一升庵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/06 02:07 UTC 版)
半田 仙(はんだ せん) 本作の主人公。通称「おせん」。老舗の料亭「一升庵」の女将を務めており、「笠置の弁天桜」との異名を持つほどの美貌でファンも多い。普段は客あしらいを主としているが、時には自ら板場に立って包丁を振るうことも。さらには店の食器や看板を自作したり、野菜を自家栽培したりと、とことん店のため、人のために尽くし、その人や物に対する思いやりを根幹とした美意識から生み出される代物はいずれも超一級品である。それも全ては母親のスパルタ教育による賜物とも言えるが、本人はそれをごく自然に受け止めている。とはいえ、過去の厳しい躾に対する記憶から母親は大の苦手である。 日頃はどこか抜けた性格で、いわゆる「天然ボケ」で何かと奇行も多く、純真なのかいまだサンタクロースの実在を信じて疑わない。物や日本文化に対する造詣が深い数寄者だが、一方で一般常識が欠落している部分も多い。大の酒好きで酔い上がりの朝風呂の後にまた酒を欲しがるほど。何かと理由を付けて飲みたがる飲兵衛である。 一人称は「わっち」。「…でやんす」といった口調で、よく食材や料理・道具などの物品を「さん付け」する。 半田 千代(はんだ ちよ) おせんの母で、「一升庵」の大女将(先代女将)。隠居後は、伊豆でライター業を営んでるようだが詳細は不明。女将を引退した後もその影響力は非常に強く、千代が帰ってくる度に一升庵だけでなく町全体に緊張感が走り、千代詣(町人ら持ち寄りによる歓待の宴会)が始まるのが常。本人は娘のおせんとは違って料理や工芸等は一切できないが、とても厳しく妥協の無い美意識を持っており、千代によって才能を認められた者の中には、人間国宝などその道では知らぬものは居ないと言われるほどまでに出世した者も少なくない。それまで伝統的な料亭として名の通っていた一升庵がさらに広くその名を知られるようになったのも、ひとえに千代が若女将になってからの指導によるものである。若い頃はかなりの美貌をもち、江崎曰く「おせんさんもまっ青」。 なお「おせん」の連載誌にて、新たに半田千代を主人公としたスピンオフ作品「一升庵大女将渡る世間にもの申す」の連載も開始された(途中より「おちよさん」と改題)。担当の若い編集者との食文化のやりとりがストーリーだが、きくち正太の現代食に関するアンチテーゼがメインテーマとなっている。 江崎 ヨシ夫(えざき ヨシお) 通称「グリコ」。実家は山梨で旅館を営んでおり(ただしその規模は「民宿に毛が生えたようなもの」と語っている)、父親の縁で修行も兼ねて一升庵の帳場係として住み込みで働くことになる。本編の語り部的な立場として独白シーンも多い。標準的な現代的若者として伝統分野の物事に対する知識が乏しく、一升庵に来て初めて知ったことが多く、そうして得た知識を周囲に得意げにひけらかすこともしばしばなお調子者なところもある。基本的に優しい性格で一升庵を取り巻く人々の複雑な人間関係に共感・同情することも多く、そのせいか周囲の人達からはそれなりに信頼されているようである。 仕事がら、おせんと行動を共にすることが多いが、おせんの懐具合を顧みない豪快な骨董買いやら、荷物持ちから運転手までさせられる人使いの荒さ(おせん本人は自覚無し)やら、主におせんの言動が原因によるおせんファンからの嫉妬(もちろん当人に自覚はない)やら、と苦労が堪えない。 藤城 清二(ふじしろ せいじ) 一升庵の板長。誰もが認める腕前の包丁人であり、仕事に厳しくも普段は温和な人柄から板場の皆から尊敬されている。しかし、その身体には刺青が刻まれてあり、服役経験のある前科持ちと過去の経歴に影を落としている。おどけた言動の多い一升庵の面子の中でも取り分け無口で真面目なキャラとしてのポジションを確立しているが、一升庵を訪れた江崎の彼女や人気女優を覗きに行くなど、時折お茶目な一面も見せる。 