ワープロ専用機
【英】word processor appliance
ワープロ専用機とは、文書作成専用に特化されたコンピューターのことである。ディスプレイとキーボード、文書作成用のアプリケーションを中心として、記憶装置やプリンターなどを備え、文書の作成・編集、保存や印刷を専門に行う。現在はパソコンのワープロソフトに役目を譲っている。
欧米では、19世紀にタイプライターが開発・実用化されており、アナログ式の文書作成機器として使用されていた。タイプライターもワープロ専用機の一種であるといえる。
タイプライターの入力方式は、ひとつのキーにひとつの文字(アルファベット)が割り当てられるもので、日本語の膨大な字数に対応させることには無理があった。後に、かな漢字変換システムの開発によって初めて、デジタル式にコンピューター上でワープロ専用機が実現された。
ワープロ専用機の第一号となったのが、1978年9月に東芝が発表した「JW-10」だった。ほとんど事務デスクを模倣した姿のコンピュータで、机の引き出しに当る部分にハードディスクとフロッピーディスクドライブを納め、CRTディスプレイとキーボードとプリンターが机上に乗ったような格好だった。
ワープロ専用機は黎明期から機能強化と低価格化が目覚しく進展していった。JW-10の販売価格は当初630万円だったが、翌年発表された「JW-10モデル2」ではほぼ半額となった。その後、高機能化が進み、パソコンの持つ機能を一部搭載する製品も現れた。文字入力だけでなく表計算やグラフの作成などの高度な付加機能も備え持つようになり、インターネットの普及し始めた頃には、Webブラウザやメールソフトを搭載するワープロ専用機も登場した。
1980年代から1990年代にかけて、数多くのメーカーからワープロ専用機が発売され、ワープロ専用機は急速に普及が進んだ。多くのメーカーが台頭したことで、ファイルの記録形式がメーカーごとに異っており互換性を持つ機種が見つからないなどの問題を抱えていたが、文書のプレーンテキストへの変換機能や各メーカーの対応などもあって徐々に改善されつつあった。90年代中ごろまでは「ワープロ」といえばワープロ専用機を指した。
1990年代後半にさしかかると、パソコンが低価格化して、パソコンとパソコン用ワープロソフトが一挙に普及を始めた。ワープロ専用機は、ワープロ専用でないパソコンに主役の座を譲った。既にワープロ専用機は開発・販売されることもなくなっている。
ワープロ専用機として最も人気のあった機種としては、富士通の「OASYS」などを挙げることができる。OASYSをはじめとした有名なワープロ専用機は、アプリケーションが独立にパソコン用ソフトとして販売され、ワープロ専用機のユーザーがパソコンへ乗り換える際の便宜を図った。
ワードプロセッサ
(ワープロ専用機 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 03:57 UTC 版)
ワードプロセッサ(英: Word processor)または文書作成編集機(ぶんしょさくせいへんしゅうき)は、コンピュータで文章を入力、編集、印刷できるシステムである。一般的な略称は「ワープロ」。ワープロ機能専用コンピュータとして商品開発された「ワープロ専用機」と、汎用的なパーソナルコンピュータで動作する「ワープロソフト」(Microsoft Word、一太郎など)がある。この記事では主に前者の「ワープロ専用機」を扱う。
注釈
- ^ かな漢字変換機構の開発の経緯はNHKのテレビ番組『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』(2002.9.3 第95回)が取り上げている。また、2021年9月7日にプロジェクトX 挑戦者たち 4Kリストア版として放映されている。プロジェクトXの中で、かな漢字変換は、当時の NHK も実用化は困難であるとして開発を断念していた旨が解説されている。
- ^ キーボードの品質の高さ、冷却用のファンなど常時騒音を発生する部品がなく、現代的なPCと比較して廃熱も少ないため室温への影響が少ない。
- ^ その影響により郵便番号辞書の更新は行えない機種がほとんどである。
- ^ システムディスク、マニュアルのコピー品を修理品に添付して無許可販売の一部横行。
- ^ ワープロ専用機ではフロッピーディスクエミュレータ HxC への換装事例はない。
- ^ 国内に液晶パネルの修理およびフロッピーディスクドライブを専門に修理する業者、さらにメイン基板やカスタムLSIの解析を行い互換品の製造を行うことができる業者はあるが、いずれも企業が対象であり個人は対象としていない場合がほとんどである。
- ^ 日立「with me」シリーズは、ワープロ専用機としては珍しくプリンタが分離された機種が主流だった。また、キヤノン「キヤノワード」は熱転写プリンタではなくインクジェット(バブルジェット)プリンタを内蔵していた機種があり、日立にもプリンタ部分のみOEM供給されて「with me」シリーズの一員として発売されていた。さらに、日立ではパソコン用のインクジェットプリンターを接続して使用する機種も発売していた。
- ^ SHARP 書院 WD-A30 の OEM の子供向けワープロ専用機である。機種としては Dear (ちびまる子ちゃん), Dear.2 (たあ坊), TV Dear, TV Dear 少女マンガコレクションがある。
- ^ ゲーム機用ワープロとしては唯一でありゲーム機をワープロ専用機として使えるBJプリンター同梱のセット商品。EGWORDベースであり PlayStation, SATURN 用がある。
