体例は、村瀬洋一他『SPSSによる多変量解析』オーム社、2007年、pp.52-53 (ISBN 4-27-406626-6) などを参照。
  6. ^ Wikipedia英語版のStandard deviationの説明では、不偏分散による標準偏差(平均からの偏差平方和をn-1で割った値の平方根)のことをCorrected sample standard deviationと表記し、平均からの偏差平方和をnで割った値の平方根をUncorrected sample standard deviationまたはThe standard deviation of the sampleと表記している。アメリカのFundamentals of Engineering (FE) の試験問題では、Sample Standard Deviationを求めよと書かれていたら n-1 で割るほうが答えである。しかしアメリカでも、異なる解説をする場合がある。例えば、ユタ大学 (The University of Utah) のTom Malloyは、統計学の学習者向けウェブページEstimating Parameters Web Pageで、Sample standard deviationを大文字Sという記号で表し、平均からの偏差平方和をnで割った値の平方根、と解説している。


「標準偏差」の続きの解説一覧





標準偏差と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

標準偏差に関連した本

標準偏差に関係した商品

「標準偏差」に関係したコラム

  • FXやCFDの標準偏差チャネルとは

    FXやCFDの標準偏差チャネルとは、線形回帰線から一定の標準偏差分を乖離した直線のことです。標準偏差チャネルは、線形回帰線からプラスに乖離した直線と、マイナスに乖離した直線の2本の線を描画します。下の...

  • FXのボリンジャーバンドとは

    FX(外国為替証拠金取引)のボリンジャーバンド(略称、ボリバン)とは、現在の為替レートが高値圏にあるか安値圏にあるかを判断するためのテクニカル指標です。また、ボリンジャーバンドはトレンドの転換点を見つ...

  • 株式分析のヒストリカル・ボラティリティとは

    株式分析のヒストリカル・ボラティリティ(Historical Volatility)とは、過去の株価のデータから、将来の株価の変動率を求めるテクニカル指標のことです。ヒストリカル・ボラティリティは、H...

  • FXのチャート分析ソフトMT4のStandard Deviationの見方

    FX(外国為替証拠金取引)のチャート分析ソフトMT4(Meta Trader 4)のStandard Deviationの見方について解説します。Standard Deviationは、過去の為替レー...

辞書ショートカット

カテゴリ一覧

全て

ビジネス

業界用語

コンピュータ

電車

自動車・バイク

工学

建築・不動産

学問

文化

生活

ヘルスケア

趣味

スポーツ

生物

食品

人名

方言

辞書・百科事典

すべての辞書の索引

「標準偏差」の関連用語

標準偏差のお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング

画像から探す




標準偏差のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの標準偏差 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2014 Weblio RSS