プロ野球観戦が好きらしく、「札幌ベーコンズ」という贔屓のチーム(架空)が日本シリーズに進出した時は仕事そっちのけでテレビ観戦していたことも。また海釣りも好きで、夏休みには離島などに出掛けて大物を狙ってくる。 贔屓のチームや、後輩の結婚式に札幌へ行く描写などから、北海道との縁が伺われる。 竹田 留吉(たけだ とめきち) 高校を中退して一升庵の板場で二番板として働いている。鹿児島出身。板場では「留(トメ)」、後輩や仲居衆からは「留さん」と呼ばれている。ぶっきらぼうで喧嘩っ早いが上下関係には厳しく、目上の立場の人間にはしっかりと従っている。すぐに下ネタを連発するので女性陣からは距離をおかれており、それ故に女性にモテない。他人の恋愛話を聞くと冷たくあしらったり、逆に失恋話を聞くと優しくなったりと感情の起伏が激しい人物である。ちなみに、性格とは裏腹に料理のセンスと腕前は鍛えられた確かなものであり、作中で数回見事な腕前を披露しており、それに慢心することなく腕を磨き続けている。一度見初めた女性(ハル)にプロポーズしかけるが、別の男性と結婚する事になったのを知るや、プロポーズ用に用意していた花束をお祝いだと言って贈り、それを見ていた江崎はあんた男だ、と涙した。 健太(けんた) 同じく板場要員。追い回し(主に雑用を担当)で板場では一番格下。背も低く童顔なので、周りからは「健坊」と呼ばれている。一升庵とは100年以上の交流がある水戸の老舗料理店「山水」の跡取り息子。料理学校を卒業した後、修行のために一升庵で勤めることとなり、その際に父親から貰った自分の銘入りの柳葉包丁を宝物にしている。お調子者でおしゃべりな性格で、留吉とはよく子供っぽい喧嘩をしている。お調子者な性格から生半可な腕前を披露し失敗したこともあるが、失敗に気付いて深く悔恨するなど料理に対する姿勢は真摯なものがあり、板場では出汁加減において信頼を勝ち得ている。 浅井 シズ(あさい シズ) 仲居達を束ねる仲居頭。おせんが生まれる前から一升庵に勤めており、現役の従業員の中ではもっとも古株である。そのため、周囲の人間関係に何かと詳しい。昔はかなりの美人だったのだがその面影は残っておらず、頭身すら変わっており、江崎曰く「どこか異次元の穴に落っこちた」と表現するほどの変容ぶりである。千代とは付き合いが長いので、「シズさん」と彼女に敬称付けで呼ばれる数少ない人物である。妙齢の一人娘がおり、未婚のまま彼女が1人で育て、作中で結婚した。 玉ちゃん(たまちゃん) 一升庵の仲居の1人。実家は有名作家も贔屓にしている鳥料理の名店「玉よし」。家族想いな性格で、突然に亡くなった父親を想い起こして涙し、夜を徹して料理に取り組む兄を心配していた。「玉ちゃん」は皆から呼ばれるあだ名で、フルネームは不明。 テル子(テルこ) 一升庵の仲居の1人。実家は秋田の農家で米を栽培しており、野良着を着て手伝いをしている時は口調もお国言葉に戻ってしまう。彼女が藁を用いて炊くごはんは絶品である。留の下ネタなどに、よく過激なツッコミを入れる。 冬子(ふゆこ) 一升庵でお燗番(日本酒などをお燗する役目)として働いている、きくち正太の作品によく出てくるタイプのメガネの女性。 実家は新潟にある日本酒の蔵元「三ツ矢酒造」。千代が昔旅行した際に、杜氏をしている冬子の祖父と意気投合したのが縁で、料理の勉強に上京した冬子が一升庵に入ることとなった。千代曰く、一升庵の金ヅルならぬ「酒ヅル」。 江崎 ヨシ子(えざき ヨシこ) 江崎ヨシ夫の妹で専門学校生。通称「ペコちゃん」。地元短大を卒業後、調理師や経営の勉強をするために上京。寮に入る予定だったが、心細さと門限の厳しさから兄を頼って一升庵に住みこみのバイトとして働くこととなる。 良くも悪くも「今どきの女の子」で、料理に糸クズが入っていたことに腹を立てた客にくってかかったり、実家の旅館をプチホテルに改装する野望を秘めていたり、結婚相手の第1条件を財産(しかも1億円以上)とするなど、周囲を振り回してはそれを楽しんでいる。
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