- ^ OASYS の場合は OASYS Viewer で変換可能。
- ^ 機種によってはFAXモデムカード、アダプタやFAXソフトウェアはオプションである。なお現在では、ほとんどの機種でこれらオプション品の入手は困難となっている。
- ^ 販売終了品ではインターコネクト社製PC・FAXアダプター。個人による自作例もある。
- ^ それだけではなくプリンターの故障したジャンク品のFAXモデム内蔵ワープロ専用機も本来の機能を文書の印刷ができる程度まで擬似的に復活させることができる。
- ^ ワープロ専用機をはがき印刷のみに使用しているのであれば、はがき印刷専用機やネットブリントサービスへ移行したほうが維持や保守の面で経済的ではある。
出典
- ^ “日本語ワードプロセッサ”. IPSJコンピュータ博物館. 2017年7月5日閲覧。
- ^ “【シャープ】 日本語ワープロの試作機”. IPSJコンピュータ博物館. 2017年7月5日閲覧。
- ^ 原忠正「日本人による日本人のためのワープロ」『電気学会誌』第117巻第3号、電気学会、1997年、 175-178頁、 doi:10.1541/ieejjournal.117.175。
- ^ YOMIURI PC編集部『パソコンは日本語をどう変えたか - 日本語処理の技術史』講談社ブルーバックス、2008年、pp.91-92
- ^ “プレスリリース;当社の日本語ワードプロセッサが「IEEEマイルストーン」に認定”. 東芝 (2008年11月4日). 2017年7月5日閲覧。
- ^ 情報処理学会 歴史特別委員会『日本のコンピュータ史』ISBN 4274209334 p132
- ^ “【東芝】 JW-10”. IPSJコンピュータ博物館. 2017年7月5日閲覧。
- ^ 情報処理学会 歴史特別委員会『日本のコンピュータ史』ISBN 4274209334 p133
- ^ “【沖電気】 OKI WORD EDITOR-200”. IPSJコンピュータ博物館. 2017年7月5日閲覧。
- ^ “【シャープ】 WD-3000”. IPSJコンピュータ博物館. 2017年7月5日閲覧。
- ^ 山根一眞『「メタルカラー」の時代』ISBN 4-09-379421-9 pp. 343-349
- ^ “【富士通】 OASYS 100G”. IPSJコンピュータ博物館. 2017年7月5日閲覧。
- ^ 古瀬幸広『考える道具 - ワープロの創造と挑戦』青葉出版、1990年、p.91
- ^ 古瀬幸広『考える道具 - ワープロの創造と挑戦』青葉出版、1990年、p.131
- ^ 情報処理学会 歴史特別委員会『日本のコンピュータ史』ISBN 4274209334 p135-136
- ^ 日本語ワープロソフト Power書院 プラチナパック CE-S50SY
- ^ 「シャープ、年賀状ソフトが付属した「Power書院 プラチナパック」」『PC Watch』 インプレス、2001年11月13日
- ^ 「プレスリリース パーソナルワープロ「Rupo」の機能をWindows®95上で実現したワープロソフト「Rupo Writer Ver.2.0(For Windows®95)」の発売について」『東芝』 東芝、1996年9月25日
- ^ 「キヤノン、ワープロ専用機と互換性をもつWindows 95用のワープロソフトを発売」『PC Watch』 インプレス、1996年12月16日
- ^ 「プレスリリース パーソナルワープロ「Rupo」のかな漢字変換ソフトをパソコン用ソフトとして発売」『東芝』 東芝、1997年9月8日
- ^ 日本語ワードプロセッサ FUJITSU Software OASYS - 富士通
- ^ 2010年8月20日放送のニュースウオッチ9 (NHK)
- ^ 21年前のワープロ「書院」で2018年にインターネットをしたら、無間地獄に突入した (3/3) ねとらぼ 2018年01月27日 12時00分 公開 (アイティメディア、2018年2月8日閲覧)
- 1 ワードプロセッサとは
- 2 ワードプロセッサの概要
- 3 ワープロ専用機の主な機種
- 4 参考文献
ワープロ専用機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 16:47 UTC 版)
「ワードプロセッサ」も参照 OASYS OASYS-V(PC/AT互換機にOASYSを実装した機種。のちに、FMVにOASYS用のROMを実装したFMV-DESKPOWER DCシリーズに移行)
※この「ワープロ専用機」の解説は、「富士通」の解説の一部です。» 「富士通」の概要を見る
ワープロ専用機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/27 06:21 UTC 版)
新たなJIS規格ということもあり策定後すぐに各社から新JIS配列モデルが発売された。NEC(M式)や富士通(親指シフト)など他の配列を推進するメーカーもオプションとして採用されるなど、ワープロ専用機の配列としては一定の広まりを見せていた。しかし、旧来のJIS配列が廃止されず併存していたため、あえて不慣れな新配列を選択するユーザーは少なく出荷台数が伸び悩んだことで店頭に置かれないという悪循環に陥り、採用機種は減っていった。シャープの書院にはソフト的に配列を切り替えられるモデルがあり、規格廃止直前まで販売を続けていた(1998年発売のMR-3など)。
※この「ワープロ専用機」の解説は、「新JIS配列」の解説の一部です。» 「新JIS配列」の概要を見る
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